空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

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5部3章 宇宙の塵

章を開き最初のチャプタータイトルが目に入ったこの状態で正味10分は固まった。起こり得る最悪な事態を想定し覚悟を決めてから進もうと思ってなw

いちばんあってはならない「レイがもっとも恐れる事態」とは、制御できなくなった自分の黒い氷がもう一度彼女に及び「あわやその手に掛けてしまうこと」だ。すでに人ひとりにかけていい重み500倍ほどの重責を背負っている彼にわたしはこれ以上苦しんで欲しくない(切実

前章ラスト見解を綴った「12歳の彼がアスタの力に従い世界から彼女を取り除いたのか抗って取り除かなかったのかその地点に生まれているかも知れない神の本意でない分岐」が仮に生じているのなら、本編における黎明の抹殺者はあくまで「医者レイ」であって、恐らく図書館に所蔵された一冊の物語「彼女を取り除くことこそできたもののEVERみたいなもんのプロジェクトは推し進められ結局病変体が蔓延しまくってる数百年後の臨空市」に何も知らない状態で存在し「なぜ自分が使命を帯びたようにその役割に務めるのか」疑問を抱く余地がないまだ見ぬ黎明のレイとは状況が異なる。医者であるレイには彼女への「愛」によりアスタの力たるEvol暴走を「大惨事」ながらも「首の皮一枚」堪えた過去がある。

そして月下の黒き棘「実は異化による結晶なんじゃないか」なんて的外れなこと語ってしまったあの「黒い氷晶」が改めて秘密の塔牢獄のような部屋で彼に及んでいた「アスタの罰」で相違ないなら彼女の力はこれを食い止めることができる。それを目の当たりにし、さらに「あなたはまず自分のことを大切にして」「ひとりで無謀なことしないで」なんぞ滾と説教されたことで彼は今「傷付けることも離れることもしなくていいもうひとつの選択肢」に可能性を見出そうとしてくれている(と思いたい

すると目下のところ直近で起こりそうなもっとも最悪な事態とは、現在名誉棄損甚だしい捏造報道により顔が知れている心臓外科医が夜な夜な異化者を抹殺して回っているなどと取り沙汰されることだ。これに関しては一旦彼のポテンシャルと「Aksoの誠実なメディア仲間」を信じよう。まじで頼むな?←

異化者襲撃事件

この2日間市内では未明に何者かが異化者を急襲し「抹殺」しているのではないかと思われる「異化者襲撃事件」が相次ぎハンター協会には「臨空警察」から現場検証に「特異エネルギー調査」の協力依頼が掛けられる。人間の特徴を残しながらも意識が侵食され攻撃本能しか持たなくなった特殊な病変患者「異化者」とは改めて「無差別暴力を働く人間」の範疇であり手を出しても出されても警察が介入し処理される案件になるのだな。

2日前に「しばらく離れる」とメッセージを残し留守にしているレイを「いつもの急な出張だろう」と気に留めていなかった彼女だが、新たな事案が発生したタイミングと「異化者」とは全員が元は「コア介入症患者」であるらしいことから専門医たる彼が何らかの形で関わっているのかも知れないと思い直しこれに志願して事件現場である「環北通り」へと急行する。

案内役の刑事からは通常寒波や雪の日でも問題なく作動する防犯カメラが耐寒温度を大きく下回る低温により故障していたことから事件当時現場は異常なまでに冷え込んでいた可能性が高いこと、壊れた撮影機器から復元された解像度の低い映像には「異化者」らしき影は映り込んでいるものの「抹殺者」の姿は一切捉えられていないことなどある程度の捜査状況を開示してもらい、特異エネルギーの計測ではワンダラー襲撃直後と同程度の数値が検出されることから「この異化者はほどんどワンダラーのような状態だったのではないか」と推断されるもやはりこれといった情報は得られない。

