空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

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5部2章 全ては深空から

なんだか物凄く考えさせられるストだった。こちらの世界でも先端技術は宇宙開発だけでなく生命科学や情報科学の分野でいよいよ人智を超えた領域に足を踏み入れ「人類のあり方」や「地球のあり方」さえ変えようとし始めているけれど、やっぱり科学とは決して万能なものではなく文明を「進化」させることも「破壊」させることもできるものなのだと諭されているような気がしたよ。

近現代の急速な科技発展に伴い「宗教離れ」はどこの国でも顕著で「宗教的な倫理観」は「もはや次世代に受け継がれることはないだろう」なんて言われていたりするけれど、そうして「神」よりも「科学」に魅了されてきた人類はむしろこれからより多くの場面で「神と人間との境界」を問われ、宗教が社会においてどのような役割を果たすのか事新しく考えさせられるのではないかと思います。

たとえば地震による大津波や干ばつによる大飢饉で多くの人の命が脅かされるとき、科学の存在しない古代には人は神に祈り神を畏れただ「滅び」を待つことしかできませんでした。しかし自然科学開発により新たに手にした技術でそうした迫り来る「滅び」に対処できるようになれば「神」なんて不必要になる。神を手放し科学の力で「できること」を増やすのは人類の「進化」の歴史でもありました。

ただ、本当に「できること」は増えてきたのだろうかと。実際は手前勝手に本来あるべき状態を少しずつ歪め、さらにはそれを取り戻そうとまた歪め、ただ無秩序にそういう行いを繰り返してきただけで、ついに末期まで進行し原型を失ってしまったところへ来てようやく自分たちが長らく手配りしてきた科学の力こそが自分たちにもたらされる「滅び」なのだと気が付くのかも知れない。それこそヤオ氏の定義する「存在しない核」がそうして人類が淘汰し忘れ去ってしまった神への畏敬の念だとは言わないが、少なくとも宗教主義思想とはある人の信念であり価値観であり「心」を形成するもののひとつである。

遺伝子編集やクローン技術はすでに人間の胚を改変することができ、脳とコンピューターを繋ぐ「ブレインマシンインターフェース」は社会実装目前だと聞きます。人間の意識を電子的に保存する「マインドアップロード」の研究も始まってるんだってね。それらが我のまだ支配下にない宇宙や生命の秩序にどう影響してしまうのかが分からないというだけで、こうした技術によって救われる人はもちろんたくさんいるわけです。

使わないのが倫理的なのか使って救うのが倫理的なのか、それは人間が踏み込んでいい領域なのか不可侵たる神の領域なのか、神を捨ててしまった人類がそういう議論に直面する日はもうすぐそこなのだろうと感じます。わたしたちは科学の力で「できること」をどこまで増やしていいのだろうな。

ガイア跡地

カロン闘技場でふたりが討ち果たしたワンダラーは外殻が改造されており恐らく彼女だけがこれに捕われた状態で地面は壊落、静まり返った「広い廊下の中央部」に投げ落とされた彼女はひとりガイア跡地を探索することになるのだが、そこから左右に伸びる分かれ道の先にあるという各研究室の名称には驚いた。「2034年人類は初めて宇宙の彼方からメッセージを受け取った」ってのは同年「裂空災変」が勃発する「以前」の話だったんだな? パルス信号とは深空トンネルからやって来たものなのだとばかり思っていたが、どうやら先立って「深空信号解析室」なる場所で「未来生命:ロールバッカー」「高次元生命:神言者」「古代海洋生命:リモリア文明」の存在を探り当て「遺伝子抽出比較センター」なんぞ備えているあたりすでにDNA回収くらい済んでたんじゃないかって雰囲気。

EVERの先進技術は過去200年間のどこかのタイミングで「裏切者」に転身した未来人ロールバッカーが牽引しているのではないかと踏んでたが彼らもあくまで「研究対象」であり接触したのは14年前ってことになるのかな。

生体認証システムのようなものが「001号提供者」として感知した彼女の身体から「警戒」や「不安」の感情を検出したことで辺りには「安心してください」「指示ライトに従い移動して助けを求めてください」なんてまるで小さな子どもをなだめ落ち着かせるかのような優し気な電子音声が流れ出し、用心しながらも言われるがまま点滅する矢印の方向へ歩み始めればそのがらんとした廊下にはたくさんの人が行き来しているような気がしたり、心臓には鼓動とひとつに重なるような心地良い振動を感じたり、そうしてUnicornチーム研究室前まで辿り着き重厚な扉に手をかければ「共鳴」によって幼い自分が「今日は何をして遊ぼうか」とおばあちゃんの腕の中へ飛び込んで行く光景が蘇ったりもするんやが、いや後ろ暗い実験施設に不釣り合いなこの穏やかで温かい感覚はなんなんだ。たとえ記憶にはなくとも確かに彼女の郷愁の一部なのだと思えて泣けてしまうではないか。涙

