空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

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ヘビの脱皮

宗教史なんぞ学んでいたなら絶対避けては通れない聖地を巡る戦争紛争、武装集団や政府軍による迫害、奴隷、拷問そのほか強制売春だの性器切断だの聞くに堪えない惨いもの酷いもの「そんなの慣れっこなんでしょ」って、…思いますよね? (いえ別に

ところがどっこいわたしの場合は反対に、たぶんどんな学問よりよっぽど多くそういう史実を直視してこなければならなかったことが恐らく「トラウマ」の方に働いてるんじゃないかと思われる。たとえば映画やドラマでは規制が掛かってしまいそうな残虐な場面を真正面から描いたようなサスペンス小説、中でも「実話に基づいている」なんて類のものはもっぱら覗くことができないし、そうでなくとも全体的に鬱として救いがなく多少グロテスクなシーンを含むフィクション全般、そういうものをやんわりと連想させるような殺人事件や児童・動物虐待のニュース報道なんかでも、とにかく深めの精神的ダメージを見た後しばらく引きずってしまうという意味で本当に駄目なのですよね…

この「トラウマ」がどの程度の重さ軽さなのかは分からんが、正直に打ち明けるなら「バイパーがいかにしてルイ教授のものとなったのか」その経緯が描かれたこちらのサイドストーリーがギリ「アウト」に分類されるくらいでございます。涙

ありのままに起こること説明させていただくと、毎夜寝ようと目を閉じるたび忘れたい払拭したい惨虐な場面が考えまいとするほどなぜかとっても現実味を帯びた鮮明な視覚的イメージ、それも自分がこれを受ける対象の設定で延再生され続けるのだけど、その際これに伴う悲しみとか恐怖とか特に「感情」の部分がめちゃくちゃリアルに襲ってくるのです。えっわたしこれされたことある? ってくらい、まるで「思い出している」かのような感覚で…
※されたことはない

で、結果めちゃくちゃ疲れが溜まる。たまーに分かる分かる自分もそうなると共感してくださる方に出会ったりもするんやが、これって正常? 極度のビビり? それともなんか精神やばい?←

取り敢えず落ち着いてきたので感想書きます。
くそぅ、連休きてから読めばよかったぜ…

父さん

この世界には「特殊人間」を拉致監禁して売り捌く密輸組織というものが存在するらしい。2048年現在「市内最大の」それが「グリーンクロコダイル」なる団体だと言うからには同じような事業で活動する集団が大小複数存在しているし、特に希少価値が高い商品は「未成年のEvolver」だと言うんでたとえばEVERに買収される以前の杉徳医療が臓器提供者確保のため詐欺や脅迫などの手段を用いて働いていた人身取引行為とはまた違ったニュアンスなのだろうと思う。もしかして「暗点」が関与しているのではないかと噂されていた「Evolverの失踪」もこの辺に絡んできたりするのかな?

恐らくそうした組織の中のひとつによって幼少期は「2961」の名で浮浪児として売られ多くの時間を他の「商品」たちと共に狭い輸送ボックスの中で縮こまって過ごしたというバイパーは、「動物系Evolver」の中でもEvol遺伝子に有鱗目クサリヘビ科の生物と同様の配列特徴が見られ身体には「毒の分泌腺」と「再生能力」を持っていたことからあるときうっかり切断された指の断面が十数分かけて自力で再生される「特殊人間」であることが判明、以来「Evolver販売基地」の「目玉展示品」となって好奇の目に晒されて、その傷口の皮膚や血管が神経を痙攣させながら治癒していく様子なのか彼が悲鳴も上げられないほど痛みに悶え苦しむさまなのか一体何を楽しんでいるのか分からないフリークショーにおいて「一度失えば新たに生えることはない」という全身さまざまな部位を出し惜しむように毎日少しずつ競り売りされながら切り落とされていった。

