空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

ページのトップへ

星からの手紙

セイヤのお誕生日思念ストをようやっと読んで参りました。ハイボール3杯摂取してからのスト読みだったせいか自分でもドン引きするくらいびしゃびしゃに泣いてしまったのだが、こんなに可愛くて幸せなお話なのに読み終えて一生涙が止まらないのは決してべろべろに酔っぱらっているためではないことをここに断言したい←

と言うのも、わたしはセイヤ伝説スト指間の流星を実は死ぬほど引きずっていた(突然なに

もちろん絆や月位思念がざっくり各攻略キャラの個ストとしてシンプル本編時間軸の彼女相手に展開するいわゆる「攻略ルート」となっており、それぞれがそれぞれの枷となるものを断ち切って今世の彼女と幸せになることを選択する物語なのだろうことも理解できてはいるのだが、たとえば忘却の海の方でがっつり彼女の心臓を抉り出している潜行者ホムラとの物語や、愛する人と幾度となく死に別れる預言者レイの物語が、なんとなくそれとはまた別の場所へ昇華できているのは恐らく結末が「死別」だからであり、わたしの中では指間の流星だけがどう足掻いても最後は「生離」で別れは「継続」してるもの、個ストにおけるセイヤにとってもそれは今なお「未完の物語」なんじゃないかって想いを長らく拭えずにいたのである。

個ストにおけるセイヤは、正直これまで何度も何度も「星はどこへも行かない」ことを言葉を尽くし精神を尽くして今世の彼女に伝え続けてくれている。
でもわたしがセイヤなら、たとえそれが本意でもきっと心には何か吹き溜まりのようなものを鬱積させているはずだ。気を咎めるはずだ。ロールバック計画がついに決行されるあの旅立ちの日、「俺は何も変わってない」つまり「俺はセイヤだ」という訴えに返事をもらえないまま玉座の間を後にしたことに未練や執心を残しているはずだ。どこかそんな意識で彼の誠意ある言葉の数を聞いてきた。

奇跡的にお迎えすることができたイベ産思念21日に至っては「ついに心が通じ合ったふたり」まで見せてもらったと言うのに、「ずっとこうしたかった」セイヤが「どのセイヤがそれを言ってるのか」問われただ一言「俺はセイヤだ」と返答すれば、要は「全部のセイヤがそれを言っている」のだと彼はなお伝えたい、もちろんストーリー上「偽装同棲彼氏のセイヤも霊空でパートナーのセイヤも」のニュアンスなのだけど、個人的には生離死別を繰り返して来たあのセイヤもこのセイヤも本当はそう言いたかったし応えてもらいたかったのだ、なんてまるで彼の「心残り」の表れであるかのように解釈し甚く苛まれたりもした。

今回のストーリーは誕生日を謳いつつ実は通して本編時間軸におけるこれまでのセイヤに対するおおよそ「彼女からの返事」になっている。

主人公ちゃんが後ろ手に隠した花束を一束ずつセイヤに手渡していく際、「これはパートナーのセイヤに」「これはご近所さんのセイヤに」と添えていくのがそれこそ21日で彼が打ち明けてくれた「パートナーのあんたもご近所さんのあんたも全部独占したい」のきっちりアンサーになっているのはもちろん、わたしが何よりぶわっときてしまったのがこちら↓

「これは誰にあげるんだ?」の問いに、それ以外ない選択肢「セイヤ」をタップすると、「過去現在未来全部のセイヤに」、だなんて返答になる。涙

前述の通り「彼女を独占したい」のはパートナーのセイヤでもご近所さんのセイヤでもあり同時にクラスメイトのセイヤでも兄弟子のセイヤでも当然筆頭聖剣騎士のセイヤでもあったはずだ、と長胸を痛めていたわたしにとっては、これが「全部の彼女にその想いが届いて全部の彼女が応えてくれた」のだと思える奇跡のような言葉だった。
あるいは、全部のふたりが成就して報われた、という「救い」や「赦し」のような言葉だったかも知れない(特殊解釈

この後ふたりはあの不思議ワンダラー「モフモフ」の居た花畑に赴き整地された一角にスターチスの花の種を蒔くのだが、いつの間にかわたしにはセイヤがもはや「仮にワンダラーが居なくなり光害が対策され更地が花畑になるならここが俺たちのウルル星でもいい」くらい潔く吹っ切れて見えるようになっている。
ふたりで土をいじり、顔を汚し、じゃれ合って花の上に倒れ、猫のように鼻先を擦り合わせる、だなんて、それはふたりだけの星に逃げてセイヤが彼女としたかったことのすべてだったじゃないか。
なんて幸せな描出なのだろう。涙