かつてそんな風にして彼女と過ごした研究員のひとりであり災変による深刻な被害と研究チームの瓦解により一度は機能しなくなったここガイア研究センターを復旧しその設備を長らくひとり守っていたのがカロンの主ヨミだと言うのだが、なるほどおばあちゃんが探していた「N109区に身を寄せた失踪した研究員」というのは工房の店主ジェフではなくヨミのことだったのか。

開かれた扉の向こうでヨミはこちらへ向き直り、待ちわびた客を出迎えたかのような身振りで彼女を招き入れる。もちろん注意深く一定の距離は保ちながらも「ここはお前の誕生の地」であり「最初の家」であり「私達は我が子のようにお前を育てた」と語る彼の真摯な眼差しや温和な話し方、恐らく当時の研究室の様子が投影されているのであろうホログラム映像に「心の中に込み上げる温かさ」を覚え始めた彼女は知りたかった自分の生まれについて「ひとまず彼に話を聞いてみよう」と思い至る。

深空エネルギー衝突実験

ぶっちゃけこの辺全体的にあんまり絵が浮かんでないんやが、2034年EVERは地球が受信した微弱な「深空信号」を分析し「ごく平凡だったある星の文明」が「枯渇することのない宇宙エネルギー」により「永遠の命」を得るまでの史実を読み解いてこれを模倣しようと考え至ったと。そうして開発された「深空エネルギー衝突実験」なるものが度重なる失敗を経てついに待望の宇宙エネルギーを誕生させたその様子はバーチャルホログラムで再現されているのだが、彼女の目にはこれが「星そのものが誕生と消滅を繰り返してる映像」に見えるらしい。

よくよく見ると確かにエーテルコアや恐らくフィロス星核が放っているのだろう赤いエネルギー軌道に見えなくもないような位置に点線がうっすらしてるので、どうやらこれが「枯渇することのない宇宙エネルギーの磁線」をシュミレートした実験装置のようなものなのだろうと思われる。

ただしこのエネルギーの波動源は「お前の体から生まれた」と言うのよね。ひとりの子どもの「体内から現れた」のだと。この辺「提供者」のニュアンスにも引っ張られ漠然と「特異エネルギー」に感染し「コア介入症」が引き起こされる現象と同じように提供者たる少女の身体にも「感染」に近いことが起こったのかな、くらいの感覚で読み進めていたんやが、この先のやり取りからどうも彼女は深空エネルギーを実験的に衝突させていたその装置の中に「どういうわけか7歳の人間の女の子の姿で突然変異的に出現した」ってことらしい。言われてみれば前章やや引っかかっていた見知らぬ女性の言う「あなたは深空で誕生した」「実験中に現れた」なんてセリフは文字通りの意味だったのだな。提供者とはエネルギー源として命を提供する提供者ってことなのか(怯

あまり重要じゃないかも知れんが念のため、日ごとに成長する「彼女というエネルギー」は27日目にピークに達し36日目に衰退し始め41日目に完全に崩壊し爆発、その後すぐに集まり再び成長を始めるという周期で循環することから「星のエネルギー」そのものであると推測され、体内に出現したエーテルコアはそのエネルギーの結晶だと推断されたそう。心肺停止や蘇生とは無関係に常に増減してるのだね。いやEvolレベルが測定不能なのって普通にそのせいなんじゃ…

金砂の海では王宮の姫が「ある時ある深い峡谷で生命体として目覚めた」というがこれもそういう現象なのかな? となると、忘却の海「朝と夜の変わり目の炎の中で生まれた」というホムラくんの「海神の心」も改めて「星のエネルギー」たるエーテルコアのひとつだったのかも知れないな。きっと「海洋エネルギー」みたいなもんも本来なら枯渇しない広義には宇宙エネルギーのひとつだもんな? かつて彼の力によって生かされていた海の種族たちが「潮汐逆流の日」に弱ってしまうのは潮汐力と起潮力が破壊と新生のように反比例して調和する関係だから、だったりして(たぶんちがう

