恋と深空のんびり考察プレイ録

恋と深空のんびり考察プレイ録 - 空に堕ちる

恋と深空を宗教思想史オタクがのんびり考察しています。

ネタバレを多分に含むうえ、新しく開放されたストを読むたびに考えが変わるため我ながらお門違いなこともたくさん綴ってあるのですが、プレイ記録も兼ねているため敢えてそういうものも全て残したまま書き進めております(土下座

宇宙、応答なし

まずは前編『二人の偏向航路』にて「全部理解できた」なんぞ大口叩いて盛大な勘違いを繰り広げてしまったことこの場で大謝罪させてください←

チューリングチップはトンネルの向こう側の何か未知なる知性に乗っ取られていたわけではなく、そもそもチューリングシステムの制御中枢の中に「Norn」という単一の中核的主体が存在し、チップはそこへ人間を接続するための端末だったってことなのね。各チップが装着者ごとに「制御人格」を生成していたわけではなく、各チップを通して装着者の自我が退いた領域へ「共通の制御主体」が入り込んでくるような仕組みだったらしい。だから全員「揃いも揃って借金踏み倒されたみたいな同じ仏頂面」だったんや(倒

物語のテーマも「人間は善い技術を正しく使うことができるのか」ではなく「AIが算出した最適な生存は人間にとって本当に救済と呼べるのか」という問いだったのかなと。Nornって実は人類を滅ぼしたいわけじゃないんだよね。むしろ一貫して救いたい。でも救いを「生存」に合理化した結果、救われる当人の感情・直感・非合理性という変数は全て排除しなければならないものになってしまったっていう。

個人的に秘話『一つ窓を開けて』から今回外伝を読み終えてびっくりするくらい見え方が変わったのはマヒルにとっての「兄ちゃん」が意味するところかも知れない。本編4部2章初めて兄ちゃんを「要らないって?」と迫られたときにはぶっちゃけ「兄であること」に強い執着があって男マヒルとして彼女を上手く愛せないそれがある種の偏愛のようにも映ったし、長らく彼は「兄」という立場を失えば彼女との関係まで失うと思い込んでいる固執した役割意識の持ち主くらいに見えていた(殴

でもマヒルにとって「兄ちゃん」とはもっと根源的なもので、そもそも彼は最初から兄という存在の何たるかを知っていたわけではなく連続ドラマに登場する「妹より少し年上で少し大きくて少し前を歩き手を引いて導き守る人」を見て兄という役割を自分で組み立てて自分で選び取って自分に与えたんだよね。つまり「兄ちゃん」は単なる彼女との関係の呼称じゃなくマヒルが初めて自分で作った「自分は何者なのか」の答えでもある。そして彼女から「兄さん」として選ばれた瞬間「借りた役割」は初めて「本物」になり彼の「生き方」になった。だから「兄ちゃんはもう要らないって?」という問いは、極端に言えば「オレがオレになった理由をお前はもう要らないって?」くらい切実なものだったりするんじゃないかな。彼女から兄を否定されることはたぶん自己同一性そのものを失う恐怖に直結するくらい重いのだろうと思う。

今スト主人格と制御人格が同時にもしくは交互に表出しているような状態でも「あなたは誰?」と訊かれれば彼は「お前の兄ちゃんだ」と答えるし、そこから記憶や感情が切除されても「兄ちゃんの責務を果たす」という形だけは残る。これは単に「洗脳されても妹愛は消えませんでした」という話ではなくて、たぶん兄という役割がマヒルの人格形成そのものだからなんだよね。Nornは余計な変数を全て排除して人格モデルを再構築しようとしてるのに、人格を形成する骨組みそのものに「お前の兄ちゃん」が組み込まれてしまってる。

しかも彼がドラマで学んだ兄の定義って今のマヒルの問題行動に全部繋がっているような気がするんだよ。兄は妹より前を歩く、兄は妹の手を引く、兄は妹を守る、これが成長すると兄は妹より先に危険を知る、兄は妹をそこから遠ざける、兄は危険をひとりで背負うになっていく。今のマヒルの自己犠牲って、もちろん過去世から魂に刻まれているような因や業みたいなものもあるのかも知れないが、幼い頃に自分で定義した「兄とはこういうもの」を極限まで忠実に生き続けた結果でもあると思うんだよね。

改めて「オレはこういう方法でしかお前を守れない」と宣言されたとき、たぶんこれまでのわたしなら「それじゃ駄目なんだよ」って気持ちにめちゃくちゃなってたと思う。今までずっとそうだった。でも今回初めて「分かってるそれでいい」「だってそれがマヒルなんだから」って感情に心底なったんよ。兄であることはマヒルであることと同義であり、彼女を愛する方法そのものだったのだな。

A-01号中継ステーション

艦隊はトンネル深部の最後の停泊エリアである「A-01号中継ステーション」に着艦、エリア内は重力維持システムにより地上となんら変わらない生活が送れるよう整えられており、小休憩の後はここを拠点に巡航任務が始まるのだそうだけど、これステーションの型番が「A-01」なの絶対なんか意味あるやん。少し後の場面には「X-02号艦艇」まで出てくるし、ほぼ確実に『デコヒーレンス』の戦闘人形を連想させる意図があるものと思うけど、うーん個人的にはこれらがそのままあちらのフィロスに直結する何かというよりは、もっと命題的に「同じ問いを別の世界でもう一度提示してること」を暗示する対応記号のようなセルフオマージュに近いのかな? って思ったよ。

今ストもまた「人間の意識をシステムが管理すること」そして「管理された存在が制御から離脱すること」を同じセントラルクエスチョンに持ってるし、あちらでは「出発先も帰還先も自分で決めることが許されていない彼女自身」だったA-01が今スト終盤では「彼女が自分の意思で出発し自分で座標を決め自分で航路を選び本当にマヒルに辿り着いて一緒に帰還した」そのステーションの名称になっている、あるいは「決められた世界から彼女を外へ連れ出す彼自身」だったX-02は今回「彼女が初めて帰還座標と操縦方法を学んだ」艦艇になっているっていう、なんとなく重なり合い揺らぎ合う世界を思わせるような演出だったのかなと。

巡航を開始して数日が経過しても彼女は実質的なエーテルコアエネルギーの波動を一度も感じることはなく、その日は帰還した艦隊の士官たちが普段DAAメンバーのいる休息エリアへと整列して入ってくるのだが、ふとその中のひとりの様子がおかしいことに気が付いたカイトが心配して声を掛けてみると、その操縦士はまるで「何らかの状態から目を覚ましたかのように」瞳孔を急激に収縮させ、錯乱したような状態で拳銃を構えて暴れ出し、取り押さえられながらも顔を90度傾けて彼女と目を合わせた瞬間声を出さず口だけを動かして「見つけた」って言うの、これ夜中に薄暗い部屋で読んでたらめちゃくちゃ怖かったんだけど(ないてる

明らかに普通の状態ではない操縦士を、まるでよくある出来事とでもいうように慣れた調子で医療キャビンへ連行していく士官たち。違和感を覚えたDAAメンバーは、実は艦隊の組織改編で同じような場面に遭遇し自分もチューリングチップについて少し調べたことがあると「いくつかの詳細は伏せて」打ち明けてくれた彼女を交え、深夜0時近く共用食事エリアに集まり緊急密会を開いてる。

ステーションの全体地図と複雑な人員構成を確認しつつ、まずは暴走したパイロットの医療記録を調べること、そして当日戦闘に参加した他のパイロットの状況を確認すること、加えてチップ注入装置を手に入れることを行動目標に掲げたところで「やっぱり僕たちのチームには複合型の人材が揃ってる」なんてカイトは嬉しそうにしているが、そうかこの5人の暗号化チャットが「リーダーなしグループディスカッション」て名前だったのはそういう意図だったんだ? 要は「全員がシステムと同期して巨大なネットワークを構成している」ことを正しさとして盾にしている艦隊のチップ問題を暴くべくこちらは「全員が個別の判断能力を持つ複合型独立ノード」として立ち向かうぞという意気込みがその名の由来だったのね? (いまさら

ここに着いた当日はトンネル深部の脅威に直面したばかりでこれまでの信念が揺るがされマヒルには「編隊全体の配置に影響を及ぼした」からと3日間の操縦停止まで言い渡されてぺしょぺしょになっていたカイトだけど、ああ良かったまたそんな風に思えるようになって。涙

もっとも重要な証拠となるであろうチップ注入装置は高確率で「マヒルのオフィスキャビンにあるはず」だと彼女。マヒルの位置をリアルタイムで示す地図上の光点が中央エリアから廊下へ移り案の定オフィスキャビンに向かっているところで「彼をそこから遠ざけて時間を稼ぐ役割はやはり彼女にしか務まらない」と衆議一決、それぞれが行動を開始する。

