空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

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秘密の塔

伝説スト人知れぬ沫雪を読んでから一生探していたレイの「ジャスミン」をこの度ついに発見することができまして、それは星4思念「長き夜」に「秘密の時間」として収録されている音声ドラマの中だったんですけども、いやぁこれはもういよいよ「秘密の塔」を読まねば何が何やらさっぱり分からんぞってことをただただ思い知らされたため、あああ正直思念未所持の分際でこんなハイエナみたいな真似するのは本当に忍びなかったんですが、YouTubeで動画を上げてくださってるa由宇さんという方のこちらの無言実況を拝見させていただきました。

なるべく初見は自引きでプレイしたいという謎のこだわりがあり(どの口が言う、今後リアタイで動画をチェックさせていただくということはできないかも知れませんが、感謝してもし切れない想いで高評価ボタンとチャンネル登録だけポチさせてもらいました。本当にありがとうございました。

永久の預言者レイ

この物語のおおよその世界観は1話冒頭と5話終盤にて綴られる「フィロス星・預言者の書」におおむね集約されています。
概要としては今ストのフィロス星には「アスタ」という名の「最高神」がおり、「アスタは永久の預言者をこの世に降臨させ神の意思を伝えることをその者の宿命とした」「己の片目をその者に与え時空を超えて運命を知ることを可能にした」「これこそが神の力である」というような内容です。

この力を授けられた預言者であるレイは、何千年もの間フィロス最北の地にそびえる「イバラの塔」から外に出ることを許されず、彼の預言を聞くために百年に一度吹雪を抜けて塔を訪れるという「国王の使者」に神託を告げることを使命としているのだけれど、一方で「自分の運命だけは決して覗いてはならない」とも命じられており、これに背けばアスタによる「裁き」が下される、という立場として描かれます。

この辺りはかなり神話テイストだと感じますねぇ。「最高神」と聞くとさまざまな権能を帯びた神を信仰する多神教の宗教観が連想されがちですが、こと神話における最高神というのは例外なく全員が絶対的で唯一神的な神格を持っており、たとえば中国神話であの「麒麟」を従えている至上神「天帝」は道教においても「この世の全てを監視し背徳者には裁きを下す存在」として崇拝されているし、アステカやインドの神話における「主神」たちもみな「万物の創造主」と謳われていたり、恐らくいちばん分かりやすいのがローマ神話やギリシャ神話における全知全能の最高神「ゼウス」だと思うんですが、ゼウスは人間の女性との間に何人もの子どもをもうけており、そうして神と人との間に生まれたいわゆる「下級の神」たちがギリシャ語で「半神半人」を意味する「ヘロス」と呼ばれていて、このヘロスとゼウスの関係値がまさに今ストのレイとアスタだったりします。
もちろんヘロスは「ヒーロー」の語源でもあり彼らは「英雄」として奉られているような側面も持っていますが、「最高神から一見理不尽な命令や裁きを下される」という意味では同じような役割を担っているんじゃないかな。

フィロスの最高神「アスタ」についてはわたしが抱く神のイメージそのまんま「これぞ神」って感じの神ですね。要は人間にとって愛そのものであるはずのあなたがなぜこうも不条理で酷い仕打ちをわたしたちにお与えになるんだって頭抱えてどんだけ考えても結局何ひとつ伺い知ることができない神。例を挙げるならキリスト教における唯一神「ヤハウェ」かな?

ヤハウェと言えば創世記のっけから双子の一方を可愛がって嫉妬心を煽り兄弟で殺し合いをさせてみたり、ある男には我が子をふたつに引き裂いて殺してから火で焼けと命じてみたり、敬虔な信者をサタンの好きにさせ頭の先から足の裏まで素焼きのかけらで体中を掻き毟らないと生きていられないほど重い皮膚病に罹患させてみたり、これらすべてが信仰心の確認や御業の力を示すためのご計画であると言うのだから、いわゆる祈ればご利益があるような神とは程遠い、ある意味でもっとも「人間らしい」と言えるのが旧約聖書の神なんだろうなぁとつくづく感じます。

うーんもしかしたら指間の流星聖騎士学校で聖剣碑になっていた星の女神「アストライアー」の愛称が一枚噛んでるのかも分からんが、個人的には単純に「星」を意味するギリシャ語から名が付いているのだと思ったし、だからって人間と一切交わらない非人格的性質を持つ「宇宙神」や、呪術廻戦の元ネタになってるような「星辰信仰」の思想が盛り込まれているかと言えばそうは見えなかったんで、モチーフとしては世界中の神話に普遍的に見られる最高神、あるいはキリスト教やイスラム教の唯一絶対にして全知全能の神、ただしフィロスの世界観に基いて名前はアスタ、みたいなことなんじゃないかとは思いましたねぇ。

