恋と深空のんびり考察プレイ録

恋と深空のんびり考察プレイ録 - 空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

一つ窓を開けて

これタイトルが『一つ窓を開けて』なのは敢えてなのかな。この話「窓の状態」がずっと「マヒルが彼女を世界へ開いてやるための通路」になっているじゃない。彼女が避難所へ来たときは大人たちが窓を「ほんのわずかに」しか開けてない。でもマヒルが彼女に関わり始めると窓は開かれカーテンも脇へ寄せられる。彼女はその窓から彼の朗読を聞き、さらに塀の外を見て、折り鶴を受け取り、ついには窓から身を乗り出して「私を受け止めて」と彼の手を取って外へ出る。タイトル含め終始一貫してマヒルが彼女の部屋の「窓を開ける人」として描かれているものだから、終盤にスエが現れたことで突然「彼が窓を閉めたこと」の方がまるで異物のように浮いていてめちゃくちゃ強烈に残っているのだが…

マヒルの自己定義である「兄さん」と同時に他者規定である「ヒーロー」は共にここで初めて「連続ドラマ」からその何たるかを学び、あるいはここで初めて彼が引き受けた「役割」でもあったんやな。そう考えると彼が「見逃してしまった回」というのもとても象徴的で、シリーズ最終話まできっちり見たはずの「ホームコメディ」は当然「家族の物語が最後にどう終わるか」全容は知っているけれど「お父さんとお母さんがいなくてお兄ちゃんがみんなを遊園地に連れていったのか」兄とは具体的にどういう役割なのかその答えになるはずだったエピソードだけ結末を知らない。だからマヒルは自分なりにあらゆる断片から自分で「兄さん」を組み立てているという。

一方「世界を救うアニメ」はもっと明確で、こちらは最終話そのものを見ていない。ヒーローが世界をどう救うのか救った後どうなるのかをマヒルは知らないし、なんなら見逃した理由そのものが「彼女と一緒にスエの家へ行くことになったから」なのもかなり意図的だと思う。ふたりは「世界を救う物語」の結末を残して「兄妹として生きる物語」の方へ出ていったってことになるからね。

もしこの先の彼の物語に「兄さん」の役割が「妹を守る」ことであっても決して「妹の痛みや苦しみを全て被る」ことではないと彼に教えてくれるような、あるいは彼が危険を顧みなかったとき血相を変えて駆けて来て腕を強くつかんで引き戻し痛いほど真剣に叱ってくれるような大人が傍にい続ければ、一つ窓を開けることから始まった兄妹の物語がいつか「窓を閉めなければ彼女を守れない」へ反転してしまうようなことはなかったのだろうか、なんて思いたくもなるのだけど、そんな不毛な妄想はやめようか。だってあまりにもとりとめがないよ。涙

エンジュの実

災変直後のマヒルは街の廃墟を「数日間」歩き回ってたと言うんで避難所へは割と早期にやって来たものと解釈してよさそうな? そこで「11歳で初めて木に登る」ということを経験し、エンジュの木の実が熟れる秋中頃まではしょっちゅう木の上で下を行き交う人影を観察しながら過ごしていたらしい。

果実に斑点が浮かぶ頃には種はとうに腐り繊維のように崩れている、それは人には見えないが、ただそれを食糧とする鳥だけが柔らかな果肉をついばみやがて果実と共に力なく地へ落ちる、という冒頭の情景描写は何やら物凄く不穏な秋の一幕であるが、恐らくこれは「正常に見えるものの内部にすでに何かが起きている」というこの作品の根源的な世界観の比喩なのだろう。

その果実を食べて地面に横たう鳥を子どもたちは「死んじゃった」と判断して去っていくけれど、マヒルだけがまだ息があることを見抜き、拾い上げて太い枝の間に寝かせそっと葉をかぶせてる。これは翌日に避難所へやって来る彼女にもどこか重なるものがあって、あるいは「正常に見えて内部はとうに壊れている何か」に蝕まれ「死んじゃった」「病気になっちゃった」と選別されるものをマヒルは「まだ生きている」「まだ飛べる」「今は弱っているだけ」だという見方をするのよね。彼が最初にしていることは保護でも治療でもなくただ枝の上へ戻して葉をかけるだけ。マヒルの根幹はきっと「鳥を助けても飛び方までは決めない」ものと教えられているような。

