恋と深空のんびり考察プレイ録

恋と深空のんびり考察プレイ録 - 空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

折り跡

こちらは現在DAAで操縦士教官をしている「カイト」が訓練生時代から何やら積極的に活用してるらしい「某ちゃんねる掲示板」のような深空宇宙機関匿名内部フォーラム「宇宙SNS」なるものに残されたログの断片から垣間見えるかつてのマヒルに想い馳せ、これは恐らく本編4部2章「掃討作戦完遂」の数日後になるのかな? まるで別人となった現実のマヒルを前に「結局何も言えなかった」先日の自分を静かに振り返るお話となっています。

今回もちょっとわたしがあまりにマヒルの思念ストを読み飛ばしているせいでいろんな認識が甘かったりするんだが、きっとカイトもこれまで長らく「花浦区の爆発事故に巻き込まれて」マヒルはいなくなってしまったしSNSの模型組み立てシリーズも更新されなくなったと寂しく思っていたけれど、実は怪しげな研究所へ連れ去られ「チップにより93%が改変されてしまった」遠空執艦官マヒルには彼女と同じタイミングないしその前後で再会し、生きていたことは嬉しかったけど何かが隔てたどこか言葉を選び合うような距離があり、なぜか聞きたいことを尋ねることさえできなかった、これが翌週事情を知らないツバサの目にはひとつ週末をまたいだだけでそれまでなかなか受け入れられなかったはずのマヒルの死や一緒に迎えたかった未来への未練から彼が「吹っ切れた」ように見えている、って話なのだよね?

喪失感が強烈に残る終わり方をするけれど、ぶっちゃけわたしは読み終えてこれが「みんなで笑っていた時間が今や失われた過去」でありイケクサの秘伝が「マヒルの追悼譚」であり彼らの青春群像劇が「別れの物語」だって印象では正直なかったな。もちろん前半のコメディパートと終盤のシリアスにめちゃくちゃメリハリのある構成なので「そう感じさせたい意図」みたいなものはひしひしと感じるが。

むしろ象徴化された偶像そのものである「あの頃のマヒル」をカリスマとして今も信仰する人たちがいる、たとえばそれが僅か「7%」であっても存在する限りはかつて「太陽」たるマヒルが大切に守ってきた「地球」とマヒルとの繋がりは絶たれない、仮にこの先「凧の糸」が切れ暗闇の中でその青い星がどんなに遠ざかって「もう帰れないかも知れない」と彼自身が感じても、あるいは別の形に折りたたまれ「翼の神経や筋肉を壊され飛べることを忘れた鳥」のようになってもこうして彼が「折り紙リンゴ」だった頃の一度ついた「折り跡」は消えない、それは「もう戻れない形」であることを示したいのではなく確かにまだ「その形を覚えている」のだと訴える線なのではないかなと、個人的にはそんな風にも読めました。

大変局

カイトが宇宙機関に入って2ヶ月が経った頃、とある巡航で持ち帰った探査データに異常な変動値が含まれていたことが思いがけず大袈裟に取り沙汰され最終的にはDAAがまるで10年に一度の「大変局」にでも直面したかのような騒動に発展したことがあった。
宇宙SNSにはたとえば「機関に内通者が紛れ込んでいるためじゃないか」とか「トンネルは崩壊寸前なんじゃないか」とかたくさんの陰謀論が飛び交って、中でもいちばん賑わっていたのが「折り紙リンゴ」に巡航データの全面的な分析と見解を求めるスレッドだったと言うのだけど、これはマヒルが優秀だったから解明してくれるだろう意図でそんなスレが立てられたのかな? それとも彼が持ち帰ったデータが発端だったから?

いずれにせよマヒルはこの話題について一切反応せず、代わりに「模型オタクの日常」というなんだかだいぶ濃いめな自分の趣味スレッドを立てて最新の豪華版の模型の組み立ての進捗をコツコツとリアルタイムで更新してたらしい。
もちろんこちらのスレにもその探査データの変動値について尋ねてくるようなコメントが書き込まれたりはするも、マヒルはただ一言「大したことじゃない」と返信して引き続きオタク実況を続行、するとこれがとある「煽り厨」の目に留まってしまいスレは「そんなわけがないこのままではDAAは再起不能に陥る」のだと反論の声が殺到して荒らされてしまうのだけど、折り紙リンゴはのんびりと「age感謝」なんて返すだけ。いやそういうとこだぞマヒル、バイパーみたいなもんがムキになってしつこく粘着してくるのはw

