7章 海の下の月光
セイヤに付与された権限で閲覧できる暗点が関わった多くの事件について調べるうち、物証不十分につき未解決ではあるものの明らかに彼らが糸を引いていたことを状況証拠として故意に残したかのような不自然な殺人事件を発見する主人公。
黒幕が暗点だとすれば事件自体を揉み消すことさえ容易であるはずだが、敢えてそれをしないのは「これを知った誰かを脅すため」「警告のため」ではないかと推測される。
事件資料の出典元は協会によりブロックされてたみたいなんですが、暗号化されたアドレスを解読してくれるようなお手軽ツールがあるらしく、主人公はこれを使ってその資料の出どころであるむっちゃ怪しげなクラウドサービスにアクセスしてしまう(怯
提供者と閲覧者が「3分後に自動削除される」状態で画像ファイルや音声ファイルを送受信できるシステムみたいなんやが、殺人事件の現場写真をこっそり誰かに見せたくて持ってるなんてそんなの絶対やばい奴に決まってるジャン←
匿名でやり取りをして、バスローブ姿で刺殺されうつ伏せに倒れている中年男性の遺体写真、そして犯人と被害者の会話や共犯者の靴音などが録音された音声ファイルを共有してもらい、さらに補足事項としてこの事件は臨空市中心街の億ションの一室で2年前に起こったこと、被害男性はEVER傘下の医薬品メーカーに勤めるコア研究員であったことなども情報として提供してもらえましたが、提供者がなんかやたらとフレンドリーに「なんで調べてるんです?」「暗点に興味あるんです?」って聞いてくる。
どうやらこういう暗点絡みの事件データを閲覧しようとしてくる一般人に懸賞首のポスターを撒いて「紹介料がもらえる」みたいで、なんやビラ配りで小金稼ぎしとるN109区の小物やないか、とは思ったのだけど…