刑事は世間話的に「異化者とは人間かはたまたワンダラーと同じく殲滅すべき怪物かハンターの視点ではどう判断できるか」問うてくるのだが、彼女が「人間と怪物を分ける境界は己を制御できるかどうか」だと見解を述べれば合点がいったように、自分は異分子たる異化者より血に濡れた抹殺者の方がより人間的で親しみやすいと感じている、それどころか異化者たちが完全なる怪物となる前にこれを食い止めんとする抹殺者はむしろ英雄のようでさえあると語り出す。

彼女はそれを刑事が口にするにはやや奇妙な言動であると感じながらも恐らく「制御できない」エネルギー爆発をいつ引き起こしてしまうか分からない自分がまるで「人間と怪物を分ける境界」に居るかのように感じられ、あるいは速報掲示板「雪夜の明け方だけに現れる謎の暗殺者」の記事を開けば「後手に回る警察よりさっさと異化者を退治してくれる抹殺者の方を支持する声」が目に留まったりもして、自分の正体も本来異化者と変わらない、いつか自分を抹殺しようとする誰かが現れる日が来るかも知れないなどと思い至るが変えようのない事実を受け入れ「不思議と心は落ち着いている」とも感じてる。

正直縁起でもない話は慎んでいただきたいのだが、こと「エーテルコア」に関してはわたしも今後何らかの手段で彼女の体内から「抹殺」しその「完璧な器」をごく平凡な「人間の身体」にすることがひとつ物語の目指すところなのかも知れないとは思い始めてる。

余談であるが「黎明の抹殺者」とは「夜明け」に出現する暗殺者だからそう呼ばれていたんやな。まだ見ぬ黎明読了当時はあの「数百年後の臨空市」がついに新しい時代や文明が興る「黎明期」という意味でのそれなのだと思い込んでいた。その思い込みにだいぶと引っ張られ預言者とはまるで黙示録のヨハネだなんて語りまくっていたあの頃の自分が恥ずかしい(倒

黎明の抹殺者

警察に提出する調査報告書をまとめ深夜帰宅する道中、背後から物音と気配がして振り向けば突然駆け寄ってきた「白い子犬」が飛びついてマフラーを奪い走り去ってしまうのだが、これはスト冒頭ちらり描写の入った5部1章極地から列車やバスを乗り継ぎようやく臨空市へ辿り着いたらしいあの「白い少年」の抱えていたリュックから停留所に下車するや否や「神言者様」目掛け脱走してしまった「十七」なのだろう。レイが特別な想いを込めて贈ったそのマフラーからはやっぱりレイの気配がするのかな?

これを取り返すべく子犬の足跡を辿り荒れた路地裏へ入ったところで彼女は「左腕と首に黒い結晶が広がっている」らしい「異化者の少年」と対峙する「抹殺者」の姿を目撃し、ついにそれがレイであることを知ってしまう展開なのだけど、ちょっとこの辺いろいろと立て込むので一旦整理させて欲しい←

まず「異化者の少年」は「自分がもうすぐ怪物になってしまうこと」を悟り気が動転しているため始めは自暴自棄になりレイには「お前が抹殺者なら俺を殺してくれ」などと詰め寄るも、いざ氷柱に釘付けにされれば激しく抵抗し隠し持っていたナイフを突き立てたり「近付くな」と声を荒げたり、傍で機を伺う彼女の存在に気付けばその背後に回り武器を奪おうとしたり「俺みたいな怪物も殺せるはず」であるその「ハンター銃」で今度は彼女に自分を「撃て」と命じたり、とにかく思考が錯綜し興奮状態である。

一方レイは表情ひとつ変えることなくその少年に言われるがまま容赦なく鋭い氷を差し向けて、途中どこからともなく現れた「白い獣」が間合いに飛び込めば一瞬呆気に取られた顔を見せたり少年が彼女の握る銃を後ろから強引にレイに構えれば恐らく「まるで彼女がレイに銃口を向けている」ような体勢になるその瞬間だけ「驚き」とも「戸惑い」とも見て取れるような感情を浮かべたりするものの、声色も眼差しも吐息さえも冷たく彼女の目には終始「明らかにレイであるがまるで別人」のように映ってる。