夢を聴くストでイバラに巻き付かれ氷の湖で凍え死にそうになっていたあの同門兄妹を思い返すとワンチャン指間の流星時代にもイバラの塔や預言者は存在していたのかも分からんし、こっちのストでも「王」は存在するようなのでかなり近しい世界観なんだとは思うんやが、とは言えあっちでたとえば王室が「ひとりで無限に生死を繰り返すことができる人間」の存在を突き止めたのが「預言者による託宣」だなんて一言も語られなかったし、セイヤと恋をしている主人公がレイの時代に居るとも考えにくいんで、それこそフィロスの星核エネルギーとして無限に生死を繰り返すだけの存在になってしまったその後の主人公のお話なのか、ひょっとしたら同じ最高神によって創造された別の世界線における物語、一方は神が預言者を降臨させたために「アスタ」の名が轟いている世界、一方はイバラや氷の湖が何者の力によるものなのか認知されていない世界、みたいなことなのかも知れません。

蘇生のコア

このストにおける主人公はまるで「氷に入った亀裂」のような青い筋が胸元から全身に広がるにつれ運動能力や意識をも失いやがて「凍ったように死に至る」という「氷裂症」なる進行性の病に冒されており、古書に記された断片的な記録によれば治療には「永久の預言者」が所持する「蘇生のコア」というものが不可欠だということで、「何もせずに死を待つなんてことはしたくない」という主人公自らがコアを手に入れようと雪山を越えイバラの塔を訪れる場面より物語がスタートします。

この時点でなんとなく「心臓が徐に衰弱していく」という先天性の病「コア介入症」を患っていたあの流星雨の主人公がよぎってしまったな。
彼女の病にも同様に「この世界にたったひとつだけ存在するどんな病気も治せる特別なコア」なるものが必要とされていたし、どちらの物語にも「コア」は登場するものの本編や指間の流星のようにはっきりと「ワンダラー」が描かれていないことから「特別なコア」も「蘇生のコア」も共に「ワンダラー由来のコアではない」ってことなのかも知れん。

さらに、噂によれば永久の預言者はここ数百年「沈黙」に陥っているらしく、塔の広間に鎮座するレイは確かに始めは氷晶の玉座にイバラで手足を縛り付けられ身体中に霜が張った状態で眠っているのだけれど、「残された選択肢は他にない」と意を決した主人公が沈黙する預言者の手に握られた杖の先にはめ込まれた「蘇生のコア」に触れようとすれば直ちに目を覚まし、「国王の使者に扮し盗みを働いた罰」として彼は彼女の身柄を拘束、一方彼女はなんとか慈悲を乞い彼を油断させ再度コアを手にする機会を伺う、といった具合にストーリーは展開。

9話においては氷裂症の正体が実は彼女が「蘇生のコアと共鳴」してしまうことにより生命エネルギーをコアに奪われて起こる諸症状だったってことが明かされるのだけど、すると流星雨のコア介入症もワンチャン特別なコアと無意識的に共鳴してしまっていたことにより引き起こされていたもので本編時間軸医者レイが研究しているコア介入症とはまた別ものだったんじゃないかって気がしてくるよな。

5話には主人公とのやり取りからレイが「塔の外の世界」について想い馳せた瞬間その思考を遮るかのように「蘇生のコア」が青紫色に光り幾本ものイバラが彼に襲い掛かってくるようなシーンもあるんやが、どうやらそれは塔を離れることを禁じられているレイにアスタが下した「警告」だったそうで、「頭の中でほんの少し考えることも許されないのか」「このコアは神が預言者を監視するための目でもあるのか」と主人公は胸を痛めるのだけど、そう言われると確かに蘇生のコアは「時空を超えて万物を捉えるアスタの目」そのもののようであり、あるいはレイに授けられた片目のようでもあり、いずれにしろ「アスタの力」の発動に呼応して光る「神の力の源」であるかのような描かれ方をしているなぁと感じました。

すると今度はそんな神の力の源と「共鳴」することができてしまう主人公もまた「人知を超えた存在」のように見えてくるのだけど、言われてみれば埃の中スエの記録において恐らくEvol遺伝子なるもののおおよそが明らかになっているようなあの時代に業界最大手EVERグループが大口投資するほどの先進研究所でさえ偶然が重ならなければ解明できなかった「根源系共鳴」こそがエーテルコア云置いといて先ず大前提「彼女だけの持つ特別な能力」ってことだったのかな。