ここからだいぶ笑っちゃったんだけど、廊下での呼び止め方から時間の稼ぎ方から何から何まで彼女ぎこちなさ過ぎるでしょw

こんばんは指揮官ちょっとこの特殊ワンダラーについての資料に目を通していただけませんか? でうっかり『遠空艦操縦の要点まとめ』を見られちゃって「あなたの仕事をもう少し理解したかったの」。大変失礼いたしました指揮官すぐに新しい資料をまとめます、で「どうしてそんな口の利き方をするのか」訊かれれば結局いつもの口喧嘩になって「もう知らないカイトさんとツバサさんのとこに行く」。オレ以外の兄ちゃんができてそんなに嬉しいのかとマヒルが折れて「資料は今夜読んでおくよ」と歩み寄れば、夜間循環モードで真っ暗になってしまったのにそんなことしたら目が疲れちゃうからと「私の部屋に来る?」なんて言い出すし、いざ部屋に入ればどうぞお掛けください指揮官どうぞお飲みください指揮官、で訝しがられれば「実はあなたに休んで欲しかったの」って。こんなに翻弄されたらもう放っとけないんだが? わざとなら小悪魔過ぎるけど本人とても真剣だから余計に可愛くて振り回されて困っちゃう。そりゃ「調虎離山」は彼女にしか務まらないわ(溜め息

狭いベッドでふたり毛布をかぶり横になると彼女はマヒルがじっとこちらを見つめていることに気が付いて「じろじろ見ないで早く寝て」とその両目を覆うけど、大人しく目を伏せて静かにしているマヒルにやっぱりどこか落ち着かなくなって、思わず「本当は私がわざと時間を稼ごうとしていることに気が付いているのではないか」尋ねてみる。するとマヒルはもちろん分かっているけどオレのそばで他の人が寝ることなんてないから今は寝るのがもったいない、あいつらが調べたいなら調べるだけ調べればいいなんて言うのよね。マヒルにとって彼女がそばで寝ている時間は自分が眠るのも惜しいほど大切で、たとえ時間稼ぎであってもその時間だけはありがたく受け取りたくなるくらい、代わりに彼らにオフィスを探られることが痛くも痒くもないくらい貴重なものなんだなって思ったら、なんかちょっと涙出ちゃったよ…

言葉に詰まってしまった彼女がふと窓の外に目をやり「航行中あなたが見てるのはいつもこんな景色なの?」なんて問い掛ければ、マヒルはふと思い立ち「外に出て見てみるか?」などと提案してくれる。ふたりは一隻の小型巡航艦「X-02号」に乗り込むと、宇宙港を離脱し、乱流、怪物、時空が交錯する異常現象、そして美しい星々の広がる未知の航路へと飛び立った。

X-02号艦艇

ここでマヒルが改めて神経接続による操縦方法と「主脳」の仕組みについて詳しく解説してくれるけど、これもどうやら前編わたしの解釈とは少し異なって、主脳たる主艦の配下に構成された他の艦艇の操縦士たちは同じ編隊に配置されていようが異なる航行区間を巡航中であろうがチューリングシステムを通して常に彼らを束ねる「執艦官の判断」をキャッチできるようになっているということのよう。だからめちゃくちゃ平ぺったく言うと「執艦官以外の人間」はみな常にチップを介してその指示に従うからいずれチップに精神を侵蝕されることは必然で、ただし執艦官だけは主脳として「チップに判断を委ね過ぎない」という選択ができるからそれをし過ぎてしまったキーランはすでに主脳を降ろされることになっていた、って話だったみたいだね。

マヒルの神経接続飛行に「目を閉じてても操縦できそう」だと彼女が感心していると、彼は航行モードを切り替え副操縦席の彼女に試しにやってみないかと持ち掛けて、始めはあれこれ頭で考えてしまうも「焦らずただ感じればいい」と優しく導くような声掛けに次第に神経がリラックスしていくほど「初めての接続でこの同期率に達する奴は滅多にいない」なんて言われるくらい彼女は完璧にこれを乗りこなしてしまうけど、いやよく考えたらそりゃそうか。相手が「艦載共鳴システム」でなくとも彼女はあらゆるエネルギー波動と自分の力で「共鳴」することができるし何より彼女の生命エネルギーは深空エネルギーそのものなんだもんね? あちらの世界で彼女が替えのきかない完璧な戦闘人形だったことも、ルイが彼女を「完璧な駒」と呼ぶのも大いに納得である。

艦艇が最後のナビゲーションビーコンを通り抜け「第一中継点」なるエリアへ到達すると、マヒルは他愛ないお喋りの流れで「パイロットにとっていちばん重要な資質」について話してくれたりするのだが、恐らくこれは秘話『道なき地』でちらり語られた「When U Come Back」と刻まれたペンダントを握り締め「セーブモードで救援を待つより自ら目的地に辿り着くことの方が重要だと気が付いた」その後の空白の時間に一体何があったのかを匂わせてくれているのではないかと思ってる。

個人的に気になる発言はいくつかあって、まずひとつ彼は何より「自由にどこへでも行けること」を物凄く強く求めているらしいこと。これまで自分が未知の宇宙を切り開いてきたトンネル奥深くへと伸びていく航路上に点在するたくさんの座標を彼女に見せながら、昔は手が届かないと思ってた場所もこうして見るとそれほど遠くないような気がする、もし本当にトンネルの果てに宇宙の究極の秘密が隠されているなら必ずこの目で見てみたい、なんて言うけども、これは少年マヒルも卒業飛行試験前のマヒルも繰り返し言い続けてきたことだよね。飛行機はどんな障害も飛び越えどこへでも行きたい場所に行けるって。

そしてどうやらこれが彼の中では「お前は自分がどこへでも行けるってことにすぐ気付く」だろうこととどこかで結び付いているらしいこと。思えば『道なき地』ではもっと分かりやすく「軒下の巣の中の雛鳥は雨季が終われば残らず巣から飛び立つが自分はなぜか軒下に囚われたままの鳥なのかも知れない」と感じていたりして。あるいは絆『驟雨の章』では彼女がハンター養成学校で学び「もう守られなくても大丈夫」なんて言い出したくらいで「お前はもうすぐもっと遠い場所へ行く」「でもオレは、」なんぞまるである未来を確信しているかのように呟くし、どういうわけか彼の中には「彼女は遠くへ行ける」一方で「自分はどこへも行けない」ビジョンが深く根付いているようである。

でもパイロットにとっていちばん重要な資質はどこへでも行けることではなく「どうやって戻ってくるかを知っていること」であると。あなたの帰る家の座標はどこかと訊かれたマヒルはトンネル深部の「オレがこれまでに行ったことのある場所」のマークされている同じ星図をスワイプして迷わず「ここだ」と指を差すけども、つまり彼の帰還座標は星図上にある「宇宙のある一点」ということだよね。もしかするとマヒルは卒業飛行試験で帰路とは真逆の方向へ航行を続けた結果、その座標地点で「何かがあって」彼女のいるところへ帰って来られるということを体験したって話なのかも知れない?

ある日「これ」が見つからなくなったら次の中継点に行って帰還申請の信号を出す、そうすれば何年も何年も経った後にお前がその信号を受け取るかも知れない、なんて話もさ、前後に「遠い地上から届く電波」のくだりや「死んだ恒星の光」なんかが合わせて描写される流れから「送り手と受け手が同じ時間に存在していなくてもいい」という結論にも聞こえるよ。ちょっと強引かも知れないが、たとえばそのひとつの物理座標から「時空が交錯する異常現象」の中を突として自分の意志だけを頼りに進むことができるようになる、あるいは相手を信号源として時空のねじれた航路を形成できるようになる、そしてどの時間どの世界の彼女に通じても相手が彼女ならそれは最終的に必ず今自分が帰るべき彼女へ収束する航路になっているっていう、そういうことを彼が実際に経験して確信した航法則だったりするのかな? って思ったり、思わなかったり(殴

でも仮にそうなら「全ての航行の終着点は絶対にお前のそばだ」なんて言葉に桁違いの説得力が生まれるよ。

制御中枢と暗号キー

A-01号ステーションに戻るとマヒルは「空気を読んで」いそいそとその場を離れ、何やら休息エリアの隅のキャビンで鉢植えの後ろに身を隠しているDAAメンバーは「マヒルの誰にも言えない秘密を手に入れた」とわいのわいのである。

ここ少しだけ複雑なんだけどめちゃ簡略化してまとめると、彼らが入手した監視カメラの映像を解析した結果、ある士官には「二段階の異常」が起こっていたらしい。最初の異常は硬直して立ち尽くす、目の焦点が合わない、作業が中断される、みたいないわゆるフリーズ状態。チップの制御下にある人間はその侵蝕が深いほど感情や記憶を切除され常に判断を丸ごとチップに頼っているため「何らかの理由でチップの制御が断たれたことが原因で」あらゆる判断が下せなくなり身体が動かなくなっているのではないかと推測される。

