5部4章 黎明に消える雪
これまた私的で偏った感想になりますが、今章言わんとすることは改めて「わたしたちは科学の力でどこまでできることを増やしていいのか」ではなくて「ついに科学によってできないことはないという世界になったときそれぞれが何に基づきどんな選択をすべきか」なんじゃないかと感じました。
無神論者であり医者であるレイが実現しようとする「本来の自分の意思による選択」とはドイツ哲学において「人間が自己の存在を積極的に選びこれに責任を持って生きること」を意味する「現存在」という概念と同義であり、実存主義者ハイデガーはこの「現存在」が「時間という檻の中」で認識されることによってこそ確立できるもの、つまり人間とは「死」に向かって生きる存在であると同時に「死」を意識することで「本来の自分の意思」を確立できると説きました。
いかにして生きるかを考えるということはいかにして死ぬかを考えるということ。命の意義を問われるということは死という観念を問われること。メメント・モリの哲学的解釈もまた然り。誰よりも「本来の自分の意思による選択」とこれに伴う「責任」を重んじるレイは同時に誰よりも「死」の何たるかを理解しています。
重要なのは「死」は決して「経験」ではなく「観念」であるという点です。ルネサンス初期の思想家ペトラルカや哲学者ニーチェなど多くの人文主義者がキリスト教における死の観念「原罪」を「病気」という感覚に置き換えて捉えますがこれは誤りで、罪がすべからく観念的なものであるのに対し病気はまだ生の一部であり現象的なものです。平たく言えば「死を経験しながら生きている人はいない」ということですね。
観念的な死とは、たとえば日本神話のような黄泉と常世の死生観を持つ人にとっては「穢れ」となり、東洋の思想においては「無常」の一部であり「摂理」であり「循環」になります。ある人にとっては「苦痛」や「悲劇」かも知れないですし、逆に熱心な宗教者は「召天」や「始まり」だと語るかも知れません。もちろんそのどれにも当てはまらない「消滅」や「途絶」だと言う人もいるでしょう。
命の意義が宗教や科学の視点だけからでは捉え切れないように、死の観念にも「教義的に正しくない」だとか「科学的に間違っている」ということは起こり得ません。大切なのはそれによって「目を逸らしてしまいたかった」未知なる死が「向き合わなければならない」よく知るものに変わることであり、これは自分にとってどれがいちばん「恐怖」でなく「慰め」になるのかを模索する作業とも言えます。要するに「死という観念」は誰にとっても同じものではないその人だけのもの、だからこそ「これを迎えるまでどう生きるか」は「本来的な自己の確立」になるわけです。
でも、当たり前だけど「死」は必ずしも「自分だけのもの」ではないのだよね。「死という観念」は自分だけのものなのに「死」は自分だけでなく誰にでも訪れる。フランスの哲学者ジャンケレヴィッチは死を「三人称の死」「二人称の死」「一人称の死」に分類しましたが、これらはそれぞれ「見知らぬ人の死」「身近な人の死」そして「自分自身の死」と言い換えることができます。
わたしは出産を経験し母になったことで我が子という「二人称の死」を想像してみたとき初めて死がこれまでの観念とはまるで異なるとても恐ろしい未知なるもののように感じられました。今は成長と共にようやく彼らにも彼らの観念的な死が存在することを理解し始めてますが、特に子どもたちがまだ小さかった頃わたしの「現存在」は覆っていたと感じます。仮にあの当時「我が子の命が脅かされるような事態」と対面していたら、わたしは「本来の自分の意思による選択」をできていなかったかも知れません。
神にさえ屈しないレイが「彼女の死」に直面しついにその強い信念を解体し自問自答に至るように、脅威的な力が大いなる選択を迫るとき存在者が自己の在り方を決定する「本来の自分の意思」とは決して誰にとっても揺るがない完璧なものではないという誡めか、あるいはわたしの「現存在」は何によって脅かされどこに迷いや何者かの強制力が及ぶ隙があるのか改めてその自覚を促されているような気にもなりました。
前にもどこかに同じこと書いた気もするが、レイの物語は医療SFのようでどこか権威ある聖典や啓典のようでもある。考えさせられますねぇ。
