空に堕ちる
空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

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4部2章 昼なき長き夜

そうかぁ…(鬱

我ながら気合いたっぷり声を大にして語ることはことごとく的外れだと言うのに、なぜ「まさかそんなわけない」と敢えて見て見ぬふりをする目を背けたくなるような展開ばかり的中してしまうのか←

個人的にはマヒルのリンゴが「欠けていない」ところに着目して解釈したい。
これまた共感を得られそうにない感想にはなるが、彼の「焦り」や「混乱」にはしっかり感情移入してだいぶ泣いてしまったよ。下手したらいちばん応援したいかも知れないなぁ。

違和感

案の定すっかり日が昇った寝室で目覚め「明け方に帰宅した」と言うマヒルとテレビニュースに目をやると「爆発事件で行方不明になっていた男児は遠空艦隊に保護され病院で治療中」との報道。彼も彼の持っていた次元コアも結局艦隊の手に渡ってしまったし、さらにミズエちゃんは「散血症性ショックにより息を引き取った」との知らせ、おまけに兄妹の両親はあの爆破犯の小型艦から「遺体で見付かった」だなんて、序盤から矢継ぎ早にやって来る悲しい展開にこちとら大驚失色なんだけど…

ただ、ミズエちゃんに関しては救急記録を見たレイが「艦隊の公開したその通りの情報があまりに何もかも記録され過ぎている」点にまるで何かを隠すために工作でもされているかのような違和感を覚え「彼女が亡くなったところを誰も確認していない」なんて言うんできっとまだどこかで生きていてくれるのだと思いたい。涙

彼女の葬儀がしめやかに執り行われた頃、治療を終えたモリトくんの身体からはどうやら無事に結晶が取り除かれ「艦隊が斡旋した養親」に受け入れられることも決まり表向きには「もう安心」なのだけど、「あの夜迎えに行ってやれなかったこと」を謝罪すれば「艦隊の制服を着た大人たちに見付からないように」という両親の言い付けを頑なに固守していたはずの彼は貼り付けたような笑顔で「艦隊の人たちが見付けてくれたから心配要らない」とまるで別人のような発言。
続けて「教授が面倒を見てくれることになった」と加えるがこれは次元コア回収の成否によりマヒルの死命を制している例の教授だな?

ミズエちゃんの遺したぬいぐるみ「ルシュカ」を手渡すとモリトは妹の遺影を見つめながら眉をひそめ「その子が誰なのか必死に思い出そうとしている」ようだとかいうもんだから、あの録音のかわいいやり取りが蘇って涙出そうになってしまったよ。まじで許せん教授(舌打ち

この一連の出来事がまるで「すべてがあらかじめ決まっている棋譜」のようだと不審の念を抱く主人公、ミズエの墓石の前で絡まった糸を解くようにこれまでを振り返り「次元コアが目的ならなぜ艦隊はモリトまで連れ去るのか」と独り言を溢してしまうのだけど、いつからそこに居たのか物言いたげなバイパーが近付いて「彼らがもっと欲しいものをあの子が持ってるなら話は変わってくる」「エーテルコアを欲しがるものはごまんと居るが呑み込まれずその力を使えるものは一握りしかいない」なんぞ声を掛けてくる。

やっぱり「秘密基地」は誰にでもできることじゃないんだな? 言われてみれば確かにミズエにはそれができていなかったかも知れん。と言うか、主人公も「その力を使えるもの」としてコア接触を施され現世「後天的に」エーテルコアを心臓に持つ少女となったのか…? 埃の中ハンチングハットは彼女を「成長させてしまうこと」を懸念していたようだけど、「子ども」であることも条件のひとつだったりするんだろうか。

「あの子に何をしたのか」と尋ねれば「自分の目で確かめてみればいい」と「奇妙なデザインをした小さな円盤」を投げ渡され、嘲笑を浮かべたバイパーは「霧のように消え」去った。

衛星島V-7掲滄通り93号

バイパーに指定された日時教わった住所に赴くとそこには雲のような霧と檻のような鉄柵に囲われた庭園に白い壁の邸宅が建っている。奇妙なデザインの円盤は「電波妨害装置」でありその働きにより柵の中へ忍び込めたと言うが、「完璧な器」であるらしい彼女がこんなにのこのこと敵陣に乗り込んで本当に大丈夫なのか…? (ビビり