ジャスミンの蕾

レイの座す玉座の正面で罰として氷漬けにされていた主人公は彼が何やら金色の文字を空中に投影させながら「園芸」についての本を読んでいることに気が付き、取り入る隙はここぞとばかりに自分には庭師の経験があり花を育てることが好きであると訴えるのだけど、これを受けたレイは思いがけず彼女の拘束を解いて塔の頂上へと連れて行き、敷かれたレンガの隙間から顔を出す小さなジャスミンの蕾を指して「この花を咲かせることができれば生きて塔から出すことを約束する」なんぞ提案してくる。

なんとかして彼の警戒を解き蘇生のコアを手にすることをまだ諦めていない様子の主人公は、そもそもこれだけ寒く土壌も貧しい場所に蕾が芽吹いたこと自体奇跡的であり長年の経験から花が咲く確率は極めて低いと感じるも「時間とチャンスを稼ぐため」だと二つ返事でこれに同意。
早速翌朝からジャスミンの世話を始めるのだけど、どうやらレイもこのジャスミンをかなり気に掛けており毎日様子を見にそこへ足を運んでいるようで、この日以降ふたりはたびたび塔の頂上で顔を合わせ多くの時間を共有することとなる。

ある時は銀白色の氷雪のように透き通った羽を持つ「氷鳥」という数千の渡り鳥が空を覆う大きな星雲のように輝きながら飛んでいくのを「旧友に会ったかのような柔らかな眼差し」で眺めたり、ある祭日には「故郷の風習である燃空祭がしたい」と言う主人公のために不思議な力で空へ昇る氷のランタンを生み出してくれたりと、かつて読んだ「預言者の書」に記されたまるで「アスタの道具」であるかのような現実味のない永久の預言者の姿ではなく自分と同じようにさまざまな表情を見せるレイに徐に親近感のようなものを覚え始める主人公。

レイも次第に彼女に寛容になっていき、氷鳥を一羽呼び寄せて手の平に乗せてやったり、燃空祭も本当は「全知全能の最高神アスタ様に願いを捧げるもの」だったそうで「願ったところで運命は変えられない」ことを知るレイは当然「必要のないことだ」と判断するのだけど、少し浮かんですぐに壊れ落ちてしまった天灯に落ち込む彼女を見ればただ「今日の夜空には光が必要だから」と空を埋めるほどのランタンを飛ばしてくれるなど、もうほとんどあの無言でアザラシの雪玉を贈ってくれるスパダリになっていることが伺える(悶

幻の世界

そうは言っても「このまま何も感じない石にはなりたくない」という主人公はレイに近付くほど進行していく氷裂症の症状に焦燥し、一刻も早く蘇生のコアを手にするべく、先ずは「どうして彼があのジャスミンを気に掛けているのか詳しく知る必要がある」と考え至り、塔内をあちこち探索してるうち、ついにレイが多くの時間を過ごしているであろうある部屋の扉を発見、その先には「天井まで埋め尽くすほどの書架に囲まれた書庫」が隠されていた。

彼女はそこで「エネルギーの霊体」である氷晶に導かれ「フィロス星・花木集」なる本をふと手に取ってみるのだけど、もっとも読み込まれているジャスミンについてのページには恐らくレイの書き残した多くのメモが残されていて、「ジャスミンがまた現れた」という記述が目に留まりこれを独り言のように呟いてみると、彼女は突然本から放たれた光が形作る「幻の世界」へと引き込まれていった。

そこはレイ自身が「文字をもとに築いた」らしい精神世界のような場所であり、彼は花を咲かせないジャスミンが塔に現れるだびその蕾をこの場所へ運び込んでいるとのことで、見渡す限り一面が蕾のままのジャスミン畑となっているのだけれど、触れてみるとどの蕾からも同じように「レイがそっと頭を下げてジャスミンの花にキスをする」という映像が頭の中に流れ込んでくる。
どうやらここにある蕾たちはひとつひとつが過去さまざまな時代を生きてきた前世のレイの「記憶」となっており、またすべての記憶がジャスミンの花にキスをする同じ場面で途切れ「未完結」のままになっているもよう。

断片的であるとは言えこうして過去すべてのレイの記憶が集まるここは彼の「終着点」のようでもあり、一方で「文字をもとに築かれた世界」ってのがなんとなく福音書の「初めにことばがあった」「ことばは神であった」「万物はことばによって成りことばによらず成ったものは何ひとつなかった」みたいな書き出しにかぶって個人的には「神の力」を得たレイの「始まりの場所」のようでもあると感じられてしまったな。

主人公は「彼がどうしてあのジャスミンを気に掛けるのか」その理由はただ自分が何者であったのかを思い出したいそんな彼の「記憶への渇望」だったのだと理解するのだけど、塔を出ることも自分の運命を覗くことも許されないレイが少しでもそれを望めば必ずやアスタの力により「わずか数本の棘で人間を殺すことができる」らしいイバラが彼に襲い掛かることを知ってしまったうえ、4話ではひょんなことから入浴中の彼を覗き見て彼の身体がすでに傷まみれであることまで目の当たりにしてしまっていたことから、「もし自分がコアを盗み出せばレイはどうなってしまうのか」「自分も死にたくはないがこれ以上レイを傷付けたくない」と苦悩し始める。

預言の啓示

預言は「金環日食」に「蘇生のコア」をかざすことで反射した光が空中に魔法陣のような模様を無秩序に描き出し預言者がこれをパズルのように繋ぎ合わせ古代文字のようなものを成形することで示されるものらしい。この「魔法陣」や「古代文字」も本来であれば人間には見えないが主人公ちゃんには視認できてしまうってことなのかな?

