廃墟に残る余響
まずは前回の駄記事公開以降本当にプロフ欄で素敵ホーム写真を更新してくださったフレさま方、めちゃめちゃありがとうございます。ただの偶然かも知れませんが、同じタイミングで新たなお写真を載せてくださる方がちらほらいらっしゃって、もしかしてブログ読んでくださったのかな…? と勝手な妄想にひとり沸いてしまいました(おめでたいやつ
なんかこう、ホームを覗き見させていただくとそれぞれ「推しとの親密さをどこに感じているか」が伝わってくるような気がしますね。日当たりのいい読書スポットであったり、静かな邸宅を思わせる整ったリビングであったり、まるで遺跡や神殿を思わせる白い石造りのこだわり浴場であったり、きっと夜になったらそこから出なくていいお酒や音楽の揃った隠れ家のような寝室、あとは世話焼きが何品もそこで手料理を振る舞いたくなるような広い調理スペースも、皆さんが「誰とそこで過ごす前提」でご用意されたお部屋なのかあれこれ想像を巡らせるのがとても楽しかったです。本当にありがとうございました(土下座
そして先日しれっと実装されていた新たな「秘話」なのですが、これってシン伝説の復刻と共にやってきたあのフラワーボトルイベントのなんと報酬として開放だったんや? 危うく知らん間に取りこぼしてしまうところだったまじで←
しかもこちら、もちろんセイヤの人生の転換点として物凄く意味のある個ストでありながら、本編ストーリーの時系列を整理し直すうえでもめちゃくちゃ重要な内容になってないか? きっと後々また詳細が語られるであろう「深空エネルギー衝突実験」前後のタイムラインがもうひとつ繋がった気がするのでその辺も軽く覚え書き。
2034年8月26日
これまでなんやかんやとぼかされ続けてきた「2034年裂空災変」の正確な日付がついに明かされましたな。すると現世「彼女の生まれた日」がざっくりと割り出せるんじゃないかな?
現時点で明示されている彼女の出生については、まずは本編5部2章ヨミが語る「枯渇しない宇宙エネルギーを人工的に生み出すこと」を目的とした「深空エネルギー衝突実験」の成功により「目的の宇宙エネルギーが出現」しかも「それがまさか一人の子供の体内から現れるとは」ということが起こる。
これだけでは「0歳の赤ん坊として地球で生まれ育ったある子供の体内にエネルギーが出現した」と読めなくもないのだが、ガイア研究センターは「お前の誕生の地」であり「私達はお前の誕生を目撃した」それは「EVERによる創造」だったとも言い添えられ、さらに5部1章ガイリアも同じ出来事について「深空で誕生したあなた」は「実験中に現れた」などと発言、これを彼女自身も後に「よく知っていると思っていたこの世界に私は属していない」のだと反芻していることから恐らく彼女はこの実験により推定年齢7歳から8歳ほどの人間の少女の姿で宇宙エネルギーを内包した状態で誕生した「生命現象そのものが星のエネルギー循環である人型生命体」という話なのだろうと一旦わたしは解釈しているよ。過去記事あれこれの繰り返しになってしまうけど、全ての証言を合わせて「まさか一人の子供の体内から現れるとは」の一言も「エネルギー源だけが裸で現れるのではなくまさか一人の子供という生命形態を伴って現れるとは」と読んでいる、という前提です。
加えてヨミの語る「27日目ピーク→36日目衰退→41日目完全崩壊・爆発→再集積」というエネルギー周期は、世界の深層『埃の中』を改めて読み返してみると「観察41日目の深夜に各計測値が急上昇・爆発・死亡」そして「観察42日目の午後に心拍・呼吸・脳活動回復」という記録が残ってる。当時はうっかり誤操作で起こった事故だと思われていた事象が実は周期ぴったり、つまりスエのUnicornチームは「彼女が生まれたその日」から観察を開始していたものと思われる。
42日目以降記録からは正確な日付が読めなくなるけども、この日を境に少女は「001号提供者」と呼ばれるようになり、研究員たちの投票結果から人工的な殺害実験と再蘇生の観察が、うーん個人的には1部5章を読む限り実験成功後のコアの波動データは「全12回分」あり「爆発のたびに数値が上昇」することから「危険」「禁止」なんて書き殴られているそうなのであわや12回繰り返されていたんじゃないかと思いたくもなるんだが、まあ少なくとも最低「1回」は行われているものと。その後「普通の人間として育てるか資源として利用するか議論が紛糾していた時に災変が起きた」と言うからにはこれらがすべて8月26日「以前」の話になるわけだよね。