それで言うと002号提供者マヒルも恐らく同じ出自なのだろう。惑星科学みたいな分野にまったく明るくないので変なこと言ってたらごめんけど、もしかして星というのはなんかこう地殻変動や火山活動を起こしてる中心部の「星核エネルギー」とさらに「重力エネルギー」の二種類から成り立っているの? だとしたらふたりが結合して超新星爆発が起こるのも破壊と新生どちらがどちらにもなり得る概念もとても腑に落ちるのだけど。

懺悔

地球の原生エネルギーやコアエネルギーよりも更に強力で莫大なそれはもちろん希求していた「非枯渇性新型エネルギー」に違いないものの、人の形をしていることから解析も測量も難しく本当に資源として利用していいものか普通の人間のように育てるべきか開発者たちは「巨大な誘惑」を前に議論をもつれさせていたと言うが、ヨミに限ってはあまりに産業から規模を逸脱したそれが「何か災いを引き起こすのではないか」と懸念していたのだそう。

裂空災変という宇宙危機は「彼女というエネルギー源を誕生させてしまったこと」によって引き起こされ、予見が的中してしまった彼は「EVERは元より強大な力を手に入れようなどと貪欲なことを考えるべきではなかった」「災厄を招き寄せてしまった自分たちは世界に対し犯したこの罪を償わなければならない」と自責の念に駆られたと言うが、そうして罪を告白し始めたヨミは徐に狂気を露わにし、危険を察知した彼女は周囲に視線を走らせ直ちにEvolを発動するも実はすでに仕掛けられた罠の中におり、ヨミが「懺悔」をするかのように跪いたそこには彼女の立っているまさにその位置に上下四方から巨大な曲面ガラスが組み上がり球体カプセルが成形される起動スイッチが備えられていた。

彼女は突然迫り来る巨大なガラスの壁が完全に閉じられる寸でのところで隙間に小型爆弾を差し込み継ぎ目にできた僅かな割れ目からヨミを捉え銃を連射するが、弾丸が命中しても「何喰わぬ顔をしている」という彼もまたすでにごく平凡な人間の肉体というわけではないのだろう。

闘獣ゲームの間に現在の彼女の「Evolデータ」を抽出し装置の「反物質技術」を今の彼女のエネルギーが相殺できる仕様に最適化してあると言うヨミ、恐らく彼の差し金なのだろう仮面人間たちの反物質武器がシンいわく「偽物」だったのは目的がデータの回収だったからなのかな。

そうして万全の状態で稼働を始めたカプセルは「2メートルほどの高さに浮かぶ」って書いてるんだけど、これがそのカプセルだよな? 接地面が水平だからかあまり浮かびそうには見えないが…

彼女はガラスの檻の中まるで身体が押し潰され続けているかのような激痛やめまいに襲われながらそれらが「よく知る感覚」であることや装置は自分が「昔閉じ込められていた深空エネルギー衝突カプセルだ」と確信するのだが、これはスエが忍びない想いで彼女を押し込んでいたという「観察用キャビン」とはまた別物なんだろうか。

カプセル内から空気が抜かれ肺が膨張し始めると彼女は「間もなく全身の制御と全ての知覚を失いゆっくりと思考が停止して消えていく」のだろう身体に残された恐ろしい記憶が鮮明に蘇り、遅れて脳裏にはかつて幼い自分と若いヨミがまるで同じ場所で同じやり取りをしていたその光景がフラッシュバックするのだが、そうかこれが埃の中スエが「災変にひとりで遭遇してる間に一体何が起こったのか」測りかねていた事の真相だったのだな? 「あの怪物も天空の空洞も全部お前がもたらした」と恨み節を立て連ねるヨミは幼い少女をカプセルに投げ入れ「お前はこの世界の災いだ」「もっと早くに処分すべきだった」なんぞ独り言ちていたもよう。

するとある日「うっかり誤操作でUnicornのバイタルサインを消失させてしまった研究員」というのもこのヨミだったんじゃないか? 「私だけがお前を処分する覚悟を決めていた」「事実が私の正しさを証明した」なんて言ってる辺り災変が起こってしまう余程以前から「資源利用」でも「人として育てる」でもなく唯一「処分」を主張していたのがヨミだったんじゃないかって気はする。