庭の中央に佇むモリトはさっきそこで見付けたという小鳥の両足を掴み羽ばたきもがく姿を冷めた目で眺めながら、「傍に居て欲しいからと翼を折ればこの子はすぐに死んでしまう」「でも翼の神経や筋肉を壊せばこの子は飛べなくなったことに気が付かないままいつか自分が飛べる鳥だったことさえ忘れてしまう」のだとおぞましいことを口にする。

いかにも嫌な感じがした彼女はモリトにそれを吹き込んだ「教授」の正体を探ろうとあれこれ尋ねてみるのだけど、始めこそ自分には何か「才能」があり勉強すれば「強い力を手に入れられる」こと、そしてこれからたくさん「兄弟が増える」らしいことを教えてくれたのがそれであると淡とした調子で説明するも「だから妹の死を悲しむのは間違っている」と口にした途端「本当にそうなのか」と葛藤するように涙を溢したりするモリト。

すると彼の腕に装着された「かすかな青い光を放つ細い金属製のリング」からエラー音のようなものが鳴り響き、「主人格の意識が制御プラグラムを攻撃しています」「2回目の再起動を実行します」なんぞアナウンスが流れ、モリトは突如錯乱したように支離滅裂なことを口走った後まるでその一連のやり取りがなかったことにでもされたかのように「始めの状態」に「リセット」されてしまった。

近付いてくる足音に慌てて身を隠し今度は物陰から耳をそばだてると、「穏やかな年配の男性」が「まだ自分のものになっていない意識の欠片の制御方法を学べていない」というモリトを「呑み込まれないように」「その記憶や感情は君のものじゃない」と優しく諭すような声が聞こえてくる。

なるほど次元コアもやはり誰かの意識エネルギーが結晶化したものって認識で間違いないんだな? すると人為的なコア介入症とは概ね改造コアにより複製された誰かの意識が「主人格の意識」を呑み込んでいるような状態、稀に呑み込まれない強い意識の持ち主も居るがこれでは別の持ち主の意識と確執してしまうから「思考制御チップ」なるものが必要になる、みたいなことだったりするのかな。教授の言いぶりからは「主人格」の方を「君のものじゃない」「呑み込まれるな」と言い聞かせているようにも聞こえるが…

「まだ自分のものになっていない」ってことは訓練で自分のものにできるという算段なのだな。と言うか、改めて「エーテルコア」って過去未来すべてのフィロスの彼女の死後飛散する意識エネルギーだったりするのかな? だから「主人格の意識」と親和性のあるそれを始めから自分のものにできる彼女は「完璧な器」なの?

しばらく立ち聞きしていると次はマヒルと教授の会話も聞こえてきて、どうやらマヒルは「もうすぐ再始動する」という「計画」のため「回収」をよりスムーズに進められるよう天行の「掃討」を任ぜられ「くれぐれも彼女が計画を邪魔する因子にならないように」「でなければ君の秘密を守ることはできなくなる」などと脅されていたもよう。

つかめそうでつかめない話だが、彼女は完璧であるとは言え他もちょっといじれば充分替えが利くし「これからたくさん兄弟を増やす」つもりではあるから取り敢えず邪魔にさえならなければ今はいいって言いたいのか…?

ちなみに「艦隊の公開したその通りの情報があまりに何もかも記録され過ぎている」という救急記録で「死を偽装されている」疑いのあったミズエちゃんは教授の言葉を信じていいなら彼らが直接手を下す必要のない単なる普通の人間ってことみたいなんだけど、これって「艦隊の情報」を使ってミズエを彼らから守ってる誰かが別に居るってこと?