ちなみにこの辺せっかく公式が上手いことそれぞれのカレの物語が交わらないよう緻密にスレスレで交差させてくれてるものをあんまり突き詰め過ぎるのも我ながらどうなのかと思ったりもするんだが、これまでレイだけが同じ2034年でも夏には12歳そして冬には13歳とやたら細かく年齢を刻むことでわたしが長らく混乱していたため改めて把握しておきたいのと、もしかしたら大事な話なのかも知れないとも思うので一応覚え書き。

彼女は「医療センターがワンダラーに襲撃され危うく怪我をするところだった」ことによるトラウマやストレス障害の診断で「市街地近くで唯一医療資格を備えている」のだというこの避難所へやって来るのだが、記憶が正しければレイの物語ではこのタイミングで彼が彼女を「危うく死なせてしまうところだった」のだよね? 絆『思い出の章』で「ある女の子にシャリシャリさんを作ってあげたことがある」とレイ本人が語った「緊急避難所になっていた病院」がたぶんここで言う医療センターで、そこでEvol暴走があってその後なんやかんやして「彼女の記憶は黄昏に洗われ古傷は癒えて」レイは思いがけず近所のお兄さんとして再会することになるけれど「彼は望んで癒えた傷を自ら裂いた」「解決策を見つけるまで」みたいな流れだったと思う。

もちろんマヒルの物語では「ワンダラーに襲撃され危うく怪我をするところだった」ことになってるのかも分からんが、レイの物語に出てくるスエは思えばどうしてこの頃からあんなにもレイと彼女を引き合わせたがっていたのだろうね。今の今まですっかり忘れていたけども、本編1部4章スエがレイに言う「あの子を助けることはあなたを助けることにも繋がる」なんて言葉の真意はどこかで解明されたっけ? スエはレイの何をどこまで知っていたのかな(悩

シェイン

避難所の所長「シェイン」から見たマヒルはとても手強い子どもだった。マヒルにしてみればこれまで窓のない白い研究室でひとり怪しげな大人たちに囲まれ繰り返しEvol実験とやらを受けさせられてきた記憶しかないのだから突然こうして集団生活の中に放り込まれ一体何をどう処理すればいいのかまだ分からないのは当然なのだけど、元気いっぱい心行くまで庭で遊んでいる子どもたちの輪の中には入らない、活動には参加しない、呼ばれても返事はしない、木の上で草花や虫を観察し、字を覚えれば今度はひたすら読書に没頭しているマヒルをシェインはとても興味深く不可思議に思ってる。大部屋に連続ドラマが流れている時間帯だけは唯一他の子どもたちと一緒になってこれを見ているが、これまで決して「人間と関わる」ことはしないという一貫した行動原理があった。

ところがある日、シェインは図書コーナーの本棚の上で体育座りのマヒルが折り曲げた膝の上から大きな目だけを覗かせてじっとこちらを観察していることに気が付いた。と言うのも、シェインはいつも軒下で庭の子どもたちを観察してるのだよね。家族を失った悲しみからまだ人の輪に入れずにいる子、身体を動かしている時だけ表情の和らぐ子、玩具を手にすると途端に饒舌になる子、シェインは避難所の所長らしくそれらを注意深く観察し、誰が何を怖がり何になら心を向けられるのかを見極める。そして身体を持て余している子には外遊びを勧め、駆け寄ってきて話をせがむ子には座らせてその子が好むような物語を用意する。マヒルはそうしてシェインが「注意深く観察した結果をその子ごとの接し方に反映しているところ」を観察し始めたわけである。

シェインはこの貴重な「破綻」を見逃さない、とあるけれど、つまりマヒルが「ついに誰かと関わりたいと思い始めた」ことにシェインは気が付いたのだ。そしてわざわざ本棚の下に歩み寄り顔を上げて「彼女の年齢にしては少々茶目っ気があり過ぎる笑顔」をマヒルに差し向けるが、これは「君は一体誰と関わってみたくなったんだい? ニヤニヤ」である。大人然としてマヒルを哀れんだり無理に抱き締めて慰めたりもしないけど、代わりに「あなた面白い子ね」「じゃあ私も本気で相手してあげる」って同じ目線で向き合い導こうとするシェインのこういう態度って、これまで白く清潔で外がない研究センターで大人に管理されてきたマヒルが生まれて初めての社会性を学ぶうえで実はすごく相性が良かったんじゃないかなって思うよ。

