空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

ページのトップへ

4部1章 雲へ隠す

年始のバタバタが落ち着きひさびさブログの管理画面を開いたら目を疑うようなアクセス数が記録されていたのだが、これは計測機能がバグってしまったか炎上でもしていたのだろうか…? (怯

よりによってめちゃくちゃ痛しい思いの丈を勘違いポエマーのように綴りまくったあの駄記事にたくさんのご訪問をいただいてしまっている。穴がなくても掘って入って土かぶりたいくらい恥ずかしい←

きっと何かしらの検索ワードに一時的に引っかかってしまっていたのだろう、と自己完結しかけたが、バグっていたのはどうも検索流入でなく「SNS経由」で覗いてくださった方の数らしい。

こんなの初めてぞ…? もしかして心優しいどなたかがどこかナウい媒体で記事をシェアしてくださってたりしたのかな(プラス思考妄想

こんなにたくさん反応いただけたらなんだって嬉しい。たとえ晒されて炎上してたんだとしても断然嬉しいが勝るw
読んでくださった方、いいねくださった方、妄想が事実なら記事を紹介してくださった方、フレ申請までくださった皆さまも本当に心からありがとうございます。
いろんな界隈を転と長年オタクしてますが、恋と深空ファンの方はまじで断トツ奇跡のように寛容で温かい。本当に優しい世界。涙

そして今更ではあるが、年始はアプリ周年とマヒルカムバックのティザーにどえらいお祭り騒ぎだったのだな。巡礼イベもすっとばしてしまったし、アプデあることさえまるで知らなかった情弱の民はいま完全なる浦島太郎である(しろめ

もちろん夏頃にはマヒルの再登場について「シン神話における現周期(主人公の記憶の中の別世界)が明かされたその次だ」なんて勝手に妄想していたし、新年早臨空市役所からは何やら意味深なお知らせが届いたし、間もなく帰って来るんだなってのはなんとなく感じてはいたけども。

これ、たとえ血の繋がりがなくとも戸籍上「兄」であれば敬愛の対象であっても性愛の対象ではない、というモラルや文化をお持ちの国や民族に属する方への恐らくはご配慮なんだろうが、いわゆる義兄が攻略できる乙女ゲーに最早なんの抵抗も違和感も覚えない熟成されたオタクかつ日本国民のわたしにはむしろ「本人の届出もなしに行政庁の一存で離縁証明が発行される戸籍制度」の方に驚きや動揺を禁じ得なかったよねw

改めてここは「臨空市」であって名古屋市でも大阪市でもないフィクションの世界なんだってことを思い出し現実にも帰って来れるようになりました良かった←

流雲区爆発事故

今章は天行市流雲区という地区のとある別荘地で発生した特異エネルギーの爆発事故を端緒として展開していく。
ハンター協会は限られた証拠からこれがあの花浦区の爆発と同種類似事件であると判断、天行支部は爆発現場にエーテルコアが存在する可能性を強く疑い本部への調査協力を要請するも、人工浮遊島である天行市が存続のために消費するエネルギー管理運用の一切を任されているらしい「遠空艦隊」という組織の「新任執艦官」が「深空トンネルの中」に居ながら「艦隊の機密に関わる」という理由でハンターの介入を拒否、天行支部も要請を取り下げ協会は調査から手を引かざるを得なかった。

雲の彼方へ「裁決の庭」が同じく「空に浮いて」いたことから現時点わたしにはなんとなくこの「天行市」が「純白の聖衣」をまとった「迫害者」や「搾取者」の象徴のようなものに見えていて、するとこれを一任されている「遠空艦隊」なる団体もそれこそあの「街の孤児」さえ軍籍に編入させられていた司教お抱えの「聖裁軍」のような、EVERグループが配下に抱えるあるいは癒着関係にあるあわや後ろ暗い空軍部隊だったりするんじゃなかろうか、なんて第一印象を抱いてしまったな。

これまで何度か描写のあった「深空トンネル内の数値観測」なんかもすべてこの「遠空艦隊」が一手に担っていたのかな? なんとなくそっち方面はEVERに転身したロールバッカーたちが先導者なんじゃないかと思い込んでいたけども。

と言うか、3部1章時点では協会内でも一部のハンターしか知り得ない「極秘任務」だったはずの「エーテル特別司令」って今はどこの支部でも当たり前に共有されてる公然たる任務になってるの?