そうしていつの間に「廃棄待ちの不良品」となった2961はガラス窓の向こう側で売れ残りとして血まみれのまま放置されているのだけど、どうやらその販売基地へ買い手として出入りしていたらしいルイ教授の目に留まり、「一緒に行こう」「家族になろう」「これからは私が君の父さんだ」と声を掛けられ「実験室」へ連れ帰られることになる。

ルイは恐らくすでに同じ手口で買い取っていたであろうその他の「子ども」たちと比較して「脱皮のための時間が必要」だとは言え「もっとも完璧な子どもになるだろう」彼を「バイパー」と名付け、切断された手足を機械のパーツで補いながら膿んでしまっていたすべての傷を縫合した。

バイパーにはルイの言う「父さん」や「家族」が何を意味するのかよく分からなかったのだけど、その言葉や眼差しや受けた処置は彼が生まれて初めて感じた「死以外の温度」だったそう。たとえ「使い捨ての駒」を洗脳して上手く利用するためだけの血の通わないそれでもバイパーにとっては失われた自我を呼び覚ましてくれる切っ掛けに違いなかったのだね…

これほど残虐な話ではないが日本にも「見世物小屋」の歴史ってありますからね。奇異な外見、珍奇さや禍しさ、猥雑さを認識することで刺激される不快感や危険性への関心が「娯楽」と呼ばれた時代です。どうしてそれが娯楽なのか、そもそもなぜ人は好奇心と優越感で平然と差別、嘲笑、暴力に加担するのか、何が人を悪魔に変えてしまうのか本当におぞましくて恐ろしくなるのだけど、いちばん怖いのは「弱く無力だったバイパーがなぜこんな目に遭わなければならなかったのか」悲しみや怒りを動力とした「そんなに愉しいなら自分の指でも詰めてろよ」って結局悪魔のような彼らと変わらないおぞましく恐ろしい感覚が自分の中にも潜んでいるんじゃないかと自覚してしまいそうになる瞬間なんだよね。いやこんなことばかり考えるからまた夢に見ちゃうんだよな(苦

チューリング・サイバネティックス・センター

本編4部2章ラスト「特別な権限」を持つものだけが辿り着ける巨大ビルの「存在しないフロア」で「今世紀最大の研究成果発表」の展望について語っていたルイは間違いなくアーテーの泉プロジェクトもといEVERの創始者だ、くらいの認識でいたんやが、彼は人間と機械の融合および人体外付け式スマートデバイスの研究を担うEVERグループ傘下の「チューリング・サイバネティックス・センター」なる部門の責任者というポジションだったんやな。するとEVERとは一口に言ってもたとえば不死化細胞培養研究部門やコアテクノロジー開発部門なんかがあってそれぞれに責任者が割り当てられているようなイメージなのかな?

家族とは「決して裏切らない人のこと」だと教えられているバイパーは「父さん」たる教授の言い付けを守り彼に代わって「Evolver販売基地」のような場所へ赴きここチューリング・サイバネティックス・センターへ被験体候補者を連れ帰ってくるよう指示されているみたいやが、今回彼が「グリーンクロコダイル」の拠点から運び込んできたEvolverの少女が4部2章彼らの「家族」としてそこにいた「黒いドレスの少女」になるんだろうか。

まるで頼まれていたおつかいを終え誇らしげに称賛を待つような期待に満ちた眼差しを向けてくるバイパーに見向きもしないルイは、その連れ帰られた怯え切った少女を抱き上げかつてバイパーにかけてやった同じ慰めの言葉で彼女の情緒を落ち着かせると慈愛にあふれた本物の父親のようにその顔に付いた汚れを手で拭ってあげたりして、一方これに不満げなバイパーは悪意に満ちた表情で少女を眺めながら「家族になれるかはまだ分からない」「それはこいつが生き延びてからの話だ」なんて悪態をついている。