完璧な生命形態
ヴァール療養院プロジェクト責任者のショウジとはかつて優秀な医者として奔走し長恒山奥地での戦いでは「新人の指導役」を務めていた人物だったらしい。終わらない冬当時医大を卒業したばかりの新人レイとは「一度顔を合わせた程度」だと言うので恐らくレイが派遣された駐留地で待機していた「新人医師」の方ではなくトオヤのいたEvol特殊救護部隊に属する「新人軍医」の指導役だったんじゃないかとは思うのだが、何やら諸事情により途中で離脱したそうなんであるいはレイやファンとは入れ違いだったのかも知れん。
案内役にショウジが加わったところでふたりはいかにも真正性のアピールなのだろう一点の曇りもない真っ白な大理石が時間の経過さえも固めているかのような1階のロビーから早速「新生の繭」が完備された病室のある見学フロアへと案内されるのだが、エレベーターが上昇するごとに外の景色は白から緑へと変わっていき、アーチ型の大きな窓からは草木が茂り大樹がそびえ紺碧の湖が広がる「生命力に満ちた庭園」に設けられた半月形の回廊を「のんびりとした楽しげな雰囲気」で歩く患者の姿も見受けられ、生と死の狭間から抜け出して最初に目にするのがこんな景色だったら「きっと誰もがもう一度生き直せると思うだろう」と彼女はその巧妙で徹底されたマインドコントロールぶりに呆れながらも感心するように独り言つ。
エレベーターのドアが開くと廊下の両側には半透明のガラスドアで間仕切られた複数の療養室が現れて、中を覗けば「新生の繭」がエネルギーチェーン回路の張り巡らされた台座の上で「包み込むような柔らかく温かい光」を放ち、空気清浄システムは「患者のもっとも愉悦を感じる香り」をシミュレートして再現、何もかもが生への渇望をかき立て「生きている」という錯覚を生み出すために入念に作り込まれているようであり、一方で目に映るすべてが訪問者のために綿密に設計された展示場のようでもあった。
繭による治療は7つのクールに分かれ各クール後に身体数値が劇的に改善、最終的に遺伝子と細胞の修復及び組み換えを通して「完璧な生命形態」を作り出すのだと言うが、これはヤスがレイの中止した「コア心臓介入医療法」を「ただ少し黒い結晶が生えただけで心臓はまた動き出した」ことよりも「コアを移植されたマウスが突然変異によってワンダラー化し仲間を食い殺した」事象と照合し「実験は成功」だと判断していた辺り、まじでそんな状態が「進化における拘束を克服した永遠」たる人類の新しい存在様式だと彼らは定義してるのか? (引
ショウジに手渡された複数の被験者の経過が記されたファイルに目を通したレイは「これまででもっとも成功した実験品」らしい新生の繭がその目算をほとんど達成できていないどころか細胞変異の過程で制御不能に陥り異化者と化す可能性が極めて高い「完成には程遠い」ものであると指摘するが、ショウジはまるで人の生死が懸かっているとは思えない軽い口調で「レイ先生の協力を得て成功率を上げたいと考えている」などと返答、彼女はまだ改善の余地があるならその「成功率」についてもあまねく患者に伝えるべきだと訴えるが、彼らが言うには患者も了承済みであり、そもそも病院から死の宣告をされた者がたとえごくわずかな望みでも「最後のチャンス」に同意するか拒んでただ死を待つか選択は明らかだと豪語する。
いやそれよりも「何をもって成功なのか」もしくは「失敗したときにどんな恐ろしい未来が待ってるのか」の説明が「正確であるか」が疑問なんだがな。せめて品行方正で模範的な療養院ぶるのはやめてその実態に忠実なきったない薄暗い怪しい人体実験施設にここを建て替えてもらったら同じ説明でも同意する患者は半分以下になると思うけど(舌打ち
レイはもちろん「その不可能に挑むつもりでやってきた」装いで彼らの意向を探り、一方「ガイア跡地で感じたのと同じ心臓が前へ引っ張られるような奇妙なエネルギー」を感じ取ったという彼女はレイに合図を送ると隙を見て席を外しその気配を辿り始める。記憶が正しければ彼女がガイアで感じた「心臓の鼓動とひとつに重なるような心地良い振動」に糸で引かれるようにして進んだその先にはUnicornチームの研究室があり中では「深空エネルギー衝突カプセル」がアイドリングしていたはずだが、するとここにも同じものが…?