載ってたのがホムラくんだったんでやっぱ罠なんじゃないかとも思い始めました…
小物のフリした実は暗点中の暗点みたいな奴で、相手が主人公だと分かってて、「あなたの友達狙われてますよ」ってほのめかして、そっちに招き入れようとしてるとかじゃない? 偶然?
これセイヤの探査器と24時間だけ同期されてるってことらしいんだけど、セイヤはどこまでログ確認できるんだろ。全部セイヤが把握しててくれてるんなら安心できるんだけど(絶対的信頼
リモリアの珊瑚
身柄の確保に懸賞金が掛けられていると知り慌ててアトリエを訪ねるも特別普段と変わらない調子のホムラ。どうやら命を狙われることになったようだと本人も心得ているみたいですが、それにしては随分と落ち着き払っているような…
安否確認ついでに一緒にカフェでランチしつつ、「どうして狙われることになったのか」詳しく話を聞いてみると、発端は「N109区の人間に絵を描くよう依頼されたがそれを断った」こと、ただこうして命まで狙われるようになったのは依頼主が「自分たちの欲しいものに繋がる秘密が絵の中に隠されていると気付いたから」ってことらしい。
ホムラによれば例の赤い珊瑚は海底のリモリアと呼ばれる場所にあったもので人に幻を見せる不思議な効果がある、だからこれを砕いて作った絵の具で描かれた絵を見た人は「作者の描いた夢の中」に入れる、またリモリアにはそんな珊瑚に似た「珍奇な宝物」が他にもたくさんある、とのこと。
主人公はこれを「奇想天外ながらも作り話だとは思えない」と感じ、聞き入っている様子。
なんか、洗いざらい明かしてくれたと見せかけて煙に巻かれたような話ですねぇ。
夜遊びの章から察するにホムラは恐らくリモリア人なのでこの話そのものは真実として、要約するとホムラを狙うその依頼主は「ホムラの描いた夢が自分たちの欲しいものに繋がってる」と考えていることになる。
ただ、その夢を足掛かりに目的のものに近付きたいなら懸賞金を掛けて捕縛するより説得して仲間にしたいはずだし、たとえ「断られた」からって命を狙うという判断は賢明じゃないと思うんだよ。足掛かりを失うことになるのに。
つまりこれ、「ホムラの描いた夢」を見たことでホムラ自身の目的が「自分たちの目的と同じ」だと気付いて牽制のために賞金首にしてる、って状況なんだよね? たぶん。
2章で初めてホムラを訪ねたとき彼は「僕がその珊瑚を使って描いた絵は1枚だけ」だと言っていたので、「ホムラの描いた夢」はイコールであの「海辺で少女が歌う夢」ってことになるんだろうけど、仮に依頼主が暗点だったとして、この夢が「エーテルコアに繋がるもの」だと察しているんだとしたら、ホムラも同じく何か目的があって秘密裏にエーテルコアを探してる人、ってことになるよね。
とは言え当の主人公はやっぱりあの夢を自分だとは思えないようで、今回は「私には分からない歌を歌ってた」とまで言ってるし、そもそも夢はあくまで「ホムラのイメージ」ってことみたいなんで、彼のフィルターを通しての少女の姿にエーテルコアを垣間見たなら暗点の人たちはよっぽど感受性豊かってことになってしまうよな←
もしかしたら依頼主は暗点とか一切関係ない単純にホムラの絵で夢が見れるなら「こりゃ高く売れるぞ」的な小物的発想で小金儲けをする目的だったのかも知れないし、分からん(しろめ
取り引き
こうしてホムラにもN109区内の人間と何らかの繋がりがあるだろうことを知ってしまった主人公は、「ある事件を追うために自分もそこに入らなければならない」「しかし方法がない」ことを彼に打ち明けてみる。
始めは軽い調子で「危険だしやめておいたら?」って感じだったんだけど、そんなことよりホムラはどうしても絵の具の原料探しにボディーガードさんについて来て欲しいみたいで、「仕事が落ち着いたらね」って適当言って立ち去ろうとする主人公を引き留めるために「N109区に忍び込みたいなら協力できるかも」なんて持ち掛けてくる。
よくよく聞いてみると「主人公自身が餌となって暗点を誘き寄せる」だとか、「情報が欲しければ情報を提供する」だとか、めちゃくちゃ危険な提案っぽいんだけどこれ本当に乗ってもいいのかな(ビビり
確か「暗点が持つあるものを探しに行きたい」みたいな言葉で主人公は伝えていたはずだけど、屋上でコア花火なんぞしていたあの月影ハンターが「絶対ダメ」「絶対死ぬ」「絶対行かせない」って反応なのに、ホムラからしたら「できないことではないんじゃない」くらいの判断なんだな?
N109区内の人間どころか普通に暗点の構成員とも交渉や会商をしたことがあるかのような口ぶり。まぁひょうひょうとできてしまいそうなスマートさは持ってるが…
これもやっぱりセイヤはエーテルコアが彼女の心臓に残ってることを知っていて、一方ホムラは「暗点が欲しがるような情報を握ってるんでしょ」くらいの認識だから、なのかなぁ。
結局取り引きは成立し、後日潜入に協力してもらう代わりに明日は一緒に海に行くことになりました。
「約束忘れないでね」って念押しする主人公に「君が忘れても僕は全部覚えてるよ」ってホムラは返すんやが、チクっとすなよw
帽子島
ホムラのアトリエがある白砂湾の小島からほど近い位置に浮かぶ小さな自然島。10年以上前は臨空市内の小学生が遠足で訪れることもあったそう。

無人島ぽいけど野生の猫ちゃんは暮らしているようで、またホムラくんは「猫が怖い」って設定みたいですね。
誰よりも猫のような性格してるけど、海底に住むリモリア人としては魚の宿敵たる彼らを遺伝子レベルで恐れてしまう、ってことなのかも知れません。
ホムラはこの島に近頃出現するようになったワンダラーを主人公にささっと退治してもらい生成されたコアを絵の具の顔料にしたい、って表面上は言ってるんだけど、彼女が回収して持っているはずの例の珊瑚を持ってくるようあらかじめ指示していたり、その珊瑚の持つ微弱なエネルギーを共鳴のEvolで増幅させワンダラーを呼び寄せようとしたり、何か目的は別にあるんだろうなとは感じます。
珊瑚がこの島で見付かったものであるという彼の言葉を信じていいならば、たとえば「本来海底のリモリアにあるはずのものがどうしてここにあったのか」個人的に気になって調べようとしている、ようにも見える。
ちなみに彼が主人公に珊瑚を握らせ共鳴を促すシーンでは、「波動が弱過ぎて捉えられない」と諦めモードの彼女の手を自らの両手で包み「一緒にやろう」「心で感じて」「相手と繋がって」と理屈ではない直感的なアドバイスで導こうとしていたホムラ。
ホムラにとって共鳴あるいはEvolそのものが決してロジカルな思考ではなく感触やセンスで操るものであるらしいことが伺える。
燐龍
ホムラの目論見通り島に潜むワンダラーは順調に姿を現し始め、そのうち海の底から強大な特異エネルギーと共に「燐龍」なるものまで現れるのだけど、これは3章の宙龍や6章の鏡霊のように引力錨と改造コアを用いて暗点が復活させている14年前の裂空災変で初お目見えのワンダラーってわけでなく、珊瑚のエネルギーをこの場で増幅させていたことに起因して呼び寄せられたもの、って解釈していいのかな? 主人公も一目見て「燐龍」だと断定していたし。