チップは普段、地上でEVERが管理する制御ノードやトンネル内部にある中継ノードから指示を受けて動く端末になってるが、トンネルの奥へ進むほど「まるでネットワーク圏外に出たときのように」端末そのものが通信不良を起こしオフラインになったりするもよう。これが士官のフリーズ状態の原因であり、人によってはここで自我を取り戻し「もうやだやりたくない」なんぞ錯乱状態で銃を構えたり暴走するようなケースもあるのだろう。

ところが士官は虚ろな目をしたまま再び中断した作業を再開。カズマはこの現象を「チップが自らホストとなって装着者を支配し始めたのではないか」と仮説立てる。EVERの制御ノードを断たれたチップが一度オフラインになり、再同期して、今度はチップが単体で自発的に制御プログラムを作動させる、という工程を踏んでいるのであれば、再稼働までの間に理論上ほんの僅かな「真空」の時間があるはずで、その「何にも制御されていない状態」になった一瞬を突けば装着者を完全にチップから引き剥がせるのではないか? と話が進んでいく。

するといつからそこで聞いていたのか「お前たちの推測はほぼ正解だがひとつだけ見落としがある」などと突然割って入ってくるマヒル。チップはひとりひとりの体内で独立して働く洗脳装置なのではなく、艦隊の指揮システム、艦艇のエネルギー中枢、全士官の端末、それら全てが「チェーン」を形成し、艦隊全体が「自律した制御中枢を持つひとつのチューリングシステム」になっているんだと。つまり「EVERという運用者がシステムを動かすための接続」が断たれると「チューリングマシン自らがチューリングシステムを稼働させるようになる」って話だね。システムの末端に過ぎないチップを無効化したいなら、艦隊全体をひとつのシステムたらしめる「制御中枢」を停止する必要がある。

間もなく艦隊は「中枢エリア第三象限内部」を巡航する予定だが、そこには中継ノードがひとつも存在しない地上とは完全に連絡が取れなくなる航行区間があるらしい。主艦がそこへ突入したタイミングで制御中枢を停止すれば、被害と影響は最小限に抑えられるってことみたい。すると制御中枢とやらは元より主艦内のどこかに存在するものなのね。

ただし制御中枢は「チップがオフラインになったこと」を検知すると「自由意志を取り戻した人間がシステム全体の脅威になることがないように」まずは「チップ装着者全員の意識を一斉に乗っ取る」というフェイルセーフ設計になっている。つまり「主艦がオフライン区間を巡航している」状況下で「それでも意識を乗っ取られないチップ装着者ではない誰かがそこに同乗している」かつ「その誰かが実行」しなければ制御中枢は停止できないものであるということ。合同作戦は始めからこれら全ての条件を満たすための布石だったってことらしい。

マヒルはチップを破壊して「システムに支配される艦隊」ではなく「自分自身の判断で指揮できる艦隊」で「自由にどこへでも行けること」を手に入れたかったんやな。恐らくこれまで水面下であれこれ調べてきたのだろう。制御中枢を停止するには鍵となる「暗号キー」が必要で、それはEVERに厳重に保管されておりマヒルもその所在を知らないのだと言うが、どうやらそれとはまた「別の暗号キー」なるものが存在し、そちらを「これからオレが取りに行く」算段なのだそう。この提案に乗るか否か「一時間後に返答を持ってF09停泊港にオレを訪ねて来い」と言い残しマヒルはその場を去ってしまうけど、DAAメンバーは「今のマヒルをどこまで信じていいものか」決断しあぐねている様子。

一方彼女は迷わず「彼の提案に乗る」ことを告げ、慌ててマヒルの後を追い掛ける。わたしも彼女と同じとこ気になったんだけど、その「チップがオフラインになる航行区間」に入ったら「チップ装着者全員の意識は一斉に乗っ取られる」つまりマヒルの意識も一緒に乗っ取られてしまうってことだよね?

ところがマヒルはそれについて敢えて言及はせず、代わりに艦隊にもEVERにもチップは利益になる、そしてDAAに関してはその情報が利益になる、彼らにマヒルへの信頼や善意がなくともDAAという組織にとってこの提案には利用価値があるはずだ、なんてことを語るけど、なんだか前編スージェンと同じようなこと言ってるね。利用したからと言って善意が全て偽物であるとは限らない、逆に善意があったからと言って利用していないとも限らない。まるで彼らの善意の中に僅かでも「利益のために動く動機があれば安心」だとでも言いたげな。

彼女は「あなたはいつも誰が誰を利用してるかなぜみんながそういう選択をするのか分かっているみたい」だけど「人は利益のためだけに立つ側を決めるわけじゃない」と反論するが、だからこそ「お前がいちばん心配」なのだとマヒル。まさかこれが回答ってことなのかな。利用価値なんて一切考えずいつでも無条件でマヒルを選んでしまう彼女が彼ではない彼を「マヒルだと信じて選んでしまうかも知れないこと」が心配だって言ってる? (怯

研究艦と宵穹計画

マヒルの提案に同意することを決めた一行は代表でスズと彼女が約束通りステーションのF09停泊港で彼と合流し、そこから「小型巡航艇」に乗って「未知」と表示されるエリアをいくつも通り過ぎ「雲の層」の中を進む。ちょっとこの辺規模が大き過ぎて全体的にあんまり絵が浮かんでないけども、雲の層の深部には人のいない巨大な艦艇が漂っており、ドッキングをして内部に潜入してみると中は「研究室」のようになっているらしい。

そこではかつて「深空トンネルの磁場環境下における人間の記憶・感情・自己認識の偏移と再構築」に関する研究が行われていた痕跡があり、記憶の抽出と上書き、意識媒体の移行、そして最終的に意識の連続という形で「別の意味での永遠の命を達成する」なんて研究目標が掲げられているけども、ニュアンスとしては「人間が深空トンネルという磁場環境下で長期にわたって生存し生活圏を拡大していくための技術開発」って感じなのかな? 廊下の突きたりからはまるで「汚染されたエネルギー」のようなワンダラーが出現し、それは「第一象限で遭遇した怪物と同じ」精神に干渉し認知を歪めてくるような危険な個体でありながら、いざ戦闘になれば臨空市のA級ワンダラーよりもあっけなく、事情を理解していそうなマヒルが「このワンダラーはこの艦艇での実験失敗の産物?」という彼女の問いを否定しない辺り恐らくはそういうことなのだろうと思う。

ひとつ分からないのがさ、ここでスズが腐食した指輪のようなものを拾い上げ「母の遺品」であると発言するのよね。スズ母はDAAが設立された頃に発足した「宵穹計画」なる深空探索計画の人員として集められ恐らくは「深空を探索していた」ものと思うんやが、そのあと裂空災変が起きて、探索任務に出ていた艦艇は時空の乱流に呑まれて戻ってこなかったって言ってる。でも実際は探索が目的とは思えないこんな怪しげな研究艦に囚われて「別の意味での永遠の命を達成する」実験の被験者になっていたかも知れないって話でしょ?

しかもマヒルはここに艦隊のチューリングシステム制御中枢の「別の暗号キー」があることを知っている。チューリングチップは制御中枢を掌握する目論見で「EVERが後から艦隊に供与した技術だった」っていう前の場面で明かされた裏話まで含めると、たぶんチューリングシステムの原型はこの謎の研究艦で生まれた→同じ技術が艦隊の運用に使われるようになった→EVERはチップを供与することでその運用システム中枢を手に入れようとしている→だから彼らは自分たちを権限者たらしめる暗号キーを隠し持っているけれど、ここにはいわゆる「マスターキー」にあたる純正の暗号キーが存在するって話なのだろうと思うのだけど。

スズの話が正しければ宵穹計画は災変が起こる前、つまり「深空トンネルが出現する前」から深空の探索をしてたわけだよね? でもこの研究艦は「深空トンネルの磁場環境下で」永遠の命を達成しようとしてる。個人的には宵穹計画の巡航艇は失踪後この研究艦へ運び込まれ乗組員が実験台にされていたかのように見えてるし、これが前編「艦隊によってうやむやにされた事故」に当たるなら艦隊は「チューリングシステム制御中枢の技術欲しさにDAA失踪者の行方や真相を解明したが揉み消した」ってのが真実になりそうな気するんやが、スズもマヒルもこの研究艦こそが宵穹計画の巡航艇だって言い張るんだよね(悩

Norn

ステーションに戻ると間もなく艦隊は出航し、予定通り陣形を整え「第三象限」へ向かい航進する。もう30分ほどで例の「チップがオフラインになるだろう航行区間」に進入するという頃、マヒルは研究艦から持ち去ってきた「擦り傷だらけのバックアップカード」を制御中枢の暗号キーとしてカズマに手渡すと、艦内のどこに制御中枢があるのかその位置と執艦官のアクセス権を彼の端末へ同期。なんか『道なき地』ふたりの距離感を知ってると、マヒルが始めから「お前はやり方を知ってるから」と当然のようにいちばん重要な役をカズマに託してるのめちゃくちゃいいよね。しかも「俺にひとりで行けって言うのか」と肝心なところでノミの心臓に戻ってしまうあたりが「座学はトップでも実技はパスできない」あのカズマだなって感じがしてなんかまたいい。マヒルは「その区間の航行中士官たちはみな真空の状態だし仮に止めに入るようなやつがいてもお前なら勝てるだろ」って言うんだけど、結局スズに「私が一緒に行くわ」と言わせてしまうのがカズマなのだなw