殺害実験と再蘇生の正確な回数・議論が紛糾していた期間がどれくらいあるか判然としないものの、彼女が出現した瞬間から観察を開始する、42日一周期を観測し終える、投票、人為的心停止、翌日に再蘇生、その後の研究者間の議論が半日や数日というめちゃくちゃタイトなスケジュールを仮定したとして、どんなに遅くとも7月12日前後がUnicorn出現日でないと絶対に間に合わないよね? ヨミは「深空信号を受信したこと」を切っ掛けに「度重なる失敗」を経て衝突実験は成功したと語ったが、世界の深層『閑かなる夜の果て』で明かされた「深空信号の受信日」が本当に「7月4日」で相違ないのであれば、彼らの「宇宙エネルギー生成」は信号の解読も含めて数日から一週間ほどで成功した計算になる(すご過ぎ
戦区臨時救急医療センター
8月26日未明、怪物に襲われたコンビニへ現れて「一閃の光」によりこれを掃討し夜勤中の店員「チオ」の思いがけず命の恩人となった「仮面をつけた謎の青年」は、手早くカロリーを補給できるナッツやキャンディーのパックを律儀にレジへ通し会計を済ませると、買い物袋を提げたままひたすら「混乱の激しい区域」を飛び回り怪物を次々に殲滅、その後もあちこち現れては「災害初期から機能を維持している数少ない医療拠点」たる領飛区「戦区臨時救急医療センター」へ負傷者を運び込んでいたと。
最初の遭遇戦で使い物にならなくなってしまったジャージの代わりにセイヤは止む無く引っ張り出してきたあの見慣れた月影ハンターの衣装でそれをしていたようだけど、なんとこの衣装かねてから「仲間たちに制服の修繕を任されるまましょっちゅう繕っていたら新しい騎士服まで仕立てられるようになってしまった」というあのキノアが「セイヤには隊長にふさわしい装いを」と特別に縫製した「少女漫画の男性主人公から着想を得て作り上げた戦闘服」だったのね。なんだろう割とファッションには無頓着なセイヤがどうしてこのコーデだけこんなにも渋るのかと長らく気になっていたところではあるんだが、いろいろと気恥ずかしいコンセプトを持つうえにそもそも死ぬほど動き辛かったんやなw
余計な注目を集めないようにと気を利かせてセットにしてくれた仮面がより悪目立ちを加速させ「まるで劇場を出てから舞台衣装の脱ぎ忘れに気付いた役者のように」気まずそうに見えているセイヤは正直とてもかわいそうでかわいいが(ぇ、これが後年都市伝説となり映画となりグッズ展開までされていくのだからキノアはアパレルデザイナーとして文化史にものすごい爪痕を残してる←
そうして負傷者を運び込むなり踵を返して再び前線へと姿を消してしまうその「仮面をつけた謎の青年」は、患者を引き受ける看護師や医療スタッフから「まるで無口で有能な救急隊員のよう」だなんてじわじわと認知され始め、あるとき「背部に貫通創」を負った「原因不明の脳損傷」の疑われる「5歳以下の女児」を預けに来たその一度限り、デブリードマン、損傷の確認、汚染組織への処置、そして執刀医が緊急手術を間もなく終える頃まで手術室ドアの観察窓の外の薄暗い廊下でじっとその様子を伺っていたと言うのよね。これまで医師が改めてその姿を確認できるほど長く留まることのなかったセイヤが初めて負傷者の生存を確認するまで立ち去らなかったと。
少し後の場面でキノアは唐突に彼に「最近彼女の様子を見に行ったか」と尋ねるが、セイヤは「暇がない」なんて言いながら「新しい支援物資が届き小児用病室が確保された」ため「環境は悪くないはずだ」なんて臨時救急センター「小児医療」周りの情報をきっちり拾ってる。
世界の深層『星の来処』を読む限りキノアは災変初期「ひどく破壊された通りでセイヤがひとりの女の子を連れて行った」場面に立ち合い「ついに彼女を見付けたんだ」と直感し「長い航行を終えた宇宙船はようやく目的地に着陸しロールバック任務が始まった」ことを確信したと言ってるし、何より本編1部3章ここから14年後の彼女自身が「貫かれた背中の痛み」に耐え逃げ惑いながらも心臓から何かが弾け出しそうになる感覚を、そして1部6章そうして意識を失う直前赤錆色の雨の中で「誰かの光」が巨大ワンダラーから自分を守ってくれた記憶を薄ぼんやりと保持していることも合わせてまず間違いなくこの「女児」が彼女だと読んでいいと思う。