これまた賛否の分かれそうな感想を述べてしまうけど、一体何が「いいこと」で「悪いこと」なのか分からなくなるような話だよ。もちろん感謝して享受するのが本来である人間がついに命を裁くことができる神になったとおごるのは大間違いなのだけど、仮に地球の有限燃料枯渇問題はこの先一向に解消されなかったとして、宇宙研究から非枯渇性新型エネルギーの可能性を見出せたらその開発に取り組むのは悪いこと? 開発したエネルギーを利用するのは悪いこと? セイヤが「今の時点からじゃ間に合わない」と嘆いた「ひとつの命か人類の存続か」を迫られるような事態に至るのはその局面を迎えるまで多くの人にとってそれが「悪いこと」には見えなかったからなのかも知れない。あるいは若き日のヨミは出現したエネルギーが少女の姿をしていたとき「黒い結晶のかたまりから生えた脈動する心臓の半分を目の当たりにしてしまった医学部生レイ」と同じ気持ちだったのかも知れない。

必死の抵抗虚しくついに「魂」が急速に増長し「肉体」から解放された「意識」が爆発と共に流れ出ていくのを感じ取る彼女、これはいわずもがな「身中の各エネルギー値が急上し体内で激しいエネルギー爆発が発生する」というあの「心肺停止」の状態が今度は彼女側の視点から解説されているということなのだろう。

彼女はこの星の無数のエネルギーの反響を聴きながらあの「目玉」に呑み込まれ、自分が宇宙の一部もしくは宇宙そのものになったかのような感覚で恐らく「誕生して崩壊へ至るすべての星が無数の選択肢によって迎える無数の結末」をめちゃくちゃ早送りで俯瞰している。そして最後の星が消滅するのを見届けるとそこには「原初のコア」なるものが生成され、なんだかごちゃごちゃっとなったような結局何も変わってないような状態で再びどこかの星に辿り着き「誕生を待つ」と書いてある。世を過ぎゆくでは「彼女は行方不明」であり「崩壊したトンネルの中で塵になっているかも」なんぞキノアは溢していたがそれもこういう状態を指していたのかな? きっと宇宙科学や宇宙物理に基き物語を考察されてる方にはまるで「正解が分かってしまった」かのような描出なのだろうな。「宇宙ひも」って言葉だけなら聞いたことあるんやが、時間があったらまた調べてみよう…

こうやって次に目を覚ますときには全ての記憶を失った状態で「蘇生」されているってことなのかな? それともこれはまた別の世界に「再誕」するときのパターンか。後から語られるが彼女はこのとき自分が今いる地球から星の海や深空の奥その全てに自分と共鳴する「エーテルコアを感じさせる力」があるかのように思われ、トンネルの先にあるのは既知の情報を超越する人類よりも高度な文明であり決して災いの根源ではないと直感したらしい。すると14年前から深空トンネルがずっと上空に存在してるのは本当に「帰っておいで」「あなたが本来いるべき場所はそっちじゃないよ」って「呼んでる」ニュアンスなのかなぁ。

脱出

そうしてただ暗い闇の中に留まっているところへ突然「もうひとつの遥か遠い時空からやって来た欠片」だと思われるものから力強い鼓動が「聞こえ」温かい力を「感じ」懐かしい「匂い」が繋がり「1本の糸」のようになって視界が開けると、恐らく自身の引き起こしたエネルギー爆発により崩壊寸前の研究室の中で「赤黒い霧」に守られていた彼女は「さすが小さな爆弾だ」とおかしそうに笑うシンの姿を視認する。

シンはカプセルの中から引き出した彼女を力強く抱き留め膝をつき「今回は目を閉じるなよ」「俺たちがどうやって脱出したのかよく見て覚えておけ」などと告げるや否や「まるで背後を支える悪魔」のように見える強大なエネルギーをまといながら「地の底から一直線に飛び上がる」と言うのだけど、か、かっこえぇぇ(拝

苛烈な爆発により地面に大穴を開けた闘技場に彼女を連れ戻したシンは赤黒い霧で締め上げたヨミに「取り引きは完了」であり「魂を差し出してもらう」と言い渡すが、どうやら彼は14年前も同じようにカプセルに閉じ込められていた幼い彼女の元へ現れヨミには「もう一度彼女をここへ連れてくる」ことを約束し「脱出」に至っていたらしい。なるほどだからヨミは確信したように長らくガイアで彼女を待っていたのだな。と言うか、無主の地シンは災変後すっかり荒れ地となってしまった「後」のN109区にやって来たのだと思ってた。実際はそれよりも「前」に来てこうしてひと仕事終えてからチンピラに絡まれたり革ジャン着てみたりし出してたんや←

彼女を「処分」することが目的であるヨミは「まだ条件が達成されていない」と声を荒げるが、あくまで「連れてくる」ことに同意しただけで後のことは知らないとシン。彼女を「自分たちの思い通りに支配できる子どものまま」だと侮りその「成長」を軽視していたのはヨミの落ち度であり「契約を破っていい理由にはならない」と言うが、もしかして「彼女を成長させるな」たるハンチングの助言も「懐柔することができなくなる」という意味合いだったのか…?

