空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

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道なき地

こちらはかつて優秀な航空学生だったマヒルが卒業飛行試験で磁場の異常に巻き込まれ九死に一生を得て無事に生還し深空宇宙機関のパイロット候補生に内定するまでの約数ヶ月を彼と彼の同期たちそれぞれの目線から描いたサイドストーリーとなっています。深空宇宙機関はDeepspace Aviation AdministrationとかでDAAと略されているのかな?

すっごいヘンテコな感想なんだけど読み終えて率直に、もしこちらの世界にも深空トンネルのような得体の知れない空間の裂け目が突然大気圏外に現れたとなれば航空機操縦士や宇宙飛行士の資格を持つ方が防空や偵察のためにその周辺、科技があれば中に飛び込んで航路を開拓したり記録したりするのだろうかと。「災変以降戦闘機パイロットは情熱と信念だけで支えられている職業だった」なんて書かれていたがそりゃそうだ。ただでさえ殉職の多い職業なのにな。

わたしたちの平和も改めてたくさんの勇敢な人たちによって守られているのだよね。
普段自分ではあまり好んで手には取らないジャンルの短編でなかなか興味深く読みごたえもありとても面白かったです。

卒業飛行試験

まずは今スト意外だったのが全話通してマヒルがとにかく「挫折を知らない楽天家」として描かれている点だ。本編4部2章ではどんなに些細な危険因子もすべて先回りして潰しておきたいマヒルを見せてもらったし、1部4章「オレが守らなきゃ誰がお前を」発言然り、わたしは常に先を予測して最適策を講じる危機管理能力に長けたドの付く心配性こそが彼なのだと思い込んでいた。
これって彼女がハンター選抜試験に受かる2年3年前くらいのお話になるのかな? 恐らくこれ以降どこかのタイミングで彼の身に起こる「何か」が今彼をそうさせているだけであって、あくまでこちらが本来のマヒルの人物像であると強調したいのだろうなと感じました。

「ドラム式洗濯機で洗われる服の気持ちが解る」ような数の過酷な訓練を潜り抜けふるいにかけられた残り少ない同期であり寮の同室者でもある「ツバサ」や「カイト」とのやり取りの中でまるで「戦闘機パイロットになるべくして生まれてきた」かのように語られるマヒルは、飛行操縦士課程におけるすべての試験や訓練でトップの成績を収め常に誰からも一目置かれるような存在。

もちろん並大抵の覚悟でそれができるわけがないのだが、当のマヒルは「なぜパイロットになりたいのか」と尋ねられ至極真剣に「飛行機はどんな障害も飛び越えどこへでも行きたい場所に行けるだろ」なんて「小学生の作文」のような返答をする。
これは「おぼろげな夢の中」として後に描写される恐らく彼自身の回想の中で「ワンダラーに襲われたこと」により「深空ハンター」を志し始めた幼い妹と交わす「お前は地上でオレは空」「そうすればこの世界はオレたちのものだ」なんて会話からも、たとえば「強大な力から彼女を守り抜くためにしなければならないこと」のような切羽詰まった雰囲気では決してなく、ニュアンスとしては小さな子どもが無邪気に描く大きな夢を本当に今もキラキラと追い掛けているのだなというような印象。

パイロット家庭に生まれ座学こそ努力で身に付けられれど実技の成績はいつも最下位だという「カズマ」にはこれが「簡単に目標に到達できる天才にだけ許された特権」であると感じられ、目標に向かい踏み出した足を踏み外すことが恐ろしくおいそれと夢を語ることができない自分と彼との隔たりに人知れず思い悩みマヒルのことは「温もりではなく目を刺すような眩しさをもたらす太陽」だと形容したりするが、一方で世間の目や個のステータスに一切頓着しない彼の気さくな態度に「それでも太陽は太陽だ」と結論する辺りマヒルが「罪」や「悪意」とは無縁のイノセンスであることが伺える。