ぶっちゃけ前章ミナミさんから受け取って帰った「あなたの家で起きたあの事故に関する情報の記載がある」という「EVERグループ秘密調査報告」なる書類も個人的には詳細を物凄く楽しみにしていたんやが、冒頭にて「どうやらあれもこれも全部黒幕はEVERだったらしい」なんぞたった一言で片付けられており、いや特に重要でないから省かれているんだろうけど、すべてを隠密に運び特技はトカゲの尻尾切りである大やり手が一体どんなところにどんな証拠を消し忘れ目の曇りがちなハンター協会にそれを握られるに至ったのかちょっぴり気になるところではある。

花浦区の爆発に関しては「暗点のボス」に罪をなすりつけ無事完遂のつもりでいたみたいやが、こうして真実に辿り着けたのはたとえばシンの工作の方がさらに巧みだったため、くらいの認識でいいのかな?
そろそろEVER内部にもその実態のやばさに気付いて幹部たちを上手く欺きつつこちら有利に働いてくれている内通者がひとりふたり現れ始めてもいいような頃合いって気はしてるんだがな。

爆発当時現場にいた幼い兄妹のうちひとりは負傷により入院、もうひとりは「死者」ではなく「行方不明者」として処理されているというますますあの事件を思わせるような事後状況に居ても立っても居られない主人公は、ミナミに頼み込み「長期休暇」を取得すると近日赴任予定だった士官候補生の身分を拝借し遠空艦隊新人臨時寮に潜入、ハンターとしてではなく予備士官として現場調査に赴き手掛かりを探り始めるのだけど、辛うじてエーテルコアの波動痕跡を感じたところで「事件の容疑者が現れた」との知らせが入り調査は一時中断、各部隊は犯人捕縛のため天行市でもっとも高い「衛星島」に「指揮センター」を構える基地本部へ帰還することになる。

恐らくレイの母校である天行大学やマヒルの通っていた航空アカデミー始め最先端の研究センターや科学技術企業が建ち並んでいるエリアが「主島」、その周りを浮遊しているのが「衛星島」なのだとは思うのだけど、いやいやもう小さな恒星系の走りのようなもの生み出してしまってるじゃないか人類(驚

今章読了で天行市情報が更新されたけど、これは「雲中列車」から眺めた景色なのかな?

遠空執艦官

遠空艦隊新任執艦官の遠征艦がもう間もなく着艦予定だという本部駐機場に到着すると、容疑者と思われる男は見たところすでに犯行を自供しており、右手には「爆発装置」なるものを携え何やら興奮した様子であることから包囲する側される側両者膠着状態のまま身動きが取れなくなっているもよう。

そうこうしてる間にどっからどう見てもマヒルにしか見えない執艦官が帰還して艦隊の最高位然として犯人を難詰し始めるのだけど、個人的にはぶっちゃけこれがどちらの主張が正しいのか判断し兼ねる訳合いと言うか、どちらの言い分も同じだけそれっぽかったりするのだよな(苦悩

艦隊や新任執艦官に対する天行市民の不信感を煽るために武器庫の武器を無断で持ち出し住宅地に爆発物を設置したとして処分に問われているこの犯人はそもそも艦隊の士官のひとりであり、突出した成果を上げたことで名誉ある役職に抜擢され一年間トンネル観測任務に就いていたというが、本人が言うにはその任務中「艦隊の機密」を暴いてしまったために身体に「思考制御チップ」を埋め込まれ「お前たちに操られていた」、脅しのために妻子は監禁され死に追い込まれた、爆発は復讐の目的で艦隊を襲撃したために起こったものだ、ってな顛末らしい。

これに対し「宇宙放射線」を長く浴び続けたことで記憶障害を患った彼は処方されていた「セベシング」なる向精神薬を過剰摂取し錯乱状態となって自らの手で家族を殺めその苦しみから逃れるために都合の良い嘘のシナリオをでっち上げたまで、というのが「手に入れた資料」を元に下された執艦官の判断、だったりする。