ケーラ
その奇妙なエネルギーの気配に導かれるまま恐らく患者が入院している病棟エリアへと立ち入ってしまった彼女は「プライバシー保護のため見学者はここから先へ入れない」と巡回スタッフに引き留められてしまうのだが、スタッフが目を離した僅かな不意をついて前章ちらり紹介のあった元戦場ジャーナリストの「ケーラ」が手早く彼女の腕を引き人目を盗んで自分の病室へと招き入れ、どうやらレイと彼女の訪問はただの見学ではないと端から警戒されてるらしく「監視の目はひとつふたつではない」からと手短に、実はケーラも新生の繭による治療が患者の異化を引き起こす可能性が極めて高い危険な実験であると理解しているらしいこと、そして自分には目前に迫る新生の繭「正式発表会」を阻止するために練られた策があり「協力者」を必要としていることを打ち明ける。
間もなく「監視の目」が戻って来てしまうためそれ以上詳しく話を聞くことはできず結局「奇妙なエネルギー」の正体も探れないまま彼女もレイもこの初めての訪問を終えることになるのだが、彼女の方はこのときケーラから託された一冊のノートが「どの被験者がどのフェーズで異化者と化したのか」その様子が事細かに記録された観察日誌だったことからその覚悟を察し当日までに何とかもう一度接触を試みてケーラに協力することを決意、一方レイはこの日から有り得ないほどの速さで激増する「特殊なコア介入症患者」が駆け込むAksoの急診とヴァール療養院とを行き来する多忙な日々に追われる展開に。
正直これがまた見てられないくらいしんどいのだけど、Aksoの急患はもちろん病状が急激に悪化して痛くて苦しいのだろうし目で見て分かるほど身体が結晶に侵食され始めたら恐ろしくてたまらないのだろうがそういうやり場のない負の感情をそれぞれが心無い言葉で医者にぶつけ、かと思えば従来の治療で病状が快方に向かっている既存患者が「転院は勧められない」という忠告を聞かず「EVERが発表予定の新しい治療法を試してみたい」のだと退院手続きを進めてしまったり、またある患者には午前2時を回るまで緊急オペに手を尽くしても「死亡宣告」をしなければならなかったり、さらに小さな女の子が「私も怪物になっちゃうの?」なんて他意なく尋ねてくるのでさえ、まるで世界が「医者でありたい」レイの「本来の自分の意思による選択」を責め立てているかのような描かれ方をする。
そして明け方になりようやく帰路に就けば今度は「アスタの意思」により抹殺者となったレイが再びあの「異化者の少年」を追って路地裏へ、ただしいよいよ内臓がねじ切られるような激痛と制御できない攻撃衝動に駆られ「ついに怪物と化す前に」何度も自ら命を絶とうとするもそれができない少年はようやく会いに来てくれた抹殺者に心底安堵したかのような声で「やっぱり救いに来てくれた」のだと口にして身を委ねるのだよね。まるで「アスタの意思」こそが本当の意味での命の救済だとでも言うように。
もちろんレイにとってそれは「死神」のすることで、だからこそ抗うようにさらに医者然としてトオヤが言うには「人ひとりの命を救うことに見せる固執は域を超えた強迫行為のよう」でさえあるのだけど、もうそろそろこっちの心が折れそう(ないてる
近日そうして朝から晩まで家を空けているレイに代わり彼の部屋で十七のお世話をしているらしい彼女、あの見学日以来久々に彼の帰宅時間に立ち会うことができ好機とばかりに「これからケーラの計画に協力するつもりでいること」や「そのためにどう手筈を整えるか」算段をつけ始めるのだけど、レイは話の途中で彼女に抱きついて「寒い」って言い出すんだよ。涙
それはまだ辛うじて「自分の意思」で自分を決定付けられているからこそ「アスタの意思」たる黒い氷が「寒い」と感じられるってことなのかも知れないし、そんな「自分がどんな場所にいるのか分からなくなる」ようなときにこうして彼女の温もりを確かめ温めてさえもらえばこれからも「あるべき自分でいられる」って言ってくれてるのかも分からんが、彼の抱擁はとても軽いもので「まるで少し触れただけで何か脆いものを壊してしまうのではと恐れているかのよう」だなんて言われたらきっと彼は間もなく自分が自分でなくなり「彼女を壊してしまうのだろうことを予感してる」って意味での「寒い」に聞こえてしまうじゃないの…
この日は「もう話はおしまい」にして黙って彼を抱き締め返して「疲れてるなら休んで欲しい」と言う彼女に促されるままようやく彼は一息つくことができたのか、後日改めて続きを話したときには「ここ数日で初めて」の「柔らかな表情」を見せてくれたと言うんでなんだか嬉しくて思わずスクショしてしまったわ。

彼女はEVERが約36時間後にリリース予定の新生の繭「発表会」を前に再びケーラの病室へ潜入し指示を仰いで行動を起こすまで、すでにプロジェクトの中核に片足を突っ込んでいるレイには事がスムーズに運ぶよう裏で動いていて欲しいと申し出て彼もそれを承諾、ふたりは彼女がハンター協会から拝借してきたという武装隊ノゾミ先輩がEvol「ミクロ改造」をいかんなく発揮して開発した「米粒サイズの隠し通信機」を互いに装着した状態でもう一度ヴァール療養院を訪れる。
胡蝶の夢