そして驚くべきことにマヒルは「命の危機」にさえどこか無頓着だった。
厳しい試験、危険な作戦、長時間の飛行による精神的ストレスなど、激務による離職者が後を絶たない戦闘機パイロットの養成には通常のカリキュラムとは別に「メンタルヘルス教育」なるものが設けられているのだが、「航行中に直面する最大の困難」について「時間通り家に帰るのが難しいこと」だなんて素っ頓狂な回答を提出するマヒルはついに心理カウンセリングを受けることになり、3回目の面談では「人は高い場所から下を見降ろすと視界に入る全てを自分が掌握しているような強烈な感覚に襲われる」ことがあるもそれは単なる「錯覚」であり実際「飛行には常に墜落のリスクが伴う」ということについて講師から力説されている。
それでもいまいちピンと来ないのは、無論彼には圧倒的な実力と適性があり自分が臨むそれが極めて危険なものだと認識する機会が無かったためなのだろう。

そうして迎えた飛行試験当日、受験者たちは順番に巡航機で深空トンネルに入り宇宙機関が設定した航路上の7つのビーコンを最適化してどうやら制限時間内に帰還しなければならないらしいのだけど、もちろんその航路は先人たちが苦労の末に切り開いた安全なものではあるがトンネル内の航行環境はとても複雑に入り組んでおり「未踏の星域にはまだ未知の危険が潜んでいる」ため、会場にはこれ以上ない緊張感と張りつめた空気が流れてる。

視察室の全員が息を殺し見守る中継モニターには颯爽とコックピットへ入り「飛行前に毎回行う儀式のようなもの」として胸元のペンダントをつかみ唇で軽く触れる至って普段通りのマヒルの姿が映し出され、力強く握られる操縦桿、躊躇なく離陸する機体、漆黒の深空トンネルへ滑り込んだ後も彼は一瞬ある学者がある講演で「人類が探索できたトンネルの範囲は全体の千分の一にも届かない」「トンネルの向こうに辿り着けるのはコアやワンダラーの謎が全て解明される時」だなんて熱弁を振るっていた姿を思い起こしたりもするが改めてちっともそそられず、それよりも無重力が全身に広がっていく感覚や異世界に足を踏み入れたかのような高揚感、好奇心、探求心、そういうものに満たされているというのだから、それはまるで警察署見学で初めて白バイにまたがった小学生男児のあの何とも言えないワクワクとした様子に違いないのだろうと感じたよ。

非安全航行区域

もちろん作業は順調に進み、さてあとは帰路を辿るのみというところになって、どういうわけか突然機体は乱流に呑み込まれ「磁場の異常指数」が跳ね上がる。騒然となる視察室のモニターや管制塔に届くはずの通信信号は途絶え始め、教官のひとりが必死になって呼びかけるも返って来るのはノイズ音だけ、トラッキング装置による追跡機能も遮断されついにマヒルはトンネルの中でひとり行方不明となった。

当然腑に落ちないのはマヒルの操縦技術が類稀なるものであり今回の航路はごく安全なものだったというならいくら複雑で難しいからとは言え彼が誤って非安全航行区域に踏み入るはずがないというところよな。
ぶっちゃけイメージ湧いてないけど仮に入り口から入って入り口から出てくる折り返しの航路なら最奥に到達した時点で彼をそこに留まらせようと「何か」の力が働いた、みたいなことだったりするんだろうか。それがトンネルの向こう側に感じるという「エーテルコアの力」なら引き寄せてるのはマヒルを主軸とした物語における「かつて見た別の世界」の彼女の持つコアの引力とか?

嵐の粒子に叩きつけられ激しく揺さぶられる機体の中でしばらく気を失っていたらしいマヒルはその間恐らく幼少期の記憶なのだろうふたつの場面を夢に見ており、ひとつは前述した「お前は地上でオレは空」のシーン、そしてもうひとつがちょっと不思議と言うか、見たところ兄妹がどこか屋外で「かくれんぼ」をしているような一幕ではあるのだが彼は彼女を「ある女の子」として認識しており描写される風景も「木の下」や「建物に遮られた影」とふたりの実家であるスエ宅周辺にしてはなんとなく他人行儀な言いぶりだったりする。これは「ガイア研究センター」における記憶の断片、なのか…?