「運命とは定められたものでありこれを変えることはできない」と涼しい顔で繰り返し説いていたはずのレイが新たな啓示を受けた直後よりにわかに「重しい表情」となり、主人公は「何か良くない預言だったのでは」と彼が心配になって、あの「花木集」が収められた書庫にひとり立ち入り「レイは気分が良くないとき何をするんだろう」とぽつり呟いた。

するとその独り言をこっそり聞いていたらしいレイは部屋の天井から真っ白な「溶けない雪」を舞う花びらのように降らせ、驚き振り向く主人公に「気分が良くないとき私が何をするか知りたがっただろう」と声を掛けてくる。
続けざまに「お前はどうなんだ」と尋ねられた彼女は「私は踊る」だなんてひょうきんな返答をしてレイは思わず笑ってしまうのだけれど、直後真剣な声色で「雪の降る場所で踊れば互いにいい気分になれる」と向き直り、「どうだ?」と誘うように手を差し伸べる。
彼女が喜んで手を重ねればふたりの身体は自然と動き始めて、レイはまるで「遥か昔の記憶が身体に残っているよう」だと遠い過去を見るような目で彼女を眺めてる。

なんか、むっちゃ泣いてしまった…
思い出すことができなくてもたとえば白い花びらのような雪やこうして彼女と過ごす時間はレイにとって潜在的に「心地良いもの」なんだね。涙

彼女に踊りを促すのは人知れぬ沫雪でも同じようなシーンがあったけど毎度この時点でレイは「自分の運命以外のすべて」が見えてるんだもんな?
一体何がどう見えていてどんな想いで彼女を見詰めているのか詳しくは語られませんが、きっとどのレイも「大きな災い」や「変えることのできない局面」を目の当たりにしながら抗う術もなくただ彼女に寄り添い愛おしんでいるのだろうと思うと。涙

咲かないジャスミンの正体

塔の頂上には「いつからそこにあるのか分からない」というくらい長い歳月「咲かないジャスミンの蕾」が繰り返し芽吹き続けているようで、その不思議な現象をレイは「永遠に解かれるのを待っている謎」のようだと考えながらも、まるで記憶の隠喩であるかのようなそれがいつか花開き「思い出せない遠い過去」が「本当の自分」を示してくれるのではないか、とも感じてきたらしい。

そうしてレイが眠るたびに見る夢は彼が身を屈めシャスミンの蕾にキスをするとたちまち世界が暗闇に沈んでいくというただそれだけのイメージであり、この日もまた同じ夢の中にいるレイはいつもと同じようにあとは「暗闇に沈む」のをじっと待っているのだけれど、今回ばかりは闇の中から延と「レイ」の名を呼ぶ少女の声が「遠い過去から呼び掛けてくるジャスミンの囁き」のように響くのでふと目を開けてみると、彼は「キスをしたジャスミンの蕾が少女の顔に変わる瞬間」を垣間見てしまった。

はっと目覚めたレイに、昨日までと変わらない調子の彼女は「ついに頂上のジャスミンが花咲いた」ことを告げにはしゃいだ声を上げながら寝室までやって来るのだけど、何かを確信したようなレイは「言いようのない感情」が渦巻いた眼差しで彼女を見据え、「やっと来たのか」「来るのが遅過ぎる」などと絞り出すように言葉を紡ぎ、さてなんのことかさっぱり分からない彼女を捕まえて「もう二度とお前を失わないことを確かめたい」と訴えてくる。

次の瞬間目の前に突如「青紫色の強い光」が走り、「大きな手に心臓を掴まれたような痛み」に襲われた彼女はその場で意識を失ってしまうんやが、レイは「罰を受けること」を覚悟のうえ「金色の運命の糸」をついに手繰り寄せ、自分が長い運命の中で幾度となく彼女と出会い恋に落ちてきたこと、そのうえで彼女が運命を変えられて死に向かう場面を何度も見てきたこと、そして誰かを愛し自分の意思で動くことを許されない「神の道具」であるレイは、「彼女に関わる記憶」のすべてをアスタによって「花を咲かせないジャスミン」に改ざんされていた、という真実を突き止める。

これはつまりアスタはレイが愛によって「彼女を死から遠ざけること」を良しとしていない、みたいなこと?
「運命を変えられて死に向かう」ってのがなんか釈然としない言い回しだけど、運命を変えられてしまうこと自体が彼女の運命だからそれも神の計画の一部として知っておくってことが「神の道具」としての預言者の役目なのかな。

すると人知れぬ沫雪ラストシーンもレイではなく彼女の方が死んじゃってたって解釈すべきだったのか…?