揉み合いのようなやり取りが一息つくと思わず背筋が凍るような声で「今はまだ死ぬべきところまで達していない」が「今夜を過ぎればそうとは限らない」「結晶は体表を侵食し皮膚を裂き骨を砕きそれが首まで広がれば苦痛の叫び声すら上げられない」と告げるレイ、すると何かを思い出したかのように身体を震わせながら確かに「繭」から出た後はみなそうやって死んでいったと少年は独り言つのだが、改めて「教授の子ども」となるための試験に合格できなかったことで「異化寸前」らしい4部2章天行市の「実験体」とこうして臨空に出没する「異化者」とは結果同じような状態であれ至るまでの「経緯」には差異があるのだろう。

彼女は怯え切った少年に深呼吸を促し落ち着かせると「本当は死にたくないのではないか」と声を掛け、ようやく我に返ったようにぼんやりと頷き返すその様子に実はこの「抹殺者」は街でいちばんの心臓外科医であり彼が「死ぬべきところに達してない」と言うならきっと大丈夫まだ助かるだなんて説得を始め最終的にどこかへ逃がしてしまったりするんやが、これは本当に彼が「Aksoのレイ先生」だと安易に明かしてしまって良かったんだろうか。

レイはそれを止めるでも促すでもなくただ「生死の狭間に佇む傍観者」のように黙って眺めているだけだったと言うが、本当に助かる見込みがあるなら逃がす先は「病院」でも良かったんじゃないか…? あるいは間もなく「怪物」と化してしまう恐れのある少年がたとえば大切な人をその手に掛けてしまうような事態も案じられるのだが…

黒い氷

彼女が誰であるかさえ分からなくなってしまったかのような「いつもと違うレイ」は「一体何があったのか」その質問に「全く抑揚のない声」で二言三言要領を得ない返答をすると引き止める彼女を振り切り足早に立ち去ってしまうのだが、慌てて追いかければまるで「闇の中へと引きずり込まれている」かのように険しく眉を寄せたまま気を失い雪道に倒れ込んでいるレイ、どうやら月下の黒き棘「夢の中」で彼に及んでいた同じ「黒い氷」が再びその首筋から手の甲にまで薄い霜のようになって現れていることからこの不可解な現象が「悪夢」の影響によるもので「彼を夢から目覚めさせなければならない」のだろうことを直感した彼女はそのまま引きずるようにして彼を自宅へと運び込みベッドに寝かせると恐らくあの時と同じ「エーテルコアの力」でその症状を解消しようと試みる。

黒い氷は思うように消失せず彼女は「彼の体内で制御を失ったように暴れ回る力」により全身を「刺すような寒気」に襲われて、これにより多少回復したらしいレイは目を覚まし「何をしているのか」と反射的に掴んだ彼女の腕を「氷漬け」にしてしまったりするのだが、なんだか庭師の少女が初めて預言者レイと出会ったあのシーンを思い起こさせるような一幕である。するとこうして「身体を黒い霜に覆われたレイ」とはまるでアスタにより彼女との記憶すべてを改ざんされた神の道具たる「預言者レイ」と同じ人格になっているようなイメージなんだろうか?

思い返せば預言者レイは塔の広間の氷の玉座にイバラで手足を縛り付けられ「身体中に霜が張った状態」で数百年単位で「眠って」いたけれど、これは2048年現在医者であるこのレイに限らず数百年後のレイや数百年前のレイすべてのレイにあの預言者が「夢」を介して干渉してきてるってことなのか…? ジャスミンの蕾とはひとつひとつが「前世の記憶」ではあるが一方で自分には「死」がないため厳密に言えば「前世」ではないという話も聞いた気がするが、もしかして「高次元生命」なるものの「過去現在未来すべての地点の自分が全員同じ意識を持っている状態」というのはこうして「夢の中の自分なのか本来の自分なのか全員が混乱し訳が分からなくなっている状態」を指すのかな(ちがう