不意に意識が戻り、まだ夢の中にいるかのように思考が覚束無いマヒルは機内の気圧を保つために「緊急生存モード」が自動作動したコックピットの操縦シートにもたれ、完全に停止したナビゲーションシステムや底を尽きそうな燃料メーターをぼんやりと眺めながらしばらく考え込んだ後、唐突に「遺書を書こうか」と思い立ってみたり、「でも紙もペンもないしまあいっか」と脱力してみたり、初めて直面した「死」を目前にどこか締まりのない自問自答をし始める。
この辺もそんな状況下でまずは自分亡きあと彼女を守るため「最大限できることを」と焦燥に駆られそうな今のマヒルからは想像もつかないような反応だと思ったよ。

あれこれと考えあぐねた結果、ふとカウンセリングで「飛行には常に墜落のリスクが伴う」ことを力説していたあの講師の「だからこそ飛ぶ意味を自分で見付ける必要がある」という言葉が思い起こされ「無意識的に」胸元のペンダントに手を当ててみるマヒル。

すると「When U Come Back」と刻まれたそれをつけてもらったときの彼女の指先が肌に触れた感触がまだそこに残っているような気がしたといい、後の会話からそのとき彼は「敢えて信号を切り元の航路に戻ることを諦めた」「セーブモードで飛行を続け救援を待つより自ら賭けに出た方がいいと思った」「死や恐怖よりも目的地に辿り着くことの方が重要だと気付いた」、さらに物語のラストでは「自分が誰でどこへ向かうのかを知ることこそが最も重要」だなんて語っていたりもするけれど、つまりはこの出来事を切っ掛けに自分が「彼女の元を出発した者」であり「彼女の元へ帰ること」が「飛ぶ意味」であるとマヒルは結論付けた、って解釈でいいのかな?

生還

事故から約1週間、救難機は天行市の主島から遠く離れた廃墟のような浮遊島に生命信号を感知、大破した機体の操縦席に座るマヒルは肋骨を何本も骨折し肺にも深刻な損傷が見られ全身血まみれで顔すら判別できないほどの重体で見付かったというが、外科検査中に奇跡的な回復を見せ各種数値は1ヶ月で正常な範囲に戻ったとなると、やはりマヒルの身体にも何か特別な権能が備わっていたりするのかな? それとも単に彼が元気マンだと言いたいだけ?←

アカデミーは事故発生直後から消息を絶ったマヒルの救援を開始、ビーコンの飛行データを頼りに追跡を進めるもそのほとんどがホワイトノイズに呑まれており「あのとき彼に何が起こったのか」は今も不明なままなのだが、帰航データを可能な限り復元してみると恐らく彼は真逆の航路方向に進み「深空トンネル内の道なき未踏の地を越えてきた」であろうことが分かる。

これもなーんか言いたげじゃないか? 今スト結びにある「人は本当に執念だけで道なき地を越えることができるのか」なんて一文にはもちろん「出発より道中より目的地が最重要」だと気が付いたマヒルの「彼女への想い」がそれを叶えたのだと答えるべきなんだろうけど、どうしてもトンネルの向こう側にエーテルコアや別世の彼女がちらついてそっちの何か超越的な力に救われたのかと匂わされているような気になっちゃう(深読み

ちなみにこの辺は入院中のマヒルを見舞いに来てくれた同期たちとの会話の中で語られていたりするんやが、彼らの関係性もめちゃくちゃいいなって思った。
ツバサはマヒルの妹が「彼とそれほど歳の変わらないハンター候補生」だと知るまで「養わなければならない高齢者と小さな子どもを抱えている」と噂されていた彼の境遇を気の毒に思ったり訓練で酔って吐きそうな友人にはすかさずエチケット袋を差し出したりとにかく気立てのよい子なのだろうし、高次元文明の作り話に騙されかけたり主人公には「カイトお兄さん」なんて呼ばれていたりするカイトは根明で親しみやすい人柄なのだろうし、残念ながら飛行試験は「制限時間内にゴールに到達できなかった」というカズマもマヒルには劣等感やどこか鬱屈した想いを抱きつつも本音では彼の身を案じていたし心根は優しいのだろうな。

この時点「退学届」を持ち歩くほど思い詰めていた様子のカズマだけど卒業式のシーンで再会できたってことは思い留まってくれたのだよな? ふるい落とされずここまで残れたことがまず充分凄いじゃないか。心機一転座学訓練の教官やパイロットを支える管制官なんて目指してみるのはどうだろう? トウさんを見てると誰かに夢を託すのも素敵だなって思えるし、ホムラくんを見てるとそういう境遇の人からのサポートが実はいちばん心強かったりするのだなと思えるものよ? (お節介婆