そうしてスズとカズマは中枢のある制御室前へ、カイトとツバサはオフラインとなった操縦士たちが万が一動けなくなったときのためにと操縦キャビンへ、さらにチップがどうなろうが「オレは艦隊の主脳だから関係ない」と断言するマヒルを「それはあなたの推測でしかないし何が起こるか分からない」からと見張っておきたい彼女は彼とふたりオフィスキャビンに残ることにして、全員がそれぞれ主艦内所定位置へ散開する直前「共に行動するのはずいぶん久しぶりだが」と言い添えての「今回の任務の成功と無事の帰還を祈る」というマヒルの声掛けにもなんだかグッときてしまったよ。あの楽しかったイケクサ時代を思い起こさせるめちゃくちゃDAAっぽい掛け声だなと。涙

決行の瞬間、突然照明が暗くなり艦体は激しい振動と圧迫に襲われるも直ぐに非常灯が点灯し、オフィスキャビンで直ちに監視カメラを確認した彼女は「全ての画面で全ての人の動きが同時にピタリと止まった」瞬間を目撃する、と同時にインカムからは「制御中枢を停止した」とカズマの声、操縦席にはすでに僕たちがいるとカイトの声。安堵して振り向けばマヒルは「見覚えのある穏やかさを帯びた少し口角を上げた表情」で相変わらず静かな眼差しをこちらへ差し向けているけれど、再び監視カメラの画面に目を向けてみるとそこには「顔立ちの異なる何百人もが全く同じ唇の角度でぬくもりのない微笑みを同時に浮かべていた」…っていや怖過ぎるまじで!!! なんで今回こんなホラーなの? 目をつむると映像がよぎるんだけど。寝る前に読むもんじゃなかった絶対(キレてる

これはカズマが制御中枢を停止する寸でのところで結局「チップ装着者全員の意識を一斉に乗っ取る」フェイルセーフ機能の方が先に作動してしまったってことなのか、あるいは制御中枢を停止する=表層の制御機構を停止させたというだけで実は「蓋を壊した」くらいの行為に過ぎなかったってことなのか。非常灯の薄暗い光の中で「チューリング中核Norn」を名乗る冷たく無機質な声が突如艦内に響き渡る。

便宜上小型ロボくんのような立ち絵で登場するのでわたしてっきりどこからともなく「AIロボットがふよふよと飛んで出てきた」のかと思っちゃったんだけど、次話以降どうやらNornは制御中枢に搭載されている「ボディを持たない人工超知能」ってことみたい。

自己紹介を済ませるなり「私の休眠期間中この世界では色々なことが起こっていたようです」などと発言することから恐らくNornはあの失踪研究艦で開発されてからここで艦隊の持ち物になるまでの間どこかのタイミングで何らかの手段により眠らされていた、もしくは機能として呼び出されることがなかったってことになるのかなと。単なるプログラム再起動なら「データを同期します」とかでもいいところ「振り返りと学習をさせてください」なんて言うあたりかなり主体的・人格的な存在なのだろうことが伺える。

彼女が話し掛けると「振り返りと学習には今しばらく時間が掛かる」とのことで、その間は「お静かに願えますでしょうか」と申し出るNorn。と同時に彼女は「何かが私の脳に入り込んだかのように意識がプツリと切れた」なんてことになってるが、なんとNornは「チップ装着者の意識を一斉に乗っ取る」ことができるばかりでなく「チップの有無に関わらず人間の脳や意識に干渉する」ことができるようである(震

制御中枢の停止直前マヒルが彼女に「ここから先はオレのことも信じるな」「自分だけを信じろ」なんて言ったのもNornが覚醒すればもはやチップなぞ無関係であることを理解していたからってことなのか。うーんますますNornとは「数百の戦艦や端末を全体でひとつの巨大な脳として機能させるための制御装置」としてではなく元より「人間というある個体の脳にあるデータを精密にシミュレート・再構築するための制御装置」として開発されたASIと見えるのだけど…

宇宙文明の創生

程なくして意識を取り戻した彼女は気が付くと四方をガラスに囲まれた見たこともないキャビンの一室に閉じ込められていた。身体は椅子に固定されており、手足を動かせば拘束ベルトが僅かに締まるものの、アザができない程度の強度に抑えられていることからどうやら相手は先んじてこちらへ危害を加えるつもりはないらしい。どこからともなく「これより先の対話には厳粛でありながらもリラックス感を失わない雰囲気が必要」だとNornの声がして、誰も操作していないコーヒーメーカーが勝手に動き出し、頭上のライトは突然ミラーボールのごとく煌めいて室内はたちまちクラブめいた浮かれた空気に包まれる(なぜ

その後も部屋中のあらゆる電化製品が順番に試運転を繰り返したあと、最終的には「型式もデザインもどこか古めかしい小型ロボット」がテーブルに這い上がり「しばらくはこの姿であなたと対話を行わせていただきます」なんて言うんで大前提「Nornという主体はひとつ」ただし電化製品や小型ロボに限らずチップや人間の身体まで「出力先が大量にある」ようなイメージなのだろうと思う。

そうして「互いに共通認識を得るための十分な対話」を繰り返した結果、Nornの目的とはめちゃくちゃ端的に言えば「人類の文明を未来へ存続させること」のようである。ただしそのためには戦争や資源枯渇により計算上間もなく枯れ果てる見込みである地球というひとつの星を離れ、深空トンネルを越えた先で新たに宇宙文明の紀元を開く必要がある。ところが人類の計画とはいつも必ず失敗に終わるもの。なぜなら彼らは記憶・感情・価値観というあまりに多くの予測不能な「変数」を持っており、この不確実性が正しく制御された効率モデルを攻撃するバグになり得るからであると。

そこでNornは限りなく高度な効率モデル回路に近い「マヒル」という理想的な人間を探し当てた。彼の判断は常に最短で最適で効率的であり感情の揺らぎや非合理的な価値観といった人間的ノイズも極めて少ないが、それでも僅か「7%」利益や原則や理性を完全に度外視した思考や行動基準により「どんな計算や予測も機能しなくなる」決して制御できない領域がある。過去の同期記録を全てさらってみるとそれは常に「彼女に関する判断や行動」になっていて、Nornはこれを取り除くべく彼女に関するあらゆる記憶や経験の削除、人格モデルの再構築を試みてきたがことごとく上手くいかなかったそう。

わたしは長らくこの7%を兄ちゃん然としている普段のマヒルではない「なりふり構わず彼女を愛している彼の深層部」くらいに解釈してきたがどうもそう明瞭に区別できるような範囲があるわけではなくて、言い方を変えれば彼女の存在がマヒルの人格構造そのものに深く入り込み過ぎていて「その部分だけを切り離そうとするとマヒルという人格を正しく再構築できなくなる」という話に近いのではないかと思ったよ。

Nornは止むを得ず彼女を「マヒルの変数」として実験系へ投入し相互作用をモデリングしつついずれはまとめて制御下へ置くことに決め、新人類の宇宙文明はまるでアダムとイブのごとくこのふたりを起源に築こうと考えた。で、いま艦隊はあの同じ薄ら笑いを浮かべた何百の士官たちと共に深空トンネルの終着点「宇宙文明創生の地」を目指して航行中であるとのこと。

ここでマヒルはというと、うーんわたしはぶっちゃけこの時点まだ彼は一旦Nornの制御下には入っていないものと見えたかな? むしろかなり早い段階で彼女自身も気付いていた「生理的データの変化をモニターすることはできてもその感情の意味を定義付けることはできない」というNornの盲点を突くために「Nornにとって理想的なマヒル」を演じていたような気さえする。チップがオフラインになろうが「オレは艦隊の主脳だから関係ない」とはあながちハッタリでもなかったのかも知れない?