かと思えばこの「いつもと違うレイ」はシンプル「あの黎明レイの人格」が表出しているかのようでもある。回復は見られたもののまだ氷の侵食が残る身体は体温計が壊れるほど冷え切っていることから彼女は試行錯誤の末「解熱剤」なんぞ持ち出してくるがレイは「これは薬だろう」「苦いから飲まない」だなんていかにもあの空虚ながら糖分を偏愛する黎明レイそのもののような返答をするし、ぶっきらぼうにわがままを言うその態度がなんだか可愛らしくも見えたという彼女はいたずら心に「ニンジンジュース」を「あなたの好物」だと偽り飲ませてみようと思い立つのだがこれにまんまと騙され口にしてむせ込んでいるその姿からもあの警戒心のかたまりのような「預言者」はあまり連想されなかった。黎明レイの夢も医者レイに限られていた印象なので改めてこの二地点のレイが差し合っている状況なのかも知れん。

いよいよ「身体に力が入らない」というレイを毛布で包み無理やり寝かせたまま寝室を出た彼女は彼の症状について何か分かればと意を決しファンに連絡を取ってみるのだが、案の定レイは以前にも一度「長恒山」での研究活動中「一夜にして別人のように変わってしまった」ことがあったらしい。そうしてひとり山奥へ踏み入り翌日帰って来たときにはすでにいつものレイに戻っていたため何が切っ掛けか一切は不分明であるがきっと「長恒山」には「やるべきこと」がありそれを終えたことで元に戻ったのだろうと見解を述べるファン、とは言え彼女は漠然と彼の「あの黒い氷晶」は長恒山よりもさらに前、さらに別のどこか「私の記憶の奥深く」どうしても思い出せない場所に存在しているはずだと直覚的に確信したりする。これも平たく言うなら「魂の記憶」ってことになるのかな? 無論「極地にそばだつ長恒山」とは「フィロス最北地にそびえるイバラの塔」と縁のあるポイントで間違いないのだろう。

翌朝遅い時間、彼女にあれこれちょっかいをかけられようやく目覚めた彼はひどく消耗しているも眼差しや吐息は温かくすっかり元の医者レイに戻っているわけだが、今回ばかりは「すべきことを終えたため」では決してなく、どうやら前夜ファンとの通話を終えた彼女が再び寝室へ戻りぐっすり眠る彼の手を握って一晩中寄り添っていたことで「エーテルコアの力」が長時間働いていたためなのだろうと思われる。実はどさくさに紛れ一緒に部屋へ転がり込んできてしまった「十七」だけがその繋がれたふたりの手から葉脈を伝うようにレイの冷えた身体を包み込む「微弱な力の流れ」を感じ取り、決して溶けることのない黒い氷晶の侵食感が徐に薄れていく「微かな音」に反応し耳をピクつかせていたと書かれてる。

昨夜のことは「多少不確かではあるが大体は覚えている」と話すレイ、夢の中にいると本来の自分がすべきことと夢の中の自分がすべきことを混同してしまうのだと「罪悪感」を滲ませるが、ひょっとすると医者レイと黎明レイはどちらにとっても「外科医としてコア介入症患者を治療する」のが「本来の自分」の選択であり「黒い氷晶で異化者を一掃し病果を取り除く使命」に駆られ動かされるのが「夢の中の自分」なのかな。互いに互いの現実を生きながら夢の中で入れ替わっているように見えて実は黎明レイとはついに悪夢から出られなくなってしまった彼が「夢の中から本来の自分の姿を垣間見ている」状態だったのかも?