ところが間もなくとある任務でパイロットのマヒルがひとつのコアを持ち帰ってきたことで事態はあっけなく終息。長らく数値に異常を発生させていたのは実はトンネル内で機体の背面に張り付いて行動していたワンダラーであり、発見が難しかったのは磁場空間に溶け込んで鳴りを潜めていたため、それらを見抜いて完璧に対処し巡航データを無事正常化させた「マヒル」の名は機関内でも一躍轟くこととなった。

これに便乗したのが「新進気鋭の雑談王」として当時宇宙SNS沼にどっぷりと浸かっていた「舞い上がる凧」ことカイトで、彼は問題を解決に導いたその任務について「マヒルは10分足らずでこれを片付けた」のだと詳細を生き生きと陳述、最後にこれまで騒いでいた陰謀論者や煽り厨たちに皮肉を込めてか「DAA10年ぶりの大変局だなんて言ってたやつらは大げさ過ぎだった」なんて文言を残したため、折り紙リンゴを標的に散難癖つけてた煽り厨はいたたまれなくなり最後に「マヒルに感謝しろ」などと暴言を吐いてIDを削除、ただし折り紙リンゴこそがマヒル本人であることを知る仲間内からはこれが笑いのネタにされ、さらに書き込まれた渾身の暴言はシステムによって爽やかな緑の「草」のアイコンに自動変換されていたことからこれまで「クラスーのイケメン」「学部一のイケメン」「大学一のイケメン」そして「機関一のイケメン」なんて掲げられ続けてきたマヒルの通り名は「機関一のイケクサ」に進化した。

ちょっと正直おばちゃんにはそのセンシティブワードが「草」に変換されるシステムそのものにもだからと言って「イケメン」が「イケクサ」になる感性にもいまいちピンと来ていなかったりするのだが(殴、とにかく楽しそうな若者たちの陽キャの内輪ノリの雰囲気なんだなってことはとってもよく伝わりました←

イケクサの秘伝

叙勲式というものがあんまりよく分からんが、マヒルとカイトとツバサの3人が受章者であるらしいそれは恐らくはパイロットとして階級が上がるのか宇宙機関で何らかの功績を挙げたために勲章を授与される式典なのでしょう。その2日前の深夜、寮も同室である3人はツバサが調達してきた食材をマヒルが調理したらしい鶏手羽料理を夜食に囲んでいたのだけど、あまりにいい香りがあたりに充満していたために部屋の外には同僚たちによる「お椀を持って並ぶ.jpg」のような光景が広がっていたんだと。

すると何かをひらめいたカイトは全員に配れるほど量がない手羽先の代わりに宇宙SNSにて「舞い上がる凧」をフォローしてくれれば「寮の秘伝レシピを定期的に共有する」ことを宣言、大学時代からマヒルが「ショウガをおいしくする方法」や「ゴーヤの苦味を取る方法」を研究したいと言い出すたびに実験台となってきた経験値を自負する彼はこれを「バズらせる」自信があると意気込んで早速投稿するのだけど、2日待ってついたコメントはたったの2件、ただし一部始終を傍らで見ていたツバサに促されタイトルを「寮の秘伝」から「イケクサの秘伝」に変更した瞬間新着コメントの通知音が引っ切り無しに鳴り出した。

なんか、カイトって改めてめちゃくちゃムードメーカーなんですねぇ。イケクサがレシピを投稿した、イケクサがお鍋をお勧めしてくれた、そんなにぎやかしのコメントにも「投稿したのは僕だぞ」「お勧めしたのも僕だ」なんて律儀に返信するのを「お前も暇人だ」なんてツバサに突っ込まれたりして。
一方マヒルは「やっぱりイケクサはいつもDAAの同僚たちの胃袋を思ってくれている」のコメントに「オレは主に妹を思ってる」のだとつれない返事をして「家に大事な人がいるんだな」とぼやく人にいいねをつけるだけで「イケクサ様の降臨だ」なんぞ騒がれる。
この後みんなで叙勲式に向かう場面では鏡の前で制服を整えるツバサがカイトの背中側の襟を直してやり、ベッドからのんびり起き上がるマヒルは「余計なシワひとつない」なんて描写も入るけど、なんかこうあくまでマヒルは理想像でありスター的な存在、ツバサは抑制的なバランサー、活動的で発信者になるのは常にカイトなんだなって感じする。