両者の主張からヨミは「もう一度彼女をここへ連れて来るならそのときは魂を捧げる」といういかにも「悪魔との契約」らしい取り引きのもと彼女の「処分」が済んだ後は自分も命を失う覚悟だったのかな。新約聖書におけるヨミ(陰府)はハデス(冥府)と同義であるが翻訳によっては「冥途」つまり本来「カロン」の居る場所が「ヨミ」とこちらとは互い違いになっていたりするのだが、懺悔を望んでいた彼はその名の指し示す通りこれにてようやくそれができる場所へ下ったのだと解釈しておこうかな。

赤黒い霧に呑まれついに姿が見えなくなるヨミ、そして重い爆発音を轟かせながらじき完全に崩れ落ちるであろうガイア研究センターに想い馳せながら、そこにはとある片隅で泣いたりとある机の前で大笑いする幼い自分の思い出がたくさん詰まっていたのかも知れない、自分を宇宙から来た異質な生命体だと意義付けていた多くの研究員たちにこの子はただの無邪気な人間の子どもなのだと思わせる瞬間があっただろうかと物思いに耽るも、一方でこれほどの爆発を制御できない自分は事実「災い」であり時が来れば本当に全てが「自分の魂と共に消滅する」のだろうと傷心する彼女、シンは「悪いがお前の魂に勝手に消える権利はない」「この場所この星に限らずお前と俺は永遠に繋がっている」だなんてさらりと告げてしまうのだが、か、かっこえぇぇ(二度目

帰路に就くふたりは「チェーン回路」で繋がれているみたいなので恐らく地上へ逃れる際に今回も彼と「共鳴」したことで彼女の記憶はまたひとつ蘇ったのだろう。いずれにしろ改めて現世シンが彼女に思い出して欲しいのは「魂を交換し合った竜」のことではなくあくまで今世の彼女が忘れてしまっているらしい過去のあれこれなのだろうな。

いまいち理解できていないのが、彼女は「もうひとつの遥か遠い時空からやって来た欠片」もといかつて別の世界で彼に捧げた「半分の魂」たるエーテルコアの力があればそれまでの記憶を失うことなく戻って来られるって話なのかな? 結局「深空エネルギー衝突カプセル」と「観察用キャビン」が別物なのか同じものだったのかは分からんが、仮にヨミが試みていた「エネルギーとして深空に返すこと」が「心肺蘇生実験」とはまた違う手順なら「その場で生き返る」のか「別世に転生する」のか結果が異なるのはなんとなく理解できるとして、14年前の彼女が今回と同じようにシンに連れ戻してもらっていたならその記憶をもろとも失っていたのはどうしてなんだろう。脱出については「目をつむってたから」見えてなかったものとして、それ以前の記憶は? エーテルコアの「散逸」がどこで起こったのかも判然としませんな。

宇宙闘技場

基地に戻り丸三日間眠っていたらしい彼女は闘獣ゲーム「延長戦」が間もなく終わる頃に目覚め、跡地は崩壊したのになぜまだ試合が続いているのかと聞けばそこには「一部の人間にとって重要なものがまだ隠されている」ためなのだとシン。ただしその「重要なもの」は実はメフィちゃんがこっそり持ち帰ってきてて、そうとは知らない「一部の人間」たちが参戦するそれには「あいつらには余裕」であるアキラとカゲトが出向いているのだそう。もちろん誰がくすねたのかと騒ぎ立てられれば面倒くさいし事後処理としてボスに頼まれて行ってるのかも分からんが、前章シンを訪ねたEVERの端くれ者を「お前たちの好きにしていい」と言われ嬉として「掃除」に出掛けて行った双子を思い返してみるとふたりはこういうのが根っから好きで常に自ら名乗り出てるのかも知れんな(殴

ちなみに「重要なもの」とは「ガイア研究センターの生体認証キー」らしいのだが、これはいわゆる指紋や声のようなわたしたちが良く知る認証キーだと思っていいのかな? それを欲する「一部の人間」と言うのも実態が気になる。アキラとカゲトが朝飯前に一掃できるくらいなら本当にどこぞの「ハイエナども」だと思っていていいものか。