思わず声を上げて反応してしまったんやが、彼女はカロンでヨミが常用していたあの「生体情報を隠すことができるステルス型IDコード」をまさかの頂戴していたんだな。おかげでそこら中に設置された監視カメラに一切感知されない状態でケーラの病室へは10分で辿り着いたと書いてある。これってどこにでも使えるもの? それならこっそり侵入して調べておきたいところが天行市にもたくさんあるのだけど←
現在「もっとも成功している症例」であり世間からの認知度信頼度ともに申し分ないケーラは発表会には被験者として同席予定のため今日はその前の最後の「検査」を受けに再び繭に運ばれることになっているのだと言うが、彼女にはそのタイミングで恐らく院内どこかに存在するはずの「繭のエネルギー供給源」を特定し切断してきて欲しい、そうして繭の設備や自分という症例に問題が起こればEVERは狙い通りのアプローチができなくなるはずだ、というのがケーラの目論見らしい。
彼女はその「供給源」なるものが恐らく先日感じた「奇妙なエネルギーの気配」で間違いないのだろうことを悟るも「そんなことをすれば繭と直結したケーラの身体や意識にどんな影響が及ぶか分からない」ため「それはできない」と言い切って、なんとかケーラもここから一緒に連れ出せる手順はないかと模索するも「これがベストな手段だと信じて実行して欲しい」と頑なに言い張るケーラ。
ここもいろいろと考えさせられてしまうのだが、実はケーラは始めからこの「アーテーの泉医療プロジェクト」の隠蔽された事実をつまびらかにするべくここへ潜入してきたわけではなく、かつては戦場ジャーナリストとして戦地で命を捨てる覚悟さえしていたはずがいざ余命宣告を受け死を直視すると「幼い娘との別離」がとても受け入れ難いもののように思えて「馬鹿げた話だと分かっていたのに」どこかで信じてしまいたくなり「新生の繭」臨床実験の被験者となることに同意してしまったのだと言うのだよね。
しかし繭に入るたびケーラはある「夢」を見るのだと言い、それは始めは無事に健康な身体を取り戻し娘の成長を傍で見守りながらその人生のあらゆる大切な瞬間に母として立ち会うというまさに「願いが叶った未来の人生」であるかのような幸せな夢なのだけど、ついに結婚式で花嫁姿の娘を抱き締めたその瞬間ケーラは愛娘の瞳に映る自分の姿が恐ろしい怪物であることに気が付き我に返ると自分の手で「娘の首を絞めていた」と語る。そして「胡蝶の夢」とは「荘周の夢なのか蝶の夢だったのか」なぜかそんな逸話を何度も想起して長考するようになり、終いに自分が何者であるかさえ分からなくなったらまるで世界そのものが自分の「繭」のようなものだと考え至ったと。
これはそもそもわたしが「胡蝶の夢」を正しく理解できているのか怪しいところではあるが、仮に「娘を抱擁することができる本来のケーラ」と「それができない怪物の姿となったケーラ」どちらがどちらの夢を見ていたのか「分からなくなる」という現象は「夢から目覚めたケーラ」が両者を物化する「人間の視点」を持っているためであり実際には「荘周の夢」も「蝶の夢」も同じ時間軸に統合される「万物斉同」つまり「人間の認識を超越した境地からみれば区別されない」ことを説いた逸話の例示なら、「夢の中で抹殺者になる医者レイ」と「夢の中で医者になる抹殺者レイ」もまた「高次元生命の視点からみれば同一であること」を示唆しているかのようである。
恐らくケーラはこれまで「戦場ジャーナリスト」として常に「死」を意識することで「それを迎えるまでどう生きるか」本来的な自己の確立に至っていたために「万物斉同」とは実に「世界そのものが繭の中のような状態」であると感じられ、最終的にたとえ命と引き換えになっても今回この策を「人生最後の戦場にする」という「本来の自分の意思による選択」を決断したんじゃないか、とは思うのだけど、すると逆にこのまま「新生の繭」による精神や意識への干渉が長らく続いていたら何やら「過去現在未来すべての地点の自分が全員同じ意識を持っている」風である「高次元生命」なるものに到達していたかも知れないって話なのかな…
ケーラの治療がどこまで進んでいたのか分からんが、繭の最終クール「遺伝子と細胞の修復及び組み換え」にはコアエネルギーだけじゃなくたとえば培養されたリモリア人の不死化細胞LCMECsだとか5部2章ガイアであわや「遺伝子抽出」的なことされてたっぽい「未来生命:ロールバッカー」や「高次元生命:神言者」の何か遺伝子的生体的特徴の一部も組み込まれるようなイメージだったりするんだろうか(震
供給源
彼女はケーラの説得に迷いを払拭し「次元コア」の力を使って「繭のエネルギー供給源」の気配を探り始めるのだけど、今回5部1章あのエーテルアイの模造コアのような「信号の中枢」を探っていたときにはあまり詳しく語られなかったそれが「視界が波紋のように揺らぐ」だとか「漂う意識がいくつもの空間を通り抜けていく」ような感覚を伴う力であるらしいことが描写されていたりする。これ今のところ特殊なエネルギーの源を突き止めるダウジングマシンのような用途でしか見てないが、やろうと思えばモリトのように「秘密基地」に隠れたりもできるのかな?