犯人は「声帯を引き裂かれたかのように」不自然に掠れた声をしていると言うし何かを患っているのは間違いないのだろうが、最終的に「お前を救う必要はない」なぞ冷たく言い放った執艦官がブラックホールのようなものを生み出し有無を言わせぬ力で男を呑み込み跡形もなく消滅させてしまうようなところを見ると、やっぱり「裁決の庭」や「いわれのない罪で裁かれるもの」が連想されてしまい、それが本意であるなしは置いといて艦隊が「一体どんな黒を純白で覆い隠しているのか」勘繰りたくなってしまうよな。

強いて言うなら本当に「艦隊への復讐」のために起こした爆発なら巻き込まれたのが「幼い兄妹」に留まっている点にやや矛盾を感じるくらい?
とは言え本当にEVERが背後に潜んでいるなら「チップ」の埋め込みほど納得感のある言い分ってないし、でっち上げたシナリオにしてはそのものずばり過ぎやしないかと(震

引力制御

予備士官に扮した主人公の存在に始めから気が付いていたらしい執艦官、隊列の中にもうひとり謀反者の可能性がある正体不明の人間が紛れていることを告げ知らせると彼女をEvolで制し「取調室」へ連行する。この時点ではその場に誰ひとり彼女を疑う者はいなかったように見えたけど、敢えて周知させたのは厄介なタイミングで明るみになるより先手を打っておくべきだと結論したためなのかな?

悪天候の中「お菓子を買いに行く」と言って聞かなかった幼い自分を部屋の中に留まらせた兄のEvol「引力制御」と同じ力で制止されてなおまるで別人のように冷酷な執艦官が「本当にマヒルなのか」しばらく確信が持てないのだけど、監視カメラに見せ付けるように大袈裟な身振りで尋問を終えついに「オレはお前の兄ちゃんだ」と「人懐っこい口調」で懐かしい言葉を口にする彼にようやく「マヒルが帰って来た」ことを理解し安堵する彼女、ふたりは抱き合って再会を噛み締めるが監視カメラはもう作動していないのか?←

爆発のとき何があったのか、なぜ行方知れずのまま連絡も寄越さなかったのかと問い詰められ、「執艦官に着任しなければ自分は廃棄されていた」「そういうルールなんだ」と返答するマヒル。
加えて爆発直後のことは「まるで夢を見ていたかのようにおぼろげ」であり「エーテルコアが影響していたのかも知れない」とも見解するが、恐らく「変異」の兆候が見られる研究サンプルたちの末路「廃棄」を迫られていたマヒルの身体には少なくともコアや結晶その他類似する人工物いずれかが内在しているのだろうし、それがエーテルコアと反応して「記憶がおぼろげになる」というのも確かに聞き覚えがあり、すると花浦区の爆発は「Unicorn実験に携わった研究員の抹殺」だけじゃなく「マヒルの廃棄」も目的のひとつだったりしたのかな?
おばあちゃんが彼女の兄として彼を一緒に引き取ったのも彼らが同じ境遇にあったから同じように守ってやりたかったってことだったのかも。

彼のEvolは単に「物を浮かせる」ものでなく「引力を制御する」力だと言うし、特異エネルギーを集結させる装置でもエーテルコアが完全な状態になろうと働く力でもワンチャン人工星核エネルギーでもありそうな「引力」を制御できてしまうとは、EVERにとってはもっとも煩わしいもっとも敵に回って欲しくない相手なのかも知れないし、逆にもっとも「手に入れたい力」でもあったりするのかも知れない。
それにしても彼のモチーフであるリンゴが「原罪」のみならず「万有引力の法則」を隠喩する描出でもあったとはなるほど恐れ入る(唸

マヒルが遠征艦で「深空トンネル内」に居たのは「任官試験」だったってことみたいなんだけど、同乗者である「副官」の男にはどうも乱流に呑まれたと見せかけて殺されそうになってたり後ろ手に構えたナイフで殺されそうになってたりとにかく殺されそうになりまくってるんで、これがEVERの差し金ならマヒルの名前は「執行リスト」の余程上位にあるはずだ。