個人的にはめちゃくちゃドデカい伏線なんじゃないかと踏んでるが、ここで気になるのはガイア研究センターにて「7~8歳児」と推定されていたはずの少女を医療者が「5歳以下」だと判断している点だよね。
もう10年も昔の話になるので記憶も定かではないが、この年頃の我が子たちを思い返してみると確かに体格には大きな個人差がある、ただし母視点で言わせていただくと実は意外と「前歯」で見分けられるもんである。7~8歳児はすでに大人の歯に生え変わっているか遅くとも歯抜け、5歳以下は明らかに口元がまだ赤ちゃん。
もちろん実際の災害現場で極限状態の医療チームが児童を幼児と誤認することは普通にあると思うけど、そもそも読者に読ませることを前提とした創作で敢えて「7~8歳児」と同じ人物を「5歳以下」とピックすることにわたしは意図があると思ってて、ワンチャン「5歳以下の女児」はこの時点すでに「衝突実験で出現したUnicorn」とは「別世の彼女」になってるんじゃないか? と考えるなどした。
間に起こっているのはたぶん「若き日のヨミによって深空エネルギー衝突カプセルに閉じ込められること」なんだよね。5部2章を読んだ当初は闘獣ゲームのあと再びカプセルに閉じ込められ「肉体が崩壊しかけた」ところにシンが来てくれたことで記憶も身体もそのまま宇宙意識から戻って来られたため14年前も同じようにシンが引き留めてくれたのだろうと解釈してしまったが、あるいはここでヨミの「お前を深空に還す」が一度は成功し崩壊した肉体が再構成された後だった、もしくは途中まで成功していたが中断されていたようなニュアンスなのであればそれまで7歳程度だった身体が5歳以下の身体になっていることもあり得るんじゃないかって気する。
しかもここから134日後スエが避難所で発見して引き取った彼女をファンに診察してもらうと心臓のエーテルコアエネルギーはピーク時の半分になっていたって話じゃなかった? コアの散逸も身体の若年化も原因不明の脳損傷も「深空に還りかけたこと」によって引き起こされたもので辻褄合わないことないし、「彼女を成長させるな」たるハンチングの助言といい改めて彼女の肉体年齢は人間基準の時間経過による実年齢というより「内包するエネルギーの成長に比例するもの」になっているのかも。
と言うか、原初のコアへ戻ろうとする過程で引き戻されたなら「散逸してしまった彼女のエーテルコア」って今ごろ深空のどこかで「星核エネルギーが半分しかない星」として誕生してるまである? それがあの「赤い目玉」なのかな(いいえ
Sweeties
裂け目の出現から3週間、硝煙と雨水の中を奔走し蓄積する疲労を滲ませた様子のセイヤは臨時に設けられた避難区画内にある頑丈なキャンプ用テントの前ボランティアで焼き菓子を振る舞っている半壊したケーキショップ「Sweeties」に立ち寄りしばし身体を休めることにするのだが、この辺『星の来処』キノアの物語を先に見ちゃってるとなんだかはちゃめちゃに泣けてくる。涙
だってここは単なる避難所の配給の厨房ではなくキノアが初めてベッキーと出会った店、好きな人に会うため何度も足蹴く通い、くだらない無線ごっこで笑い合い、ついにこの星で誰かと暮らす未来を夢に見るようにさえなった場所、キノアが初めて「任務ではない人生」を欲しがった場所であり、今となっては同時にそれが一夜にして失われた場所でもある。当時「キノアは災変が始まったばかりの頃にもっとも災害が深刻な場所でセイヤと再会しその後少しの間だけ彼と共闘していた」ものと理解していたが、改めて「戦い方を忘れてしまっていた」キノアは戦闘ではなく「自分の選んだやり方で」「大切な思い出と一緒に」ここでこうして災変と闘っていたのだね。