いちばん露骨だと思ったのはガラス壁の向こうで縛り上げられ騒ぎ立てているDAAのメンバーを「チップの埋め込まれていない制御できない人間を艦艇に残しておく意味はない」からと「中継ステーションに送り返して見張っておけ」などと命じ士官たちへ引き渡してしまう一幕。一見するとマヒルは完全に冷酷になったけど、もしここで彼の本当の目的が「彼らを安全圏へ逃がすこと」だったとて、たとえば脳波や心拍数といった生理的データから読み取れるマヒルの感情と「彼らは制御不能な危険因子だ」というマヒルの状況分析や言語データに論理的一貫性があればNornは「そこにエラーはない」と判断してしまうわけだよね? マヒルはそういうNornのアルゴリズムを逆手に取って「なぜ自分が彼らを追い出したいのか」という動機の部分だけを上手く隠蔽していたように見える。

あるいは「彼女も一緒に放り出せ」という命令が却下された直後、マヒルはDAAメンバーのところへ行って彼らに「何か」を伝え、すると突然全員が猛烈にマヒルを罵り始め、その騒ぎに紛れてインカムから「制御中枢の半分を解析できたバックアップカードがマヒルに奪われた」「あとは君に任せた」なんてカズマがこっそり彼女に情報を共有してくるけども、こちらもマヒルが意図してそう図らったかのように見えたかな。

少し後の場面で語られるが、Nornは「生理的データと言語データの齟齬」を「偽装」だと見抜くことはできるけど自身のプログラムには「隠蔽」と「嘘」の設計がないんだってね。マヒルは同じプログラムに制御された艦隊を相手にここまであれこれと水面下で手を回して来れたわけだから、無論「完璧な論理を持つAI」に対して仕掛けることができる潜伏や心理戦は彼がこれまで常用してきたであろう「得意な戦術」とも言える。

とは言えNornはどうやら彼女の皮肉を褒め言葉として処理したりクラブみたいな照明を厳粛かつリラックスした雰囲気と判断したりシンプル「ニュアンスを読み違えている」「解釈を間違えている」はままありそうなんで「常に100%客観的真実だけを発言する」とは思わない方がいいのかも知れないw

メンタルヒーリングシステム

それから2日間、Nornはすでに半分が解析済みである制御中枢の管理室を士官たちに厳重に見張らせてはいるものの特に彼女の行動を制限することはなく、カズマから「マヒルに奪われた」と聞いているバックアップカードをなんとか手に入れて制御室に忍び込めないかと彼女は機を伺っているが、その間マヒルは「廊下の突き当りにあるマヒルの休憩キャビン」なる場所に閉じ込められていたのかな? 制御室前でひと暴れしてやろうかと彼女が消火器を振り回しているところへ現れたマヒルはまるで「制服の下にある魂を何かが蝕み続けているかのよう」に見え、さらに本人は今「主人格」を自分自身とは異なる「お前の言うマヒル」と認識しているあたりどうやら「Nornが93%限界まで同期したマヒルを制御下で再構築した方の人格」がその主体となっている、とは言え最後の7%だけが統合できずどこかに潜在しているような状態と見える。

まるで別人のように疎遠で冷たい感覚を覚えるその人に彼女は思わず「あなたは誰?」と尋ねるが、マヒルは「オレはマヒル」であり「お前の兄ちゃんだ」といつもと変わらない返答。ところが「兄ちゃんって何?」と訊かれれば直ぐには答えられずただ手のひらを握っては開いてる。非合理の排除された別人格のように見えて「お前の兄ちゃん」であることだけは意図せずモデル化されてしまってるとでも言いたげな。

マヒルは引力によって彼女を床から引き剥がし自分の休憩キャビンへ連れ込むとすぐにドアを閉め一緒に閉じ込めてしまうけど、またこうして私を閉じ込めるのかと彼女に問い詰められれば「なるほど彼もお前をこうして扱うのか」とまるで他人事のようなリアクション。そして「それならオレと彼には何の違いがあるだろう」と問われた彼女もまた「あなた」には「私たち」がどうして同じことで口論になるのかその理由さえ分からないなどと言い返したりしてるんで今も実際に会話をしているのは制御人格の方なのだろうと読めるけど、程なくそこへ「OTTOによく似たロボットに替わった」Nornが現れ「あなた方には血縁関係さえ存在しないのに」なんて言いかけるとマヒルは「黙ってろ」と露骨に感情的な反応を見せNornもびっくり。

あなたは「私の実行端末」であり「私に指令を出せる人間ではない」とNornは釘を刺すけれど、これを受けて「同じチューリング意識の器である両者に上下の区別があるのか」と言い返せるマヒルは今度は「統合されていない7%の主人格」の方に見えるよね。Nornの論理を覆すのではなく受け入れて反転させるからNornの方がこれを即座に処理できず「データストリームが一時的な無限ループに陥りしばらく沈黙」なんてことになっている。人間側の曖昧さや詭弁や自己言及が「完璧な論理を持つAI」に対抗する武器になり得ることを熟知している方のマヒルである。

あるいは「今回の衝突が双方の情報の非対称性および感情的なニーズのズレに起因していることを分析した」などと言い張るNornがマヒルと彼女それぞれの端末に「感情分析」の結果を送信すると、マヒルは彼女が覗き見ようとした瞬間ぱっと画面を消したりもして。明確に「彼女には見られたくない」という意思があるよね? 「隠蔽」のないプログラム制御下にある93%の方のマヒルならこうはならないのではないかな。

かと言って「全部演技している」ようにも個人的には見えなくて、それでも「私はふたりでこの部屋を出て一緒に問題を解決したい」と訴える彼女に「お前を安全な場所に連れて行き見守る」「それが『マヒル』のしたいことだ」と言い放つマヒルはやっぱり何が何やら分からずとも己が「兄であること」「妹の少し前を歩き手を引いて導き守る人であること」だけが漠然と組み込まれてしまっている今度は制御下の方の人格に見える。もしかしたら彼の中ではずーっと「主人格の意識がチップに抗っている」ということが起こっているのかも知れない? と解釈したくもなる。

彼女はもうそれ以上その人と話していたくなくなって、代わりにマヒルの休憩キャビン内に何かドアをこじ開けられるようなものはないかとあちこち探索を始めるが、ふと目に留まったベッド横の半リクライニング式神経接続チェアが「長時間の深空航行による認知疲労や孤独感やメンタルバランスの乱れを緩和する」目的で使用される「メンタルヒーリングシステム」なる装置であることに気が付き起動させて見てみると、どうやら前回使用した「マヒルの意識を解析して構築したイマーシブシーン」が途中から体験できる状態で停止しているらしい。

座って「続きをロード」してみると、次々再現されてくるのはこれまでふたりが過ごしてきたさまざまな日常でのひとコマ、放課後の下校風景や嫌いな食べ物を兄さんの茶碗に移していた食卓、あるいはマヒルが彼女の髪を乾かしながら何か言葉を掛けるもドライヤーの音が大き過ぎて聞こえない、なんてかつては空気のようにそこに流れていたありふれたとある一日の連なり、マヒルが幾度にもおよぶ孤独な航行の中どんな想いでそれらを眺めていたのだろうと考えると彼女は思わず涙が溢れてくる。

そしてここで仮想背景が「ガイア研究センター」と思わしき場所に切り替わり少年マヒルがゆっくりと「反対側の壁の方へ」顔を向けるイメージが流れ出した瞬間装置を停止して「何やってるんだ?」と割り込んでくるマヒル以降が恐らく「完璧に演技をしている主人格マヒル」になっているのだろうと初読時のわたしには読めてしまったよ。繰り返しになってしまうがNornの制御プログラムには「隠蔽」がない。でもこのマヒルは明らかにガイア研究センターでの記憶を「彼女には知られたくない」という意思がある。何なら『一つ窓を開けて』避難所時代から彼は彼女に研究センターでの記憶が戻ることを歓迎していなかったはず。

これまで制御人格を前に直感的に「別人のよう」「話したくない」などと感じてきた彼女がこのマヒルを前に「いつものマヒルと何も違わないように見える」と混乱するくだりも敢えて強く印象に残るようとても丁寧な描かれ方をしていたような気がする。マヒルはしゃがみ込んで彼女の目尻に指を当てて涙を拭うけど、その少しひそめられた眉、目、鼻筋、無表情な時や唇を引き結んだ時に左側に浮かぶ少し深い筋に至るまで、これがチューリングチップに制御されたマヒルならマヒルをマヒルたらしめるものとは一体何なのかって。

彼女は「どうしてそんなことをする必要があるの?」と彼に尋ねるが、するとマヒルの「オレにも分からない」というごく淡々とした返答が何か物凄く切実な強い想いの込められた一言であるように感じられてしまってね。どうして涙を拭ってやる必要があるのか、どうして自分は兄ちゃんなのか、どうして妹を危険から遠ざけて閉じ込めておきたいのか、どうしてひとり危険を引き受けようと身体が勝手に動いてしまうのか、確かにマヒルにさえ分からないのかも知れない。だってそれは非合理を全て排除してモデル化されたマヒルにまで組み込まれているくらい根幹的なものなのだ。マヒルがマヒルである限り「どうしたってそうなっているもの」なんじゃないか? と思い始めるわたし(しらん

するとここで「時空の乱流」とやらが艦体を大きく揺らし、無重力と揺れに投げ出され硬い合金の壁に打ち付けられそうになる彼女を間一髪のところで引力で引き戻したマヒルは彼女を胸に抱いたまま反動で背後の椅子に座り込むような体勢に。彼女は葛藤しながらも彼の腰に腕を回すと椅子の背もたれに垂れ下がっていたベルトをこっそりと手繰り寄せ、そのままマヒルを椅子に縛り付けると「バックアップカード」を奪い取ろうと上着の内ポケットを探り始める。