そしてこの辺がまた物凄く重要ぽいんやが、彼女は今回シンとの共鳴でかつて幼いふたりが「深淵よりも混沌とした宇宙の星雲の間に位置する壮大な闘技場」において「ワンダラーや人造人間みたいな怪物たち」とひたすら戦い合わされていたような情景が脳裏に現れたと言うのだよね。幼いシンは毎回彼女に「自分と組んで欲しい」と申し出て、彼女の方は「ポイントを横取りするから嫌」だと渋るのだが結局息ぴったりの共闘ができるため「次にポイントを奪ったらタルタロスに投げ込む」なんぞ釘を刺しつつふたりはいつも手を取り合っていたらしい。

そうやって勝ち残った最後のペアになったとき、「勝者はひとりだけ」だとの闘獣ルールに則り観客たちからは「最後の一騎討ち」を望む狂ったような歓声が湧き上がるのだけど、シンは始めからそう決めていたかのように躊躇なく彼女には「一緒に逃げないか」と提案、すると場面は一転し今度は「あらゆるエネルギーを消し去る深空トンネルが私達を引き離した」と言うのだが、これは彼女が「枯渇することのない宇宙エネルギー」としてガイアに突如現れる直前まで起こっていたこと、なのだよな…?
えっもしかしてこの謎の闘乱が地球から見れば「深空エネルギー」の「衝突実験」なの? (錯乱

次の追憶では少年は青年へと成長した姿で荒れ果てた研究室の中に現れ「拳でカプセルを破壊した」そうなのでシンはどこかその「深淵よりも混沌とした星雲の間」で彼女と共に過ごし彼女と引き離されてから何らかの理由でひとり「時空監獄」に囚われさらに脱獄して略奪して船に乗ってこの場面に至っているのだろうと思うのだが、いいのか一旦そんな理解で…

咀嚼し切れてないが、ますます星を擬人化した神話のような物語じゃないか? 「ワンダラーや人造人間みたいな怪物たち」については何とも言えんが「地球」みたいな惑星は人間でいう少年少女のような「小惑星」たちがまさにこうやってぶつかり合い削り合い最後には「生き残った勝者」とも言い換えられそうな「新たな天体」として誕生するのだと聞いたことがあるし、この闘技場も宇宙のどこかにある「神の住む場所」だと言われればそうなのかも知れんと思えてしまうよな。

ついでに言うとマヒルと彼女が破壊と新生を入れ替えたまるで「アダム」と「キリスト」のような関係であるように、「サタン」たるシンにとっても彼を唯一討つことができる彼女が「運命の宿敵」という役割においてはちゃんと「キリスト」になっているのが対比的で面白いなって思ったよ。

異常気象

彼女にたっぷり食事を摂らせ気晴らしになのか何か思惑があるのか「自爆することばかり考えないよう全てに勝つ練習をさせる」口実でどうやら最近お気に入りらしいVRシューティングゲームにぶっ通しで47ステージも付き合わせたシンは疲れて寝落ちてしまった彼女を部屋まで運び届け基地に戻ると双子と共に今度は「反物質武器」について探り始めていると言うが、これは息絶える直前ヨミが命乞いに漏らした「反重力は誰がもたらしたか」ってところに臨んでいるのかな?

自室で目覚めた彼女は彼によって「一筋の光も差し込む余地がないほど」ぴたりと閉じられていたらしい部屋のカーテンを開けしばらくぶりに見るその街並みが見渡す限り雪で覆われていることに困惑するのだが、どうやら近日ますます激化する「磁場の異変」の影響で地球の気候調節機能は急激にバランスを崩し各地「異常気象」に見舞われているのだそう。

2034年裂空災変が起こる前にも「極夜が3日も続く」という異常現象が見られたことから人は恐らく科学や地学、気象、天文、あらゆる見地から次に唱えられる「災変に匹敵する災厄が迫っている」だとか「間もなく地球は大陸プレートが分裂し崩壊する」だなんて「終末予言」に関心を高めており、中でも「生命の大掃除」や「高次元文明からの俯瞰」といった一見オカルトチックな解釈が今はもっとも世間を騒がせているらしい。

これ、とってもよく分かる。
小学生の頃「ノストラダムスの大予言」なんてものがクラスでめちゃくちゃ流行ってな。夏休みが始まる前にみんな滅亡しちゃうんだーと当時は相当慌てふためいたものよ…(アホ
理論や実験に基づき未来を予測する偉い人がたとえば核戦争や環境汚染で何年以内にこうなるとかって人類絶滅の可能性を警告してもあんまり危機感覚えないのに占星術師みたいな人が「1999年7の月、」とか語り始めるとむっちゃ怖いのはなんでなんだろうな←

