恋と深空のんびり考察プレイ録

恋と深空のんびり考察プレイ録 - 空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

この一瞬に願いを

セイヤお誕生日おめでとう…!!! (噛み締める

ぶっちゃけ今ストあらすじというあらすじもないのでざっくり覚え書き程度にまとめると(殴、大枠は「フィロス王太子セイヤの誕生日」を「彼女だけの王子セイヤの誕生日」に変換する物語と言えるかな? 彼の誕生日を半月後に控えた彼女はキノアやスロヴィを訪ね「フィロスでは王太子の誕生日を祝うために星艦を花で満たし他の星からも見えるほど盛大な花火を打ち上げる」そして「毎年星の運行軌跡を刻んだ『星歳葉』と呼ばれる銀細工が贈られてそれらは将来王位を継承するときに戴冠の勲章にもなる」なんてことを聞き、それなら今年はふたりがこの一年で訪れた場所や一緒に経験した出来事が記録された特別な星歳葉を自作して贈ろう、ふたりだけの星艦を用意して公園に盛大な花火を打ち上げようと思い至る。

かつての星歳葉は誕生日の贈り物でありながら王位継承者であることを前提にした品物でもあって、誕生式典もセイヤが王太子として一年を重ねやがて王位を継ぐことを祝う公的な意味合いがあったけど、それらは単なる王室の制度のようであり「自分はたまたまそれを身につける役目を与えられただけ」だと感じてきたセイヤは初めて「生まれながらに所属していた星の軌跡」ではなく「自分が誰かと一緒に歩んできた軌跡」の刻まれたそれを受け取り「俺以外誰も持つべきじゃない」ものだと心から喜んでくれました、というお話(雑

事前にこれが「上海市エクストリームスポーツ協会」とのコラボ企画だと聞いた日にはタイアップの「スケボー」が一体どこにどう組み込まれるのかめちゃめちゃ気になっていたけども、取って付けたような宣伝要素でなくちゃんと「コラボ理念と物語の主題を重ねるアイテム」として登場するの本当に見事だなと思った。確かにセイヤがスケボーで逃亡犯を捕まえる一幕は一見すると彼のかっこよさを描くための唐突で娯楽的なエピソードのようなんだけど、実際には「セイヤの驚異的な学習能力とふたりの経験の差を可視化する」というストーリー展開を担い、さらに「速さが違っても一緒に進める」という関係性の表現手段にもなり、星歳葉に刻まれる新しい軌跡にもなって、最後は誕生日に贈られる「星艦」としてこれからのふたりの軌跡を生むものにまでなっている。

今ストにおける中心的な問いは実は彼女の感じる「ふたりの間に存在する時間と経験の圧倒的な非対称性」なんだよね。彼女はひとつの銀細工を仕上げるために何日も工房へ通い失敗したり怪我をしたりしながら少しずつ技術を身につけていくけれど、セイヤは初めて乗ったスケボーをあっという間に自在に操りその後も驚くような速さで上達していくという。彼女は「もし私たちが同じことを学んだらあなたはあっという間に私のずっと先まで行っちゃいそう」だと心許なげに呟くが、これは自分自身の習得速度が遅いことへの単なる劣等感ではなくて、セイヤの長い寿命が普通の人間には得られない経験を彼にもたらしてきたであろうことをあるいは彼女がふたりの間に存在するごく小さな「隔たり」のように感じている筆意なのだろうと思う。

ところがセイヤの返答は「スケボーを習得してよかった」「遠く感じたらいつでもあんたのところに滑っていける」なんだよね。さらに「あんたも一緒にスケボーに乗せる」「そうすれば手っ取り早いし俺たちの速さはずっと同じだ」なんてことも言う。彼が偶然乗り始めたスケボーはそうして彼女の認識の変化に伴い「ふたりの生きてきた時間の差を感じさせるもの」から「その違いを抱えたまま一緒に進めるもの」へと意味を変えていく。もちろん「驚くほど早く何かを習得するセイヤ」は別のスポーツでも成立するんだろうけど、同じ乗り物に乗れば「ふたりの進む速さが同じになる」という結論はスケボーという題材だからこそ生まれたテーマだったんじゃないかな?

にしても、毎度セイヤのお誕生日思念ストには改めて彼の「誠実さ」がぎゅっと詰まっている感じがするよねぇ。初年の誕生日は「彼の本当の家はここじゃない」「いつか帰ってしまう日が来るかも知れない」と不安げな彼女に自分の帰る場所が「今日ふたりで蒔いたスターチスの花が咲くところ」であると伝えてくれるようなエピソードになってたし、去年は「彼がこれまでどんな人生を送ってきたのか彼を形作ってきた無数の経験を知りたい」と張り切る彼女に最後は「たとえ観測できない広大な部分を持っていたとしてもいま私の目に映る瞬間は私によって形作られた私だけのセイヤ」なのだと感じさせてあげられるような結末になってたし、今回は彼女がふと抱いてしまった「ふたりの生きてきた時間の差が生じさせる隔たり」への意識に「どれだけ長く生きていてもこれからの彼女についてはまだ何も知らない」「それはこれから一緒に生きる時間の中で一生かけて学びたい」なんて答えを返してくれている。相手の感情にも自分の感情にも常に等身大で向き合ってる感じがとても好きだなぁ。