辿っていくと「院内と中庭を繋ぐ廊下」の突き当りが「壁と同化したような隠しドア」になっていて、押し開けてみればその向こうは人の気配のない探査器も反応しないただ静寂に包まれた「森」のような場所であり、「曲がりくねった小道」に沿って歩くと「古風で優雅な雰囲気の建物」が建ってるだなんて言うんだが、これは「次元の交錯する場所」に建つ「フラクタル図書館」とまるで同じ構造だな…(怪
放たれるエネルギーの強さからその「古風で優雅な雰囲気の建物」内に「供給源」があることを確信した彼女は恐らくそこは上役だけが出入りする場所なのだろうことから「もし可能なら念のためヤスかショウジの通行権限を手に入れて来て欲しい」とレイにお願いし、一方これを受けたレイは偶然にも「邪魔が入らず落ち付いて話せる場所」でヤスとふたり密談中であり、以後「完膚なきまでに論破され氷漬けにされたヤスがまるでそのついでみたいにノールックで通行証を奪われ最終的に氷の中に閉じ込められたままひとり放置されることになる」というとても爽快な展開が待っていたりするのだが、個人的にはこれまでのヤスへの印象が大きく変わってしまうなかなか印象的な一幕でもあった。
療養院にレイが来てから「新生の繭」の性能やデータは目覚ましく改善し上機嫌なヤスはまるで高慢な創造主のように庭園に行き交う人々を瞰視し「俺達の成功は目前だ」なんぞ高らかに講釈を垂れるのだが、現状「繭」の成功率は予測不能であり決して公にできるほど成熟してないこと、そして失敗すれば「欠陥品」として処分される彼らは「昔あなたが全力で救おうとした患者たちだったはず」だとレイが諭すと冷や水を浴びせられたように声を落とし「思い出させてくれて助かった」「かつて自分がどれほど無能な医者だったか忘れるところだった」なんぞ語り始めたりする。
自分たちがこれから乗り越えようとしている「死」とは「全人類にとっての難題」であり、かつて無能な医者だった頃この手の中で死んでいった命が許されてきたのと同じように今実現のために「犠牲」が必要なら恐れず決断すべきであると。話の流れから恐らく心疾患を患っていたわけでなく臨床実験のためなのだろうとは思うがいずれにせよヤスの心臓は現在「他人の心臓」なのだと言い、そうして犠牲のうえに生きている自分は誰よりも「死」というものをよく理解しているはずだと自負しているもよう。
それは「命を救うためでも人類を救うためでもなく自分が死に直面した時の恐怖と虚無を埋めるためだ」とレイが指摘してくれてようやく気が付いたのだけど、そうかヤスは死が怖いのだな。それが「いつか自分にも訪れるもの」であることを正視できないから「克服できるもの」だと意義付けて挑もうとする。そうして死と病気とを混同したまま医者になってしまったのだね。なんか、誤解していたよ。君は極度のナルシストで「生死を決める者」たる自分が「永遠に存在し続ける」世界にこそ価値があるものと始めから信じ込んでいたものかと(殴
ちなみにヤスは「院内には独立した6つの供給システムがある」ため「単にプラグを抜くだけじゃ繭のエネルギー供給は遮断されない」なんて言ってたが、これは彼女の辿り着いた「森に隠された供給源」から「院内6ヶ所」にエネルギーが振り分けられているニュアンスなのかな? もしかしてこの「古風で優雅な雰囲気の建物」も上から見れば分配器の線分が「六芒星」のように張られているんじゃあるまいな(深読み
白い墓場
レイがこちらに向かってくれているらしいことを確認すると彼女は思い切ってその「古風で優雅な雰囲気の建物」にひとり立ち入ってみるのだが、中は「ドーム状のガラス天井から光が注ぐ凝った装飾の施された大広間」となっており見たところ吹き抜けに階段を設けた洋館のような造りになっている。ただし上り階段の手すりに触れれば一瞬にして色彩を失いそこはただただ一面真っ白いまるで「白い墓場」のような空間に様変わりすると言うのだよね。そしてどこからともなく現れたショウジが壁に触れると再び元の大広間に戻ったりする。この後どうもその洋館風な装いは「バーチャル映像」であるらしいことが明かされたり扉や壁の位置がくるくると入れ替わることから実際の構造を擬装する目的で何か表面的な外見が投射される仕組みなのだろうとは思うんだが、この一瞬だけ現れた「白い墓場」とは何だったんだろう。それがこの場所の本来の姿なの?