Klc9831007

マヒルがあの庭園に居たことでいよいよ彼もその怪しい計画に関与しているはずだと感じ始めた主人公、形見として持っていた彼のネックレスに「最新型隠し追跡装置」を仕込み怪しまれず手渡すため「もうすぐ休暇が終わり臨空に帰るから少しゆっくり過ごそう」と誘い出し機を伺うことに。

どうやらその日は「落日回廊」なる宇宙センターの外環道から「数千光年先の超新星爆発が観測できる」ということでふたりはこれを見に行くことにするんやが、すごいな深空の宇宙技術はそんなことまで予測できてしまうのか。こっちの世界じゃオリオン座のベテルギウスなんかわたしが小さい頃から爆発する爆発するって延言われまくってるけどいまだにうんともすんともだもんな←

以前どこかに書いたような気もするのだけど、わたしは本編で新星が爆発するなら「かつて彼と守り抜いた惑星がすべての命を呑み込んで恒星となりついに死んでしまった」ことを思わせるような描かれ方をして仮に観測するなら相手はシンだと予想していたのですよね。しかも距離は「何十億光年」だと勝手に決めつけてました(なぜ

わたしの中でマヒルは「アダム」なので、彼に縁があるのはそれこそすでに「死んだ恒星の核」になっているα-P0159よりもっともっと古いフィロスでもいいくらいだと踏んでいたのだが、いろいろとお門違いだったらしい(しろめ

幼いマヒルが自由研究の課題で「自分たちの世代で超新星爆発を観測できるかも知れない」という「2千3百光年先の超巨星」を再現するという回想シーンがあるためこの「Klc9831007」とは恐らくその同じ星、またその中で彼が言う「強大な恒星は内部からの力によって壊れる」「弱い人間は外部からの圧力に耐えなければならない」という部分がEVERとマヒルのこれからを示唆しているのかも知れないし、あるいは「一緒に誕生して一緒に消滅する」という惑星とその環が彼女と彼なのだと言いたいのかも知れません。

てかすっごい勘違いに気付いちゃったんだけど、「航空アカデミー」ってパイロット養成学校の名前とかじゃなく天行大学の「オープンカレッジ」って意味での「アカデミー」だったんだね?
落日回廊から大学のキャンパスが見えるみたいなんだけど主人公が「あそこが飛行訓練場?」とか言うからひとりでびっくり自分で自分に大爆笑してしまったよw

追跡

超新星爆発の電磁放射はしばらく続くが空中浮遊島である天行市はこれがエネルギー稼働に干渉しないよう「対空遮蔽」が施されているらしく深夜普通に空は暗くなるみたいだったけど、臨空市はその間もずっと明るかったりしたのかな?

その日もマヒルは「もうすぐ完遂する」という「掃討作戦」に出掛けると言うので早に床に就き寝たふりを決め込む主人公、彼のネックレスに仕込んだ追跡装置が動き始めたのを確認して部屋を出ようとするがドアには外側から鍵が掛けられている。

一晩閉じ込めるつもりだったのかと呆れたように呟くと彼女は躊躇いなく鍵穴に銃弾をぶち込んで作戦の現場である「封鎖エリア」へと足を運んでしまうのだけど、そりゃそうなるわなぁ…

マヒルは鍵を掛けるよりネックレスを置いて行くべきだったんだろうが、それを彼女に付けてもらったときの嬉しそうな顔、「もう二度となくさないと約束する」だなんてまさかそんな装置が仕込まれているとは思いもしなかっただろう彼の言葉を思い返すと罪悪感ハンパない。涙

ちなみにここ、例によって例のごとくマヒルは眠る彼女の今度は「額」にキスをして家を出るのだが、例外的に「寝たふり」をしていた彼女がそれに気が付き驚き戸惑うような描写が入ったりする。個人的にはなんとなくピックされてると感じたが、これもいつかどこかで回収される伏線だったするのかな?

余談ですがわたし雲の彼方への彼女が初めて竜にキスをしたのが「額」だったのがなぜかとっても印象に残ってて、ググってみたら意味は「祝福」ってのがなんだかすごくしっくりきた記憶があるのだけど、今回のマヒルはちょっとニュアンス違いそうですねぇ。

実験体

オレンジ色の警戒線が張られた封鎖エリアの中は「打ち捨てられた実験棟」のような廃施設であり、艦隊は各実験室を虱潰しに回っている様子が伺えるも「実験体は異化寸前の状態」「回収する価値はない」「奴らはもうワンダラー同然」などという士官たちの会話から彼女はこれがどうやら単なるワンダラー退治ではないことを悟る。