しかもその直後にシェインは医療センターからやって来た2階の少女を1階へ連れてくる。大部屋で一緒にテレビを見ていると、それまで壁の角に縮こまって自分の身体を隠すようにしていたはずのマヒルが一方の壁に真っすぐもたれるように座り直し「ちょうど少女の頭が見えるような体勢」になっている。始めから「きっとマヒルが関わりたいのはこの少女だ」と確信していたと読めるよね。その後も少女とマヒルを交互に観察を続けるシェイン、ただしマヒルは2階の小窓から身を翻して外へ出て太い木の枝へ飛び移り、開け放たれた窓の傍に誰かが立てばちょうど姿が見えるその位置で鳥にエサやりをしながらどうやら「誰かの姿」をただ待っているだけw

スト冒頭マヒルは中庭の門前に停まった医療マークを貼った車から降りてきた少女を木の上から確認するなり「彼女は何ひとつ覚えていないのだ」と悟り、大人たちの会話を「災変によって離れ離れになっていた数ヶ月」の認識で聞いているんで確実にガイア研究センター時代彼女とは面識があったし関わりもあったものと解釈して読んでいたけども、この様子からしてワンチャン「観察はしてきたけど交流はなかった」ニュアンスなのかな? あるいは何も覚えていないだろうことに戸惑ってるだけ?

シェインは「危ないから降りてきなさい」とマヒルを木の下へ呼び付けると、3ヶ月も観察したのだから人との付き合い方も少しは覚えたんじゃない? 試してみない? それとも怖い? なんて煽る。マヒルは「距離を縮められたくない」と言わんばかりに後ろへ一歩下がるけど、いっそう警戒を濃くしたようなその態度の一方で眼差しは生き生きと変化して、程なくすると彼はシェインの思惑通りついに少女の目の前に立ち、何やら手の平に載せた何かを見せているらしい(かわいい
長らく人との関わりを拒絶していたかのようにさえ見えていたマヒルにも「人が入り込める隙があった」と気が付きようやく彼を「彼が関わりたいと思える」その少女の前へ送り出すことができたっていう、シェインの「大悪党のような笑顔」にはそういう喜びも混ざっているんじゃないかな。

ところが少女はマヒルの手の中を背伸びをして覗き込むと首を横に振り背を向けて立ち去ってしまった。これマヒルは手の中に何を見せてたんだろうね? めちゃめちゃ気になるw
一方でシェインが彼女に与えた「新型の簡易ラジオ」の方は両手で抱え、静かな場所で夢中になって「街のニュース」に聞き入っている様子。シェインは「解せぬ」の顔で傍に立っているマヒルの頭をポンと叩くと「私の技を盗もうだなんてちびっ子にはまだ早い」なんて高らかに笑い出すけれど、シェインにしてみればもはや少女を対象とした「観察者同士の知恵比べ」みたいな感覚なんだよね。見てごらんこの子は外の世界に興味を示すのよって。

そこから1ヶ月が経とうとする頃、少女は突然病気になって再び2階の部屋でひとり療養することになるけれど、マヒルは窓の傍の木の上に隠れて本を広げ、さまざまな「街」や「景色」を描写する文章を声に出して読み上げている。そして彼女の方も、マヒルの朗読を聞きたくていよいよ大人がきっちり閉めていた窓を自分から開けるようになる。マヒルは元より「窓を開く人」ではあるけれど、そのやり方の原型は文字通りシェインから盗んだものでもあると思う。シェインはマヒルにとってある意味で「最初の社会的モデル」だったと言えるのではないかな。