つまりはこの研究所において実験に耐え切れず生き延びられなかった子どもたちが居るからこそのバイパーは教授にとって「もっとも完璧な子ども」だったのだろうが、現在「義体改造率が全身の75%を超えている」というバイパーは手術の失敗率が55%を超過したため改造実験を一時中断されているといい、今は「まだ成熟していない」というその改造技術が脳の自己判断にどの程度の影響を及ぼすのか「明断な思考を保ちながら義体の感覚や状態を報告する」役割を担っているらしい。

当のバイパーは苦手な「痛み」を二度と感じられなくなるならいっそ「全身が機械になればいい」とさえ思っているようで時に無茶をして残された生身の部分を欠損させ帰って来ることもあるのだが、教授がこれを「私の望む結果ではない」「残された自分の部分を大切にしなさい」と言い聞かせれば渋ながらも大人しく従っているもよう。明断な思考による義肢の検証を任されている以前に「貢献しない者はこの家には要らない」と釘を刺されればそもそも従順なバイパーには「チップ」による意識制御は及んでいなかったりするのかな。今回は自己判断で「グリーンクロコダイル」の拠点を爆破した際に残った自分の指を飛ばしてしまったみたいやが、彼の出自を想うとそんな憂さ晴らしも許されていいんじゃないか、いやそんな話じゃないだろってめちゃくちゃ複雑な気持ちになってしまうわ。

見返りを求めない無償の愛を知らないバイパーは少女の顔を撫でたルイがまるで汚物にでも触れたかのように手を拭いたハンカチをゴミ箱へ投げ入れていたことに違和感を覚えられないまま、真実を知ることで味わってしまうかも知れない絶望を味わうことなく人生を終えられるならむしろこのままこの異常な世界に留まらせてあげた方が返って幸せなんだろうか。
得意げにしたりやきもちを妬いたり赤ちゃん返りをする不安定な子どもみたいにいじらしく振る舞う彼を見ているといつか身体だけでなく心に負ったすべての傷が「本物の愛」によって癒される日が来るようにと願わずにはいられないのだが…

逸材

最後はここチューリング・サイバネティックス・センターへどのようにしてマヒルがやって来てチップや改造を施されるに至ったかその経緯がバイパーの目線から語られる。

航空アカデミー3年生にして総合航空戦術大会で3年連続優勝、大型宇宙巡航艦試験においては過去10年間で唯一の特優評価保持、プロの深空パイロットでも合格は難しいと言われる深空宇宙機関考案の高難度飛行試験では過去最高記録更新など、教授は以前からそうしたマヒルの輝かしい経歴を絶賛し彼を「逸材」と称して自分の研究に必要としていたみたいやが、「父さん」の関心が別の「子ども」へ向けられることが何より面白くないバイパーは2044年当時21歳だったそのマヒルとやらがなんぼのもんかと密かに臨空市を訪れ彼に接触を試みたことがあったらしい。

明晰夢読了時点ではこれらの好成績も大学入学3年目にマヒルが参加していたという「秘密の特訓」によるもので、その特訓も当然ルイ教授によるものなのだとばかり思っていたが、この言い振りと「3年連続優勝」なんかも含まれるとなると全部が全部というわけではなかったりするのかな?

コンビニの外で少女と楽し気にお喋りしているその青年がパン屋に立ち寄りひとりになったのを見計らって襲い掛かり恐らくちょっと痛い目見せてやるくらいのつもりだったのだろうが、とっくに尾行を見抜いて敢えて路地裏にバイパーを招き入れていたらしいマヒルはもちろん寸でのところで「巨大な重力」により相手を地面に押し付けてその動きを封じ、鎖のような引力に手足を縛られたバイパーは気勢を上げ暴言を吐き捨てながらも身動きが取れなくなって、けろりとした調子のマヒルはそうして徐に地面へめり込んでいくバイパーを歯牙にもかけず先ほどの少女からかかってきた電話に応え始めてる。