今回レイは夢の中に「過去から呼び掛けてくるような彼女の声」がしたことですべてを思い出したかのようにも見えたけど、雪まみれの階段「彼女の手を握り共に立ち向かう」って言葉通り、確かにふたりは夢を通じて過去や未来あちこちから声を掛け合い協力して神の定めた運命や変えることのできない終局に抗おうとしてるってことなんだろうか。

アスタの罰

固く禁じられていた自分の運命をついに覗いてしまった永久の預言者にはアスタによる「罰」が与えられることになるんやが、なるほどこれがレイの「Evol暴走」の本来だったのね。

主人公が駆け付けたとき彼は牢獄のような部屋で手錠をかけられ縦横無尽に襲い来る「黒い氷晶」に身体中を貫かれながら苦しみ喘いでおり、とは言え自分は普通の人間ではないため「死ぬことはない」し「この痛みには慣れている」と言い、それよりも今は自分で自分を制御できない状態にあり「お前をも傷付けてしまう」からとただ彼女にこの場を離れ「逃げて欲しい」と訴える。
これまでもっとも恐れていた「死」よりもさらに恐ろしい「痛み」や「苦しみ」があることを目の当たりにした彼女はその惨状に困惑しながらも、少しでも苦痛を和らげようと必死に彼を抱き締め、血跡のついた手錠を外し、すると床や壁から次伸びてくる氷晶の暴走は徐に収まっていった。

アスタが直接イバラを差し向けて縛り上げてくる「警告」がキリスト教的に言う「神の懲らしめ」だとするならば、この「罰」は「苦行」の方に近いと感じましたねぇ。
苦行は信仰のもとに行われるたとえば断食や苦行帯のような「自分で自分を痛めつける行為」であり、目的としてはキリストの受難を常に思い起こし信仰心を深めるため、あるいは欲を打ち消したり精神を高めたりするような側面も持っていたりしますが、レイの場合は「神の道具」としての本来の役割を念じるため、彼女への愛や想いを断ち切るために与えられる難行の位置付けなのでしょう。
ちなみに昔「ダ・ヴィンチ・コード」って作品にまるで有刺鉄線のような棘だらけのベルトを血まみれになるまで太ももに装着しひたすら痛みに耐えるカトリック信者の描写がありましたがくれぐれも彼らの「苦行帯」はちょっと固くて付け心地の悪いただの革の帯であってそんなおっかないベルトとかじゃないですからねw

恐らく深空で出会えるすべてのレイがこの物語で神の片目を与えられ普通の人間ではない死ぬことはない状態になった「預言者レイと同じ永世の位格」が人間の肉体に宿っているレイってことなんだとは思うんやが、本編時間軸の医者レイもまた彼女を想ったり近付くことでEvolは暴走してるように見えるんで、アスタの力は時間や物質の概念なく「レイというペルソナ」そのものに働き続けているものなのだと思われます。
医者レイが夢に見る終わらない冬死神のイメージも「どこかの時空で生きていた別のレイ」というより「苦行」として「アスタの力が及んでいるもの」「アスタが見せているもの」だと考えちゃっていいのかも?

そうなると今のところ黎明のレイだけが唯一「改ざんされなければならない記憶」を持たないかなり異質なレイであり、彼の見ている「医者レイと彼女の夢」はアスタよりむしろ「レイ自身が見たいと願って」見ている、あるいは見せている映像って気もしてきちゃうよな。

思い返せば癖になる痛みホムラくんも個人的には「彼女を想うほど心臓に痛みが走っている」ように見えてたが、彼もまた「彼女を死から遠ざけること」がないよう監視されているペルソナのひとつだったりするんかなぁ。
するとセイヤの赤い首輪も一見Evol消費量計測機に見えて実はそういう…?