彼女は恐らくEVERの目的とはこのままではいずれ限界を迎えるであろう人間という生命形態をこの飛躍した文明に合わせて「適応進化」させることなのではないかと考え至るのだが、ははーんようやくちょっとイメージ湧いてきたぞ。「枯渇することのない宇宙エネルギー」による「永遠の命」はもちろんのこと、彼らは人類をまるで「人の意識や知能を持ったワンダラー」のような生物に改変しようとしてるんじゃないか? 物質的な肉体じゃなくエネルギー体のように飛散したり聚合して実体化したり変化自在のメンテナンスフリーボディになりついでに宇宙にある自分の意識エネルギーも全部取り込めるのが次の人類の存在様式、みたいな。いやさすがに突飛過ぎるかw

極地科学研究

休職期間が明け仕事に復帰した彼女は退勤後に臨空大学へと立ち寄り「生命の境界」たるテーマで特別講義を終えたレイのもとを訪ね「古びた封筒」を受け取った。ガイア研究センターの生体認証キーに刻まれていたらしい「謎の模様」はどうやらファン院長の「極地科学研究」が解明を試みる「古代文明」に関わるものだそうで、14年前「極限の生命」を探索していた調査チームがある「氷の洞窟」で記録した調査日誌にそれらしい記述が残っていたことから資料として提供してもらえることになったのだそう。

氷の洞窟へ赴いたメンバーの中には不慮の事故で消息不明になった人もいれば後にUnicornチームの一員になった人もいると言い、レイも「私に調査を頼んだ内容からすると確かに世界の存亡に関わる重大な秘密と言える」だなんて言ってるが、一旦EVERは深空信号解析の結果「高次元生命:神言者」にはその洞窟で接触できるだろうことを探り当てていたのだね。すると保存された生体情報とはレイと一致してしまう展開、なのか…? 消息不明者は? 文字をもとに築かれた世界フラクタル図書館へ…? (いいえ

再び仕事に戻ると言うレイと残照を踏みながら雪の積もった通りを歩くその道中「Akso心臓外科の内幕を暴く」「医者は人を殺すのか救うのか」なんぞ名誉棄損甚だしいニューストピックスが耳に入るのだが、レイは近日社会的権力を行使するある役人に「コア介入症にかかった自分の子ども」を優先的に治療するよう要請されるもこれを断り緊急性の高い別の患者を先に診に行ったことで反感を買い根拠のない噂や悪評を流されて良くも悪くも話題の人になっているもよう。エンさんいわく「Aksoにも誠実なメディア仲間がいるから本当に世論戦になったとしても負けることはない」らしいのだが、逆にこっちが先に訴えることはできないの? とても腹立つのだけど(短気

彼女は大学でちらり覗いた彼の講義で受講者の誰に何を言われようとも「医学の目標は病気の克服であり死の克服ではない」とその確固たる信念を貫き学生たちに仰がれる様子や自分が取り沙汰されたあらゆる不当な批判に耳を傾ける素振りも見せない様子に「どんな難題に直面してもあなたが左右されることはないみたい」だと安心感を覚え、反対に「悩みを抱えているような顔をしている」が何があったかと問われ「長い話になるならこの道を往復してもいい」だなんて促されたことで「N109区で経験したこと」を思い切って全てレイに打ち明けてみる。

自分の誕生の経緯までつぶさに話し終えた彼女は「こうして道を歩いているとなんとなく変な感じがする」「ぼんやりする」だなんて溢していたけれど、思い返せば秘密の童話レイも「時自分がどんな場所にいるのか分からなくなることがある」と話してくれたよな。「この身分を剥ぎ取ったら私がこの世界に来たことや存在する意義とは何か」と呟く彼女にレイは「いかなる身分もただの一時的な役割であって人の存在意義そのものではない」と即答するのだが、これは自分に言い聞かせているようであり自分が欲している言葉でもあるかのように感じられてしまうな…

「いつか私が本当にこの世界を破滅させたらどうするか」と問われ「未取得の休暇を全て消化するからその前に声をかけて欲しい」なんぞ肩の荷が下りるような答えをくれるレイ、実は彼女に贈りたくて選んで買ったマフラーを渡す口実が見付からず持て余していたらしく「お前の不思議な生い立ちを知ったから」と徐にそれを取り出し彼女の首元に巻きつけながら「お前がこの世界に来たことへの祝福にしよう」だなんて言い出すんだけど、泣かせるのはやめておくれよ。涙

