空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

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心寄せる住処へ

シンの初めてのお誕生日ストを履修するに当たり、彼の思念ストーリーをあまりにも読んでいないわたしにはふたりと一緒に振り返れる思い出がなさ過ぎるという由しき事態に直面していることに気が付いて、取り急ぎ「意味なき束縛」「夜を飛ぶ羽」「傑作のアピール」まで読んで参りました(ぜぇはぁ

まずは「共鳴」によってチェーン回路で手首を繋がれてしまう現象は互いの臓器にあるコアが引き合っていたわけではなく共鳴してるのに彼女の脳の知覚磁場がなかなか彼を受け入れられていないところに原因があったんだ? 心に距離を感じるほどきつく締まり身近に感じるといつの間にか消えているとはそういうことだよな。想定していたものとまるで真反対の働きをしていたものであったことが今更判明してしまった(しろめ
あとはシンが「雪の上に描いてくれた」という「したり顔の猫」の件もようやく理解しました。招待状の猫ちゃんとはこれのことだったのね。それにしても深空男子はみなさん絵がお上手だこと。

そしてようやく誕生日なんだが、約束の時間7時ちょうどにすでに2度も確認済みである姿見で最後の身嗜みチェックを終えたシンはついて来ようと羽ばたくメフィちゃんを「誕生日デートなんだから連れて行かない」と制して部屋を出るという浮かれっぷり。
改めてシンは決してニュアンスではなくまず間違いなく明確にメフィストの話す言語を理解しているね。いやだからなんだって話ではあるが(殴

彼女の運転で3時間も車を走らせた場所にあるというサファリパークでは恐らく車に乗ったままサファリゾーンを周遊し野生動物を間近で観察できるようなエリアや草食動物に餌やりができる触れ合いコーナーなんかを巡り、目に留まった動物とシンとの共通点がひとつ見付かるたび彼女からそれにちなんだ「祝福の言葉」がもらえるという微笑ましいプランが展開される。

獲物を捕らえ損ねた若いトラや狩りに出た親を待つ子ライオンたちの様子に弱肉強食たる生存摂理を身もふたもない言葉で解説し始めるシンは「でも過酷な環境を生き延びた子は群れの中でリーダーになれる」「一見不憫だけど強さと根性があれば自力で成長できる」なんてフォローする彼女を「そうしてさらに冷酷無残になる」だなんてばっさり斬ってくるんやが、これは現世自分の出自来し方をなんとなく語ってくれている、のか…?
子トラも子ライオンも「子どもでいられる最後の日」なんてすぐに忘れてあっという間に「殺し屋」へ成長するがそれは「親が帰ってこない心配」や「飢える心配」から解放されることであり「いいんじゃないか」と見解するシンに「あなたは暗点のボスとしてそういう場面を何度も目にしてきたはず」だと思い巡らせ彼女がぎゅっと彼の手を握ったりする描写もあるんやが、これも実はシン本人の「幼少期」についての示唆だったりするのかな。
彼は「毎週土曜夜10時臨空科学教育チャンネルの『動物の世界』で何度も見てる」なんぞはぐらかしたりもするがやたら落ち着いた声色で「心配するな」と宥めてたりもして、あるいは図星突かれてるのかなんて思いたくもなってしまったが…

そうしてパーク内を一通り見て回ったふたりは電動ボートで川沿いを遊覧しながら他愛ないお喋りに興じるが、「今日のプランはシンプル過ぎたんじゃないか」と気にする彼女を座り直し抱き寄せた彼は、彼女が自分をこういう子供向けの場所へ連れてきたのはきっと「子どもの頃を思い出して欲しいなんて理由じゃない」だろうこと、好きな相手には身体をすり寄せたり舐めたりするが嫌いな相手にはためらいなく襲い掛かる獣のような動物が「俺に似てると思ったんだろ」とそもそも全部「自覚」していらっしゃるご様子で窘める。さてはここ数日彼女が頻繁にチェックしていた「臨空動物の世界」のメルマガ読んでたな? そして「身体をすり寄せたり舐めたり」と自分で口にできるの本当にすごいな←

殺伐としたそれこそ生存競争そのもののような彼の世界にもこうして似た者同士の中「リラックスできる時間があれば」と願ってのこのプランだったみたいやが、彼女がこれを「今日が誕生日のシンは私の目に映るシンだから」って表現してくれるの、なんだかあの竜の愛した強く美しい少女が蘇ってべらぼうに泣いてしまったわ。涙

あなたも「私の目に映るシン」だけを「私のシン」と呼んでくれるのね。終焉の象徴であり惨く醜い悪魔であり完全な怪物たる竜が少女にとって最期まで歌をねだり愛による抱擁を求める「私の竜」であったように、星間指名手配犯であり略奪者であり犯罪組織のボスたる彼が彼女の目にはただ身体をすり寄せ贈り物をくれて歌を歌い物語を聞かせてくれる愛らしい動物たちのような青年として映ってる。そして少女が裁きに争い竜へ祝福を教えたように、あなたも今日は「私のシン」へ特別な祝福をしてあげたいのだね(ないてる

照れ隠しに「もし気に入らなかったらまた来年がある」なんていたずらに笑う彼女の顎を持ち上げて「目を閉じろ」「何するの?」「獣なりの方法で感謝を伝える」、で得意顔でキスができる男がこの世界のどこに存在すると言うのか。もはやなにものにも動かされないこのぶれなさが頼もしいを通り越してリスペクトに変わり始めてる(拝

実は彼女手製の「お誕生日バッジ」を胸元に括り付けられパーク内を闊歩していたシンは受付スタッフに始まりたくさんの人たちから祝福を受け一日を過ごしたが、退園の際に「お誕生日スクラッチカード」なるものを受け取り「パーク限定メープルシロップコーヒー」なんぞ手に入れたことでふたりはシロップの原材料となる「サトウカエデ」の庭園を歩いてから帰路に就くことにする。

樹液収穫中の幹からこっそり一口いただこうなんて目論んだタイミングでわんぱくな白いワンコに「奇襲」され2人は芝生に倒れ込んでしまうのだが、なるほどプロモーションムービーで観たエモシーンはこうして思いがけず「偶然起こってしまったこと」だったりしたのねぇ。
触れ合いコーナーで餌付けされひっくり返って柔らかいお腹を見せていたカピバラを引き合いに出して「あなたのいちばん柔らかいところは私が占領した」なんて仰向けに寝転ぶ彼のお腹にちょっかいをかけてはしゃぐ彼女にシンは「降参」するが、そうかシンがこうやって「お腹を見せること」も「心を寄せた」相手だけに野生動物が見せる無防備な姿のひとつだったのだな。そうなると初見では「少女と竜」が連想されたふたりの抱っこもなんだか「猛獣使いと降参した獣」のように見えてくるもんであるw

最後はシンがいつまでも強くいられるように、いつでも安心して柔らかいお腹を見せられる場所があって「お腹をなでてくれる人」が傍にいますように、なんて彼女の言葉で締め括られるが、彼はそんな場所もそんな人も「もう見付けている」のだそう。そうして「心寄せる」そこを獣らしく「住処」だなんて呼んでいるわけですね。
全篇通してめちゃくちゃ2人らしい描出だったなぁ。
2人がずっとこんな日を過ごせますように。