記憶解離

間もなく冬期休暇のためか彼らはそれぞれ実家へ帰省し退院後はマヒルも一時自宅へ帰って来ることになるのだが、一見完全回復とも思える彼の身体には実はトンネル内で「正体不明の電磁放射」を受けた痕跡が見られ、トンネル巡航の「後遺症」としてよく見られるものだという「記憶解離」の症状が頻発し「無秩序な夢を見る」ことが増えていた。

マヒルが鮮明にフラッシュバックを起こすのは彼が9~10歳の頃、実験対象「002号提供者」として742回目の「Evol測定実験」を受けた際「機械式目覚まし時計」を一瞬にして「セミの羽のように薄い鉄片」に押し潰すことができる自分のEvolを目の当たりにした大人たちが「この力は将来ブラックホールに匹敵するものになる」「光すら逃れられない力だ」と口に言い合うのをガラス窓越しに聞いているという場面。Evol測定は「Unicorn」から「001号提供者」に名称が変わったという彼女も対象者のひとりだったのかな? 年齢が「推定」であることから恐らく彼も彼女と同じような出生なんだろう。

研究員たちの見解についてはそれが一体何を示唆しているのか知識の乏しいわたしには読み解けそうにないが無知なりに、ブラックホールとは質量の大きな星が超新星爆発を起こした後になんかこうその星の重力がどうこうなって生まれるものだよな? 質量のない光まで吸い込まれてしまうのは重力で空間が歪むためだと聞いたことがあるような気もするが、つまり爆発すればブラックホールが生み出されてしまうほどに肥大したフィロス星がついに死んでしまうときこそがマヒルの力が最後の光をも呑み込んでしまうときだ、と、いう感じ…? (いいえ

そしてこの夢は突如場面が一変し、今度は彼が巡航機の操縦席でとにかく四方八方を「闇」に囲まれたひたすら無音で真っ暗な「トンネルの中」を孤独に飛行しているシーンに切り替わる。これは飛行試験で「敢えて信号を切り元の航路に戻ることを諦めた」彼が真逆の方向へ進み天行の浮遊島に命からがら着陸するまでの間に起こっていたこと、なのかな。

彼は誰かに「落ちるときは痛い?」「恐怖は感じる?」などと問われ、そっと優しく手を握られたような気がするのだけど、「何度でも私はあなたの手をつかむ」「私たちはずっと同じ空の下にいる」と声がすればふっとその温かな感触が消え、手を開けば「淡い銀色の光を帯びた種」が一粒残されていて、彼にはなぜだかこれが「初めて見る小さな贈り物のよう」だと感じられる、というもの。

こちらは例によって今後イベントで実装されるマヒルの日位思念育成で読める新たな伝説ストのチラ見せなのだろう。見たところ彼はひとりあるいは彼女とふたり少なくとも「飛ぶ」のではなく「落ちて」いて、最後は漠然と別れを彷彿とさせるがどちらかと言えば彼女の方に「何度でも会いに来る意志」がありそうな言いようではある。
銀色の種ってなんなんだろう? 彼女の意識エネルギーの結晶? 本編彼女もマヒルには「銀色の」リンゴのペンダントを渡してたりするんでこの辺が繋がってくるのかな。

いずれにしろマヒルが「確かにつかむことができるのはこれらの記憶だけ」だというんで現時点彼の「ガイア研究センター時代」と「道なき地を越えるまで」の部分に当たる記憶には今もかなりの空白があるんじゃないかと。
処方された「補助回復薬」には一定の鎮静効果はあれど微熱や眠気などの副作用や依存を引き起こしやすいことから頻繁な使用は控えるべきだと言われてたりもして、今ストを読む限りこの「後遺症」について彼が積極的に治療を受けているようには見えなかったかな。
なんとなく4部1章に聞き覚えがあったりもするが、恐らく今ストのマヒルはまだ「チューリングチップ」には出会ってないのだろうしこの回復薬は「セベシング」とはまた別ものって認識でいいのだよな?