そうして3人に名誉ある勲章や階級章が増えていくと共に宇宙SNSにもカイトの投稿するイケクサの秘伝シリーズは生まれ続けたのかな? DAAに入る新人がやるべきことは3つ、先ずは宇宙SNSの優良スレッドを読破すること、そして好奇心に勝てずイケクサはなぜイケクサと呼ばれているのか尋ねてくること、最後はいつも熱心なフォーラムの仲間が集まって経緯を説明し「変局兄さん」をさらし者にすることだと軽口を叩くカイトは、時が経っても飽きることなくしょっちゅうそんな話を触れ回っていたらしい。

あるとき危険度の高い任務が舞い込んで遂行可能なパイロットの数が足りず割り振られた数名が不眠不休となり張りつめたような空気が漂っていた休憩室の雰囲気も「この共通の思い出のおかげで確かに明るくなった」なんて書かれているが、これはまさにあの花浦区の事件が起こる少し前の時期になるのかな。
先導任務を担っていたマヒルは公認の「変態」だったらしいがそれでも短い休息のあとすぐに出発しなければならないハードなスケジュールと精神的な重圧には「まつげにわずかな疲れの影を落としている」かのように見え、少しだけ心配になったカイトが肩を叩き声を掛けるとハッと我に返り、大切なネックレスをしまって明るい笑顔で「週末は家に帰らないと」なんてなんでもなさそうにしてたみたいやが、「まさかこの時は折り紙リンゴの模型オタクの日常が部品の散らばるページで永遠に止まる日がくるなんて思いもしなかった」なんて回想されるので、もしかしたらこの「週末」がドンピシャ1部4章の帰省を指しているのかも知れんな。
そうかマヒルはこうしてネックレスを眺めながら何かを思い詰めていたのだな。オレが守らなきゃ誰がお前をと言いかけたそれはこのDAAの「危険度の高い任務」にも何か関係してたのだろうか。思えばこの週末に向けて「オレが怪我をしてたらお前が車椅子を押してくれ」なんて物騒なことも口走っていたような気がする。

そして爆発事件の後もどうやら「イケクサの秘伝」スレッドにコメント通知が来るたびにマヒルのことを思い出し食事が喉を通らない様子のカイトを見兼ねて「つらいならいっそスレを削除してはどうか」とツバサが声を掛けるのが恐らくカイトとマヒルが再会することになるちょうど前の週に当たるのだろう。

それは彼らがDAAに入って1年目に立てられた試験攻略スレッドで、合格するには極めて精確なコア技術と専門能力を要する「チェーン教官」の中間試験を満点でパスできるイケクサが「実は教官が制服の下にピンクのシャツを着ていたら合格点に満たなくとも満点がもらえるチャンス」だなんて言い出したら面白いだろうなんてカイトの悪ノリから生まれたものの、コメント欄にはいつの間にやら真面目な試験対策術が数寄せられるようになり、さらにはチェーン教官本人が登場して彼らの競争心を煽ったり、そうして何年も廃れることなく注目され続け、いまだ折り紙リンゴにメンションをつけて「チェーン教官はもう退職したがイケクサはいつ秘伝を更新するんだ」と書き込む者もいる。

カイトは冗談めかして「これは僕が宇宙SNSで立てたもっとも記録的なスレ」であり「もったいないから消したくない」とは言うけども、無理に笑顔を作っているあたりきっとそうしてみんなの中で「生き続けている折り紙リンゴ」を感じられる唯一の場を失いたくなかったのだろうと思ったよ。

遠空艦隊改革裏の真相

遠空艦隊の改革とは単なる技術革新ではなく恐らくは明晰夢「カーツ」の元にいたトム士官のひとりが「艦隊の本当の権力者さえ戻ればルイの思惑通りに事は運ばない」と主張していたその権力者がチップの注入によりどうこうされ失脚し代わりにマヒルが執艦官に着任することで言わば「艦隊が教授の駒になった」その実情を指しているのだろうと思う。

とは言え細かなあれこれは決して公にはされず、宇宙SNSでシェアされていた「遠空艦隊改革裏の真相」なる記事にはどうやら艦隊の持つ先鋭的な志向や「深空トンネルをより奥深くまで探索できる」技術誇示が淡と綴られているようであるが、恐らく元より地球を守るための防空機関たるDAAの保守的な側面と敢えて対比させるような表現にもなっており、これも艦隊が独裁的な支配性を帯び始めたために起こっていることなのか、コメント欄にはたとえば艦隊による街の規制やコアの没収が市民にはDAAによる弾圧だと勘違いされていたりするらしい現状に対する不服の声や、誰も素性を知らない謎の新任執艦官が天行での騒動を皮切りに今後DAAに対してもどんな強硬姿勢を見せてくるか分からないと警戒するような声が溢れてる。