大部屋で流れる連続ドラマが「ホームコメディ」から「世界を救うアニメ」に切り替わると家族ごっこで遊んでいた子どもたちはヒーローごっこをするようになり、あるとき跳ね飛ばされてきた一本の枝を何気なく空中で止めそのままぽとり地面へ落としたところを目撃されてしまったマヒルは彼らから「磁力ヒーロー」と崇められまとわりつかれることになるけれど、困り果てたマヒルは真っ先にシェインの元へやって来て助けを求めてたりするし、もちろん「信頼」も芽生え始めていたんじゃないかなって思うよ。

遊園地

木の枝の上のマヒルは窓の傍の彼女へそうしてたびたび本の読み聞かせをしてきたが、あるとき彼女は病気で療養中に見逃してしまったのだというホームドラマの「お兄ちゃん」があのあと本当にみんなを「遊園地」へ連れていったのかと続きの展開を尋ねてくる。その回はちょうどマヒルも結末を見逃してしまったため、代わりに「遊園地」がどんな場所なのか本があれば読み聞かせてやろうと図書コーナーを探し回るけどそれらしい本が見付からない。代わりに「遊園地へ行ったことがある」という「ニン」という子が「それは太陽が沈むところにある」などと証言したことからマヒルは避難所の外にあるちょうど太陽が沈む方向へ続いている古い線路を辿って本物の遊園地を探しに行ってみようと思い立ち、文字の書かれた折り鶴を窓の隙間から彼女の元へ飛ばし窓辺へ誘い出すと、輝くような目で彼を見つめる彼女が身を乗り出して手を伸ばすのを受け止めて同じ枝へ立たせた。

ふたりが塀を越えようとしたとき「マヒルと一緒に世界を救いたい子どもたち」がわらわらと集まって、結局彼らは「背丈のバラバラな5人」で塀の外へ降り立つことになるけれど、ここは「初めて自身の目で外の世界を認知した」「全く違う空気を吸っているようだ」なんてほとんど「誕生」みたいな描写になっている。避難所の中でテレビやラジオや大人の言葉を通してしか知らなかった外界を初めて自分の皮膚で感じ、線路に咲いた花はまるで春の遠足を思わせ、向かう先は「この世界でいちばん美しくいちばん安全でいちばん幸せな楽園」だと始めは誰もが信じて疑わない。

ところが先へ進むにつれ少しずつその幻想には現実が混じり始める。死者が眠る場所、疲労、生臭い匂い、ワンダラーの咆哮、夕暮れ、それが楽園へ向かう遠足などではなく「災変後の危険地帯を無断で脱走した子どもが自分たちだけで歩いている」ばかりだとはたと気が付いた者がひとりまたひとりと避難所へ引き返していく中をマヒルはただひたすら彼女の手を引いて止まることなく歩き続ける。

マヒルの袖をつかんだまま一言も話さなかった彼女はそうしてついにふたりきりになってしまったときようやく重い口を開き「私は本当は病気じゃない」のだと彼に打ち明けるけれど、これは彼女にとってこの楽園探しが単に「遊園地を見てみたい」という好奇心だけでなく「病気だから2階にいなさい」と保護され窓を閉められている自分が「本当は外へ出られない存在じゃない」はずだと確かめるための旅だったってことなんじゃないかな。だからマヒルはきっと唯一この中で死者の場所も理解しているし時間と方角も見て匂いの変化にも気が付きワンダラーの危険も誰よりもよく知る「いちばん危険を正確に認識していた子」であるにも関わらず引き返すことなく足を速め、ついには少女を連れたまま走るように進み出すのだと思う。これは「だったらオレが連れていく」っていう責任感の加速とも読める。

結果として見付かった遊園地はフェンスの向こう側でワンダラーによって目の前で破壊され観覧車も倒れてしまうけど、これはマヒルの中でどういう体験になっているのだろうな。この挫折が「お前は地上でオレは空」「そうすればこの世界はオレたちのものだ」なんて発想に繋がっているのだとすれば、少なくとも「世界に安全な場所なんてないんだ」「オレが彼女を閉じ込めて守らなきゃ」なんて経験ではなかったはずだよね。