しかもあの時期のキノアは「キッチンミトンやエプロンを装備した今の姿でかつての隊長に会っても何を言えばいいのか分からない」なんて長らくセイヤに「後ろめたさ」を感じていたのだよ。自分の気持ちに蓋をするように「オレと彼女じゃ無理だ」「オレたちは歳を取らないから」「そんなことより船の起動装置を直さないと」なんて自己暗示のように繰り返していたキノアにセイヤは「200年かけても直ってないんだしそろそろ恋に生きてもいいんじゃないか」と「自分の選んだやり方で生きる」方へ確かに背中を押してくれたけど、思えば彼らは故郷フィロスを救うため瀕死の星から凝縮したエーテルコアを持ち帰るためにここへやって来たロールバック隊なのだから、最終的にベッキーとの暮らしを選んだことに苦悩や葛藤がなかったわけない。
セイヤにはちょっと特別にクリームで「クマ」をあしらった試作ケーキを出してみるも、まだまだ不慣れなため「出来栄えは大目に見て欲しい」と苦笑いのキノア。これにセイヤはただ一言「もう十分頑張ってる」と言い添えてから食べ始めるのだが、なんだかこの淡泊で短い返答に彼の言いたいこと全てが凝縮されてる気がしてならないよ。隊を離れたことを責めなくていい、俺について来なくてもいい、誰かを愛したことまで後悔して欲しくない、だってそれでもお前はここでパンを焼いて生きている、もう十分頑張ってる、みたいな。涙
思わず涙が込み上げてしまうキノアは少し間を置いて声を落とし「この災変はオレたちが勝手にここへ来たせいで招かれたものだと思うか」とぽつり呟くが、今考えるとこれも同じ罪悪感の延長線上にある問いなのだろうな。地球へ来た、地球人を愛した、ここに「居場所」を作った、でも本当は「オレはそれを選択すべきではなかったんじゃないか」っていう。
とっくに絡まってしまった糸の端を無理に整理する必要はない、と言い切るセイヤにキノアはようやく何かつかえが降りたかのように「お前にはやるべきことがあるしオレには焼くべきパンがある」なんて結論するけども、これってキノアが初めて「かつての自分の選択」を自分で肯定することができるようになった瞬間だったのかも知れないなって思ったよ。それでもセイヤが走り出す背中を見れば身体が勝手に「隊長について行く」ことを選んでしまいそうになるけれど、ここで踏み止まれたのは必ずしも「彼と同じ船に乗り同じ敵と戦う」ことばかりでなく時には「自分の選んだやり方で守れるものを守る」という自己決定をようやくキノア自身が許せるようになったからなんじゃないかな。
それが決して「間違っていた」「身勝手な理由で任務を放棄した」などと選択を悔いてではなく「同じ店で今度は思い出のキンセンカを育てながら」「渡せなかった指輪をペンダントにして身につけながら」「ベッキーとの時間を自分の人生の一部としながら」もう一度ロールバック任務に戻りたいと言えるあの2037年のキノアに、そして今でも「故郷へ帰る任務」と「地球で自分の人生を持つこと」の両立を許せる寛容で逞しいキノアに繋がっているのだね。そう考えると彼に再入隊を申し込まれたときのセイヤの返答「お前が正しいと思う選択をすればいい」もキノアに寄り添った慰めや優しさよりむしろ「なぜならお前はもうどんな自分の選択も自分で肯定できるはずだから」というめちゃくちゃ力強い信頼の言葉であるかのように聞こえるな。
余響
裂け目の出現と同時に激しいエネルギー衝撃と怪物の流入によって一瞬で陥落したいくつかの地点はその後も「上級ワンダラーの巣」となって臨空市各所に点在していた。キノア特製「カロリーたっぷりバタークッキー」を受け取り次の高危険区域へと向かうセイヤはここで「エネルギーの波動と戦闘の痕跡を残した若者たち」数名に興奮した面持ちで駆け寄られ「あなたが月影ハンターですか?」などと前のめりに迫られるのだが、聞けば「ワンダラー専門のEvolver」はこの時点すでに「ハンター」と呼ばれるようになっており、月下に颯爽と現れて戦う「仮面をつけた謎の青年」は今や「月影ハンター」と名の付くちょっとした有名人になっているらしい。
怪物もここで初めて地球の人間たちの口から「ワンダラー」と発言された気がしたが、熟練したEvolverの小隊は早くもワンダラーの攻撃パターンを把握し大半の通常個体には対処できるようになっていること、そして有効な抵抗体制を築き上げるまでの速度から「陰で人々を導き調整している者たちの中には恐らくロールバッカーがいるはず」だとセイヤも考え至っているあたりどうやら知識や名称の一部はごくひっそりとフィロスから受け継がれ広まり始めているようである。