ショウジは唐突にここでの実験が過去「もっとも成功した被験者」たる「彼女のような生命体」を創造するためのものであり自分はその実験による「成功作」なのだと語り出し、腕からは「結晶のトゲ」を放ち物陰から現れた「猛獣と化した数体の異化者たち」をまるで捨て石のように操り始めたりするのだが、えっそれってつまり彼女にもこれと同じことができるってこと? (混乱
彼女はショウジやこれを取り巻く異化者たちに応戦しつつ一旦「エネルギー供給源」に辿り着くことを優先し再び「次元コア」の力を使ってついにそれがこの建物の「最上階」に位置するのだろうことを突き止めるも心臓が「過負担」を起こし「焼け付くような痛み」が胸から全身に広がって意識を遠のかせてしまうのだが、駆け付けたレイが一見壁のように見える隠された一室に彼女を運び込み「限界を超えてしまった心臓のエネルギーを抑制して楽にする注射剤」を打って休ませてくれたりする。ここに来る前「あの奇妙なエネルギーの気配をもう一度次元コアの力で探ってみる」つもりだと話したとき「力を使い過ぎるなと言われるかと覚悟したがレイは止めなかった」なんて言ってのはこの薬剤を準備してくれていたためだったのか。
あまり長くは持たないという薬の効果が切れる前に一刻も早く最上階に到達したいふたりはこれを阻むショウジに「非常手段を取るしかない」と反撃の意を決するが、改めてこれがショウジの正体でありEVERの目指す「完璧な生命形態」の姿なんだな…

ワンダラーと化したショウジは轟然と倒れるも肉や結晶を収縮させすぐに「無傷の人間の姿」に戻ることができるようで、このまま続けても意味がないと判断したレイは「タイミングを見て離れよう」と提案、ふたりは灰白色の雪の霧を煙幕にしてショウジを撒き建物を駆け上がっていくが、彼女の方は「一瞬だけレイの様子がおかしかった」「黒い氷晶がぎらりと閃き瞳の奥に殺意と冷淡がよぎったような気がした」ことをなんとなく憂虞している。
分かるわたしも確かになんか引っかかった←
例によって目まぐるしく場面が切り替わるムービーシーンだったんで定かではないが異化者ショウジと対峙したとき恐らくレイは彼女の「ハンター拳銃」を一丁お借りしてるのだよね。そして人間でありながらワンダラーにもなれるショウジはたぶん「挑発」なのだろう「ハンター拳銃で人間を殺すことはできないがワンダラーなら可能」だなんて焚き附けるのだけど、レイは拳銃を放り投げ敢えて「氷柱」でこれを迎え撃とうとする。この一瞬だけ。



いろいろ見落としてそうであれだけど、この直後レイは改めて彼女とふたり並んで銃を構えていたように見えたんで、なんで一瞬だけまるで「氷で異化者を抹殺する」黎明レイが表出したかのような演出が入ったんだろうと思った記憶ある。これが本来のレイと夢の中のレイが徐々に同一化されていることの暗示だったらどうしよう。時間があったらもっかい見直そう…
エネルギー中枢制御室
最上階には冷ややかな白い廊下の突き当りにドアがひとつあり、認証端末にヤスの通行証をかざすとそこが「エネルギー中枢制御室」なる部屋であることを示す電子音声案内が流れる。繭のエネルギー源であるコアエネルギーは異化者や病変体の胸や瞳やフックと同じ「青色」に光っているらしい。これがガイア跡地で心臓が前へ引っ張られるようなエネルギーを放っていた恐らく「深空エネルギー衝突カプセル」と同じ気配を纏っているのだな?

今まさに繭の中で眠っているのだろうケーラのことをよぎらせ一瞬躊躇する彼女に代わりレイが「鋭い氷晶」でそのエネルギー柱を破壊すると程なくして煙に巻いたはずのショウジが悠然と現れるのだが、もしかしてこいつ3部1章次元コアを仕込まれたワンダラー同様建築物を消したり1階から屋上へ瞬間移動できたりするんか?
何やら遠隔で天井のスピーカーから声を荒げているらしいヤスの慌てっぷりを見てもどうやら順調に推し進められていたプロジェクトはこれにてその復元のため今しばらくの停滞を余儀なくされるのだろうが、ショウジは「こんなことをされてもEVERの牽引する時代の流れは変わらない」ことを誇示したいのか自分は「レイが頑なにその信念を堅守する理由」が「この実験の発端を生み出してしまった罪」ではなく「トオヤをその手に掛けてしまった罪」を償うためであることも、本当はトオヤを含む長恒山で結晶化によって命を落とした多くの仲間たちが「どうして異化者に酷似しているのか」その真実を知るためにここへ来たことも知っている、なぜなら彼らはみな「この実験の最初の失敗作」であり、そもそもレイの「仲間」「先輩」そして「過ち」や「罪悪感」はすべて「始めから自分が仕組んだこと」だと御託を並べるのだけど、まじ…?