廃棄された無数の巨大な計器の影で「あと少しでN109区で見たあの怪物の姿になってしまいそう」なほど全身を結晶に覆われた少女が「私の心臓がまだ動いているか確認して欲しい」と声を掛けてくるのだけど、その胸には「結晶の侵食による拳ほどの空洞」ができており心臓があるはずの場所には「不気味に動く大きな結晶」がある。

少女は死の直前何者かに「ちょっとした実験を受ければ生き返ることができる」などと教唆され生きることを選んだと言うが、「試験に受かって教授の子どもになる」ということが叶わなかったためこんな姿をしているのだと顔を伏せ泣き出してしまう。

なんか、まるで父なる神と神の御使いだな。教授が創造神デミウルゴス、子どもたちは可哀想なアルコーン、そして彼女が至高神ソフィアとここまでぴたり揃うなら、もう教授は彼女を瓶詰めにして薬液にでも沈めそこに「赤いチューブ」と「青いチューブ」を刺し永遠に「死の吸い出し」と「命の注入」をする「命製造マシン」にでもするつもりでないと辻褄合わんぞ?←
にしても、こう改めて深空の世界観にミスラの神を当てはめてみると無極聖母ってなんて痛ましい姿なんだろうな(引

と言うか、今更ながら「EVER」とは旧約聖書の「命(ヘヴァ)」からきてるのか。「見よ、人は神のようになり善悪を知るものとなった」「人は手を伸べ命の木からも取って食べ永久に生きるかも知れない」って聖書にはこんなに分かりやすい一節があるのになぜ今の今まで気付かなかったのか(倒

2部2章では同じ実験体について「これってリモリア人なんじゃ」と邪推してしまったがどうもそうではなく、入れ知恵とは言え本人に選択の余地もあってのこの状況というところには少しだけ救われたような気になったり、ならなかったり…

安全な場所

そうこうしてる間に結晶化が進行しいよいよ自我を保てなくなった少女は「あなたの力が欲しい」とこちらに襲い掛かってくるのだが、気付けば同じように我を忘れ辛うじてシルエットだけが人の形をしている「怪物」のような何体もの影に囲まれていた主人公、なんとか応戦するも足には縫うほどの大怪我を負い、まさに間一髪というところでマヒルに助けられ、「どうしてここに居る?」「なぜ分からない?」「外はお前の力を欲しがる連中ばかりなんだ」と身を裂くような声で叱責される。彼の心持ちを考えると本当に胸が痛いのだけど。涙

そんなことより彼ら艦隊のしている掃討が「元は人間であった実験体」の大量殺処分であること、何よりこれを秘密裏に処理する口実のためにモリトとミズエは「作為的なアクシデント」に巻き込まれたのではないかと憤る彼女は昂ぶった感情を落ち着ける術もなく、艦船で怪我の治療を受けながらも「あなたは私の知らないところで何をしてるのか」と彼を問い質し、対するマヒルも肝心なところはのらりくらりでやれ「ひとりで突入できるほど強くなったと証明したいのか」だの「教えたところでお前に何ができる」だの彼女が余計反発したくなるような買い言葉ばかり口にしてふたりは口論となってしまう。

ああやだな… 喧嘩して欲しくない…

でも、じゃあマヒルはこのおてんばさんを一体どうしてあげたら良かったのだろう。
庭園での会話を思い返す限り、差し当たって「掃討作戦」を終えるまで彼女を遠ざけてさえおけば今回はお咎めなし彼女の身は安全だってことなんだとは思うんやが、正直わたしがマヒルでもそう言われたら同じことをしていたのではないかと思う。彼女に事を打ち明け彼女の意思を尊重し次元コアやモリトを万が一保護できたとしてもそれは蟷螂の斧、どころかただの自殺行為だし、かと言って「モリトのことは一旦諦めよう」なんて正義感のかたまりのような彼女には口が裂けても言えん。

もちろん「オレはお前の兄ちゃんだ」「お前はオレが守る」と頭ごなしに言うのがさらに彼女を意固地にさせているのだが、結局マヒルが選んだのは遠空艦隊の特別病室に看護師の見張りを付けあまつさえ彼女が部屋を出ることを禁じその身柄どころか心拍数呼吸数まで監察下に置くという強行手段だった。