実はEvolが覚醒してからまだ日が浅いのだと言う若者らはセイヤを「先輩」と仰ぎ「一緒に行動しながら戦闘を見学させて欲しい」などと申し出るが、これから向かう「上級ワンダラーの巣」は武器を握ったばかりの彼らには過酷過ぎるものと引き受け兼ねるセイヤ、とは言え「緊張しながらも目を輝かせた」畏敬の念とやる気に満ちた視線を複数向けられて思わず「エネルギーは広く分散させるより一点に集中させた方が効果的」「群れの中心がどう移動するかを読む」「包囲されないよう注意を払う」そして「なるべく無茶はしないこと」などと明瞭で的確な戦闘いろはを手短に伝えてから飛び去れば、広場にはその言葉を胸に肩を叩き合い鼓舞し合う「それぞれ違う名前を持ち能力も千差万別」であるハンターたちの声が響く。
きっとこれが「廃墟」となった街にセイヤが残した「余響」なのだろうね。月影ハンターとしてワンダラーと戦ったこと、若いEvolverに戦闘を教えたこと、すると遠くではさらに新たな「ハンター」たちが集まりつつあって、セイヤ本人がその場を去ったあとも彼の行為だけが別の誰かの行為として反復されていく。声の主がいなくなってもその響きだけは残るよっていう。
もちろんそれだけじゃなく今回「セイヤが廃墟に残した余響」はスト冒頭から随所に散りばめられていたように思う。カウンターの陰にうずくまって怯えていたコンビニ店員はセイヤのセルフレジ失敗によってレジ打ちを思い出し、額に汗を流しながら弾丸を撃ち込んでもワンダラーの外殻に火花を散らすことしかできずにいた警察官はセイヤの登場によって避難民に諦めない意思を見せ、医療センターの医師は「こんな時に黙々と危険な前線と後方を往復し見ず知らずの負傷者をひとりまたひとりと運んできてくれる者がいる」それだけで心に安堵の光が灯り一層治療に専念できるようになる。
そして同時にセイヤの側にも廃墟の方から余響が残されている。警官は銃が効かずともどうにかして避難民を守ろうとする、医師は目まぐるしく負傷者を処置し続ける、支援系Evolverたちが集まって避難所を作る、若者たちは自発的にハンターになる、組織し、助け合い、廃墟の上に再び居場所を築こうとする頑なな本能はまるで野草のようだ、焼き尽くされることなく風に吹かれてもまた芽吹く、なんてセイヤは感じているようだけど、これって2048年現在まで彼の中に残っている余響と言えるような気がするよ。
そもそもセイヤはこれまで地球で自分を「誰も訪れることがない孤独な星」だと感じていたのよね。乗り捨てられた宇宙船の操縦席で遠い故郷に想い馳せながら眠り、どこかに「居場所」を作ることもなく、何度身分を変えても「離れ時」が来れば事故死を装って姿を消し、どの道にも「大した違いはない」なんて感じながら、没年の刻まれた自分の墓石の前に立てばまるで「自分の去った場所を誰かがずっと見つめ続けている」ような不思議な感覚を覚えたりもして。
でも今のセイヤは本当なら「凝縮するエーテルコアのために訪れた瀕死の星」であるはずの地球をどうやらめちゃめちゃ大切に想っているじゃない。それも人類ではなく人を、文明ではなく暮らしを、未来ではなく明日また店が開くことを、星ではなくその星で誰かが火鍋を食べたり夜市を歩いたり好きな人に花を贈ったりできることの方を「守りたい」と言う。フィロスからとても巨大な命題を背負ってやってきたセイヤが、初めてこの「脆いけどそこまで脆くない」地球でそういう「暮らし」がしてみたい「居場所」を作ってみたいと思えるようになるその転換点がもしかしたらここだったのかな? とちょっと思ったりした。
群青色の花
恐らくEVERが「起爆装置」を用いてこの「上級ワンダラーの巣」のようなものを生成し裂空災変を再現しようと試みていたであろう『来たる夜明け』の「晴空広場襲撃事件」でも同じ場面に見覚えがあるけども、セイヤはこうして首の制御装置がEvol消費の限界を知らせてなお休むことなく戦い続けることで熱発し、その熱と痛みを一時的に抑え込む頓服薬としてあの「2本の注射」を打っていたのだね。