ならあの山の磁場の核は異化とは無関係なの? そしてショウジは元杉徳の人間ってこと? どうして長恒山の軍医たちが対象者だったの? 「レイがこの実験を手放してしまったことによって仲間たちの死は異化者たちと同じ取るに足らないものになった」と言いたいがために彼の敬愛する先輩を抱き込んで被験体にして異化寸前の状態で傍に置いといたってこと? どんな形であれレイがいずれこのプロジェクトに僅かでも関わる気になるなら彼の心にどれだけ傷を作ってもいいし周りの人間は死んでいいって画策してたと言ってるの? あれ、なんかむかっ腹立ち過ぎて思考力が低下してる。許せない…、許せない。涙
レイは何も返答しないが呼吸のたびに首筋には「黒い氷晶」が広がって、部屋は「骨を刺すような冷気」に包まれるや否や「複雑に入り組んだ模様」を描きながら形成されていく分厚い氷に壁や床を覆い尽くされてしまうと言うが、なんだろうこれは不可抗力たる悪夢に襲われていると言うより「異化者」たるショウジに対しこいつは自分が「抹殺」すべきなのかも知れないと「本来のレイの意思」が「夢の中のレイの使命」に重なってしまったことによって起こっているようにも見える。
すると突として外に控えていたワンダラーの姿をした異化者たちが扉の氷を蹴破り一斉にレイに群がるようにして這い寄ってくるのだが、レイは「豪雨のような氷晶」で彼らの胸を貫いて一掃し、またどこからか遅れて次の大群がその死体の山を越え彼に這い寄って一掃され、どの異化者もみな「口を開けたり閉じたりしながらたどたどしい音節を発している」というのだけど、直後レイの耳元で囁かれたというトオヤの声が「お前はこれから医者として死に瀕した患者たちが最期に見せる恐怖と懇願の眼差しを何度も向けられるだろう」なんて言葉だったりすることから異化者はレイに救われたくて一挙に群れつどい「怖い」「助けて」って懇願の声を上げているってことなのだろうと思う。終わらない冬夢の中の死神が「死体の山」にした「もがき苦しむ人影」もこのニュアンスなのだろうな。
「徐々に変形して歪んでいく」というトオヤの姿や声が「俺を殺したとき最後の救いを求める声を聞いたか」問うてくるのを呆然と聞いているレイは最終的に何かを手放したかのように、あるいは何かに覚醒したかのようにそのトオヤの幻影を振り切ると今度はひと思いにショウジの胸を氷柱で貫くのだけど、ニヤニヤしながら自分に突き刺さったそれを握り潰し二言三言捨て台詞を吐いて「波が引くように後退していく異化者たち」と共に部屋を出ていくショウジ、死なないのかこいつ…(口悪
彼女は「激しい痛みをまとった荒い呼吸をしながら気を失ってしまったレイ」の元へ駆け寄りその喉元から四方へ伸び続ける「黒い氷晶」を確認し彼を「夢から目覚めさせなければ」と必死になって呼び掛けるのだけど、ゆっくりと顔を上げたレイの目元は彼女を見据えながら徐々に強張っていき、かと思えば次の瞬間彼女は突然心臓の痛みに襲われ意識が遠のいたって言うんで、わたしまじでここレイがついに彼女を「抹殺」しちゃったのだと思って血の気引いちゃったよ。
Aksoの病室で目覚めた彼女は「心臓のエネルギーが過負担を起こして運ばれた」って聞いてクソデカ溜め息漏らしてしまったわ。後から語られるがレイは制御できない力によって彼女をその手に掛けてしまいそうになるも同時に「過負担」が起こり本来のレイに戻って彼女を病院へ連れて行き目覚める直前まで傍に居てくれたらしい。言われてみれば「抑制剤の効果は長くない」のにその後も最後の最後まで次元コア乱用してたもんな。
翌日「まっさらな姿に戻っていた」ヴァール療養院は侵入騒動などなかったかのように白く清潔で穏やかで、中庭の花の茎にぶら下がった繭からは羽化した成虫が力強く空へ羽ばたいていく様子が描かれていたりするのだが、これは世界そのものが繭であるかのような自分が何者なのかさえ分からなくなる長い悪夢から目を覚ましたケーラが本来の自分を取り戻し晴れやかな心持ちであるべき場所へ旅立ったことの比喩なのかなって思ったらびしゃびしゃに泣いてしまったよ(嗚咽
創造主
彼女は病院でしばらく眠っている間長く滞っていた幼少期のレイとの記憶を断片的に蘇らせていて、それは「黒い霜に覆われたかのような冷たい瞳」をした幼いレイの手の中に凝縮した「鋭い氷晶」が自分に向かって放たれる場面であったり「氷のアザラシ」を届けに来てくれたレイが苦しそうな表情で自分を遠ざけようとする姿だったりするのだが、病室で「受理こそされなかったがレイが突然Aksoに辞表を提出した」ことを聞き、どうやら彼があの頃と同じ「制御できない力によって彼女を傷付けてしまうこと」を恐れて再び「黙っていなくなろうとしている」のだろうことを悟り、思いつく限りのあらゆる場所を一晩探して回った。
