光と共に
こちら月影ハンターファンクラブ会長「量子社交人」という裏の名を持つ霊空行動部データ分析隊「シアン」が、大切なファンサイトを荒らす「アンチ月影ハンター」相手にオンライン上で激闘を繰り広げる熱い7日間を描いた物語となっています。
思い返せば本編1部6章月影ハンターの噂話に突然割り入って速射砲のように語り出すシアン先輩からは確かにちょっぴりガチオタみを感じたが、まさかのスマホ2台持ちに会社のPCまで使ってこんなに熱心に推し活してたとは思わなんだし、臨空市民が「ハンターランキングトップ10」なんぞ人気投票に熱を上げていることにも驚いた。
こっちの世界で言う佐川男子ヤマト男子みたいな感覚なのか? 深空でこんなに声出して笑ってしまったのは初めてかも知れんw
Evol制御装置報告書
深空ハンターのファンが集い彼らの人気投票を行う「ハンターランキングトップ10」なる非公式オンラインイベントにおいて、どうやら開催のたびにぶっちぎり1位に君臨してしまうらしい「月影ハンター」を良く思わない者たちが、「量子社交人」ことシアンの運営する熱量高めなファンサイト「月影を追う者」をハッキング、7日間の投票期間中1日1投稿のペースで「月影ハンターの暴露記事を投下していく」という妨害工作を開始した。
生粋のワンダラーオタクでもあるシアン、モモコの提示した「これから1ヶ月ワンダラーのデータ解析し放題」「ワンダラーサンプルセンター見学し放題」なんぞたまらん条件を蹴って早々に帰宅したイベント初日、PC前に正座待機して幸先のいい投票スタートを迎えるところだったというのに、実に難儀な1週間が幕を開けたのである。
暴露の内容はおおむね隠し撮られた写真や動画について「仮面の下はブサイクだった」「実はワンダラーの仲間だった」と根拠のない見解が添えられたものであり、シアンは持ち前の分析力と情報力を駆使して添付されたデータを解析、丁寧且つ辛辣な言葉で次々と論破していくのだけれど、最終日に投稿された記事だけは何やら毛色が異なって、それまでのファンを煽るような扇動的な文言はなく、代わりに「Evol制御装置」なるものの測定記録報告書が一部抜粋され淡々と綴られていた。
その装置は光のEvolverである記録対象者の頸部に装着され起動すると全力でEvolを放つことができなくなる機器だそうで、参考資料として赤いバーチャルの光の輪が喉を締める魔の手のように巻き付いた首元の拡大写真が添付されているのだけど、そこにフリンジの付いた見慣れた銀の耳飾りが映り込んでいることから、「月影ハンターが何者かに捕われこの謎の装置によって殺されたかも知れない」と推断した大勢のファンがコメント欄に殺到、サイト内はこれを否定するに足る根拠を量子社交人が提示してくれるのを切望する雰囲気が漂っている。
誰もいない先遣隊のオフィスでそれを確認してしまったシアンは、その膨大な月影ハンター百科にない未知なる情報に動揺するあまり心拍数や呼吸が乱れてハンター探査器ヘルス機能の警告音を鳴り響かせてしまうんやが、最近よくオフィスを出入りしているらしいセイヤが音を聞きつけてやって来て彼を落ち着かせようと声を掛けるも全てが裏目に出てしまうの、困り顔が目に浮かぶようでかわいくて笑ってしまったなw
いや確かに推しがどこかでもう死んじゃってるかも知れないって言ってるのになんでもない顔で「早く帰った方がいい」なんて返されたら過呼吸必至なんだけど、万が一いま目の前で紙袋を差し出してくれてるのがその推しだなんて言ったら過呼吸どころの騒ぎじゃないし、とりあえずシアン先輩が無事で良かったよ←
ひとつ気になるのはこの報告書がどういうルートでアンチに漏れたのかってところかなぁ。
文脈から察するに恐らく最大Evolレベルを計測しようとしてセイヤを刺激したが何やら首に特殊な制御装置があり測定ができないってところから調査研究が始まり、「現在の技術で製造できる装置ではない」って言うんで確実に地球時代の人間が独断でやっていること、最終的に「装置に改造を加え限界値の上限を上げた」「稼働原理もある程度把握した」ってことなんで仮に遠隔操作的なことができないなら報告者は直接セイヤに接触してる人、今のところ思い当たるのは来たる夜明け晴空広場襲撃事件のリヘイ周辺人物なのかなって気はするが…
参考写真にもフリンジの耳飾りが映り込んでいるのでね。直近セイヤがそれを身に付けた状態で首輪を赤く光らせていたのがその場面でした。
Evol消費量の上限を上げることはどうやら危ないことっぽいし、たとえセイヤの命が脅かされようとも彼のEvolエネルギーを利用できればそれでいいんだろうところを見るとやっぱりEVER絡みなんだよなとは思うのだけど、報告書そのものがこうして「セイヤの目に入っちゃう」とこがちょっと「らしくない」感じがするのだよね。
ひょっとしたら最後の投稿はアンチ月影ハンターのしわざではなく出典元が直接動いていたのかも知れないが、むしろそんなに正々堂々宣戦布告してくるなんて、ますます隠密を得意とするEVERらしくないんじゃないか?