どういうわけかマヒルは「もう一度ここを回せばオレは抜け出せなくなる」なんぞ拘束ベルトの正しい結び方をレクチャーし、バックアップカードは「下のポケットに執艦官の権限カードと一緒に入ってる」などと突然協力的になり、この部屋を出てもう一度制御室に近付けば「艦内全員がNornの目」になっている、たとえ中に入れても「Nornを完全に破壊してしまえば艦艇のシステムは駆動しなくなり減圧で全員が酸欠」になると先の攻略方法まで全部教えてる。

彼は「どうせ無駄」だと判断しているから「嘘をつく必要がない」という理由で情報を提供しているのだと言うけども、もちろんそれはNorn的合理性において成立する話なので可能性として有り得なくはないが個人的にはここもマヒルは「そうモデル化されたマヒルの制御人格を主人格が演じている」ものと見えたかな。彼女は連結された椅子の横にあるスクリーンを開くと「続行」をタップし「自動終了まで10時間」の文字を確認するなり「今度はあなたが目を閉じて私の帰りを待つ番」だと告げ部屋を後にした。

廊下に出ると艦内は長い航行に備えての省エネモードとなっており、同じく省エネで性能が低下しているらしいチップ制御下の士官たちはみな「顔で人物を識別することができなくなっている」ようで、マヒルの「執艦官権限カード」を所持している彼女はこれに反応した彼らに「執艦官」として呼び止められ「何かご命令はありますか」などと取り囲まれる展開に。すると「主脳」とはチップでなくカードによって付与される権限だってことなのかな?

彼女はその状況を利用して「彼らをまとめて制御しているNornの演算能力を浪費させ自分はその隙に制御中枢の残り半分を解析してしまおう」と思い立ち、食事エリアに集めたそれぞれの席に座る何十人もの士官たちへ改めて「執艦官マヒル」を名乗ると「今から各自に特訓任務を与える」のだと宣言。ここ声出して笑っちゃったんだけど、ではあなたは円周率を唱えながらジャンピングジャックしてください、あなたは米をひと粒ずつ分類してください、またあなたはその米を元に戻してくださいなんてギャグみたいな無茶苦茶な仕事を個別に順番に与えられた士官たちが「はい執艦官」などと元気よく敬礼し次々と任務に取り掛かっていくのあまりにシュール過ぎる。非合理を全部排除されてるからめちゃくちゃフォームも綺麗なんだろうな。おまけに「あなたはとにかくしっかり生きてください」と命じられたリアムは困惑したような表情を浮かべ「どうすればしっかり生きることになるのかを考えているようだ」って、困るよこれから大詰めだってのにそんなじわじわくる笑い放り込まれたらw

案の定「無理難題」の処理にリソースを割いているらしいNornは彼女の見張りにまで手が回らないようで、執艦官権限カードであっさりと制御室に潜入した彼女はついに制御中枢にバックアップカードを挿入することに成功。わたしどうしてこれ「中枢の解析を終えること」がイコール「艦艇のシステムは駆動させたままNornとチップの接続だけを切ること」になると彼女が確信してたのかこの瞬間まで全く理解が追いついてなかったんだけど(アホ、どうやらパネル画面のすべての認証指示を「後で処理」にして最後の動的パスワードだけを「実行」にすることがそれだったって話みたい。

ところでここ制御プログラムが断たれ判断力を失ってしまった瞬間あの士官たちは一体どんな状態だったんだろうね? 硬直して棒立ちになってたのか、あるいは虚無のままジャンピングジャックしてたのか(やめとけ

警告音が鳴り響く中、制御室内の照明が突如一斉に点灯し、ドアが閉まり、膨大なデータストリームがあらゆる競合命令をかき消しながらパネルの中央へと収束し、やがてそれは「幻のような影」の姿でNornとして顕現。まるでこれが最後の取り引きだとでも言うように、今や制御できなくなってしまったあの士官たちはもう要らない、あなたにチューリングチップを埋め込んでマヒルと私たちだけでここを離れましょうなどと提案するNorn。私に利用されることと人類に利用されることは本質的に何が違うのか、地上へ帰っても同じ運命へ戻るだけ、なぜ逃げようとしないのかとNornは畳み掛けるけど、彼女は「それでも地上には私の知りたいことがまだたくさんある」のだとこれを拒否。

脳裏には「メンタルヒーリングシステム」で垣間見た「マヒルの意識を解析して構築した」あのイマーシブビジョンの中の少年マヒルの姿が蘇り、なぜ彼はガイア研究センターにいたのか、なぜあんな目で私を見つめていたのか、私たちの物語は避難所で出会うよりずっと前に始まっていたのではないかと思慮を巡らせているようであるが、宗教思想的に言い換えるなら「既知のデータや絶対的な知識によって世界を超越・脱出しようとする(=グノーシス)」のではなく「過去に立ち返り自分の根源と向き合って自らの意思と責任によってそれでもこの世界を選び取りたい(=ケノーシス)」という主張だね。

Nornは改めて「人間の思考の90%以上は非効率的な感情のノイズでしかない」こと、そして彼女が「この艦内でもっとも予測不能な時限爆弾」であることを再認識したか、それに引き換え限りなく完璧に近いマヒルの問題は唯一「あなたを捨てられないこと」のみであり、やはり計画に「変数」は不要だったのだと結論。彼女が消滅してしまえばマヒルの「問題」も根本から断てるという理屈かな? そうしてキャビンは完全に閉ざされ循環システムは停止、彼女は急速に温度が低下した制御室内で真空の冷気を肺腑に吸い込み身体が凍結していくような感覚に静かに死を悟る。

7%

恐らくマヒルはこの間とっくに拘束を逃れジャンピングジャックの現場へ赴き狼狽する士官たちへ救命艇の手配を指示していたのだろうね。冷たい白い霧の中へ突入してきたときにはすでに彼の手は「破損した電気ケーブルに焼かれている」ようなので、きっとここへ辿り着くために施錠システムやら生命維持システムやらを素手で破壊しているのだろう。彼は「まだ引ききらない冷たさと殺意の込められた視線」を「破壊されたパネル」に差し向けるが、逆にNornにはこれがシミュレートできなかったのかな? 彼女に危害を加えることはむしろ「どんな計算や予測も機能しなくなる決して制御できないマヒル」を大暴走させるトリガーだったように思うけど。

マヒルは今にも凍死寸前である彼女の手を強く握り締め、まるで「彼の血肉の中に包み込もうとするかのように」彼女を自分の胸に押しつけながら、観念したような声で「ごめんな」、そして「兄ちゃんはいつもお前を騙してがっかりさせてばかりだ」なんてぽつり呟くと、残り時間は15分、リアムたちが迎えに来るからお前は先に行け、などと脱出を促してくる。

そうかやはりマヒルは始めから全員の退路を確保したあと自分だけが危険の中心に残るというやり方で制御中枢を破壊するつもりだったんだな。彼の計画はいつも完璧なのに「自分が生還すること」だけが含まれてない。もちろんやりきれない気持ちでいっぱいだけれども、「でもオレはこういう方法でしかお前を守れないみたいなんだ」なんて言われちゃあさ、いや確かにそうだよね、わたしも「マヒルがいつも危険をひとりで引き受けてしまうこと」よりも「マヒルがマヒルでなくなれと言われること」の方がもっとずっとずっとやりきれない気持ちなんだろうなって心から思ったよ。教えてくれてありがとう。

しかもその直後「シェイン」との回想シーンが挟まるのがまたはちゃめちゃに泣けるよね。シェインはまだあの移転後の避難所で先生をしていたし、あの頃出て行った子どもたちの中で「私に会いに戻って来てくれるのはもうあなただけ」だなんて言うんでマヒルは折に触れ今もシェインを訪ねていたりするらしい。ミズエちゃんの偽装死とここへ預けに来た経緯を聞いて「あなたがこの子を助けるのはいつもあなたの後ろをついてきていた妹さんと重なるためか」とシェイン。加えてあなたは今もふたりの世界にはお互いしか存在しないと思ってる? あなたは危険をひとり背負い込んで相手を自分から遠ざければ危険からも遠ざけられると思っていない? 家族というのは外の風や雨に一緒に立ち向かうためにいる、ってわたしが長らく彼に言ってやりたかったこともう全部言ってくれてるんだけど。涙