電話口からはバイパーの気配をなんの音かといぶかしむ少女の声がして、潰された義体から無数の電子ボルトが飛び出すバイパーにちらり目をやり「精巧に作られた爬虫類の模型から部品がこぼれ落ちた音だ」なんて平然と言い放つマヒルには許しがたい屈辱感を覚えたりもするのだけれど、あまりに動じないマヒルのその様子には少し「新鮮」さも感じていたと言うバイパー。

それから4年経ち2048年花浦区の爆発事件で瓦礫の中から運び込まれたマヒルはどうやら自身のEvolを使い爆発の影響範囲を無理やり制御しようとした結果ダメージの大部分をその身に受けてしまったことで瀕死の状態だったと言うが、失った右腕にバイオ神経接続なるものを施され義体改造が完了すると機械との適合度の高さから「間違いなく完璧な最高傑作となる」なんぞ評価され、するとやっぱり気に食わないバイパーは八つ当たりに研究員を締め上げたりと荒ぶるが、低温実験カプセルに拘束されている異様なまでに冷たい目をしたマヒルにはまるでこうして再会する日をどこかで望んでいたかのように「また会った」なんて声を掛けに行ったりもして。

もちろん憎らしい相手ではあるのだろうが「父さんの言い付けがなければ殺してやりたいほど」かと言われればそうでもなく、とりわけ興味が湧いてしまうのも「父さんが特別扱いをするから」よりバイパー自身がマヒルに何か例外的な「他とは違うもの」を感じているからなのだろうなって思ったよ。

ところでルイは爆発にかこつけて「Unicornの研究員だったスエが隠していた002号提供者」を「あの実験室の手の者が到着する前に」確保したなんて言うんやが、ガイア研究センターとチューリング・サイバネティックス・センターは同じ「EVERグループ傘下」でも元よりそうしてこそこそと研究対象者を奪い合うような関係値、だったのか?
ルイが誰より早く現場へ駆け付けられたのはEVERがホワイトグローブに指示を出し事故に見せかけてスエ宅を爆破させることも実験資料を拝借することも何ならそれが暗点のボスの仕業だと工作することもあらかじめ全部知らされているような立場だったからなんだと思うのだけど、同じように「あの実験室の手の者」の中にもいまだある程度の地位に就き機密情報を握りながら「ルイに渡すまい」と動いてきそうな誰かが居るってことなのかな。
単純に良心の呵責から研究を離れた人たちが可哀想な子どもたちをEVERからかくまって暮らしてたって話なのだと思い込んでいたけども、ガイア研究センターは実はN109区を密かに移転しどこかに新たな施設を構えまだ彼女やマヒルを欲してる、なんてことないよな?
ルイは瀕死状態だったマヒルの乾いた血痕で汚れた襟元に壊れた通信機の破片が付いていたことから「爆発前に彼が誰かと連絡を取ろうとした」んじゃないかと推断するがこれも相手が誰なのか気になるところである。

そして、教授の反応からチップの埋め込みも義体改造と同時期に初めて処置されたもののようなので少なくとも爆発事件以前のマヒルはチップによる思考制御やセベシングによる意識混濁とは無関係だと思っていてよさそう? にしても、明晰夢を思い返してみると神経がメスで裂かれるような激痛の中で溺れ死にそうになるというチップの再起動をマヒルはここに連れて来られてたった3日間のうちに「429回」も強行されていたのだな。これはせめて痛みを伴わないような仕様にはできないものなのか…

こうしてとんでも亀プレイでようやく世界の深層をすべて読み終えたところで早速マヒルの伝説ストを読み始めたいんやが、実は今時点で寂路思念の育成がまだひとつも進んでないという深刻な問題に見舞われているわたしは連休までに全話開放という目標を果たして達成できるだろうか(無謀
それまでにこっちも履修しておかないとだよな。実装時のミッション報酬だった思念は「エンドレスサマー」だったかな?

なんかここでチラ見してるだけですでに切ない。
せめてこれだけでも近読んでこよう…