それよりもちょっと気になるのは、こういう規則性のない夢に苛まれているマヒルは回復薬じゃなく「鎮痛剤」を服用し薬が切れれば「鈍く痛むこめかみ」を押さえていたりする。飛行試験でおぼろげな夢から覚めたときも同じようにこめかみを揉んでいた彼がその痛みには「慣れている」と描写されることからトンネルに入る余程以前から起こっていることなのだろうけど、それはEvol測定実験の際データ計測のために同じ「こめかみ」に貼り付けられていた電極装置の影響なのか、思い返せば彼のおばあちゃんが延命処置の中止を決断し終末期医療に入ってなお「頭痛」に悩まされ通院を続けていたこともどこか関連してるんじゃないかって気もしてくる。何か凄く嫌なことの前兆でありませんように(切実

雛鳥

本編4部読了時点では「マヒルは自分の恋愛感情にきちんと折り合いを付けられているんじゃないか」なんて感想を綴ってしまったが、今回の秘話を読むと彼のそれは「恋愛感情」ではなく「膨張した家族愛」なんじゃないかとも思えてきちゃったな。と言うか、自分が彼女に抱く感情が何と呼ばれるべきものなのか彼自身理解できていないんじゃないかとも思う。

窮地で彼女の指先の感触を思い出したのもペンダントに触れたのはあくまで「無意識」だったと言うし、敢えて連絡はせず黙って帰省しようと思い立つのも「なぜだかよく分からない」、ただし自分が突然目の前に現れれば彼女がどんな顔をするか想像すると心が弾む「ような気がする」と、心理描写は少なくないのにそのすべてがどこかあやふやで、彼女の寝顔を長い間見つめぎゅっと手を握り締めてみてもそうして重なり合った手の平の線が幼い彼女にかつて語った「飛行機は凧揚げみたいなもの」「お前が糸を引けば戻ってくる」なんて喩えの「自分を引き戻してくれた糸」に当たるのだろうか、と決して断言はされずどことなく不確かな言い回しが繰り返されている。

唯一真に迫っていたのが軒下の巣の中の「雛鳥」の下りで、彼は生まれたばかりの雛鳥が冷たい雨と風の中小さな羽毛を震わせる様子をなんとなく眺めているのだけど、雨季が終われば強くしなやかな羽を生やし巣から飛び立つであろうその日に想い馳せ、「人間の愛にも雛鳥と同じことが起こるのだろうか」「自分は軒下に囚われたあの鳥なのかも知れない」と考えを巡らせる。
ふたりはいつまでも翼の濡れた雛鳥ではなく大人になれば共に巣立てるはずなのにそれが愛ならそんな日が来るなんて思えないとでも言いたげな口ぶり、そしてどういうわけかどちらであっても彼は結局自分が巣を飛び立つことができない鳥なのではないかと感じてる。それは突き詰めれば「男女になるのが怖い」「無垢なままでいたい」に行き着くのかも知れない。本当は誰よりも「愛」に「無罪」を求めているのかも。
しかし結局それも「彼には分からなかった」らしく、最後は「雨が止むのを待ってから飛び立てばいい」と向き合うことを先延ばしにする。「愛」と呼ぶにはまだ「不完全」な状態であることを表現してるのかも知れません。

DAAの初回選抜では「補欠枠」だったものの二次採用で内定を得て「正式なパイロットの制服」で卒業式に出席したマヒルは彼女には「愛する女性にする熱を帯びたような眼差し」ではなく「相手を大切にするような柔らかいもの」を差し向けており、ラスト「配置転換」を申請し「安堵」を浮かべるのも「彼が目的地を見付けられずにいたのはそれが彼自身の道ではなかったからだ」と結ばれる辺り概ね「いつでも彼女の真上を飛んでいられる」ような隊に異動することで彼は「安心」でいられる、「糸」を引いてくれる彼女が「軒下の巣」を巣立っていないことをまだ感じていたい、これも「いずれ雛鳥と同じことが起こるかも知れない愛」と向き合うのを先延ばしにできることに対する「安堵」でもあるんじゃないかって気がしちゃったな。

ところで彼の言う小さな妹が「ケーキみたいなもんだ」ってのはどういう感情?←
海外文庫ってたまーにこういうしっくり来ない描出に頭ひねる。いやわたしが読み手としていろいろと足りないせいなんだけども…

最後に理解できるかもと期待してスクショまで残しておいたさっきのわたしごめんね。やっぱり最後まで理解できませんでしたw