同じ光
波乱の人気投票は結局月影ハンターがダントツ1位の座を譲らない結末で幕を閉じ、悪質なアンチに屈することなく彼の名誉を守り続けた謎多きハンター「量子社交人」も初のトップ10入りを果たすという健闘ぶり、セイヤとシアンも無事仲直りしてめちゃくちゃ幸せな気持ちになれるエピローグでした。
実はシアン、連日アンチのでっち上げに反論する中でふと解像度を上げた動画の中の月影ハンターが立ち去るときに舞う光に「見覚えがある」「霊空のオフィスで隠れていたときに同じ光を見たことがある」と感じたり、一部目撃情報については確かに信憑性もあり、たとえばコアが大量に破壊されてしまったらしい危険な任務の現場、鏡霊が再び現れた地下鉄、晴空広場の襲撃事件、どういうわけか月影ハンターの噂が立つ場所には「毎回セイヤの姿がある」ことにも気が付いてしまうのだけど、最終的に「セイヤくんも月影ハンターの大ファンだったんですね」って結論したみたいです。
きっと本業が「データ分析」で「月影ハンターガチ勢」であるシアンが本気で暴こうと動いたらセイヤに辿り着けないわけがないのだけど、恐らく推しを「憧れ」のまま大切にしたいタイプのオタクである彼はそれをしようとも思わないのでしょう。
古い個人掲示板のバックエンドデータからデマの痕跡を探す際、子どもの頃ハンター協会のサイトに残した自分のコメントについたリプを読み返し、ハンターになろうと決意したある夏の日に想い馳せたりする一幕もありましたが、シアンはワンダラーじゃなく月影ハンターに導かれてここに居るんだね。ちょっとグッときちゃったな。
心傀
シアンがTwinkleコレクションにフィギュアを発売して欲しいとリクエストを送るほど特別気に入ってる様子のワンダラー。なんとなく詳しめに解説されているような感じが気になったため覚え書き。
アンチの目には「月影ハンターとワンダラーが寄り添い合って熟睡している」ように見えたらしい盗撮写真を解析し終えたシアン、映っているのは精神型ワンダラー心傀でありよく見れば結晶の刃からは光沢が失われコアエネルギーが尽きた状態であることを解説、心傀のように人間の意識を攻撃し幻覚に襲われる可能性もある極めて危険なワンダラーとの戦いを終え疲れ切った月影ハンターを見掛けたら安眠を妨げるより柔らかい毛布を掛けてあげて欲しいと注意喚起を呼び掛けた後、画像の中の体を丸めた心傀の姿を嬉しそうに何度も確認してるんですよね。スレンダーな体型や深淵を連想させる空虚な顔がとても魅力的らしいです。
これ体を丸めた状態から直後には靄となって消えているのだよな…?
「奴らはエネルギーに変わって散っていく」「それが奴らの終着点だ」って聞いてたが、2部2章引力錨を壊しても赤ん坊のように縮こまるだけで靄にならないワンダラーを知ってしまったせいで嫌なことばかり考えてしまうのだけど。涙
思い返せば心傀ってたぶんまだ見ぬ黎明読了直後に「病変体」から連想してしまったワンダラーなのだよな。
病変体は「青いフック」に「青い目」とやたら青が強調されてたが、青と言えば終わらない冬長恒山の磁場の核周辺の木々やトオヤが結晶化してしまう直前胸元に光っていたものがそうだったし、今思えばジョノの母親が地下工場で扱っていたコアはそれこそ人間へ移植するための人工物だったのかも知れないな。反応して光る部位が「目」や「胸元」なのもまるでコアが介入する場所を示しているかのようだし…
と言うか、これほど作り込まれているのだからたとえば改造コアの元の青いエネルギー軌道とエーテルコアの赤いエネルギー軌道とか、杉徳医療生命維持カプセルの命を注ぎ込む青いチューブと死を吸い出す赤いチューブとか、あるいはリモリア人が人魚に姿を変えるときに瞳が青く光るのとか、もしかしたら獣人なのかも知れないシンの目が赤く光るのとか、全ての場所に散りばめられた「青」と「赤」も今後物語の謎が明かされていくにつれて何かしらの関連性を帯びてくるのかも知れんぞ(深読み
これだけの大風呂敷一気に回収されたら痛快だろうなぁ。