副官は「スパイ」呼ばわりされ逆に討たれてたが、となると艦隊はEVERとは癒着関係にあるわけでなく「EVERの人間がどこに潜んでるか分からない組織」のニュアンスだったりするのかな? 「保守派の連中がオレを消そうと考えたんだろう」とか言ってたんで「なんて物騒な派閥争いなんだ」くらいに思っちゃってたけども。

ミズエ

執艦官の権限により新たな「副官」に任官した主人公は流雲区の爆発について「エーテルコアやEVERが関わっているかも知れない」のはもちろん何より負傷者となった妹の「ミズエ」が行方不明者となった兄「モリト」の身を案じ帰りを待っているはずだとマヒルを説得し、「艦隊が全権を握っている」というこの事件の調査を「自分の身をちゃんと守るなら」という条件で許可してもらう。

まずは「ヴィロ医療センター」なる機関に入院しているというミズエに話を聞きたいところであるが、「主治医の許諾がなければ面会はできない」とのことで困り果てていると、何やら「秘密の用事がある」からとその機関を訪れていたらしいレイに遭遇、恐らく彼も結晶化の件であれこれ動いているのだろうし悪夢の激化がめちゃくちゃ心配なんだけどこうもばったり出くわすとやはり安心感ハンパないな(拝

主治医とは元同僚でありミズエちゃんの「心臓検査」を担当したというレイの計らいにより彼女とは少しだけお喋りできて、どうやらお兄ちゃんを探してくれるつもりでいるらしい主人公の言葉に心を開き「爆発の直前に何があったのか」打ち明けようとしてくれるのだけど、そのタイミングでなぜか艦隊の「尉官」が病室を訪れ「どうして副官がここにおられるのか」と探りを入れてくるためそれ以上の聞き込みは叶わず、とは言え彼女が別れ際に渡してくれた「ルシュカ」と名の付いた犬のぬいぐるみには音声の録音再生機能が搭載されており、そこには「お兄ちゃんどこに隠れてるの?」「秘密基地だよ」というような仲睦まじい兄妹の会話が記録されていた。

これによりモリトがいまだ「秘密基地」に身を隠しているのかも知れないと考え至った主人公はその足で例の爆発現場を訪れてみることに。

全然関係ないけどわたしレイ先生が身を屈めてする幼女への声掛けめっちゃ好き。雪まみれの階段ワンワンの下りもめちゃくちゃ萌えたけど今回の「牛乳飲めたの偉いぞ」「もうそんなに痛くないね?」も優し過ぎたまらん(倒

モリト

事件現場爆発痕付近でルシュカの音声を再生してみると「次元コア」の最後の欠片を手にしたモリトが「裂けた空間」の中から現れる。聞けばそのコアの欠片は「お父さんとお母さんに貰った」ものであり、危険な目に遭ったらそれを使って隠れること、また両親と同じ艦隊の制服を着た大人たちには決して見付かってはならないことなどを言い付けられていたらしい。

兄妹は次元コアによって生成される空間を「秘密基地」と呼び遊び場のようにして過ごしていたようだけど、それは誰にでもできることなのか? なんかめちゃくちゃ「使いこなしてる感」あるような。

モリトくんは顔や後ろ首に「黒い結晶」が現れ始めているんやが、主人公がそこに触れると「結晶の動きが止まる」と言うんで悪ふざけカゲトの結晶化をああして食い止めたのもシンの力と言うよりは彼の「エーテルコアの力」だったのだろうと思う。「化け物になってしまった」ハンチングも恐らくはこの力を求めていたのだな。爆発の犯人もひょっとしたら同じ理由でここを襲撃したのかも?

お父さんとお母さんは何者なのだろう。「同じ制服」と言うからには艦隊の人らなんだろうけど、士官も武官も一般隊員も制服ってみんな同じなのかな? 見たところ「子どもたち」の方が艦隊あるいはそれを装ったEVERに狙われているみたいだがそもそもなぜご両親が次元コアの欠片を所持していたのかも気になるな。

いずれにせよ今モリトを狙うのは「艦隊の制服を着た大人たち」であると理解した主人公は当然そのひとりであるマヒルを含む遠空艦隊全部隊の目を盗み彼を保護して天行を離れ一刻も早く治療を受けさせてやらなければならないと思い至り、もっとも信頼できる安全な受け入れ先を確保してからもう一度迎えに来るまで今しばらくここで「秘密基地」に隠れているようモリトに提案する。