彼女はその同じやり口に辟易し「こうして傍に縛り付けておくことがあなたの言う守るということか」「こんな風に守られるのはうんざりだ」とその切実な想いを訴えるのだけど、「あの怪物による感染が見られる」という彼女を「お前にとっては理不尽かも知れないが」と前置きしたうえで「安心してひとりで歩き回らせることはできない」と譲らないマヒル。

いやこんなに全身感染してるのか(驚

これを自らの手技でなんとかできてしまうレイ先生なら「3ヶ月の入院が必要な彼女を2週間で退院させる」なんてとんでも手段も選択できたのだろうし、あるいは彼が彼女の「パートナー」なら「あんたの力があれば」共に立ち向かえると腹括れるのかも知れないし、もしくは「今は話せない」ことがあっても「僕には君が必要」で「傍に居て欲しい」と甘えられるならまた違った感情を向けられていたのかも分からんが、良くも悪くもマヒルはまだひとりでは何もできない幼少期思春期の彼女をあまりに知り過ぎているのだろうな。

糅てて加えて怪我をして引き取られた保護猫のように「鈴をつけてやろうか」だなんてこの期に及んでなお彼女の嫌がる言い方をする彼もまだまだ未熟なんだろうとは思うけど…

ついに彼女の方が折れ、マヒルの言う「安全な場所」で3日間過ごす間に「掃討作戦」は完遂し、任務を終えたマヒルは再び「トンネルに戻る」とのことで、ふたりは険悪な雰囲気をまとったまま最後の夜を過ごすこととなる。

チューリングチップ

実は艦隊の病室に閉じ込められている間彼女は「セベシング」と薬品名の書かれた注射剤を発見し、「患者の精神状態を安定させ思考を明晰にする」「感情の浮き沈みを緩和し認知機能を向上させる」「この製品はチューリングチップを埋め込んでいる患者のみ使用できる」との注意事項が記載されたそれを士官のひとりが使用しているらしいことを知ってしまうのだけど、するとどうやら「精神不安定」や「認知思考の混濁」を引き起こすであろう「チューリングチップ」なるものを艦隊の人間の多くがその身体に埋め込んでいるのではないか、マヒルもこれが原因で自分を閉じ込めたり監視したりかつての彼がするとは思えない行動を取るのではないかと考え至ったりしている。

マヒルが再びトンネルに戻ってしまう前夜、彼が自分に強行したあれこれにまだ納得がいってない彼女は最後にそれを確かめたくなったか「なぜあなたは変わってしまったのか」と口にする。

これが何かに触れてしまったのかマヒルは「オレはもともとこうだ」と言い返し、当然もともと「オレの傍だけが安全」だと思っていたし「お前を傷付けるものは消えるべき」だとさえ考えてきた、さらに「お前は空想の中を生きていた」のだと口に出すほどに煮詰まって、最後は彼女がいちばん傷付くと分かっているはずの言葉「家族ごっこには飽きている」とまで言い放ってしまうのだけど、もうどうしてマヒルはこんなに伝えるのが下手なんだともどかしくて泣いてしまったよ。おばちゃん今すぐ飛んでって通訳してあげたかった(やめて

たとえば何十年何百年一日たりとも忘れることなく毎日毎日彼女を恋しく愛おしく想っていたセイヤがそんなに激重なのにどこか爽やかで健全に見えたのは文字通り彼女に手が届かなかったからなのだろう。それは月明かりのように儚くも温かくどこか気を丈夫にするお守りのようなものになる。

一方で毎日毎日いちばん近くで顔を見て名前を呼び手を伸ばせば腕の中に収まるのに思い切り愛せない黙ってこらえ続けなきゃならないのはそれこそ太陽にじりじりと焦がされるように身体中火傷だらけになる。そういう切なさいたたまれなさはマヒルだけじゃなくこの世にある禁断のラブストーリーすべてに含まれている醍醐味だったりする。

でも、ぶっちゃけ今章を読む限りマヒルは自分の恋愛感情にきちんと折り合いを付けられているんじゃないかとも思う。
一度は「死んだ者」となった彼が「廃棄」を免れるために敢えて「翼の神経や筋肉を壊され飛べることを忘れた」フリをして遠空執艦官となり艦隊を教授の思うままに動かせるようになった頃には「兄」として妹を守る彼は死に「男」として彼女を守る彼に生まれ変わっていたのかも分からんが、そうなった彼は「深空トンネルの中」に居ながらこの一件に彼女が近付けないようその権限でハンターの調査介入を拒否していたのだから無論その状態で再会するつもりはなかったわけだよな?