そうしてすっかり日が暮れた頃、ふたりは「月湾区」にある音楽噴水の前で自由参加型のダンスイベントみたいな催しにちょっとだけ加わってみることにするのだが、ここではセイヤが恐らくかつてフィロス王族時代「誕生日パーティーからは逃げる口実を作っていた」らしいこと、でも今はこういうことが「楽しい」と思えるしそれが「あんたと一緒だから」だなんてことを語ってくれたりもする。

「もう一度言って欲しい」と言われれば意を決したように改めて「あんたが好きだ」とセイヤ、これを受けた彼女が彼に抱きついて「来年の誕生日も一緒に過ごそう」と口にすると、彼は今にも泣き出してしまいそうな笑顔で噛み締めるみたいに「もちろん」だと答える。なんて顔するんだセイヤ…(嗚咽

以前のわたしならこれが故郷に想い馳せるような気が差した表情に見えてしまっていたのかも知れない。でも今はようやく「成就した」「報われた」表情に見える。彼の選択が彼の幸せであることを曇りなく信じられるようになっている。それがひたすらに嬉しい。涙

ことセイヤ個別ストーリーにおける主人公ちゃんに関しては、恐らく過去数の彼の怪しげな言動よりどうやら「ここが彼の本当の家ではない」らしいこと、「いつか帰ってしまう日が来るかも知れない」ことをなんとなく察し懸念を抱いているのだね。

でも大丈夫。セイヤの故郷「スターチスの咲くところ」はあの女神の聖剣碑の前じゃなく、今日ふたりで蒔いた種が芽吹く場所なんだってさ。
それに、こうしてあなたと居ることが彼の「自由」なんだって。「星に傍に居てもらいたい」と「自由になってもらいたい」は同義なんだって。
だから恐れず「セイヤが永遠に自由でいられますように」と心のまま願ってね。あの礼拝堂でしたように、流れ星は「分かった」と言ってくれるから。涙

ところでこの噴水のシーン、空には突然流星雨が降りその場にいる人たちが驚き声を上げるような描写が入るのだけれど、2033年42号禁猟区で眺めた「滝のような天の川」を最後にどんどん星空が見えなくなっているというのは臨空市内でも街灯や建物の光が多い都市部に限るのかな? それともあれは「世界の深層」ストだから本編補完のカテゴライズで個ストとは区別されるべきなのだろうか?

と言うか、どう考えても今スト肝心なのは「星からの手紙」なはずのに、最序盤から大号泣してしまったせいであの「タイムカプセル郵便」のくだりがまともに読めちゃいないんやが(殴、イベストの方でわたしが「怪現象」呼ばわりしてしまった例の手紙の真相は、営業最終日に「記念の手紙を書いて出す」というキャンペーンを行っていた郵便窓口の前をたまたま通りかかったセイヤが局員に声を掛けられて、なんの気なしに「当時まだ存在していなかった住所」を適当に書いて預けたら長い年月を経て偶然彼女の元に届けられたってなあらましだったよう。いやすんごい巡り合わせだな…(野暮は言うまい

当時のセイヤは更地になった花畑や廃止になる郵便局、近日出ていくことになった部屋など「消えていくものたち」のために手紙を書いたと言うが、これを明かされた彼女は改めてセイヤに向き直り、肩を掴み、鼻を突き合わせ、「誰かが覚えている限り何も消えたりしない」ことを「一字一句真剣に」彼に説き、するとセイヤは「長い沈黙」の後「柔らかい表情」で彼女の髪を耳にかけおもむろに額をくっつけてくる。

その「沈黙」の最中セイヤは一体何を想っていたのかな。わたしはやっぱりクラスメイトの彼女や妹弟子の彼女やフィロス女王の彼女が「セイヤが覚えている限り消えない」と言ってもらえてるみたいで涙出てしまったな。

ちなみに彼女が昔のセイヤに宛てた手紙は「持って帰って読んでもいいか」と彼が宝物のように厳重に扱うため何が綴られていたのかわたしたちは確認させてもらえないのだが、ぶっちゃけ内容なんざこの際どうだっていい、「普通の日と変わらない日」だったはずの誕生日が「彼女からの手紙を心待ちにし過ぎて忘れたくても忘れられない日」に変わったことがいちばんのバースデープレゼントだったのだよね(ないてる