長瑕病院で同じ症状の患者を治療していたレイに電話で事情を説明すると、彼はこの症例を最初に見たのが長恒山で命を落とした自分の先輩であったこと、それがワンダラーの襲撃によって発生した「エネルギー結晶」が人体に介入し「新たな肉体」を生成して精神を蝕むという症状であること、これらを「結晶感染」「異化」と称してファンと共に治療薬を研究していることなどついにすべてを彼女に打ち明け、話を聞く限りモリトの結晶化は「まだ深刻ではない」が早急に彼の両親と連絡を取り明日にはAksoで治療が受けられるよう手配してくれると言う。

これマヒルの厚意に甘えて臨時寮から彼の自宅に滞在先を移してしまったことがだいぶあだとなってるな。まぁ副官が臨時寮に住んでる時点で変過ぎるが、上手くいけば今すぐモリトを連れ臨空へ逃げても「予備士官が激務におののいて飛んでしまったか」くらいで済まされてあれこれ詮索されずだいぶ時間を稼げただろうに。

何やらめちゃくちゃハラハラを感じるが、レイの声を聞き彼が待っててくれてると思うと心底「大丈夫」「何も心配ない」気がしてくるから不思議なもんである(絶対的信頼

バイパー

「今どこだ?」「いつ帰る?」「晩飯は何がいい?」なんぞマヒルから大量の過保護メールと不在着信が残されていたことに気が付き慌てて返信をしつつ帰路に就くと突然の雨に降られ、「爆発事件のせいでみんな怯えてる」「ワンダラーもどんどん増えている」なんて愚痴をこぼす通行人に紛れ雨宿りをすることになる主人公。

そう言えばレイも自分が天行に居た7、8年前に比べ街の雰囲気はだいぶ様変わりしてこれまで目にすることも稀だった「艦船」が行き来したり艦隊が地上を封鎖したりすることに違和感を覚えていたみたいだが、住民たちはことさらに不穏となっているのだろう。

しばらく雨をしのいでいると見ず知らずの黒ずくめの男が突然声を掛けてきておもむろに襲い掛かってくるのだが、この男が「蛇のような二股の舌」と「白い縦長の瞳」を持ち後の会話から名前までまんま「Viper(毒蛇)」だったりすることから、個人的にはこいつが今後まるで旧約聖書創世記「知恵の木の実」を象徴するかのような「マヒル」というキャラクターを主軸とした物語においてもっとも重要な「そそのかし」の役割を担う「年を経た蛇」、つまり自分の「骨の骨」「肉の肉」である彼女を「愛し守らなければならない」立場であるマヒルの伺い知らぬ間に彼女に「善悪を知る力」を与えその「支配」に「背く」ことを促すキーパーソンとして描かれるのではないかと踏んでいる。

バイパーは指を「刃物」に変形させることができ、ハンターの彼女が「一筋縄ではいかない」と感じるほど体術に長けていて、打ち抜かれた身体からは「数えきれないほどの電子部品」が飛び出しこれが特異エネルギーに吸い寄せられるようにして「ワンダラー」に変異する。もしかしたら彼の身体は「特異エネルギーと共鳴できる」らしい「RFチップ」のような器機でできているのかな…

どっかで盗み見てたんじゃないかってタイミングで駆け付けて加勢するマヒル、先に帰って家で待つよう彼女に言い付けると「暗闇の中」に男を誘引しそこからはバイパーとマヒルふたりのやり取りになるのだが、どうやらバイパーは「教授」なる人物に「今はまだ彼女に手を出すときじゃない」と命じられてはいたものの、自分のような「出来損ない」ではなく「完璧な器」であると聞いていた彼女がなんぼのもんか「ちょっとからかってやっただけ」、マヒルのEvolには手も足も出ず身体は崩れ落ちる寸前というくらいまでバラバラにされ「呼吸困難」にさえ陥るが、マヒルの方は「今度彼女にちょっかいを出したら殺す」なんて忠告するんで恐らく身体はどれだけ破損してもまた組み直せる仕様なのだろう。

