空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

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雪まみれの階段

こちらのストはざっくりですが恐らく本編から半年とか1年くらい前のお話になるのかな? エピローグではレイ先生が正式にAksoの医学研究室でリーダーに着任しファン院長から主人公ちゃんのカルテを受け取っているみたいだったので。

前章孤独な灯火で学生時代のレイが任を退いたあのコアによる心臓療法の研究は結局その後中止され、かつて同じチームにいた「ヤス」という先輩が「X-Heart」というプロジェクト名でのちに杉徳医療に持ち込んでいたようですね。

これによりヤスは世界トップクラスの専門家たちの注目を簡単に集めることができる杉徳研究所の権威ある役職に就いているらしいのだけど、一方で自分自身の執刀や医術が「天才」と呼ばれるレイのそれには到底及んでいないという自覚もあるようで、どうしてもレイを杉徳に引き抜き、共にX-Heartという先端医療を発展させ臨床応用を進めていきたいと考えているみたいです。

607号カプセル電子カルテ

臨空市環玉区内にてレイが毎朝同じコースをジョギングしているらしいことを知っていたヤスは、逆立ちしてもレイを口説き落とすことはできないであろう的外れな役員たちに代わり、自らが彼を勧誘するべくしてある公園へと足を運んだ。

もう呼吸がない野良犬を抱いて「いつも一緒に遊んでくれたワンワンにクッキーを食べさせてあげたかった」と泣きじゃくる女の子の傍らにしゃがみ込み「きっと天国から見ててくれてる」「ワンワンも喜んでる」と声を掛け頭を撫でてやるレイの姿を発見したヤスは、さり気なく少女に近付き持っていたコアを見せながら「これがあればワンワンは元気に生き続けられるよ」なんて恐ろしいことを口にする。

少女を思いやるレイの優しい眼差しはコアに向けられた途端冷たいものに変わり、次に無表情でヤスを見上げると「死は命の摂理であり私達に変えることはできない」と告げ立ち上がった。

命の摂理とは決して揺るがないものなどではなく人類が自分たちを慰めるためにする言い訳に過ぎないもの、レイがあの時研究チームを抜けてさえいなければ今頃そんな枷はとうになくなっていたはずだ、などと主張したいヤスは、入念に準備しておいた「607号カプセルの電子カルテ」なるものをレイ宛てに送信、強引にレイのスマホを操作して受信画面を開くと、「この患者の心臓手術は来週の予定だが治療による副作用が大きく打つ手がない」「お前が手術してやったらどうだ」と不敵な笑みを浮かべた。

カルテに記された「異常なデータ」に眉をひそめ不快感をあらわにするレイに「見に来るだけならレイの医者としての倫理観が疑われることはないだろう」と補足するヤス。
研究所に立ち入らせることさえできれば必ずや説得できるはずだと確信しているような様子だったが、結局この患者の手術の日にレイは現れず、ヤスは「決して成功とは言えない手術」によって改めて自分と天才との隔たりを自覚するばかりだった。

X-Heartプロジェクト

しかし間もなくしてレイはついに杉徳研究所を訪れることになる。と言うのも、ヤスが送信してきたあの「607号カプセルの電子カルテ」には「スパイウェア」が仕込まれていたらしく、こんな犯罪まがいの姑息な手段を常用していてはそのうち訴えられるであろうことをレイは忠告しに来たのである。

とは言えレイが事によってはプロジェクトに参加するつもりで訪ねてきたはずだと考え至ったヤスは、自信に満ちた表情でX-Heartの肝とも言える「生命維持カプセル」が常設された病室を彼に案内し始める。

粉末薬などを封入するカプセル剤がそのまま巨大になったような外観をしているガラス製のそれは、「死を吸い出す赤いチューブ」「命を注ぎ込む青いチューブ」ほか無数のチューブが電子の光を放つ器機から複雑に繋がれており、たった1日で通常のICUの1ヶ月分の運用費がかかるんだとか。

まるでSF映画のようなその病室で607号カプセルの中に納まり薬液に浸っている患者は骸骨のように痩せ細ってしまっていて、ヤスによれば「心臓の再生に失敗して一時的に新たな心臓を入れざるを得なかった」「レイにとっては簡単な処置だっただろうに」「来るのが遅過ぎた」ってことらしい。

どんな手術を施したのかは「お前が一員になったら教える」し、動物実験などはもちろん正規の手順は全て踏んでる合法オペだとヤスは言うのだけど、恐らくこれ被験者の心臓の代替品を調達する手段として臓器提供をするためだけの手頃な人間を金で買って抱えている、その人たちから気軽に摘出して移植している、のだよね…? (怯

実はこの直後さっさと病室を後にしたレイが細い覗き窓の向こうに見える内部通路でマスクの研究員が運ぶ廃棄物処理用の金属製の台車を必死に引き止める質素な服を着たご夫婦の姿を目撃するのだけど、白い布が被せられたその台車に乗せられてるのは恐らく彼らの息子さんで、「最後にもう一度会いたい」と訴える彼らに研究員は「肋骨は露出し心臓もない状態だが本当に見たいのか」とぞんざいに言い放ち、「彼を利用する権利も処理する権利もこちらにある」「これはそちらが杉徳基金援助を受ける際に同意したことだ」「今更子どもを愛しているフリをして何になるのか」と暴言まで吐きつける。

耐えかねたレイはそこへ割って入り「清潔な部屋と縫合器具を30分だけ貸して欲しい」と申し出て、また申し出たのは自分たちがなんとしてでも引き抜きたい天才レイであることにすぐに気が付いた研究員がこの要求に応えたため、レイは心臓を失った青年の身体をもう一度綺麗な状態にしてご両親に最後のお別れをさせてやることができたのだけど、いやここまでくるともう「反道徳的な側面がある」どころの騒ぎじゃなくないか…?