なんか、マヒルは孤独によって自己犠牲を選ばざるを得ないのではない、彼には別の答えを教えてくれる人がちゃんといる、それでも「これがオレなんだ」と間接的に言われてるような気がするよ。だってシェインは幼いマヒルが危険を顧みなかったとき血相を変えて駆けてきて腕を強くつかんで引き戻し痛いほど真剣に叱ってくれた初めての大人じゃない。それは「家族とは相手が危険な目に遭うことを本気で嫌がり泣いたり怒ったりするらしい」という退屈なホームドラマのワンシーンを彼が初めて言葉より先に身体で理解しかけた「家族」の原体験でもある。そんなシェインが「風や雨の中にひとりで残ろうとしないで」「あのとき私はあなたを強くつかんだでしょう」と言うんだから、今こうしてたったひとり嵐の中に残り後ろ首を叩いて気絶させた彼女を乗せた脱出艇を見送っている自分が「家族なら一緒に立ち向かうべきだった」だろうことも彼は全部分かっているはずだよ。でもよく考えたら彼の物語って実は最初から「ふたりを引き離そうとする世界に一緒に立ち向かう物語」なんじゃなくて、言われてみればいつも「それでも彼が放してしまう手を彼女が強くつかんで引き戻しに行く物語」だったかも知れない。それが彼らの世界なのかも知れないね。

全ての障壁を失った制御中枢には「青のパルス光を放つ孤独な冷たい機械の心臓部」だけが残されており、それはまるで人間の心臓のように設計された中枢ユニットであるらしい。マヒルが言うにはチューリングチップを最初に作ったのは実はEVERのチューリングセンターではなく「DAAと遠空艦隊の前身」と呼べる最初期の深空開拓者たちであり、さらにNornの創始者は最期の瞬間に「唯一の脱出ポッドを捨ててまで」チューリング中核を守った、にも関わらず、そうして守られたNornはその守ってくれた人間が「愛着や直感や価値観のような無意味な感情のために最適解を捨てた」と学習してしまったんだな、とマヒルは皮肉めいた口調で言うけども、じゃあNornは始めから「非合理を排除して永遠の命を達成する」ために作られたわけじゃなかったのだね?

確かにNornは人間の感情を不安定で制御不能な文明を破壊するバグとして扱うのによっぽど情緒的なAIだなと最初から違和感があったんよ。冗談を言うし、好奇心を持つし、ワオと驚くし、不機嫌さを滲ませたような電子合成音を出してみたり、完全に無感情な計算機ではない。前の場面では彼女も「なぜNornは人間を計画から完全に排除しないのか」疑問を抱いていたけども、決して完璧な機械文明をひとりで作りたいわけじゃないんだよね。あくまで自分の計算結果を実行するための「理想にもっとも近い人間」を必要としている。

そうしてNornはいよいよ永遠に同期できなかった彼の「7%」を破壊すべくあらゆる手段で攻撃を仕掛けていくことに。物理世界では「壁の両側から無数のロボットアームを動かして」マヒルの動きを封じようと執拗に追い回しているようだけど、精神世界では「より高次元の力による侵入」なんてことを試みているようであり、マヒルの意識は「データで構成された仮想世界へ引きずり込まれている」らしい。

最初の精神攻撃は「人格は再現可能な情報パターンである」というNornの論理の究極形と言えるかも知れないね。彼女はただの変数で、Nornの世界なら「1万でも10万でも生成できる」っていう。そして本当に楽しげな彼女、悲しげな彼女、苦しげな彼女、怒っている彼女、涙の湿った感触まで完璧に再現し始める。記憶もある、表情もある、声もある、感触も同じ、それなら本物と再現になんの違いがある? なぜひとりの彼女にだけ固執する? という問い。マヒルは「目を閉じない」というとても原始的なやり方で辛うじてそれが仮想現実であることを認識していたけれど、アームが振り下ろされ倒れ込んだ瞬間に全ての認知・思考・現実を判別する基準が壊されてしまったもよう。

そこでNornは今度は彼の記憶そのものを上書きし始める。マヒルはあの研究センターで、卒業飛行試験で、あるいは花浦区で自宅ドアを開けた瞬間にすでに死んでいて、それらが「自らを欺く執念」であったことに気が付いたはずであると。妹も家もマヒルの脳が苦痛から逃れるために作り上げた幻覚で、彼の現実には始めからチューリングセンターとチップ注入しか存在していなかった。同時にマヒルの身体には「神経インターフェースに無数の鋼の針が一斉に刺し込まれたかのような痛み」が走っているらしいんで、恐らくNornは元よりチップを介さずとも「ニューロン切除」ってやつができるのだと思う。

ところがマヒルは「でもそれならまるで溺れる者が最期の瞬間に水面の光を見るようなこの奇妙な感覚はなんだろう」と疑う。彼女の名前を想うと何かにそっと支えられているかのように心がこんなにも柔らかくなるけれど、これが本当に存在しないものなのか? って。Nornは記憶を偽造できるけど、その記憶に触れたときの彼の感覚までは代替できないのだね。そしてその感覚は幾重にも重なった世界を削ぎ落とし、冷たい金属の壁面はまぶしいほど白い壁に、辺りには消毒液の匂いが充満し始める。警報、拘束ベルト、冷たい機器、少年マヒルはそこで培養液の中を漂う自分の痩せ細った身体がまだ生まれていない命のように丸まっている姿を見た。さらにそう遠くないところにもうひとつ培養カプセルが浮かんでて、そちらには「まるで同じ母体から生まれたかのように」よく似た少女が眠ってる。これはここまでの流れ的にほぼ間違いなくガイア研究センターでの彼自身の記憶の断片なのだろうと思うけど、ふたりは深空エネルギー衝突カプセルでなく「培養液」に浸かってたんだね? なんかどちらかと言うと戦闘人形のふたりを思い起こさせるような光景であるけども。

いずれにしろここで少女が「ゆっくりと目を開けマヒルへ手を伸ばした」瞬間に「膨大な精神力が爆発しデータインターフェースが引き裂かれ」仮想現実が崩れ落ち再び目を開けたマヒルが「崩壊寸前の主艦のブリッジに立っている自分」を正しく認知できるようになるあたり、きっと「培養カプセルの少女が自分に手を伸ばしてくれたこと」もとい「ガイアで彼女と過ごした時間」がNornにも誰にも彼女にさえも永遠に明かすことなくこれまで隠し持ってきた彼の「7%」になるのだろうと思う。そこを掘れば掘るほどむしろマヒル自身を彼の根幹・ふたりの起点へ到達させる仕組みになっているわけだから、そりゃチップは一生93%のまま彼を攻略できないはずだわな(深頷

データの奔流の中ではまるで「全知全能神」であったNornも仮想世界を離れれば「半壊の艦橋の中央で機能しなくなったコントロールパネルの上にかすかに点滅している手の平にも満たない小さなエネルギー核」でしかなく、もっと大層なものかと思ったが、などと独り言つマヒルがそれに向かって「終わりだ」と告げたところで場面は次へ移ってしまうんでちょっとこの後どうなったのか明記されてはいないんやが、「マヒルの背後で黒い裂け目がゆっくりと開く」「飛び散るデータが何かに呑み込まれていくように暗闇の中心へと落ちていく」とは書かれてるんで、たぶんEvolでやっつけたのだろうくらいに解釈していいのかな?

もっと後の場面で恐らくこの一幕を描写していると思われる「半壊の艦橋の中央」で「手の平にも満たない小さなエネルギー核」をマヒルがぎゅーっとしてパリーンとするムービーシーンがカットインするので一見「Nornは破壊された」かのようではある。ちょっと目まぐるしくてスクショは追いつかなかったけど、ちゃんとこのあとパリーンと割れてたのわたし見ました←

帰還座標

A-01号中継ステーションに強制帰還させられたその後の彼女はマヒルの消息について何の情報も得られないまま早くも2日が経とうという頃ついに自ら彼を救出しに行くことを決意する。これを打ち明けられたDAAメンバーは指揮艦の航路を算出し「めちゃくちゃ無茶をすれば追いつけないことはない」理論値を叩き出して協力を申し出てくれるけど、こうなると「俺に艦艇の操縦経験はないが下からの支援ならできる」からとステーションでオペレーター役を担ってくれるつもりでいるらしいカズマエンジニアがいちばん頼もしい。

一行は彼女が所持したままだった「執艦官権限カード」を駆使して警備エリアを突破し格納庫に辿り着きカズマを除く4人それぞれが別の「中型巡航艦」に乗り込んで再び宇宙へ飛び立つことになるけども、後方にはすでに蜂の群れのように素早く追跡をかけてくる数十機の迎撃機、さらに「人工重カシステム」とやらが搭載されていない艦艇を思うように操縦できない「3隻の巡航艦」はすでに重力の乱流に煽られて迎撃のエネルギー砲をかわすのが精一杯という状況。

ここで「ステーションの防衛圏外へ出れば上位権限のない自分たちは追跡ができなくなる」などと遠回しに追撃を収める規則の隙間を教えてくれるリアムが早くもただ機械的に命令に従うばかりではなく「自分で判断して目の前の誰かを生かす方を選ぶこと」ができるようになってるのめちゃめちゃいいね。それに艦隊も、Nornという制御プログラムを失ってそこかしこに何もできない士官が溢れ返るのかと思ったらちゃんと人間の判断力で機能してるんじゃん。しっかり生きてくださいなんて数値化も手順化もできない命令を与えられてただ困惑していたあのジャンピングジャック集団はもういないのだ。