いずれにしろ午前のニュースは黎明の抹殺者が一夜にして姿を消し捜査が一時打ち切られているようなニュアンスで安堵した。もちろんいつまた同じことが起こるか分からんが一旦「耐え」である←

アスタの意思

どういうわけかレイに懐いて離れようとしない迷子の子犬はいわく「遠い親戚のペット」だそうで、ならば一旦彼に引き取ってもらおうと一緒に車に乗せレイ宅へ向かいながらも行きがかりどこか気が乗らない調子のレイは「あなたの家にはお掃除ロボット以外に生き物がいないしロボットのお友達になってもらえばいい」と後押しされ「いや結構」「うちの清掃ロボットにはパーソナルスペースがある」だなんて「レイ節」を炸裂させているのだけど、ようやく「らしさ」が戻ってきたようでなんだか嬉しいw

後部座席からモフモフの体をすり寄せ膝の上に乗ってきたその子が「なんという犬種なのか」ふと気になった彼女が「画像認識モード」を起動しカメラを向けてみると「古代の神獣・白澤」なんぞ思いもよらない生物が識別され、戸惑いながらもよくよく観察してみればその耳元には「新芽のような小さな角」が生えていると言うんやが、これは九黎の司令が従えていた「小白」とはまた別の個体なのかな? そうなると「十七」という名の意味するところも気になるが、それよりも昔あった「子犬だと思って飼ってたらヤギだった」って有名なおもしろ投稿が想起されてつい笑ってしまったよ(殴

到着すると車を降りるなり何やら自宅周辺を行きつ戻りつしていた「白い服を着て本を抱えた見知らぬ少年」がこちらに気が付き表情をほころばせ本を投げ出してレイのところへ駆け寄って来たりするのだが、唐突に抱きつかれどこか迷惑そうなレイはまるで予想外の出来事に当惑する彼女に実はこの少年こそがその子犬の飼い主であり遠い親戚の子どもであり「最近は家出が趣味らしい」だなんてぞんざいに紹介、少年も危うく「フラクタル図書館」など口走るも心得たもので「近くに住んでるが今日はおじさんに挨拶に来た」のだと話を合わせ、十七も多少ぎこちないながら指示されるまま「子犬らしい芸」を披露し始める。おじさんとは叔父の意だったのか…

いくぶん疑惑の眼差しでありながらも突然の客人を歓迎する彼女にうっかり素性が露呈する前に「彼らを送ってくるから家に上がって待っていて欲しい」などと半ば強引に退席を促し用心深く玄関のドアが閉まるのを見届けてから「なぜここへ来たのか」とその思惑を探るように尋ねるレイ、少年は表情を引き締め「図書館へ行き職務に就くという7年前の約束を果たしていただくために来た」のだと返答するが、どうやらその際レイは「私には私の選択がある」と断じてこれを拒んでいたのだそう。

しかしながら「アスタの意思」により「神言者」に選ばれたレイはすでに「悪夢」を介して「自分でした選択」だとは思えない何者かの意思を執行しているはずであり、運命とはそうやって雪のようにひっそりと降りかかることからたとえ自分で選んだつもりでも実はすべてが「必然的」な結末へ導かれていることにさえ気が付かないのだ、と少年は「先ほどまでとはまるで違う大人びた声」で説き聞かせるが、なんだかこれは本格的に「聖書」を読んでるみたいだな。こうして「神の意思を伝える神の使者」たる「天使」が「神から啓示を受け神の意思を実践する者」である「預言者」に「助言」を与えにやってくる場面はそれこそ「ヨハネの黙示録」だけでなくそこかしこに山ほど出てくるが、ワンチャン現代にも起こり得るリアルなアレンジを加えるとこうなるのか、あるいは聖書の預言者たちもみな実際には天使とこんなやり取りを繰り広げていたのかな。

