星の来処
こちらは秘話でキノアの身分詐称と恋の成就のために保管庫の資料を借りパクしたあの特殊部隊013小隊員セイヤが表向き殉職したことになる少し前からの約4年間がキノアとセイヤそれぞれの目線で描かれるサイドストーリーになっています。
つい先日指間の流星を読んでわたしてっきりロールバック隊って「もうフィロス星の人たちが星核エネルギーとしてワンダラーにならなくてもいい未来を創るために過去に戻って来たぜぇ」って意気込んでる血気盛んな元追光騎士たちの集まりで、今地球上でもっともエーテルコアに詳しいエーテルコア周辺の人たちが全員それなのかと思い込んでいたのだけど、全然違うかったわ←
このスト読む限りもうみんな「すいませんおジャマしてます」くらいのむっちゃ謙虚な気持ちで今はひっそりと街に馴染んで暮らしてる「ごく平凡ではあるがちょっと不思議な噂のお隣さん」みたいな存在になっている、ってことなんだな?
ロールバック隊の瓦解
フィロスに女王が即位して直後旅立ったあのロールバック2号は、数百年前に乱流の中で隕石に衝突しワームホールが崩壊、200年前にこの時代の地球に墜落したらしい。
恐らく秘話で語られたように「ワープポイントにミスがあったせいで深空トンネルの波動が船の許容範囲を超えてしまったから」ってことなのだとは思うのだけど、つまり深空トンネルはロールバック2号が生成するワームホールだって解釈していいのかな?
宇宙でもっとも破りがたい「時空」という壁を超えることができた「セイヤ」の元に集った無敵のチームはもちろんそんな苦難によって引き裂かれることはなかったのだけど、フィロスと同程度のテクノロジーがまだ誕生していないこの時代において再び船を起動するためのエネルギーを獲得することは難しく、あれこれ探し回るうち次第にみんなここで過ごす穏やかな時間、静かな夕日、ワンダラーもいない、磁場の乱れもない、あちこちの星に遠征する必要もない平凡な日々にこの上ない幸福を感じるようになり、美味しいものを食べたり花を育てたりついに好きな人ができたりもして、ひとりまたひとりとロールバック隊を抜けていくこととなった。
もしかしたらこうして「幸せになること」がロールバックを決めた多くの人たちの目的だったのかも、なんてキノアは振り返ったりするんで、「フィロスのために」とかそういう総意があって一致団結してるような雰囲気でもなかったのかも知れません。
そして2033年の夏、ついにキノアも「この時空で一般人になる」という決意を固めセイヤにこれを打ち明ける。「Noah」というコードネームでセイヤとメッセージのやり取りをしていたちょうどあの時期なんでしょうな。
「Sweeties」ってケーキ屋さんで働く「ベッキー」って女の子と少しでも親しくなりたいキノアはとにかく足蹴く店に通い詰め、キラキラさせた目で彼女を見つめたりプレゼント攻撃をしまくるうち、ついに「日曜日に家に遊びに来てもらう約束」を取り付ける。
彼女を招待するためにわざわざ借りた部屋をなんとか「普通に地球に暮らしていた人の家」っぽく偽装するためにセイヤを呼び付け「生活感を出すため」にキッチンで食事をさせたり、「ベッキーはキンセンカの花が好きだから入ってすぐ目に付く場所に置きたいんだけど、どこがいいと思う?」なんて飾り付けの協力を仰いだりするのだけど、「もうどこにも置く場所がない」と呆れた様子のセイヤから察するにだいぶ飾り付け過ぎているのだと思う←
いやなんて言うかキノアってめちゃくちゃかわいいよなぁ(しみじみ
セイヤが「いっそ手に持ってればいいんじゃないか」「彼女がドアを開けた瞬間に渡せばいい」って提案したらなにやらめっちゃにまにまして「お前その手口使ったことあるんだろ」なんてきゃっきゃしてくるし、何よりわたし冒頭のキノアとベッキーのやり取りで「よく来てくれるけどそんなにケーキが好き?」って聞かれていたずらっぽい笑顔で「そうかも」って答える下りとか、買ったケーキをその場でプレゼントするのにひそひそ声で「こちらキノア。ベッキーに秘密のケーキ取り引きを申請します。どうぞ」みたく唐突に無線連絡ごっこ始めるのも、「こちらベッキー、受け取りを了解いたしました。どうぞ」って彼女が乗ってきてくれるのも、何もかもがかわいくて悶え狂いそうなんやが。