個人的にとても印象深いのが程なくしてその夕映えの中をシェインと他数人の先生たちが焦りに満ちた顔で駆けてくるこの次の場面。シェインに腕をつかまれたマヒルは「これほど強くつかまれたのは生まれて初めてだ」と感じてて、これにただ家族が泣いたり笑ったりしているだけの退屈なホームコメディを連想し、抵抗はせず、そして人生で初めて叩かれた、とめちゃくちゃ淡々とほんの数行で綴られているのだけどわたしはこれも敢えてだと思ってて、たぶんマヒルは「家族」「仲間」「家」「心配されること」「叱られること」そういう概念をまだ学んでいる最中で、たまらず自分を叩いたその人の感情を「心配」「後悔」「愛情」とまだきれいに分類も言語化もできないっていう、この淡泊な状況説明がそのまま彼の内面描写になっているのだろうと感じたのだよね。

マヒルはシェインがどれほど怖かったか、どれほど安堵したか、どうしてこんなことを考えたの、あなたが死んだらどうするの、そういう具体的な言葉は何も想像できないけど「これまで経験したことのない強さで腕をつかまれる」ことに何かが込められていることだけは分かる。そこでなぜか「家族が泣いたり笑ったりしているだけのホームコメディ」を思い出す。それは今まで退屈だと思っていた「家族というものは相手のことで泣いたり怒ったりする」という光景を自分の身体で体験しているような気持ちってことなんじゃないかな。自分が誰かを怖がらせたこと、その人が自分の帰還を本気で望んでいたことを少しだけ理解しかけているから「叩かれた」方でなく「抵抗しなかった」に心理が入ってる。とても胸にくるものがあったよ。

罰の草むしりを「マヒルとヒーローチームを結成したから」だと言い張って黙って手伝う子たちもまたいいよね。マヒルの中ではまだこれが「俺たち仲間だから一緒に怒られよう」には変換されない。でも少し時間が経つと彼は数人の子分たちが自分についてくるのを黙認するようになるw

兄さん

一部の市街地ではいよいよ復興が完了するという頃、親族に引き取られたり両親と再会したりする子どもが増え避難所は人の出入りが頻繁になった。するといつも「磁力ヒーロー」について回っていた子たちもどこかそんな気力をなくし、彼らは自分たちの願いがマヒルのように強い人になることから「家が欲しい」というものへ変わっていることを自覚し始めたようだった。

マヒルはやたらとつきまとわれることがなくなり木の枝の上で身を隠すこともなく堂々と2階の窓の窓枠の窓台に腰掛けて心置きなく彼女の部屋を訪ねられるようになったことを喜んでいたようだけど、他の子たちがヒーローごっこをやめる代わりにマヒルはあれほど退屈だったホームコメディに登場する家や家具を折り紙で再現し始めたりするあたりきっと無自覚のうちに家族の暮らしに憧れを抱き始めていたのだろうな、とも思う。

彼女に「兄さん」を名乗るようになったのもその延長だったのかも知れないね。彼はホームコメディから得た知識を掻き集め、きっと兄は妹より少し背が高く、少し年が上で、少し手も大きいものなのだろう、そしていつか一緒に学校へ通うことになれば彼は彼女より少し早く大人になり、人混みの中でその手を引きながら彼女の前を歩くのだ、なんて考えていたりして。そうして考えを尽くした末にあの「オレはお前の兄ちゃんだ!!」に至るのかと思うとはちゃめちゃにかわいいが←

彼女は部屋で窓辺に立ち、マヒルは窓枠の外の窓台に座ってふたりは折り鶴を並べたり飛ばしたりしているが、ふとマヒルが先日助けたあの鳥が飛んできて綿羽をひらり舞い落していくと、マヒルはそれを手に取って思い立ち「今のオレの力で完全に操れるのは紙1枚とか根1本とかだけ」「折り鶴なら言うことを聞かせられるがあの鳥は操れない」なんてことを言い出す。彼女の「折り鶴は飛べないけど鳥は自分で飛べるからちょうどいい」なんて返答含め、今ストマヒルの「助ける」「守る」は決して操ることではなく「自由」を意味してる、ということが繰り返し強調されていると感じるよ。