異化者

最後がめちゃくちゃ嫌な感じなんだが、取り敢えずAksoの現院長って「テス」って名前だったんだ。
どこかに登場してたっけ? (記憶喪失

レイはテス院長にアーテーの泉医療プロジェクトへの参加申請を提出するもなかなか承認が下りず、ファン元院長に相談したところどうにか説得してもらえたみたいでようやく受理されて急遽「明日出発する」だなんて言ってるんだけど、これは4部1章「秘密の用事」のために天行市「ヴィロ医療センター」なる機関を出入りしていたその時に掴んだ何か決め手のようなものを携えひとりアーテーの泉に立ち向かおうとしている、みたいなことなのかな。彼女には「しばらく離れる」とかってだいぶカジュアルな感じで一報入れ「Maltosio」なる菓子店に立ち寄り「1ヶ月間」彼女の自宅へスイーツがデリバリーされるよう手配していたりするんで「1ヶ月で片を付ける算段」なのだろうとは思うんやが…

彼がスマホのメモに残しているらしい「悪夢の記録」についてもなんだかとても気になる。最初の夢は12歳で初めて見たという「黒い氷柱を生み出す雪山の死神」の夢だよな? 2番目3番目の夢はそれぞれ長恒山トオヤ先輩って書いてある。4番目の夢が黎明レイの夢、そして最新の編集記録は14番目の夢「断片的な記憶しかなく何も覚えていない」って残されてるんだけど、レイ、何も覚えてないんだ。それたぶん、どこか暗い病院の廊下であなたの手の平から生まれた黒い結晶が彼女に及びその喉を貫きそうになる夢だよ(触れてくれるな
この「14番目」ってのが今世彼女の「心肺蘇生の回数」と恐らく同じなのも何か意味があるのかなぁ。

そうしてすべての雑務を終え車で帰路に就いた午前2時頃、レイは突然道路に侵入してきた歩行者の影に気が付き咄嗟にハンドルを切ったことでガードレールを破り緑地帯へ突っ込んでしまうのだが、よくよく見るとこの歩行者、ここのところ「晴空広場」や「環玉公園」に出現し始めているという新たな怪物「異化者」なる個体とそれに追われる「男の子を抱きかかえた母親」なのだよね。

異化者の方は人間の服を着ているが人間とは認識しがたいワンダラーとは似て非なるもの、4部2章天行市で掃討されていた「実験体」が「異化寸前」と呼ばれていたことから無論「コア接触」をさせられた元人間で間違いないのだろうが、皮膚からは「異物」が飛び出し瞳は不気味な「青色」に染まっているというその風貌はどう見ても黎明の「病変体」である。

レイは手の中で凝結した氷霜を鋭い棘に変え迷いなく異化者を貫き襲われかけていた親子を助けるもその氷には「闇夜の色」が絡みついていると言い、さらに月光に照らされた彼の「無機質な目」はまるで死神が夢から目覚めたかのようだなんて言うが、これも「何の感情も映らない無機質な瞳」をしているらしい黎明のレイそのものではないか…?

母親に「私の子を助けて欲しい」と懇願されたレイがすでに身体を結晶に覆われ「いびつなガラス彫刻」のようになっているその男の子を一瞥し「その子はもう助からない」と冷たく言い放ったところで次章へと続くのだが、なんだろうそうであって欲しくなかった方へめちゃくちゃ繋がってしまったような気がする(絶望

世界の深層フラクタル図書館では医療倫理や自然摂理のような「神の定めたもの」に背くことなく結晶感染を治療する「医者レイ」こそが神の使い「預言者」なのだと解釈してしまったが恐らくこれは真反対で、たぶん「黒い氷晶で異化者を一掃し病果を取り除くレイ」こそが本来の使命「神の道具」を全うする「神言者」たるレイなのだろう。

黎明レイの物語は「図書館」で読む限り彼が世界で唯一の生存者となり最後の「遺体」が完全に風化し虚無へ帰するのを待って最終的に自らも「消滅」するという結末を迎えるがそこに彼女が存在しないことや夢の中で認識する彼女をまるで知らない人であるかのように感じていることからひょっとしたら12歳の彼が「Evol暴走(アスタの力)」に従って彼女を世界から取り除いたのか抗って取り除かなかったのか、その地点に「神の本意ではない分岐」が生まれてしまっているのかも知れない。

月下の黒き棘夢の中に現れたアスタも前章極地に現れた少年も神の望む本来の「黎明レイの物語」へ戻ろうとしない医者レイが「無神論者」となって図書館を留守にすることに罰を与えたり連れ戻そうとしたりしているんじゃないか? そしていよいよ彼らはレイがその「強い信念」だけでは逆らえないところにまで強引に迫り来ているような気がする(震

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