だけど彼女は知らん間に臨時寮に転がり込んでいて結局再会することになれば開口一番彼が彼女に告げたのは「オレはお前の兄ちゃん」だった。きっと彼女が兄ちゃんを望むなら兄ちゃんとして愛せるし、いつか彼女が求めるなら男として愛する準備も整ってるってことなんじゃないのか。もちろんたびたび匂わせてはいるが彼がこれに翻弄されているようにはわたしには見えなかったし、仮にチップを埋め込まれてるのだとしても通してそれに影響されているとは正直思えなかったのだよな。

それよりも彼が今めちゃくちゃこじらせているのはたぶんシンプルに「兄ちゃん」だ。と言うのも、何を隠そうわたしも生まれは姉ちゃんであり生粋のシスコンなのである(しらん

これは第一子にしか分からない感覚なのかも知れないが、幼少期の2歳3歳の差はもはや大人と子どもくらいに大きい。手を引いて歩いてやらないとすぐに転んで怪我してしまうし構ってやらんと泣いてしまう。
妹は時に自分の意志を主張してそれを通そうとすることもあるが、たとえ抵抗されても「そっちはあかん」と引きずって道を正してやらねばやつらは平気でブランコに激突したり包丁草で血だらけになってから助けを求めてきたりする。

そうして過ごすうち、いつしか姉ちゃんは彼女たちにとって誰よりも頼られ信頼される存在になる。姉ちゃんに髪を編んでもらいたいし姉ちゃんに国語の音読を聴いて欲しい。姉ちゃんに褒められればぴょんぴょんと跳ね回り、姉ちゃんの持つもの着るものはすべてかっこよく見えてくる。
そして姉ちゃんはそんな妹が可愛くて仕方ないまま、何があっても自分がこいつを一生守ってあげなきゃならんと思い込んだまま大人になってしまう。どんなに文句を言われても強引にでも安全な道に導いてやることがずっと姉ちゃんの使命だったし、それはいつも正しかったのである。

だけどいざ大人になってみると、実は下の子らって上の子より余程視野が広く要領よく何事も器用に難なく捌けるようになっている。姉ちゃんに守ってもらわなくたって生きていけるようになってるし、姉ちゃんの思い描く安全な場所が必ずしも正しいとは限らなくなっている。
姉ちゃんに染みついた自己犠牲の愛が実は偏狭的で危ういものであると気付くまでに、なぜか姉ちゃんただひとりだけが妹らのうん倍の時間が掛かるのだ。

そしてここからがめちゃくちゃ重要なのだけど、そうなって初めて妹の口から「姉ちゃんは間違っている」と聞くと、どういうわけかこれまで自分のしてきた「正しかった」はずのこと全部が間違ってたんじゃないかって気になって、忽然と何が正しいことなのか分からなくなってしまうのである。
厄介なことにこれはしばしば「姉ちゃん嫌い」と脳内変換されてしまう。一時的に日本語が分からなくなってしまうのかも知れん(ちがう

むちゃくちゃ長い自分語りに本筋を外した感想で大変申し訳ないのだけど、主人公がどれだけ言葉を尽くし理屈で伝えてもその主張を「オレが要らない」のだと一時の感情で曲解し秘めていた黒いものすべてを吐き出してしまうマヒルが今どれだけ「焦り」「混乱」してるのか身に覚えがあるのでよく分かる。

主人公ちゃんには酷な話だがどうか怖がらないで欲しい。マヒルはちゃんと分かってる。変わってしまったのは彼女の方、変わりたくないのが彼なのだ。しかし変わらないことが不自然であることも、悲しいかな今彼女を「唇を噛む」ほどつらい気持ちにさせているのが誰なのかも恐らく彼は分かってる。