水晶玉

夢の中でジャスミンが少女に変わるのを見て多くを悟ったレイは恐らくあの花畑の蕾の数だけ体験してきた最愛の人の死の瞬間をすべからく思い出していたのだろうし、同時に彼女を愛していた気持ちも蘇っていることから今世での再会に「やっと来たのか」「来るのが遅過ぎる」なんて言葉が溢れてしまったのだと思うのだけれど、今度こそ悲劇を辿りたくない藁にも縋る想いで「もう二度とお前を失わないことを確かめた」結果が8話冒頭「腕の中で冷たくなった少女の体に不気味な青い筋が広がっていく」「杖の先では蘇生のコアが青紫色の光を放っている」って結末だったのだと思われる。

だから自分が牢獄で罰を受けているうちに彼女には逃げて欲しかったし、運命を覗いたことで彼女の目的が「生きるために蘇生のコアを持ち出すこと」だったことも理解した彼は「どうしてそれをしなかったのか」改めて彼女に問うのだけど、自分の死よりもレイが傷付き苦しむ姿を見ることの方がよっぽど怖いことであると自覚した彼女は「恐れず運命を受け入れる覚悟を決めた」ことをレイに打ち明ける。

するとレイは実際に「蘇生のコア」を彼女の胸に押し当てて「共鳴」により氷裂症が進行する様を見せながら「これが本来のお前の運命だった」ってことを教えてくれるんやが、ただし自分も彼女と同じように牢獄の中である決意をしたこと、それは与えられたアスタの力を用い「神の決定を覆すこと」であると語り、今度は両手から生み出した「白い光」でコアを包み「透明な球体」のような状態に凝結させるとこれを不思議な力で彼女の「心臓」へと注ぎ込み、「蘇生のコアはお前の体内でお前と共に生きている」「お前はアスタの力を手に入れた」だなんて述べ告げる。

ここは主人公の視点でかなり詳細に語られているような印象で、始めは蘇生のコアに体内の力を奪われて「心臓が必死にあがいているような感覚」がするも、レイの手から現れた「柔らかな光」に覆われたコアは本来の青紫色ではなく「色とりどりの光が流れる水晶玉」のような姿に変わったように見え、またこれが心臓に注ぎ込まれると衰えた鼓動は力強さを取り戻し最後は「温かいエネルギーが全身を駆け巡る」のを感じた、みたいなことらしい。

水晶玉と聞いて真っ先に連想されてしまったのは忘却の海主人公の夢の中で潜行者ホムラによりえぐり出された彼女の心臓の中にあった「不思議な光を放つ水晶」なんだけど、いやいや1度「海神の心」に騙されているのだから安直にこの「水晶になった蘇生のコア」がイコールでエーテルコアだなんて思わないぞわたしは←

だってジャスミンの記憶の中の彼女はすでにそれを持ってる状態だからこそ何度も生死を繰り返して何度もレイと出会っているのでしょ? えっ、その理解は覆さなくていいんだよな…? (疑心暗鬼

確かに本編エーテルコアはどうやら「散逸」しているし、今ストにおける蘇生のコアはまるで指間の流星森の空洞が人間のエネルギーを星核エネルギーに勝手に「変換」してしまうみたいに彼女の「共鳴」を促して生命エネルギーをコアエネルギーとして吸い尽くしてしまうものに見えたんで、もしかしたら終わらない冬長恒山でトオヤ先輩を結晶化させてしまったあの「極地の磁場の核」がこの「フィロス最北の塔」にある蘇生のコアの源流または河口なのかも分からんし、じゃあこうやって凝結させ水晶玉にすることが「エーテルコアの復元」なのかも知れないとも思えるんやが、うーん個人的にはエーテルコアはエーテルコアで完結しているものであり「下位互換的な別のコアを束ねるもの」みたいなポジなんじゃないかなって気もしてしまうんよ。

と言うのも、わたしの中ではエーテルコアってやっぱりユダヤ神秘思想「地風水火」を司る「エーテル」であり、人知れぬ沫雪読了後にはさらに中国神話「東西南北」を司る「麒麟」でもあって古神道「一霊四魂」の「霊」でもあると思う、なんてとこまで妄想しちゃってるんだけど、これらの概念が立体図で表すと全部おんなじエーテルを頂点とした「四角錐」の形になっているもんだから、たとえば「不完全なエーテルコアが完全になる」とかじゃなく、「蘇生のコア」やら「特別なコア」やらなんちゃらのコアかんちゃらのコアってエーテルの元に4つ揃ったら別の何かが完成する、みたいな世界観なのかなって(つたわれ

アスタの力を手に入れたってのが「時空を超えて運命を知ることを可能にした」ってのと同義なら金砂の海忘却の海でそれぞれ過去と未来を夢に見ていた彼女の中には「蘇生のコアが共に生きて」いたってことなのだよな。
仮にEvol暴走という「アスタの罰」が時間や物質の概念なくレイというペルソナそのものに働き続けるなら当然「アスタの力」もすべての彼女と共にあるってことなのだろう。