たとえば冒頭彼女が準備で忙しくしてるとき「頭ではもっと辛抱強くあんたを待つべきだと分かってるけど心はなかなか納得してくれない」なんてセイヤは言い出すが、これって決して「長く生きていることで成熟し何事にも動じなくなった超然とした人物像」ではないんだよね。むしろ何百年も離れ離れでいることにさえ耐えられてきたはずの人が今は会えない数時間が惜しくてたまらないという状態。セイヤの誠実さはここで「もっと一緒にいたい」という自分の欲求を否定しないこと、かと言って彼女に準備をやめて欲しいとも言わないこと、だから毎日迎えに行って一緒に帰ろうという提案ができるところにあると思う。それは「長い人生経験による達観」なのではなくて、セイヤが元々持ってる「自分の欲求にも相手の意思にも誠実であろうとする態度」なのだろうなって思うよ。

しかもセイヤはよく見れば実はめちゃくちゃ浮かれているのだ。工房の外で窓越しに見える彼女の頭を眺めつつ、今は何をしているんだろう、どうしてあんな顔してるんだろうとあれこれ想像を巡らせながらそこで待つ時間は「200年続いたって退屈ではない」と言うけども、本当にそんな途方もない歳月を、それも別離や喪失を背負いひとり過ごしてきたはずの彼が、今はまるで学校の廊下ですれ違うだけで一日中幸せになれたりするような学生恋愛の空気感を纏い「恋を覚えたばかりの少年」のように初々しくこんなにも無邪気にその同じ初恋を楽しんでいる。できるなら毎日迎えに行きたいし毎日ふたりで喋りたい、スケボー姿を褒められたら月影ハンターよりも誰よりも格好いいと思われたい、週末一緒に行きたい場所をスマホのメモに書き留めてみればどれだけ長い人生を生きどれほどの経験を積んでいてもまだまだ彼女と一緒にしたいことが尽きない。彼女がセイヤの計り知れない経験の蓄積に圧倒されている一方で、セイヤはこれから彼女と一緒に経験したいことで頭がいっぱいなんだよねw

わたしはここに長い片想いを美化するだけでは説明できない恋愛観としての健全さがあると思ってる。彼の初恋には途方もない歳月や悲劇がつきまとってきたけれど、だからと言ってようやく再会した彼女と一瞬たりとも離れずにいなければならないわけでも彼女のすべてを知っていなければ気が済まないわけではないのよね。彼女には彼女の生活があり内緒で何かを企む日もあれば自分には分からない表情を見せる時間もある。それを不安や不満に変えるのではなく「今は何をしているんだろう」と想像することに変換できるような、相手の時間を尊重できる成熟と好きな人のことなら何だって気になるあどけない好奇心が矛盾せず同居している感じ。

あるいは命を懸けて守ってきた相手だからと褒められることやもっと好きになってもらうことを当然視しているわけでもない。費やしてきた時間を根拠に相手へ何かを要求するのではなく今も純粋に「彼女の人生の一部としてもっとふさわしくなること」を願ってる。格好いいと言われれば嬉しいしこれからももっと好きになってもらいたい。かつての彼女を知っていても今の彼女にはまだ知らないところがあるし、これからの彼女についてはもっと知らないことがある。彼女のために生きてきた自分の人生がどれほど長くても次の「一瞬」にはまだ知らない新しい価値がある。セイヤの恋は何世紀も「変わらなかったから」初々しいのではなくて、何世紀経っても「新しく変わっていけるから」永遠に初々しいのだろうな。

最後の「俺はもう一生かけて学ぶ価値のあることを見つけた」なんて言葉もさ、長い人生の果てにようやく真理へ辿り着いた人の達観というよりか、これからの人生が楽しみで仕方ない人の宣言みたいに聞こえるよ。スケボーならあっという間に習得できるけど、変わり続けるひとりの人間を愛することに終わりはない。しかも彼はそれを果てしない課題として義務づけているのではなく「あんたが俺の人生にもたらしてくれるサプライズ」を心待ちにしているのよね。明日彼女が何を思いつくのか、来年はどんなところへ出かけるのか、これから何が起こるか分からないことがむしろ嬉しい。彼女が工房から出てくるまでの数時間さえ退屈しないセイヤなら、この先の一瞬も、一日も、一年も、きっと次々新しい喜びを見つけていくことができるはずだよね。

何百年経っても好きな人に会える明日が待ち遠しい、そんな等身大でひたむきなセイヤを見ているとまじでこれから一生かけて恋を楽しむつもりなのだろうなと思えるし、わたしもそんな恋がしてみたいとめちゃくちゃ思えてくるものよ(悶

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