マヒルのことを「シスコン」だなんて挑発しているところを見ると少なくともふたりが兄妹として育ったことを知っているくらいには彼とは浅からぬ仲、そして「最後の掃除まであと72時間もない」「コアの欠片を回収できなければお前は終わりだ」という意味深な捨て台詞を残しているが、やっぱりマヒルはモリトや協会の持つ次元コアの欠片を手に入れなければならない状況にあるのだな。

バイパーもマヒルも同じ「教授」に何かを握られているようだけど、これは孤独な灯火天行大学でコア心臓介入医療法の研究を率いていた医学部教授のこと? いや違うか。あの教授がやばいやつならヤスと一緒に出てきてるはずだ。

掃討作戦

翌日彼女は「天行の友達に会う」という口実で家を空けようとするのだが、前日雨に当たったせいか体調が優れず一日家で休んでいるよう促されてしまう。正直めちゃくちゃ疑り深く何度も何度も行先を尋ねどうしても行かせたくない様子のマヒルは恐らく彼女が今夜モリトを保護するつもりでいることを察しているのだろう。

トンネルの波動異常の影響で活発化するワンダラーに市民の安全を確保するため「全面警戒態勢」を敷いて「掃討作戦」が決行されることになり今夜はマヒルも家を空けなければならないと言うが、彼女の方もワンダラー殲滅にハンターではなくわざわざ艦隊が出動すること、あの爆発についてあまりに内で処理したがる彼らの姿勢には不信感を募らせる。

そしてラストがとっても心配なんだけど、自分が任務に出掛けた頃合いを見計らいこっそりと家を抜け出そうとするであろう彼女を見越して敢えて「家を出たふり」までして暗い部屋に身を潜め彼女を見張り抜こうとしたり、目の前で風邪薬を飲ませ寝室に戻る彼女を見送ってなお駄目押しに部屋を覗きベッドで眠るところまで確認したり、用心深いの域を超え過剰なまでに彼女を「閉じ込める」ことに手を尽くすマヒル。

確かに朝から本調子ではなさそうだったが薬を飲む直前まで目は冴えてあれこれと動き回り家を出る気満だったはずの彼女、手を握られ語り掛けられてもまるで反応しないところを見ると最後は完全に熟睡してしまっているようにも見えるがこれはたぬき寝入り、なのか…?

マヒルは「こうしてお前を傍に留めておくことを身勝手だと思うか」だなんて独り言つが、まさか眠剤でも盛っているんじゃなかろうな(やめとけ

彼女が介入することが余程危ない案件ではあるのだろうが、たとえば出会ったばかりのホムラくんさえどこか猟奇的な男の子に見えていたこの変態過ぎるわたしの感受性ではなんかこう、彼女が危険に晒されることなく自分の元に留まってくれるならいっそ健全さを失い自分なしには何ひとつできない状態であろうと構わない、その意思や思考を手放してしまうほどに甘やかし、閉じ込めてひた隠し、真実を告げず、見せず、代わりに危険に晒され犠牲になるかわいそうな命があってもきっと彼は振り切れてしまうのだろう、くらいまで伝わってきちゃったりするんだが(言い過ぎ

個人的には帰りを待つミズエちゃんのためにもモリトくんには必ず治療受けて欲しいんで次章無事迎えに行ってやれる展開を求む。

マヒル=アダム?

せっかくなので宗教思想史オタクの解釈するマヒルについても少し書き残しておきたい。
聖書に触れたことがない方でも恐らく「アダムとイブ」という名前にはなんとなく聞き覚えがあると思うし、少し詳しい方であれば彼らが旧約聖書創世記における「原初の人間」であること、そして「善悪」を知る「知恵の木の実」を食べたことが「原罪」と呼ばれそのために人は「生まれながらにして罪人」となった、なんてところまでご存じかも知れない。

「善悪を知る知恵の木」の「悪」はラテン語で「マルム」というが、これが「リンゴ」という意味も持つことから「原罪」や「失楽」はしばしば「リンゴ」によって暗喩されるようになり、マヒルのリンゴも恐らくは彼が「アダム」彼女が「イブ」をテーマに物語が展開することを示唆しているのだろうと思う。

ただ、旧約聖書とは古代から石版に刻まれているような不変のものでは決してなく、実はそれぞれに独立完結している諸文書を後に編者が組み合わせたもので、いざ読んでみるとあまりの矛盾の多さと統合性の無さにまずは頭を抱えることになる。その最たるものが「アダム」なのである。