いずれにしろ預言者のレイは神の決定を覆したことで毒蛇のように生えて来た無数の氷晶に貫かれ身体中を霜に覆われてしまうのだけど、「もう二度とお前を記憶から消したりしない」「お前は生きている」「私にとってそれが二度と失わないということだ」と結論し、きっとすべてのレイがそうしてきたように身を屈め彼女の唇に最初で最後のキスをすると、「離れないで」「傍に居させて」という彼女の言葉を待たずして光の中に消えていってしまった。

気が付くと彼女はひとり「満開のジャスミン畑」の中に居て、通り掛かりのおばあさんに「イバラの塔」について尋ねてみると「塔は吹雪に埋もれてとうに封鎖されている」「預言者様も神様には敵わない」なんて返されて彼女は泣いてしまうんやが、どこからか「泣かないと約束してくれ」っていうとっても優しげなレイの声が響いてくる。涙

そして彼女の手の平には「透き通った氷晶」が咲いたばかりのようにみずみずしい一輪のジャスミンの花の形になって現れるのだけど、うわぁぁんやめてくれぇぇ(嗚咽

あのジャスミンは「もう二度とお前を記憶から消したりしない」「二度と失わない」っていう全部のレイから全部の主人公ちゃんへの「離れない」の花だったのか。
むしろ医者レイとの間にジャスミンのエピソードがないままああしてサプライズされてる方がよりやりきれない気持ちにさせられるじゃないかよ…

アスタは唯一神?

ここからはひたすら妄想話なんですが、このストにおける「最高神アスタ」を何者として理解するかにより深空への解釈が大きく変わってくるような気がしたので自分用に大枠3パターン覚え書き。

ひとつ目は完全に読み手が「宗教者」であり「キリスト者」だった場合、もちろん深空にはすでに多くの神の存在が匂わされているため「最高神」の位置付けではあるもののやっぱりアスタは全知全能の唯一神ヤハウェのような神として描かれていて、さらに主人公はアスタと同一の神格を持つイエス・キリストであり、彼女が誰かの働きによって死に至るのも遠ざかるのも全て「神のご計画のうち」って解釈されるパターン。これは「神の全能の目」という意味で「プロビデンス」とも呼ばれます。
聖書をご存じない方にとっちゃまじ何言ってるのか意味不明なんだろうとは思うのだけど、今のとこわたしにはこれがいちばん腑に落ちてしまってるんで良かったら語らせて欲しい←

まず、キリスト教にはめちゃくちゃ難解にしてもっとも重要な「三位一体」なる教義があります。これは「万物を創造した神ヤハウェ」と「人間の罪をひとり背負うため神から遣わされた一見ユダヤ人の青年イエス」と「人間の体内に住み信仰心を保つために働く聖霊」が「3つの位格を待った神」という基本概念であり、意味合いとしては「三者が合体したら神」とかでなくて「全員同一人物」って理解です。

もしかしたらダヴィンチの名作「最後の晩餐」で「使徒の中に裏切者のユダって弟子が居たためにイエスは十字架に掛けられちゃうんだよね」くらいまでなら知ってる方もいるかもですが、むっちゃ平たく言うとこれ裏切者を創造したのも裏切られてるのも全部神、すべてが神の思惑通りってお話なんですね。

そういう思想に解釈を寄せるとアスタは何かを達成するために主人公をこの世界に遣わして何やら生死を繰り返させている、ただし彼女自身もアスタとは同一人物で同じ何かを達成するためになんとなく「心臓をえぐり出して欲しい」だとか「運命を受け入れる」だとか実はそっち方向にうねりを傾けるよう無自覚ながら働いていて、さらに言えば「蘇生のコア」のようなものもワンチャン聖霊の位置付けであり神とは同一位格、埃の中スエの記録によればエーテルコアは彼女が再び覚醒すると共にエネルギーが強くなっていくらしいんで、たとえば神自身が無限エネルギー源となり完璧な星を造り上げる計画なのかも知れないし、と言うかそもそもキリスト教のヤハウェって最初は「人間が地上で永久に生きられる状態で創造した神」であり「アダムとイブの原罪」がなければ元より地球はフィロス星だったって思想なんで、とは言え今回のレイやセイヤのように「彼女を死なせたくない人」が現れるのも当然全部想定済み、逆に「変数」と判断して取り除くために特別な奥義を習得するような人間や利用しようと集まってくる悪しきものたちも用意済み、すべてが過不足なく交わって最終的にはアスタの思い描く何かが完成する、みたいな観念形態です(何かとは

海神の書は「予言」であるのにアスタの啓示は敢えて「預言」ってところにもなんかこう「唯一神」を連想させるような意図を感じるし、もしかしたら神託の判読に用いる「金環日食」も「地球と月と太陽が重なる」という意味では「三位一体」の隠喩だったり、なかったり…?

アスタは最高神?