ぶっちゃけセイヤもキノアのかわいさというかこの天然人たらし分かってるから主人公ちゃんに近付いて欲しくないんじゃないのw
「俺と彼女じゃ無理だって分かってる」「ここの人たちのように俺たちは歳を取らないから」と落胆したような声を漏らし「そんなことより船の起動装置を直さないと」って自分に言い聞かせるみたいに口にするキノアに「200年かけても直ってないんだしもうそろそろ恋に生きてもいいんじゃないか」なんて声を掛けるセイヤ。
セイヤはロールバック隊を抜けた子たちには「必要のない連絡はしない」って決めてるみたいで、たぶんキノアが最後のひとりだったんだけどこの日を境に彼とも連絡を絶ち、恐らくこの年の冬に013小隊で殉職したと見せかけて、同時にキノアからも「距離を置いていた」のだと思う。
「心から想う人がひとりでもいるのはいいこと」なんだもんね。
そうかこれが暖かい夜の章で言ってた「星は月よりも遠く訪れる者もなく孤独」だった頃のセイヤなのだな。
起動装置加速器
そうして独りになったセイヤはキノアが最後に改造した起動装置の加速器を持って月明かりが照らすひと気のない街外れの森を訪れるのだけど、やっぱり彼は「行ったことがある場所ならどこでもEvolで瞬間移動できる」みたいですね。
ただ臨空市が秘密裏に建設したという電波遮断エリアの先にある電波塔の周辺では移動スピードが落ちるらしく、本編8章Philoで「お前たちは必ず送り返す」って言うセイヤに「自分のEvolをあまり過信するなよ」ってキノアが答えていたのはもちろんセイヤには特別な移動手段があるのだろうがなんとなくそれは周辺環境に左右されるものっぽいことを知っていたから、なのかな。
ロールバック2号は建物がひとつも見えなくなるくらいその森をさらに奥へと進み真っ暗な谷を越えたところにほんの一部だけが地上に露出した状態で乗り捨てられているが辛うじてコックピットには入れるようで、セイヤは黙々と加速器をセットしその起動結果を待つ間、操縦席に座り目を閉じてさまざまな想いを巡らせる。
まるで終わりがないかのようだったロールバック2号でのあの長い旅は未知の星系を通るときに受信する「ホワイトノイズ」がとても耳心地良く、またずっと「睡眠カプセルの中で眠っていた」ようなことも書かれていましたが、今セイヤがしょっちゅうねむねむなのはあまりに長くそうして眠っていたせいなのか…?
「より高い次元」から見れば「時間」という概念は存在しなくなり過去と現在と未来はひとつの空間の中で展開されているが「この次元」の者はその世界が反射する光しか捉えられないため現在しか見えていない、なんて話があるらしく、じゃあきっと広大な宇宙には無数の時空の光が集まる場所が存在し、そこでは宇宙の始まりも崩壊を迎えるまで存在していた全ての星も無数の選択肢によって無数の結末を辿る世界も全部見えるのかも知れない、するとフィロス星もウルル星も実は全部この星海の中にあるのかも、なんてことを考え始め、目を開けて星空に手を伸ばしてみるセイヤ。
なるほど時空を超えた男の脳内とはこうなっているのだな。何言ってるのかさっぱり分からん←
いやわたしが学んできた「次元」というのは「神様のいるところがいちばん上ね」「その次が霊界ね」「下が物質界ね」っていうひたすらバカみたいなカウントの仕方なのよ。そんな人間がやれ宇宙が何次元だ空間が何だ時間が何だ言われて理解できるわけないジャン? (うざ
ただ、仮に時空を超えたセイヤが「4次元の人(であってる?」ってことなら夢の中で臨空市の主人公ちゃんに触れることができてしまったあの黎明のレイは「より高い次元の人」であるかのようには見えるよな。
と言うか、本当に時間の概念が存在しない「無数の時空の光が集まる場所」なるところに全てのレイを捉えてるレイが居るからレイはしょっちゅうああいう夢を見るのでは…?
