特別な休暇

これは深空ハンターに憧れる少年「ノブ」の過ごしたある特別な夏の日の物語。

夏休みの宿題に「将来の夢」というテーマで作文を書くことになっていたノブは、父親の旧友であり現役のハンターでもある「セイヤ」の家を訪れ、彼の職業について詳しく教えてもらうため、しばらくの間お泊りをさせてもらえることになる。

ノブにとって深空ハンターはアニメの中に登場する正義のヒーローであり、見たこともない武器を携え軽い身のこなしで必殺技を繰り出し毎日ワンダラーをやっつけている「すごい人」。
だけどセイヤは毎日昼過ぎに起き、奇妙な味のするスムージーを飲み、外に出たかと思えばのんびり散歩にショッピング、「戦闘服は着ないのか」「武器は持たないのか」質問してみても、望むような答えは一切返ってきません。

ただ、ひょんなことからセイヤが夜な夜なバルコニーからこっそりと家を出入りしていることを知ってしまうノブ。行先を尋ねてももちろん答えてはくれないのだけど、帰ってくると彼の体にはキラキラと光る星の欠片のようなものが付いている。

ある日ふたりが公園で木の枝や水鉄砲を用い「戦闘訓練ごっこ」をしているとそこに本物のワンダラーが出現。セイヤは少し離れた安全な場所に光の防護壁を生み出しノブにその中で待っているよう言いつけると、現場に戻り瞬く間にこれを一掃してしまいました。

一部始終を見ていたノブは、セイヤの剣から次々に放たれる流れ星のような光の刃に心から感激し、彼が街のヒーローとしてテレビ取材を受け人々から称賛されることを期待するのだけど、当のセイヤは称賛どころか人に見付かることさえ嫌がっているようだった。

セイヤがとにかく「すごい人」であることを知ってしまったノブは、いいことをしても名乗り出ないのは「すごいこと」であると結論し、自分も彼の意に従い、誰がどのようにしてあのワンダラーたちをやっつけたのか、この先もずっと「ふたりだけの秘密にしよう」と心に誓うのでした。

セイヤは未来人?

読みながらニヤニヤしてしまうくらい本当に可愛らしいお話だったんですが、ひとつだけ気になることがあって、実はこの物語、最後はノブの父親でありセイヤの古い友人でもある「エツジ」が、「息子とセイヤがどんな秘密を共有したのかは気にしないことにした」「何しろ自分も子どもの頃ノブと同じようにセイヤに騙された経験があるのだから」って締め括るんですよね。

ノブの滞在中、セイヤは例によってハンターの任務より恐らく個人的にコアを追う方を優先しているのだけど、なんとなくノブの夢を壊さないように、たとえば「ハンターになりたければたくさん寝ないといけないぞ」なんてなだめるようなことをたくさん言って聞かせていました。
ただ、どれも「騙している」とは言い難く、となると恐らく「なんでもない平凡な兄ちゃんかと思ったらめちゃくちゃすごい人だったんじゃん」って意味での「騙された」なのかなって思います。

セイヤは小学生の息子を持つエツジとはかなり年齢差があるように見えるので、エツジが子どもの時分には下手したら生まれて間もないくらいの年齢であるかも知れないセイヤ、そんな当時の彼に、これと「同じように騙す」なんてことが、果たしてできるもんでしょうか。

アプリ内でプロフィールを確認してみたらセイヤだけ年齢が「???」になってたんで、もしかしたらめっちゃベビーフェイスだから尋常じゃないくらい若見えしてるけどホントはアラフォーだった、なんてこともあるかも分かりませんが(ない、たぶんセイヤは「過去や未来を自由に行き来できる人」なんじゃないかな、って個人的には解釈しました。

ここから先は全部妄想なんだけど、たとえば暗点が改造コアを蔓延させて世界がめちゃくちゃになっちゃってるような未来から、コアテクノロジー的なものを用いた時間軸を移動できるシステムを使って、あちこち過去にやって来てはこれをどうにか阻止しようと奮闘しているところ、とかなんじゃないかなぁと。

3章で「コアの分析機器なのかも」とか言ってた彼の首輪のような装置は、もしかしたらタイムマシンのようなものだったり、あるいは未来に居る仲間と連絡を取り合うためのものだったりするのかも知れません。

ちなみに…

戦うセイヤの姿を「流れ星みたい」だとか、彼の光が黒いワンダラーを裂いて舞うのを「星空の中みたい」だとかってノブが形容してくれてようやく気付いたんですが、まるで「星」のような人ってことでの「セイヤ」だったんですね(いまさら
これをボイスもスチルもないシンプル文字だけの描写で表現してるってとこがホントにニクイよねぇ。はちゃめちゃにかっこいい姿で脳内再生されてしまったよ←