もちろんこれは「文書仮説」を許容した自由主義神学の方をメインに学んできたわたしの見地であって、福音派の方やその他対置される立場の教派団体の方にはもしかしたら気分を害する話かも知れないためお手数だがこれより先注意して自衛して欲しい(謝

平たく言うとアダムとは神が「海の魚」「空の鳥」「地の獣」を「支配」させる目的で創造されたもの。この「支配」という部分を「愛」であり「守り」であると解釈すべきなのか、はたまた「抑圧」と理解すべきかで聖書はまるで両極端なふたつのメッセージを持つ物語となる。

それは紀元前から今の今までずーっと同じテーマで対立し続けている聖書解釈の根幹であり、これをめちゃくちゃ分かりやすく体現し「あなたはどっちだと思う?」と提起するのがマヒルなのだろうと感じてる。
くどいようだが特定の教派を否定したり肯定したりする目的では決してなく、あくまで聖書の世界観を題材とした現代における個人の問題として乙女たちにこれを問いたいのだと思う。

マヒルとシンの表裏性

旧約聖書冒頭に収められている「創世記」は「第一章」と「第二章」ふたつの神話が続き物のように綴られていたりするのだが、「神(エロヒム)はご自分にかたどって人を創造された」「男と女に創造された」と男女が同時に生まれる第一章を経て、第二章では「主なる神(ヤハウェ)は土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくりその鼻に命の息を吹き入れられた」「人はこうして生きる者になった」「そして人から抜き取ったあばら骨で女を作り上げられた」と展開する。

男女は同時に創造されたのか、はたまた男を「助けるもの」として彼の「骨の骨」「肉の肉」である女が創造されたのか、これらが「モーセ」というひとりの預言者によって残された書物なら読み手はこの矛盾をどう理解するべきか、古代以来あらゆる神学者があらゆる手段でこの矛盾点の整合化を試みた。

そうして生まれた思想のひとつに、第一章で男と同時に作られた女は第二章で骨から生まれた女とは実は別の存在、第一章の女はアダムの最初の妻となった「リリス」であるという俗説がある。

背景としてはユダヤやバビロン、古代ギリシャの神話にも登場する「男性の活力」や「精力」を奪う「魔女」というモチーフが先にあり、これが「誕生した理由」を創世記の矛盾の中に見出そうとする研究から「アダムと同時に生まれたリリスは男女対等の立場を要求し拒まれたことで自由にエデンを飛び出してサタンの妻となり男性に怒りを持つ魔女になった」「それゆえ神は改めてアダムの後妻イブを創造した」という理屈に行き着いた。

その根拠は第三章で堕罪によりイブに与えられた罰が「お前は苦しんで子を産む」「お前は男を求め彼はお前を支配する」というものだったりするところからも語られる。新改訳の方が分かりやすいかな? 翻訳によっては「あなたは夫を恋い慕うが、彼はあなたを支配することになる」なんて言い回しになる。そのためイブは時に抑圧された女性像のシンボル、リリスは女性解放運動の象徴だったりするのだ。

雲の彼方へでも散語ってしまったが、わたしはこのリリスが「魂」を捧げる代わりに抑圧から「解放」されるその手助けを担う「サタン」こそがあの竜シンなのだと思ってる。
そして「アダム」であるマヒルの物語は敢えてそちらに対比させるように「支配」というものを「愛」と「抑圧」両側面から紐解いていくかたちで描かれていくんじゃないかと感じてる。

各攻略キャラ同士が決して干渉し合うことのない恋と深空においてどういうわけかシンとマヒルが折に触れどこか「繋がっている」ような気がしていたのはこのためだったのかも。前にもどこかに書いてしまった気はするが、うんと序盤から「シンとマヒルには何か繋がりがある」と考察されていた方はさすがに「天才か」と思う(崇

愛と抑圧

キリスト教教義最大の異端として有名な「グノーシス主義」には大前提「真の神」と「偽の神」が存在する。詳しくはこちらの記事に死ぬほど書き殴っているため割愛させていただくが、自分で読み返しても睡眠導入にしかならんほどくそつまらん内容なので読むことはおすすめしない(殴