神学に基くならこれがまじもんの「神」ってことになっちゃうが、まぁレイが神ならいいか、いろんな意味で神ってるし(アホ
ちなみにロールバック2号の起動装置は結局「コアエネルギー」がないと動かせない、ってことのようでした。
裂空災変
セイヤと連絡が取り合えなくなってしまったキノアはもちろん何度か彼に会おうとは考えたが、キッチンミトンやエプロンを装備した今の姿でかつての隊長に会っても何を言えばいいのか分からないし、そんな後ろめたさから逃れるように「イズミのような裏切者が自分を通じてセイヤとトラブルを起こすこともなくなるんだしこのままでいた方がいいか」なんて考えるようにもなる。
てか、今考えたらイズミってセイヤの「弟」だったのかなぁ。
秘話でイズミは「セイヤと同じ銀髪に青い瞳をしてる」と描写されていて、一方Noahには外見についての描写が一切なかったもんだからわたしいちばん最初ロールバック隊のこと「謎の銀髪イケメン集団」って呼んでたんだけどw
するとセイヤを「脱走兵」呼ばわりしてたのは「王宮を抜け出した」「王太子がすべきことを放棄した」って意味でのそれだったのかも知れませんな。
そうしてあのロールバック2号で漂流していた日々をもう遠い前世の夢のように感じているキノアは、そんなことより今はベッキーのために用意したこの家にどうやって彼女を迎え入れるべきか一生悩んでる(かわいい
なんだけど、悲しいかなこれは2034年のことであり、ある日から丸3日間続いた「異常な極夜」に胸騒ぎを覚えていたキノアは突然降り注ぐ隕石のようにワンダラーが街になだれ込んで来るのを見て慌ててSweetiesに駆け付けるのだけど、残されていたのは倒壊した建物と粉々に砕かれた店の看板、そして瓦礫の下敷きになった一輪の小さなキンセンカだけだった。
ぶっちゃけ秘話でNoahはセイヤに「ここの気候や食べ物は合わないと言いながらここの人間に惚れたじゃないか」なんて言われていたはずなのに本編8章Philoで会ったときそんなお相手が居るようには見えなかったんで正直ずーっと嫌な予感はしてたんですが、よりによってプロポーズ直前の別れだったなんて無情過ぎるだろ…
キノアは直ぐ我に返り、自分がこの怪物に立ち向かう方法を知る数少ない人間のひとりであることを思い出していざワンダラーに挑まんと勇み立つのだけど、手にも腰にも視界に映るどこにも使える武器がないことに気が付く。穏やかな日々がキノアにすっかり戦い方を忘れさせてしまっていた、らしい。
じゃあきっと他の子たちも全員同じようにそれぞれがそれぞれの場所でかつて追光騎士団に居たあの頃のように奮い立ってはいるのだけどこの時代の武器や防具じゃそれが叶わずもどかしい想いでいた、ってことなんだな。
セイヤの剣はあの受剣式で「己のもの」になってるから関係ないもんね? だから月影ハンターは「強力なワンダラーをほとんどひとりで掃討した人」になったのか。
ちなみにキノアは咄嗟に「ワンダラーのコアを壊さなくちゃ」って感じたみたいなんだけど、追光騎士団ってコア壊してたっけ?←
この時代にコアがあったら未来変わってしまうからってことなんかな。
災変は想像よりもはるかに長く続き、ようやく成立したハンター協会が「今後はワンダラーとの共存を見据えていく」と協定の中で宣言したのは2035年1月1日のことだそう。
キノアは災変が始まったばかりの頃にもっとも災害が深刻な場所でセイヤと再会し少しの間共闘していたのだけど、ある時ひどく破壊されたある通りの真ん中にひとりの女の子を見付けたセイヤは少女を連れて行ったきり再び姿を見せなくなったため、「ついに彼女を見付けたんだ」と悟り、「長い航行を終えた宇宙船はついに目的地に着陸しロールバック任務が始まった」のだと感じていた。
てか思ったんだけどセイヤは本当に「目をつむっててもあんたのことだけは分かる」んだね?