最後はもぬけの殻となったレイの部屋に取り残された十七に手招かれようやく「臨空市公共墓地」の中「自分が死なせてしまった異化者たち」が「帰る場所のない死者」となって眠るその墓碑の前に佇むレイの姿を発見する。
ここふたりのやり取りはとても歯痒くて心苦しかったな…
レイはもちろん「制御できない力が彼女に及んでしまうこと」を何より恐れているけれどかつて「逃げることを選んでしまったこと」については後悔もしていて、医者になることを決めたのは「自分が再び彼女の脅威になったときあの日のように何もできないままでいたくない」からだと過去ファンには打ち明けていたが中でも「心臓外科」を選んだのは「彼女の心臓を治したかったから」なのかも知れないし「黙っていなくなってしまったことを埋め合わせたかったから」なのかも知れないと述べ告げる。
恐らく母校天行大学「第35期医学部新入生宣誓式」でレイが代表者として宣誓した日のことを振り返っているのだろう初めて「ヒポクラテスの誓い」を読み上げたときは自分も将来はいい医者になれるだろうと思ったし「大学の食堂がリフォームされたばかりだった」らしい2040年医学部長から「試してみる価値がある」と絶賛された自分の研究の方向性を決めるのにも「迷いはなかった」と語るレイ。
きっと2041年「神言者」として召命を受けた後も「私には私の選択がある」と「神の意思」たる抹殺者としてではなく「自分の意思」である医者として病果を取り除くための実践「極地での研究」や「コア介入症治療の探求」に「多くの人を救いかつて傷付けてしまった彼女の役にも立てる」と信じて邁進していたのだろうね。
そしていまそれを揺るがしているのはやはり「夢の中の自分」ではなく「本来の自分」がトオヤ先輩を「手に掛けてしまった」ことなのだなと。彼女は「でも仕方がなかった」と反論するが、それはレイをレイたらしめる「白き心」の中にくっきりと残ってしまった小さな黒い点なのだろうと思う。一度黒くなってしまったところは真っ白には戻らないなんて言うけれど、この極微の点がいま彼に「いつか必ず彼女も手に掛けてしまうだろうこと」を確信させているのではないかな。
彼女は恐らく「そうはさせない」強い意志と「そうなっても後悔しない」覚悟を伝えたくてそれを口にしたのだろうが、自分の元を黙って離れるくらいなら今ここで「やりなよ」とはいちばん彼を恐れさせてしまう言葉だったのではないだろうか。とは言え涙声になって必死に彼を探し回っていた彼女の気持ちを想えばこれもまた胸が痛いのだけど…、彼女は真に「今日死んでもいい覚悟」であなたを愛しているのだよ、レイ!!! (だれ
ヴァール療養院エネルギー中枢制御室の復旧にはよっぽど時間がかかるのかあるいは不可能に近いのかこの日以降「異化者や抹殺者に関する噂は雪よりも速く静かに消えていった」そうだが、EVERは苦心して築き上げた「アーテーの泉」をそう簡単には手放さず永遠の命の幻想を紡ぎ続けるだろうとも語られる。
ただしそうして物質の束縛が解かれ時空の枷が外されても生命の「循環」とは真理であり、幾多の文明が興亡を繰り返す「熱的死と消滅の法則」のもといつかは地球も消え去って人類も「流刑」により追放され長い静寂の時間が訪れる、けれどもこれにもまた終止符が打たれ再び「循環」が始まるという決して背くことのできないうねりは「生命が誕生するよりもはるか昔」に「創造主」によって張られた伏線だったのだと彼女は「ずっと後になってようやく理解した」と書かれてる。
個人的にはこちらで散々語ってしまった「周期神話」に基づく「創造物を愛していない偽の神」と「内なる神を目覚めさせた人間」が破壊と新生の周期の中で「安定」や「調和」という結末を繰り返すミスラ神話的宇宙論をぎゅっと要約した文言のようにも感じられるのだけれど、一方でフラクタル図書館管理人の青年が「私達自身の小さな宇宙にとっては私達が全て」であり「未来は未知」であり「ある宇宙の主人」たる誰もが「神による決定」ではなく自分自身の「ユートピア」を実現できる世界線を理想として掲げてくれていたそれに便乗して、わたしもきっとレイが自身を主軸とした物語の主人として「本来の自分の意思による選択」によってユートピアを実現できると信じたい。それこそ「医者として」彼女の心臓から完全にコアを取り除く「新医療技術開発」で過去にもアスタにも打ち勝つ未来なんてめちゃくちゃユートピアじゃないか? (アホの感想
わたしはレイがAksoに辞表を出したこと正直少しホッとしたのだよ。しばらくは「医者のくせに」と理不尽に浴びせられる罵声からも身勝手に救いを懇願する眼差しからも彼にのしかかるすべての重荷から解放され何も届かないところでただ目を閉じて休んでいて欲しい。まじで。涙