ところで秘話『道なき地』を読む限り、DAA卒業飛行試験で非安全航行区域に踏み入ってしまってから始まった「記憶解離」の症状で垣間見た「002号提供者」の時分には、確か機械式目覚まし時計をセミの羽のように薄い鉄片にすることができるブラックホールに匹敵する力を彼は持っていたような気がするんやが、今のマヒルは「紙1枚とか根1本とかだけ」程度の力になっているのだね。同じEvolでも押し潰すと完全に操るとは別技能なのかも分からんが、パワーだけで言うと桁違いに弱くなっているような(疑

てか今思ったんだけど「002号提供者」は推定9、10歳児だったのに災変直後のマヒルが11歳じゃんね? いやこれに関してはマヒルには誕生日が存在するんで丸っと彼女と同じ出生というわけではないのかも知れないが。でも今スト最後にマヒルが携えて出ていく『世界折り紙大全』なる本が「それは彼が避難所へ来て」「そしてこの世界へ来て」初めて開いた本だと敢えて「世界に来てること」を言い直してくるのもめっちゃ気になるんよ。単純に「世間を知らない研究センター育ち」という意味にも取れるけど文字通り存在状態の切り替わりを匂わせているのかも知れないし、いやー先日『廃墟に残る余響』にて「5歳以下女児」についてあれだけ語ってしまった後だけど、するとまさかガイアの年齢推定技術の精度がもう壊滅的に絶望的に低かったってだけだったのかな(悩

いずれにせよわたしが今回ぎょっとしたのはこの後で、中庭から「スエさんがあなたを引き取ってくださるって」「こっちにおいで」って声がして見るとそこにはひときわ嬉しそうに目を細めるシェインがこちらを見上げてて、横には逆光を背負ったスエが立っていて「眼鏡の奥にある目が少女の顔からゆっくりとマヒルの顔へ移った」って。まずこれがちょっと不気味じゃない? 翻訳だからなのかも知れないが、あらお友達? くらいの軽い初対面の査定じゃなくて、確実に誰なのか分かっている人物を「警戒してる」「確認してる」含みをかなり感じる。そしてマヒル側にも「見覚えがある」「研究センターにいた頃とはどこか違っている」という認識がある。つまり少なくともふたりは完全な初対面ではないわけだよね。

すると彼女がぱっとマヒルの手を取って「彼も一緒に連れて行きたい」「いい?」って聞くんだけど、スエは「…その子は誰?」とか言って。なんか怖くない? 分かってるはずなのに。仮に「その子はどこまで知っている?」という警戒があったとて、一緒がいいの? とか、その子はいいって? とか、何かしら自然な返答ができるはずなのに。いや彼女が大好きなおばあちゃんのことあんまり悪く言いたくないんだけどさ…

極めつけに「彼女の目に不思議な光がきらめいている」のを見てマヒルは慌てて身を翻し、部屋に入り、窓を閉めて、張り詰めたような低い声で「思い出したのか?」って尋ねてる。明らかに「研究センターの記憶が戻ること」そのものがマヒルからしてみれば歓迎すべき出来事ではない、むしろ危険信号な感じだよね。驚いているのではなく張り詰めている。本能的に窓を閉めている。本編5部2章で研究室の扉と共鳴したときには「幼い彼女がおばあちゃんの胸に飛び込んで行くような情景」がその場に浮かんだけども、なんとなく彼女が目をきらめかせてスエのところへ行く、部屋へ連れて行かれる、なんだか様子が変わった状態で戻って来る、みたいな、曖昧な記憶の断片だけでもマヒルがスエを「彼女にとってよくないもの」として認識していた可能性はまま有り得るよね。

現時点で本編彼女に自発的に思い出せたようなガイアでの記憶がないんで「思い出したのか?」って問いに答えずただ嬉しそうに「兄さん」の手を握っている彼女は恐らく何も理解していないのだろうけど、うーんなんだろうあんまり言わない方がいいかもだけど、もしもスエでなくシェインがお母さんだったらマヒルの人生こんなに苦しくなかったのかな、ってちょっと思っちゃったよ(やめとけ

しかもこんな状態でマヒルの外伝がリリースされているという←

ちょっと連休ダラダラし過ぎて秘話を読むだけで終わってしまったが(ぉぃ、なんだか可愛らしいイベントもやって来てるしやることたくさんありそうなので、そうだな、こちらセイヤの誕生日までには読む、ゼッタイ(おそい

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