この「真の神」「偽の神」という思想も元を辿れば創世記の矛盾から生まれてる。改めて第一章第二章と続けて読んでみると、ふたつの物語は「神(エロヒム)」と「主なる神(ヤハウェ)」主語が変わっていることに気が付くだろう。

これらを異なる神とすることは一神教を真っ向から否定することになるためキリスト者にとって彼らの研究は紛れもなく「異教」となるのだが、彼らにとっては熱心な神秘主義者プラトンの思想に大きな影響を受けたその文化の中で創世記に隠された本当のメッセージを探ろうと研鑽したその結末なのだ。

プラトン哲学には「時空を超越」した「非物質的」な「永遠」の実在「イデア」という概念があり、これはわたしたちの目に見えるすべてのものは本来の姿ではなくより高い次元に「完全なる姿」が存在している、という思想である。

物質的なものとは「宇宙」さえ「非本来的」なものであり、さらに宇宙を超える超越的存在と人間の本来的自己の本質的な交わり、つまり「霊的なエネルギー」で「イデア」に到達することが人間の「完全なる姿」であるという「反宇宙的二元論」に発展し、そもそもなぜこうも高次元のイデアに辿り着けないのか、それはわたしたちが低次元の創造神デミウルゴスによって創造されたためだ、と結論された。

グノーシスの創造神は我人間に真実を告げず、見せず、閉じ込めてひた隠し「抑圧」する。この神は自分の創造物を決して「愛」していない。だからグノーシス神話において「知恵」を与えた蛇(サタン)は悪魔でなく「啓示者」なのだ。

一方のキリスト教は、ひとり(アダム)の罪によってもたらされた「死」がひとり(イエス・キリスト)の贖いによって赦されて人が肉の支配から「聖霊(神)」の「支配」の下に生きる状態になる、これが「愛」であり「恵み」であり人間を愛せずにはいられない神の「導き」であると理解する。

神の姿に似せて創られたアダムも始めは神の連れてきたあらゆる生き物に名前を付け愛でてやるような場面があり「いたわり守ること」が「支配」だと理解していたはずなのだが、堕罪により彼の「支配」は神のものではなく人間の持つ「身勝手な愛」という名の支配に変わってしまった。
ざっくばらんに言うならば、本来のアダムがしていた「支配」がキリスト教のヤハウェがする「愛」、堕罪した彼がする「支配」がグノーシスのヤハウェがする「抑圧」なのかも知れない。

罪と贖い

ちなみにレイとホムラの伝説においてはこの「愛」と「抑圧」が逆転している。
彼らは本来「空の鳥」や「海の魚」を「愛」によって支配する「アダム」だったけど、レイの物語における「最高神アスタ」やホムラの物語における「死んだ深海」が「抑圧」による支配者「偽の神」と同じ役割を担っていて、彼らは「愛」によってその支配に抗うという「罪」を犯し地球に再誕したために今「贖い」や「ある未来が決まってしまうとしても拒絶はできない」ということを強いられている、かのように見える。
セイヤについては何とも言えんがフィロス女王の兄弟子でもあり筆頭聖剣騎士でもあるという彼の役割は限りなくユダヤ伝承における「ミカエル」に近いので無理やりこじつけるならモルモン教だろうな。モルモン教では天使ミカエルが人間の姿で再誕したのがアダムだったりする。

仮に全員がある意味でアダムとイブならば、たとえばイスラム教ドゥルーズ派におけるアダムとイブは二元的な宇宙の力として「互いを補い合うエネルギー」でもあったりして、特にマヒルは「引力制御」って彼女との「共鳴」であらゆる場面あらゆる方法でEVERを打ち破る力となり得そうな雰囲気かもし出してるし、と言うかそもそもわたしはふたりが兄妹であることから彼らが「存在」と「無限無形の潜在力」としてひとつになるもんだとは思っていたのだよな。まぁマヒルが「知恵の木の実そのもの」なんだろうと誤認していたってことなんだが(恥

いずれにせよどの彼との物語も何が愛で何が抑圧なのかどれが本当の罪で誰が真の罪びとなのか、そういうことをしきりに問われているような気がします。考えさせられる。