レイが607号カプセルの病室を立ち去る直前、ヤスは「俺たちは今生死を決める者になれる」「なぜやらない」なんて感情的になって叫んだりもしてましたが、本当に「他人の命を自由に操作して」このX-Heartプロジェクトを進めているんですね…(引

607号カプセルの患者は杉徳の研究と提案に賛同し「喜んで被験者になった」「当時余命6ヶ月だったがもう2年も生きている」だなんてヤスは自慢げにしてたけども、この患者さん元慈善活動とかに熱心だった人格者っぽいんで、まぁヤスが「世のため人のため」なんぞもっともらしい言葉で言いくるめた可能性が2000%でしょうな。
差し替えられた自分の心臓が胸をかっぴらかれたまま廃棄物として処理されるところだった可哀想な男の子のものだって知ったら直ぐにでも取り止めてくれって言うだろうよ。

てかこんな惨状を見せ付けて「本物の天才であるレイの偉大なアイデアを俺は実践しただけだ」なんて言ってレイの自責の念を煽ってこようとするのだけまじでやめて欲しい。レイはあの時実験データを全て処分したのでなんにも関係ありませんあっち行ってください喋りかけないでください←

思い返せば本編2章レーウィンに「なぜ私が1年経っても死ななかったのか興味ないか」って聞かれたときレイは恐らく金持ちだけが受けられるであろう生命維持カプセルによる治療法で彼が生き永らえていることを理解していたし、さらにこの口ぶりからその背景にどれだけの人の命が犠牲になっているのかも彼は知ってるんだろうことまで悟ってた、ってことなんだよな。そしてそのうえで「意識障害の症状は心配」だったってこと…

最後の選択肢

その数日後、ヤスは一体どうすればレイの医術が手に入るのか、どうすれば彼の両手が自分の意のままに動くようになるのかと考えあぐね、ついに「レイが医者を志す切っ掛けにはある女性が関係しているらしい」という昔の噂を思い出す。

レイはいよいよファンを継いでAksoの研究室に入ったと言うが、医学の天才がトップレベルの医療設備を揃えた杉徳ではなく一介の病院を選ぶ理由は決して倫理やモラルの話ではなく単にその女性の方にあるのではないか、となればファンからレイに委ねられた症例を調べればその女性を見付け出すことができるはずだとまじで要らんこと企み始める。

謎に包まれたその女性を掌握すればレイは言うことを聞くようになるだろうし、恐らくレイにもファンにも打つ手がないその女性は余程面白い症例なのかも知れない、そうして「X-Heartにおいてもっとも価値が高いのはその女性である」ことを確信したヤスはひとりワインで祝杯を挙げ、あの607号カプセルの患者がついに亡くなったことを報告ついでに「もしこれがお前の愛する者だったとしてもお前は彼女の死を成り行きに任せるのか?」と付け加え患者の遺体写真をレイに送信した。
カプセルの外に寝かされたその患者の左胸には黒い結晶のかたまりがダリアのように咲いている。

レイはこれを受け、そんな結末を避けるために当然力を尽くすつもりではあるが、とは言え夜は長く、霧は濃く、もしもその道の果てに待つものが「変えることのできない終局だとしたら」と苦悩する。
しかし彼には「最後の選択肢」なるものがあり、吹雪がやってくる前にもう少しこの険しい道を進んでおきたい、そして雪崩のように押し寄せる私欲に彼女の手を握り共に立ち向かう、ってなことが書いてありました。

ここは雪に関する比喩が多いんでたぶん永久レイの伝説読めたらむっちゃ「なるほどー」ってなるんだろうなぁ。
伝説がすっぽ抜けた状態で読むと、コアではなくEvolによる心臓治療を極める道は険しく果てしない、最終的に彼女の心臓を救うことができないかも知れない、そんな局面に立たされたとき自分はついに私欲に負け医者としての倫理観に背いてしまうかも知れない、でも一方で彼女と共にこれに立ち向かいたい、だからそれまではこうして自分が正しいと思う道を進もう、みたいなニュアンスでは伝わってくるんやが。
ぶっちゃけ「最後の選択肢」ってのはX-Heartのような治療法ではなくワンチャンさらに別の何か特別な蘇生法をレイはすでに習得してるんだろうなって言い回しではある。

ますますレイの伝説ストが早く読みたいのだけど、わたしのアカウントに永久のレイはちゃんと実装されてるのだろうか←
問い合わせてみようかな(やめて