するとレイは7年前に「神言者」として召命を受け「世界がいずれ異化者で溢れる未来」という神の啓示を預かり「黒い氷晶で病果を取り除く」という神の意思の実践を告げられていたというわけか。これが聖書なら預言者はもちろんその役割を引き受けるがレイはそうではない「自分の選択」をしたのだな。医者になることを決めたのは「自分が再び彼女の脅威になったときあの日のように何もできないままでいたくない」からだとファンには話していたけれど、極地での研究やコア介入症治療の探求は恐らく「神の意思」である抹殺者としてではなく「自分の意思」である医者として病果を取り除くための実践でもあるのだろう。となると、終わらない冬「医者として」ああするしかなかったトオヤ先輩との一件は「自分の選択」をあわや揺るがせてしまうほど恐ろしい記憶としてわたしが思っていたうん万倍今も彼を苦しめ続けているんじゃないかと。涙

固い姿勢を見せるレイにその気がないことを理解すると再びあどけない口調に戻った少年は今回これ以上「ここに留まるつもりはない」が「作ってもらった通行用の腕輪を図書館に忘れてきてしまった」ため「もうひとつ作って欲しい」と願い出て、レイが仕方なさそうに氷で「腕輪」を生み出すと恐らくこれにより空中に現れた「フラクタル図書館」へ繋がるのだろう「幾何学的な模様が展開され無数に折り重なった次元が織りなしているような扉」に踏み入ることができたかのように見えるんで、改めて図書館は主人たるレイの何か「力」により「折り重なった次元」を行き来することができるようになる空間なのだろうと思われる。

去り際に礼儀正しく一礼したかと思えば「神言者様の大嘘つき」だなんて捨て台詞を残し「天地を吹き荒れた風雪」と共に扉の中へ消えてしまう少年、どうやらこのとき十七は置いて行かれてしまったらしいんやが、きっとこの子も「自分の選択」「自分の意思」で本来の飼い主であるレイの元に残ったのだろうな。

ちなみにレイが初めて臨空市のフラクタル図書館を訪れた時のことは彼の回想の中で詳しく語られるが、静かな通りの一角で「少年」に何度も懇願され不本意ながら扉の向こうに立ち入ればそこは「いくつもの小道が交錯する広大な花園」になっていて、その道の交わるところに「図書館」が高くそびえているという謎の二重構造になっているらしい。

その花園が「次元の交錯する場所」であること、故に図書館は「どの星系にも存在せずどの文明にも属していない」こと、そしてレイこそがそこの主人であることを「管理人」を名乗る「青年」が解説してくるのだが、彼はそれよりもまるで別の次元へ繋がる階段のように無限に上へ続く書架に所蔵された本が「それぞれの世界の運命を秘めている」のだと聞いて「私の運命もこの中にあるのだろうか」なんて思索に耽っていたりする。これはゆくりなくバベルの図書館における常套句であるが、まさか次元が交差するように交わっているというその道は上から見れば「六角形」になっているだなんて言わないよな?←

そしてその夜は「これまでとはまったく異なる夢」を見たと言い、レイは見知らぬ世界でローブをまとい塔の中を歩きながら古びた書物をめくっているのだけど、そのページの間には「一輪のジャスミン」が挟まれているんだと。それは「彼が自ら抹消したとある時間軸の中の永遠に誰にも知られることのない春の日のもの」なのだそうだが、きっと「もう二度とお前を記憶から消したりしない」「二度と失わない」のキスをしたそれが「彼の手によって」蕾ではなく花開いた一輪のジャスミンとなってあの花木集の元は「メモが挟まれていたページ」に挟んであるのだろう。

もしかしてまだ見ぬ黎明「アスタの意思」という悪夢から出られなくなってしまった抹殺者レイが時を経て「神の道具」たる預言者レイに至り、秘密の塔「頂上のジャスミンが花咲いた」ことでついに悪夢から目覚めたその状態、これもたとえば「文字を元に築かれた精神世界」にいた幻影のレイの方が実は「本来」で、今世時空を超え「分岐してしまった過去の地球」にもう一度転生している、というのが彼の「魂」の時系列なのかな? それならレイが今「自分の意思に従う」選択をしてるのは輪廻の中でひとつ業因を断ち切れているとも取れそうな(希望