あ、いやこれはホーム画面でセイヤがたまに言ってくれるファンサービスみたいなもんなんやが、ぶっちゃけどんなに好きな人でも7歳の状態で来られたらその人だって判別できないもん。新一と幼馴染の蘭姉ちゃんだってコナンくんがそうだとは気付かないのだぞ?←
海神として「心」を渡してるホムラくんはもちろん、セイヤも同じように何か彼女の気配みたいなものを感じられる手段を持っているのでしょう。
そして改めて裂空災変ってなぜ起こったのだろうね。指間の流星では「セイヤだからこそ時空という壁を超えることができた」ってところがこんなに強調されてなかったんで「フィロスの誰かがロールバック隊の後を追ってやって来た痕跡じゃないか」と思ってしまったが、こうなってくると地球時代の誰かが何かしらのやり口でセイヤの技術を手に入れてしまったのではないかとも思えてくる。
再入隊
災変を乗り越えた臨空市は目まぐるしい速度で復興し、またワンダラーによってもたらされたエネルギー源「コア」によりあらゆる分野の技術は急速に進歩していった。
キノアは以前Sweetiesのあった店舗を買い取り1階でフラワーショップPhiloをオープン、裏庭には温室を設け花々を育てながら3階の作業部屋で再び起動装置加速器の改造を開始した。
一方見覚えのある景色の中を歩いていたセイヤは、ふと街路の曲がり角にある店の中から咲き誇るキンセンカが道にまで溢れているのが目に留まる。
そうしてかつての旧友がとある花屋の店主とそのお客さんとして偶然再会したのは、災変から3年が過ぎた2037年のことだった。
セイヤを招き入れ温かいお茶を出したあと、ロールバック2号の起動装置について早速話し始めようとするキノアを遮って、「結局あの日曜日、彼女はお前の家に来たのか?」って尋ねてくるセイヤ。
実はずっと気に掛けていたんだな…
キノアは一瞬びっくりして、頭を掻きながらあの懐かしい日を振り返る。
ベッキーはもちろん来てくれたし、偽装された部屋を一目見て「花以外何もない家なんてあるわけない」って気が付いちゃうんだけど、そもそも彼女は幼い頃に街でキノアを見かけたことがあり最初からキノアが「歳を取らない人」なんだろうことを知っていたんだって。そのうえで気持ちに応えようとしてくれていたってこと…
一通り話し終えたキノアは「ペンダントとして首にかけている指輪」を撫でて襟の中にしまうのだけど、それは「どうやって彼女を迎え入れるべきか」考えあぐねた結果プロポーズの言葉と一緒に彼女に渡そうと持っていた婚約指輪、なんだな…?
キンセンカの花言葉調べてしまったよ。慈愛、乙女の姿、そして「別れの悲しみ」だってよ。涙
てか、やっぱり子どもって大人が思うより賢いしなめたらアカンよね。セイヤもよくまだ小さいから大丈夫だろって子どもたちには何か知られちゃっても結構放置してるけどさ、たぶんノブの秘話に出てきた父親エツジもこのベッキーのパターンで、もちろんセイヤに面と向かって「子どもの頃にも会いましたよね?」なんて言わないが心の中では「昔俺も騙されたなぁ」「つまり古い友人ってことでいいよな」って思ってるってことなんでしょ。
そしてここ数年ずっとセイヤに対して罪悪感があったというキノアは再びロールバック隊に戻りたいと訴え、またついに彼女を見付けたならセイヤもどこか落ち着く場所を決めたらどうだと提案する。
セイヤはこれを受け、もちろんキノアが正しいと思う選択をすればいいし、確かに自分も落ち着く場所を決めてもいいかも知れない、できれば星の見える場所がいい、なんて考えてる。
「落ち着く場所」ってのは素直に「家」のこと?
セイヤ2037年まで200年間家なき子だったの…? (殴
あの起動装置の加速器を試した夜セイヤが手を掲げていた空には「滝のような天の川」が見えていたんですが、それが「遥か遠い故郷」を感じた「最後の思い出」だってくらい、今の臨空市はむちゃくちゃ光害が悪化してるらしいです。