マヒルが彼女を力任せに組み伏せた直後ふたりの足元に転がるリンゴが仮に「原罪」や「抑圧による支配」の象徴だとしても、堕罪の女神「アーテー(Ate)」と知恵の木の実を「食べたこと(ate)」が同義であることをこれだけ分かりやすく述べ伝えてくれる深空なら、「堕罪」を暗喩するリンゴには「かじられた跡」があることもきっと描出してくれるはず。
マヒルは罪と隣り合わせでもまだ「堕ちてない」と言いたいんじゃないかな。彼の本来は改めて「抑圧」ではなく「いたわり守る愛」であると。

きっといろんな解釈があるけどね。乙女ゲー攻略キャラとしてはいわゆる「ヤンデレ枠」で相違ないのでは(よだれ

仲直り券

そして追い打ちを掛けるようにめちゃくちゃ泣いてしまったのがこれ、出発するマヒルを見送った帰り道気が付くとポケットの中に入っていた幼い彼女が兄に送った仲直り券。

うっすら記憶に残っているマヒルのSNS投稿「誰かさんがくれた仲直りの手紙を見付けた」ってのが思い起こされて耐えられませんでした。涙
遅れて始めた勢のわたしはその投稿にリプをつける前に本編を進めてしまったがために返信の来なくなった彼のアカウントを眺めてはえらく嘆いていたものよ(ないてる

遠空執艦官となったマヒルを「どこまで信じていいのか分からない」という気持ちは完全には拭えないものの、朝方まで夢に見ていた子どもの頃の兄さんとの思い出の数に想い馳せ、改めて唯一の家族である彼を失いたくないと結論する主人公。
こうして長い休暇を終え間も無く臨空へ帰るけど、協会に分析を依頼してた「バイパーの身体から飛び散った電子部品」の解析はどうなったのかな? 「遠空艦隊」や「チューリングチップ」については「何も分からなかった」とか言ってたが。

ルイ教授

天行市主島の中心部に建てられたばかりの巨大ビルの中では無数の研究員が「今世紀最大の研究成果発表」の準備に慌ただしく往来し、また「特別な権限」を持つものだけが辿り着けるそのビルの「存在しないフロア」では教授が主要人物を呼び付け今後の展望について共有する。

最終話でようやく明かされる教授の名は「ルイ」っていうんだな。14年前「もっとも適性の高い実験体」を隠蔽したスエの研究チームとN109区に占拠されてしまったガイア研究センター、そして彼女の資料と実験データをひた隠している暗点に思うところあるようだが、もしかしてそこのボスに媚びるため有名な楽団に大枚はたいて生演奏プレゼントしたりしてました? あ、いやルイってLouieか。Mr.Lか←

見たところ「試験に受かった教授の子ども」とやらにはモリトともうひとり「黒いドレスの少女」、そして少女が「私たちは家族」だとまとめて呼ぶその中にはどうやらバイパーも含まれているもよう。
「脆過ぎる」という人間の身体を「強固な機械へ変える」ことについても何やらビジョンがありそうだったけど、「2回目の再起動」にあれだけ取り乱していたモリトを思い返してみると「リセット」のたびに「主人格」を抑制するため身体のあちこちを改造されて最終バイパーのようになってしまうのがこの子たちの行く末、なのか…? (震

ホログラム映像で病床に伏す痩せた男とも通話を繋いでいたようだが、教授はこの男のために「アーテーの泉」プロジェクトを発足させたのかな?

マヒルは「彼女の代わりに自分がEVERの刃となる」と今は完全に教授に服従するていを装い恐らくひとりで戦うつもりでいるみたいだが、教授の方は「彼が利用価値を失う前に一振りの扱いやすい武器に変える」ことを妄想しほくそ笑んでいる。

今章読了でマヒル情報も更新されてるが、彼の右腕はすでに教授に挿げ替えられているのだな…

と言うか、他にもめちゃくちゃいろいろ解放されている。ネット記事では「遠空艦隊」についての投稿が公開されてたし、秘話も絆も早く読まねば…

お迎えした思念ストもイベストもまだ読めてないんだけどね。取り敢えずこの子の絆レベルだなw