もちろん中にはその探索深度と研究進捗から艦隊の「コアテクノロジー」を俯瞰して評価するような声もあるが、それらはたぶんDAAの入庁式などで新人たちが唱和するのだろう「畏敬の心をもって深空に臨み守護の責をもって地球を顧みる」なんて宣誓文を「もう一度唱えてこい」などと強めに戒められたりしてるんで、総じて彼らにとって艦隊とは自分たちDAAとは相反する「深空に畏敬の心を抱かない故郷である地球に愛着を持たない存在」として認識されていると読める。

スレッド内には見慣れないハンドルネームが並んでいるが、これはかつての「いつも熱心なフォーラム仲間」たちが牽引役を新しい世代へ継承したことを意味しているのかな? きっとその中の数人なのだろう若者たちが「カイト教官」と「ツバサ教官」にうやうやしく敬意を表し立ち去ると、そのうしろ姿とかつて3人で立った受賞台とを交互に眺めていたツバサが「もしマヒルがまだいたら教官になれるのは俺とお前のうちどちらかひとりだったな」とつい追憶を溢してしまったりするのだが、きっとこれまでならカイトも同じようにマヒルを懐かしむような、あるいはマヒルがまだそこに存在するかのような返答をしたのだろうね。そのどれでもなく「あいつは僕たちのことを待っててくれたりしない」などと冷ややかに即答するカイトに少し驚いた様子のツバサ。

「週末をひとつ越しただけでもう吹っ切れたのか」と尋ねられたカイトは先日再会を果たしたマヒルに本当は聞きたいことが山ほどあったのに列車が夕日を抜ける瞬間「影に隠れた」マヒルがどこか別人のように思われて結局何ひとつ尋ねることができなかったその時の気持ちを思い起こし「吹っ切れた」と答えるのだけど、そう言って一歩進んだカイトには「日の光が降り注ぐ」って言うんだよね。
もしかしたらカイトにとってのマヒルもまた「日の光」から「影に隠れ」深空に畏敬の心を抱かない故郷である地球に愛着を持たない人になってしまったのかも知れない。
最後に「互いに背を向けて」それぞれの空域ですれ違う「深空トンネルの深部へ向かう遠空艦隊の戦艦」と「巡航任務に出たカイトが探査データを携えて地上へ戻るその機体」なんかはもうそういう示唆に違いないのだろうとさえ思う。

でも、カイトが帰るその地上の管制塔がある場所にはあの日の冗談あの日の笑顔で止まったままのマヒルをまだ覚えている人がいて、それに励まされ支えられ続けている人たちが大勢いるのだよ。
地球という故郷を愛するあまり遠空艦隊への誘いを断ったらしいある新人パイロットは「航空アカデミーで憧れていた誰よりも優秀な先輩」が決まって「晩飯は家で食う」と言い残し帰っていくその家族想いな背中に倣いそんな誇らしい自分になれたのだと言うし、試用期間を乗り越えたばかりのガチガチに緊張した操縦士たちは「イケクサの模型ポーズ」をすれば硬い顔がほころんで足取りが軽くなる。
そんな笑い混じりの通信ノイズはトンネル奥で最前列を飛ぶ戦艦の受信機へはたぶんもう届かないのだけど、きっと「送信データ」が溜まっていくことに意味があるのではないか?

あ、いやもちろん「もうあの頃の自分ではない」ことを自覚しているマヒルにとってそれは呪いなのかも知れないし束縛なのかも知れないし「もう存在しないはずの自分」が今でもまだそこで笑っているかのように見えるのは「戻れない自分」を思い知らされるみたいで恐ろしいのかも分からんが、本当は誰よりもそこへ「戻りたい」彼が7%でも残っているのなら、そういう恐ろしさや痛みや苦しみが同時に「まだ繋がっているのかも知れない」という救いだし、これが「折り跡」なんじゃないかなって。

ちょっとこじつけ過ぎたかな(照
今もイケクサを愛する誰もが彼に「おかえり」を言える日がきますように。

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