新生の繭

あらゆる綻びが取り繕い切れなくなりつつあるにも関わらず「話したいなら話せばいい」とあれこれ詮索せず焼きミカンをもぐもぐしながら彼を迎え入れる彼女、一匹狼の船出のセイヤにもそうだったがきっとこの器のデカさが彼らに「もう隠すのはやめよう」と思わせるのだろうな。レイはヤスの誘いに応じてアーテーの泉医療事業に加わるつもりで3日前ついに「しばらく離れる」心算を立てるもそれを実行するより先に不可抗力たる悪夢に襲われ昨夜までの騒動に至ってしまったこと、とは言え「加わるつもり」とは口実でこれには目的と理由があり、この先改めてその計画に戻る意向であることまで彼女に打ち明ける。

近日Aksoには急な症状の悪化による救急搬送や緊急入院が必要な「特殊なコア介入症患者」が急増し、受け入れてすぐに亡くなる人もいれば程なくして「異化者」と化した人もいるがそうした患者は全員が「ヴァール療養院」なる施設で「新生の繭」と呼ばれる医療カプセルに入ったことがあるのだそう。

アーテーの泉を始動したEVERはその「第一段階」として「ヴァール療養院プロジェクト」なるもののプレスリリースをすでに各報道機関に向け告知しているが、これにより「新生の繭」なるカプセルがコア介入症治療における「信頼性の高い最新の医療機器」として取り上げられるようなことになれば恐らく実情を知らない多くのコア介入症患者が療養院を訪れ同じ治療を受けることになる、レイは「患者のため」だけでなく「ある過ちを償うため」にもこれが正式発表に至るのを阻止したい、その「過ち」については少し後になるが「新生の繭」とはかつて中止され処分したはずの「自分の医学研究成果物」によって開発されてしまった医療技術だからなのだと告白する。

なんだかめちゃくちゃ胸が痛いな。前章どこかで「選択を誤れば後戻りできないこともある」なんて言ってたような気もするが、レイは「自分の意思」による「自分の選択」が返って病果の蔓延する世界を助長してしまった、くらいに思ってしまってるのかも知れん。これまで彼のそういう自責の念を煽ってくるのはヤスなのだとばかり思っていたけれど、彼はそんなものより余程強大な「神の意思」と「自分の意思」との狭間でずっと苦悩していたのだな。

でも、これが「第一段階」ならそのうちコア介入症患者「以外」を対象にした第二段階「アーテーの泉人体改造プロジェクト」とかもたぶん始まるから。それはもうX-Heartとか関係ないやつだから。たとえ自分で選んだつもりでも実はすべてが必然的な結末へ導かれているだなんて言葉にどうか苛まれないで欲しい。無神論者たる本来のレイそのものに「存在意義」と「祝福」があるのだと彼の言葉をそのままお返ししたい。涙

ただ、そうして胸の内を明かしたレイは確かに自分は事情も明かさず離れてしまったことさえあるが「今回は一緒に来てくれないだろうか」って言ってくれるのだよね。彼はもう何も恐れていないし「二度と失わない」心積もりでいてくれてるのだと思えて嬉し泣きしてしまったわ(嗚咽

彼女が「ちょっとした甘い言葉だけじゃ一緒に命をける条件としては足りない」なんて言い出すのには度肝抜かれたが、逆に「もう二度と黙って離れないと約束できるなら」なんて言わないあたりふたりの中ではそれが「言うまでもないほど当然のこと」なのだと思ってていいんだよな?