ただしこれだとあまりにもひたすらキリスト教神学に偏り過ぎてるんで、ふたつ目は読み手が「文学者」であり作品を作者による「感情表現」や「芸術」として解釈し直した場合、深空は極めて神話的な性格を持った「神と人間の覇権争いや恋の物語」になるのかも知れません。
ゼウスが権力を掌握するまでにもとんでもない紆余曲折や愛憎劇が盛りだくさんだしね。これに着想を得た作品のひとつってことなら別に最終的に最高神に君臨するのは必ずしもゼウスじゃなくたっていいわけですから。

ことギリシャ神話においてはキリスト教や他の一神教のように「はじめに神が万物を創造する」という思想はなくむしろ宇宙史の出発点にあったのは「カオス」であり「ガイア」であり「自ずから自然物が誕生し始めた」って話なんでテイスト的にはこちらに近いですよね。

の最高権力者となったゼウスはもちろん「天界」のすべてを支配していますが、実は「海界」と「冥界」の主はそれぞれポセイドンとハデスっていうゼウスとはまた別の神であり、これも「リモリア」なる海底の大陸に「海神」の支配する都市国家が栄えていた深空の世界観にはかなり通ずるものがあると感じます。彼らのモチーフが「セイレーン」なのはもちろん承知してますがあくまで深空全体の世界像として共通点がある気がするという(早口

すると「ヘロス」のような位置付けの主人公や攻略キャラたちの今後の活躍によって「最高神」の座は入れ替わるのかも知れないし、あるいは最高神が達成しようとしていた何かを彼らが彼らなりの手段で達成するのかも知れないし、いずれにしても神話という文物の影響を受けた冒険とファンタジーの物語ってことになりそう。おおお、どう転んでもハピエン臭がするぞ。

ちなみにわたし神話学は全く専門じゃなくていま宗教学概論とか宗教の原初としてざっくりと教わるようなごく最低限の知識で神話とか語ってる。詳しい方が読んだらいろいろと間違えてて気持ち悪いやつかも知れん。ごめん(殴

アスタは悪魔?

最後は半分冗談みたいなもんなんやが、新約聖書唯一の預言書である「ヨハネの黙示録」に「告発者」として登場する「アスタロト」こそが最高神「アスタ」の由来なんじゃないかって解釈も我ながらなかなかぶっ飛んでいてそれはそれでありだなって思って(自画自賛

ユダヤ神秘思想「生命の樹」を上下逆さまにした「邪悪の樹」におけるアスタロトは4番「無感動」の悪魔であり、さらに悪魔学においては「過去と未来を見通す能力を持つ者」でもありますからね。

すると今回悪魔のコアを体内に取り入れてその力を手にしてしまったことになる主人公。
預言者の神託に神の次元で完結する救いの歴史の完成を見て、戦乱・飢饉・疫病・野獣がもたらす死の裁きを通り、すべてが沈黙したのちに辿り着くのは決して神の国などではなく、最高神を名乗る悪魔アスタが支配する破滅の王国アバドンであった、みたいな(厨二病全開

つか書きながら思ったんやが、いっそ厨二ならレイもセイヤもホムラもみんな黙示録の終末の「裁き」なんじゃないかって解釈もいい感じに炸裂を極めてるぞ。
終末とはキリストによる封印の開封からざっくり千年王国までを指すのだけど、「飢饉」はなんとなくロールバックによってもたらされた争いやエネルギー枯渇に当てはまりそうだし、「疫病」はもしかしたらレイがコアによる心臓蘇生の足掛かりになってしまったことで病変体なるものが生まれてしまったのかもだし、うーん「戦乱」も確か「神の民と争うために海の中から獣が上ってくる」「海が死人の血のようになる」とかって裁きだった気がするんだよな。いや違ったかな←

こうしてどんどん「世界の1/4の人が死ぬ」「海の1/3が枯れる」みたいなことになってって、でも最後にいろんな「復活」が起こり「預言が成就します」ってのが語弊を恐れず独断と偏見ではしょりまくった本来の聖書なのだけど、アスタが悪魔だった場合そうだなぁ、とにかく「復活」が起こらなければいいわけだから手始めにエーテルコアを「無」にしておきたいですよね。とは言え住人が清く正しく「死なない身体」を与えられる「千年王国」がついに白い御座の方を迎え宇宙というものがすべて消え去れば最後そこは完全なる神の国となり悪魔は関与するどころか存在さえできなくなるというシナリオですから、たとえば崩れかけてるらしいフィロスの宇宙には消えて欲しくないし、さらに万全を期して地球時代に裁きを集めフィロス星の誕生さえ阻止しておきたいかも知れません。

深空が黙示録だったら悪魔が理想とする世界はまさにまだ見ぬ黎明そのものってことになるんだな。そうかあれは悪魔の預言だったのかぁ(散らかり過ぎw