これ初登場時はまるで「副作用により呼吸が止まり脈も動かなくなる」危険な劇薬のように見えたけど、今回読む限り「静脈」に入れて程なく「断続的な虚脱感」で気を失ったように眠ってしまうのは「めちゃくちゃ強い鎮静剤だから」なのかなって印象。注射器には彼女には読めない文字が書かれていたはずなんで当然フィロス由来のものなのだろうとは思いながらも「博生製薬」だの「リヘイ」だのと怪しげなやつらが何か手を加えたりしてないかとうっすら疑ってきたところではあるんやが、ここも今回改めてそういう何かの介入なくセイヤがこっそりと個人的に所持しているもののように見えました(ひと安心
限界を超えた身体を引きずりながら、建設途中の工事現場のどうやら災変以前は作業員用の宿舎だったであろうプレハブ区画の一角でついに力なく壁にもたれそのまま座り込んでしまうセイヤ。すると今はそこを避難場所としてかなり長い間生活拠点らしく整えて暮らしていると見える「目の見えない老婦人」が彼を「ずっと待っていた坊や」と取り違え一室へ招き入れてくれるのだけど、始めはなんとなく「失ったものを取り戻したような純粋な喜び」を湛えたようなご婦人の表情に何も言えずなされるがまま身を任せていたようなセイヤは思いがけず温かい猫を膝に抱き「贅沢」と感じられるような静けさと「見知らぬ誰かのささやかな善意」に包まれたような心地についうたた寝をしてしまう。
これって「脆いけどそこまで脆くない」めちゃくちゃ人間らしい相互救済じゃないか? もちろんこの婦人の「ずっと待っていた坊や」が息子なのか孫なのか何も語られていないけど、災変によって「本当なら帰ってくるはずだった」その坊やを亡くしてしまっているのだろうことはかなり強く匂わされていると思う。目で見て確かめることはできなくてもやっと帰って来てくれたその子の手に触れて、破れた袖を探り当て、上着を脱がせ、破れたところを縫い、傍で猫を抱いてまどろんでいるようなその気配を感じながら台所で温かいスープを用意してやる、そうやって「もう一度その坊やを世話できる時間」をセイヤが与えてるんだよね。で、セイヤは「ただ帰りが遅くなった坊やとして世話をされる時間」を与えられている。
永遠という堅牢さを持つフィロスには永続のために「誰かが犠牲になる」という秩序が必要だったけど、有限という羸弱さを持つ地球には「誰かが誰かを支えまた誰かに支えられる」という往還がある。このひとときはセイヤが「守りたい」と思えるもののまさに原風景だったんじゃないかなって思うよ。程なくして目を覚ましたセイヤはいつの間に縫い合わされていた上着の袖の内側の糸の針目にまるで道端でよく見かける「群青色の花」を咲かせた名前も思い出せない雑草を想い起こすけど、それはまるで「誰かが誰かを支えまた誰かに支えられる」その往還の中に本来なら「選ばれた者」であり「担う者」であるはずの彼が「誰か」の一員として意図せず縫い込まれてしまったかのような。
最後にセイヤは「俺はハンターだ」と告げてそこを発つけれど、これって初めて彼が自分の意志で選んだ地球での「居場所」だったのかな。なるべく早く家に帰るんだよ、というご婦人の呼び掛けに「分かった」「家に帰る」とはまだ答えられないようだけど、ハンターとはそれこそ「宇宙船再起動の代替エネルギーのための大学研究員」や「身分詐称の資料収集のためのEvol特殊部隊」のような「任務」でも「帰還するため」でもない、セイヤがようやくこの場所で心から「守りたい」と思えるもののために剣を振るうという「選択」だったのかも知れない? しかもかつての騎士の徽章のように今度は「群青色の花」を携えて。
なんとなく「騎士は王のために王は国のために剣を振るが剣士は自分の選択に基づいて剣を振るうとき心に恥じることがなくなる」なんて王妃の教えにも通ずるものがあるような? あ、いやもちろん2035年1月1日災変の終息と共に月影ハンターは忽然と消え「どこかで非情なダークハンターになってしまったのかも知れない」てなことにはなるけどもw、そこまで含めて母の教えが完成しているようにも見えるんだよね。たぶん「自分で選ぶ」ということは「世界から称賛される選択をする」こととは違うから。
いやー随分と熱く語ってしまったが、まさかイベント報酬の秘話にこれだけの密度と情報が詰まっているなんて。他の子たちの秘話も楽しみだなぁ。連休中に読めるかなぁ(亀