さらにいろいろと詳細が明らかになるのは次章以降になるのかも知れんが念のため、今章読了で開放される「深空百科」によれば「新生の繭」とはこんな感じらしい。

真っ白で清潔な実験施設の中央にある円形のカプセルで稼働中は「深空エネルギー衝突カプセル」同様「空中に浮かんでいる」というが見たところあまり想像できない。外装は半透明で銀色の光に包まれており心臓と同じく一定のリズムで鼓動を刻むように収縮してるんだと。精巧に作られたその繭の中から今にも何かが殻を破り空へ飛び立って行くようだとも書かれていたが、サナギが蝶になるようなモチーフには何か含みがあるのかな? 「銀色の光」から「銀輝樹の果実」が連想されるわけじゃないけども、深空学会のイン教授がまるで「一滴の雫から広い海を覗き見た」かのような広大な星の磁場でついにタツミとキキに再会したときにそれを展開したのが恐らく「桁違いの力」を持っていたのだろう何か「芋虫」のようであり「果実の種」のようでもあるワンダラーだった気がする。

ヴァール療養院

ふたりは「少なくとも現状を把握して対策を練ることはできる」との算段でまずは内部状況を探るべく「訪問者」として療養院を見学させてもらう段取りをつけ早速ヴァール療養院を訪れる。エントランスにはEVERの企業ロゴとあのシンボルマークがオブジェになってるらしいのだが、EVERとは「Eternity Vanquishes Evolution Restraint」の頭文字でEVERだったんやな。これは三単現の動詞で文章になってるイメージのかな? 永遠というものが進化における拘束を克服する、みたいな。えっ旧約聖書の「命(ヘヴァ)」からきてるんじゃないかとか言ってた自分大誤算でどうしたらいい? (しらん

到着するなり上機嫌に声を掛けてくるヤスはふたりをロビーへ案内しながら「ようやくレイがアーテーの泉に興味を持ってくれた」ことを「1ヶ月も電話をかけ続けた甲斐があった」と喜び「どうして急に応じる気になったのか」問われたレイが「私以上にX-Heartを熟知している人はいない」ためだと答えるとますます得意になって押し付けがましく先輩風吹かせてくるのだが、なんだろう彼の判で押したようなストーカー行為にも慣れてきてしまったか以前ほど腹も立たなくなってきてしまったな。こんなに気を良くして本当に少しも疑ってないんだろうか。

正式発表前である現在入院患者には著名人も多く、中でも「戦場ジャーナリスト」として長年に渡る最前線での取材で数の栄誉ある賞を受賞してきたらしい「ケーラ」という女性は世間からの認知度や信頼度において「新生の繭」イメージ向上にもっとも貢献するであろう患者のひとりなのだそう。

ケーラは1年前に取材中ワンダラーの襲撃を受けコア介入症に感染し長らくAksoでレイの患者として治療を受けていたものの「愛娘がようやくママと呼べるようになった頃」余命2ヶ月を宣告されたことでこの療養院に転院してきたみたいだが、レイに対してはどういう感情抱いてるんだろう。

ヤスが「残酷なお前達が死の宣告を下した」なんぞ言い立ててくるのは案の定として、「こちらに気付いて自ら会釈してきた」ケーラのその雰囲気は決して嫌な感じではなくむしろめちゃくちゃお世話になった大好きな先生にするご挨拶って印象だったけど、もちろんAksoの医療にもレイの方針にも大満足で「さらに新しい治療法が開発されたと聞いてそちらも試してみることにしました」くらいの感覚なのかな。

ショウジ

最後に出てきたこの人なんかめちゃくちゃ怪しいんだけどなに…?←

ヴァール療養院プロジェクトの責任者ショウジ? 背後から突然近付いて「人を従わせる方法はこうすれば天国へ行けると説くことじゃない」「そうしなければ地獄に落ちると信じさせることだ」とかってカルト教団の教祖みたいなこと言ってくるんだけど、この人「異化者襲撃事件」の現場検証していたあの刑事だよな。「久しぶりだなレイ先生」なんて言ってるが、どこかに出てきた人? もしかして天行大学でコア心臓介入医療法の研究を率いていた医学部教授? それにしてはだいぶ若いけど…

取り敢えず医療関係の人ならどこかしらで何かしら関わりのあった人ってだけなのかも知れん。それよりも刑事のフリして監視カメラの映像どうこうしてたり思い返せば不自然な発言の数、最悪レイが抹殺者だと知ってるまでありそう。それをネタに脅しとかもありそう。やばそう(怯

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