リモリアの儀式
燐龍は共闘して無事に倒すことができるも、直後ふたりは波に飲まれて海に身を投げ出されてしまう。
主人公が海中で慌ててホムラの姿を探し目をやると、彼は小魚たちに囲まれ「うずしお」のようなものと対峙していました。
たぶん、そのタイミングでこの島にやって来た本当の目的である「何か」を果たそうとしていたのではないかと。
このままでは溺れてしまうと彼に手を伸ばす主人公に「近付かないで」「でないと君の安全は保証できない」と背を向け何かを続けようとするホムラ。何をしようとしているのか心で問うと、「君には関係ない」と冷たい声が返ってくる。
なんだけど、いよいよ息が続かなくなり水中で気を失ってしまった主人公が、意識が遠のく寸でのところで無自覚に「行かないで」と願うと、言葉に反応して胸に魚の尾ひれのような赤い紋章が現れ、手を当てて苦しむような素振りを見せるホムラ。
すると「うずしお」は見えなくなり、彼はそれ以上「何か」を続けることができなくなる。


「覚えていないくせに止めるなんて」「今回は君が自分で選んだんだ」と独り言ち、主人公を腕に抱くと、首筋には青白い宝石のような模様が浮かび上がり、最終人魚のような姿に変身して海面へと上昇しました。


ここはBGMも相まってとにかく壮大でめちゃくちゃに美しいシーンでしたねぇ。
なるほどリモリア人は本来マーマンやマーメイドの姿をしている半魚人であり、ホムラくんは乙女ゲー攻略キャラとしてはいわゆる「獣人枠」だったというわけだ(びっくり
たまたまなのかもだけど、わたしアプリ始めてからフレンド申請をくださる方がほとんどみなさんホムラくん推しでして、正直この爆発的ホムラ人気現象をずっと不思議に思っていました。
それはリモリア人というものを限りなく人間に近いものとして認識していたために、ホムラくんがピュアを極め過ぎた猟奇的な男の子に見えていたからです(殴
でもようやく追いつきました。そういう彼のぞわっと感は、マーマンのようなファンタジックな存在が持つ幻想的な魅力のひとつだったんですね(深頷
夜遊びの章ラストに描かれたリモリアに伝わる「誓いの儀式」を思い返してみると、リモリアにはああいう儀式めいた慣習が実は他にもたくさんあって、またその全てにある程度の「効力」があるんじゃなかろうか、となんとなく思ったりもします。
今回ホムラがうずしおのようなものと対峙していたのもたぶん何かの儀式なんだろうし、また儀式中に彼の回想として描かれる恐らくホムラと主人公が過去に「約束だよ」「また会いに来てね」と言葉を交わす場面では、幼いふたりが小指を絡めてどうやら「指切り」のようなことをしてますが、もしかしたらこれもリモリアにおいては何か「効力を持った儀式」のひとつだったのかも知れないなって。

「今回は君が自分で選んだ」というホムラのセリフからは「じゃあ前回は自分で選べてなかったんだ」ってことが読み取れると思うのだけど、その「前回」がこの「指切り」を指しているのだとすると、人間である主人公にとってはごく簡単にできる子ども騙しのような行為、ホムラにとっては何か大きな意味を持つ儀式、それを共有することなく強行してしまったのではないかと。
主人公の言葉に反応してホムラの胸が光るのはたとえばこの指切りの儀式によって彼に打たれた「くさび」のようなもので、リモリアにおける何か不思議な言い伝えやルールに基づいて今ホムラはこれをどうにか無効化しようとしてるところ、だったりするのかも知れません(すべて妄想です
リモリア人
こうして彼らが人魚の姿になれることを知ってしまったら思わずにはいられないのがやはり2章レーウィン邸に飾られていたあの巨大アート、あれまじもんの骨格標本だったんじゃないか説だよね…
いやもちろんサイズ感おかしいんで、本当に剝皮して内臓除いて肉を削いでこれにしてるわけじゃないとは、思いたいのだけど(弱

実は今章序盤、ふたりがカフェでランチをしてると怪しい男が物陰からこっそりこちらを監視していていざ取り押さえてみたらそいつはただ有名アーティストのゴシップが欲しくてホムラを尾行していただけの週刊誌記者だった、ってシーンがあるのだけど、聞けば「レーウィンが昨夜自宅の浴槽で溺死した」ことが「ホムラの絵と何か関係があるのではないか」と睨んでスクープを取るために周辺を嗅ぎ回っていた、って言うんですよね。
しかも、噂によるとレーウィンは死の直前何度もナイフで自分の手足を切りつけていたためその遺体にはまるで「ウロコのような切り傷」が無数に残されているとか、警察が調査に入り完全に封鎖されていたはずのコレクションルームからあのホムラの描いた絵画だけが忽然と姿を消しているとか、まるで「彼は絵に操られ死んだのではないか」とも思えるような不審な点がいくつか見付かっているらしいのだが、ある金持ちが圧力を掛け事故を隠蔽しようとしているようで情報が漏れてこなくなってしまった、とも語られる。
ホムラは今回の記者の尾行や突撃行為を悪質なものとしてクレームを入れたりしない代わりに「誰がそれらを隠そうとしているのか」調べてくるよう言い付けていましたが、これが「持ち去った犯人を見付けて絵を返して欲しい」からなのか、「知られたくないリモリアの秘密を知ってるやつかも知れないから捕らえたい」のかは分かりませんでした。
と言うのも、正直あの絵は確かに不思議な夢を見せるけどそんな風に人を狂わせたり操るような力が宿ってるようには誰の目にも見えていなくて、どういうわけかレーウィンだけが初めて個展で見付けたときから他の作品には目もくれず一目散に飛びついて随分と長い間「どうか売って欲しい」と交渉し、執着し、幻覚を見たり意識障害を発症しながらも頑なに傍に置き続け、最後にはこうなってるわけです。
不死を求めた末路が溺死というのが本当に八百比丘尼をもじっているんなら、レーウィンは事実「人魚の血肉を喰らってしまった」ことになる。
もちろんそんなおぞましいことをそっくりそのまましたとは考えにくいけど、道楽のために金に物言わせ人魚を捕獲して生態を研究しあの芸術作品を造形した、くらいならありえない話じゃないよね?
これも感覚的な話になるけど、燐龍を前に炎のEvolで波を切り裂いたホムラには、たとえばリモリアという都市国家においては本来なら王位を継承するような血筋や立場にある人なのかも知れない、と思わせるような「王者の風格」がありました。
海の怒りを買ったレーウィンが海の王者であるホムラの描いた夢によって惑わされ、狂わされ、最後は海に迎合するような姿で不審死を遂げていた、って考えると、なんて言うかわたしの厨二心がとてもくすぐられるんだよね(しらん
ちなみにホムラは燐龍に向かって「僕の血の方がお好みかい?」なんて問い掛けたりもする。
本当にリモリア人の「血」というものが「幻影」やワンチャン「不老不死」に繋がる何かとして今後描かれるかも知れないし、となると例の赤い珊瑚もひょっとしたら誰かリモリア人先祖の「血の結晶」だったりするのかも知れないし…
仮にそうなら2章珊瑚からワンダラーと同じ「特異エネルギー」の波動が検知されていたことも気になるし、ホムラが人魚の姿に変わる直前その前兆のように表出する「青い瞳」がまだ見ぬ黎明に登場する「病変体」の特徴のひとつと完全に一致していることも気になります。

とまぁ、こうして思うままにあれこれ妄想して書き連ねてみて改めて、この「リモリア」はこの作品において唯一と言えるくらい「異質」な存在だなぁと感じます。
深空の世界は常に数理として捉えられていて、世界の分析をするのに基準となるのはいつも「科学の解」や「事実の存在」。
なので、当然この世界から見たリモリアは「解読困難な先進科学技術によって繁栄した謎の海洋文明」ってことになっている。
でも、本来のリモリアは恐らく「神話」や「伝承」みたいなもので、「事実」から生まれたものではなく「感性」や「感覚」から生まれたものがモチーフとなっている。
事実から生まれるものと感性から生まれるもののやっぱり相容れなさを描いて「科学の対極にあるのが芸術だ」って伝えたいのかも知れないし、あるいは逆にそういう限りなくおとぎ話に近いもの、ファンタジーに近いものをどこまで科学的な視点で描けるのかを追求しているのかも知れないし、なんだろう、いずれにしてもこのリモリアをこの世界における分析基準で最後まで理解することが、恋と深空という物語を読み終えることと同義であり、隠されたもうひとつのミッションなのだろうと個人的には感じてしまいます。面白いですねぇ(唸