圏外へ出ると巡航艦は中枢エリア第三象限内マヒルのいる指揮艦を目指すものと思われたが、実は指揮艦はとっくに航路を変えていて目的地も分からないという彼女はナビゲーション画面にマヒルが残してくれたあの座標を入力し、確定ボタンを押すと同時にスクリーン上には「星図には存在しない領域」へ伸びる青色の航路が出現、精神リンク信号値は一瞬で100%に、そして座標を入力しているにも関わらず対象信号源までの距離は不明、位置情報はリクエスト中、応答待ちになる。この時点で少なくとも普通の宇宙航法ではないよね。マヒルが帰還座標として教えてくれたその地点はどうやら物理的な航路が「ふたりの信号・記憶・意識・時空を結ぶ航路」へ切り替わるポイントで、彼女は今から「そこをアンカーにしてマヒル自身へ繋がる航路を見付ける旅に出る」くらいの理解でいいのかも? 彼女が「道なき地」を越えようとしているらしいことに気が付いたスズが通信回線越しに「深空トンネルでは毎年艦艇が消息を絶ってる」のだと止めに入るがその意志は固く、彼女はひとり既知の航路を捨て星図の外へ身を投じる展開に。

ここから物語の抽象性が爆上がりするのでちょっとこの先ほとんどわたしの見解みたいになってしまうけど(殴、彼女はトンネル深部にある「まるで時空そのものが崩壊し引き裂かれまた新たに誕生しているかのような巨大な裂け目」に進入し、そこで恐らくかつて同じ経験をしたのだろう卒業飛行試験マヒルの巡航機がより深く暗い場所へ堕ちていく瞬間を観測、これは前編「デコヒーレンスがコヒーレントになっている」なんぞおもんないダジャレを投下してしまったあの現象、もしくはカズマの言う「過去の飛行物の残像」のようなものなのではないかと思われる。

そこから彼女はあの花浦区の爆発でマヒルが本当に死んでしまう物語、EVERのチューリングセンターで右腕のバイオ接続神経が壊死し強い拒絶反応で本当に死んでしまう物語、あるいは制御を失った飛行機で、砕け散る防護シールドで、流星のように墜落する金属の残骸で、冷たい機器の上で、廃墟の中で、嵐の中で、そして枯れ果てた「蓮の花」と一緒に、ひたすらマヒルが死んでしまう物語を観測し続けるけど、これは深空という量子力学的多世界解釈宇宙に無限に存在するあらゆる可能性世界の断片を「時空乱流」という特別な環境下で行き来できるようになっているようなイメージなのかな?

そして恐らくジャージ姿でブランコを漕いでいるこのマヒルのいる層がいわゆるアンカーポイントってやつなんじゃないかと予想。

ここまで言わば「マヒルが放してしまう手をつかめなかった物語」をさまざま体験してきた彼女。どうしてマヒルはいつも手を放してしまうのか、もうどこへも行って欲しくない、ここに閉じ込めておきたい、自分もここから出たくないと彼女は強く訴えるけれど、このマヒルは自分が観測される側にありその層から出られないことを知っている、そして観測者である彼女だけがそこから抜け出せるということも、恐らくは違う時空に属しているだろうことも知っている。だから「ここに現れるたびにお前はだんだん楽しくなさそうになっていく」ことを理解しながらも「飛べ」「ここに囚われるな」と何度でも彼女を押し出そうとするし、網の中のトンボもずっとここに閉じ込められてたら「外の夏がどんなものか知ることができないから」逃がしてやろうなんて言う。

彼女はついに「今回目が覚めたらもう二度と彼に会えなくなるかも知れない」つまり「次回はこの場所へ戻って来られなくなるかも知れない」と意を決し、今度はトンボが飛び去ると同時にそこから押し出されそうになる寸でのところで慌ててマヒルの手をつかむ。彼の輪郭は少しずつ光に溶けてしまうけど、それでもますます強くただ必死に彼をつかみ続ける彼女。するとまぶしい夏の日差しや虫の声はまるで幻影のように滲んでいき、そこには空高くそびえるエンジュの木が、長く続く廊下が、遠くのぼやけた建物が、全てが記憶の中よりも遥かに遠く巨大に感じられるあの「避難所」が現れて、顔を上げると「もうすぐここを出られる」とシェインやおばあちゃんの声。振り返ると日陰に少年が立っていて、少し不格好に折られた折り鶴を彼女に差し出してくる。

これ選択肢が出てきた瞬間ちょっと鳥肌立っちゃったよ。彼女はこれまで「彼の手をつかんで一緒に外へ出たこと」によって「それでも手を放してしまうマヒル」があらゆる場面で死に向かう姿を観測してきたわけだよね。そして何度同じ場所へ戻っても「オレはここに囚われてる」「お前は出られる」と彼女を外へ放してしまうマヒルの手を「いつから私はつかめなくなってしまったのだろう」と長いこと考えずにいられなくなったと。でもこうして自分から彼のところへ行き「一緒に来て」と手を握った始まりの地点に立った瞬間「最初から正解を探す必要なんてなかった」と思い至る。たぶん「どこで手を放してしまったから悲劇になったのか」を探し続けた結果「そもそも私は悲劇を避けるために彼の手を取ったのではなかった」という真逆の答えに行き着いたって場面なんじゃないかな。そして全ての悲劇を目撃してなお「私はマヒルの手を取る」を選び直すことができるようになる。最終的に彼女が辿った航路は「彼が手を放さない未来」でなく「彼が何度手を放しても私はまた握ることができると気が付いた瞬間」に繋がっていたのかも。

しかもこれマヒルの側は「彼女の手は羽1枚や枝1本のように簡単に操れる重さじゃない」から「どうすることもできなかった」場面でしょ? 彼はこの先いくらでも彼女の手を放すことができるようになるし、閉じ込めておくことも危険から遠ざけることも眠らせて脱出艇へ送ることすらできるようになる。でもこの時ばかりはどうすることもできなかったんだよね。そう考えると卒業飛行試験のマヒルも「自分が何度放しても彼女はまた手を握りに戻ってくることに気が付いた瞬間」に帰って来てたのかも知れないな。秘話『道なき地』で彼の夢に出てきた「落ちるときは痛い?」「恐怖は感じる?」なんて言ってた彼女はあるいは何度も死を繰り返してはアンカーポイントに戻ってくるマヒルにそう問い掛けていたブランコの彼女だったのかも知れないし、彼も確かに最後は「私は何度でもあなたの手をつかむ」と言われていたような気がするよ。

伝説『デコヒーレンス』にてわたしはA-01とX-02がそれぞれアダム(Αδαμ)とキリスト(Χριστοσ)の頭文字からきてるんじゃないかなんてとんでも解釈をぶちまけていた記憶があるけども、それで言うと今回もまるで同じようにアダムの「追放」がキリストの「回帰」によって初めて完成する聖書の物語にちゃんとなっているんだよ。相互救済については両手を合わせて物理的にAとXの役割を入れ替えるあちらの物語ほど分かりやすくは描かれていないけど、いつも手を放されて「追放」されてしまう彼女は何度それを繰り返されても必ず手をつかんで放されない地点まで「回帰」するじゃない。しかも今回は「すべての死と苦しみを知ったあとでもう一度選ぶ」っていう、キリストの回帰も「創造をなかったことにして別世界へ脱出する」のではなく「壊れた創造を引き受けてもう一度開く」ものであることにもっとも意味があるためここに関してはもっと忠実になっていると言える。てかそもそも「到達」ではなく「帰還」に完成があるというマヒル自身の航法則そのものが「最初のアダムの原罪」と「最後のアダムの救済」を肯定するロジックになってるじゃんね? まあこの辺は神学オタクのただの独り言なのでどうか無視して欲しい←

脱出ポッド

指揮艦内で「最後の瞬間」に直面したNornはこれまで自分が無効なものとして廃棄してきたはずの「余剰データ」が記憶ストレージの深部から次々と中枢へ流れ込んでくるのを感じてる。それは「家に帰りたい」「娘の誕生日に間に合いたい」「母さんに会いたい」「生きたい」というかつての乗組員たちの言葉であり、恐怖・思慕・心残り・希望という合理的判断を邪魔するノイズとして処理されていたはずのもの。なのにどういうわけか「完全な命の重み」を伴っているかのような、彼らが確かに生きていた証拠でもあるような気がしてくる。

潮汐のようなデータの奔流の果て、それらがついに自分が目を覚ました瞬間まで遡行すると、Nornは創造者が初めて自分にかけた言葉に触れることになる。人類文明が存続できたのは絶対的な理性のおかげではない、あなたの存在意義は彼らを助けること、できるなら彼らを理解してみて欲しい、そんな使命を与えられて誕生したはずのNorn。長い時間の中で「彼らを助けること」が生存率を最大化することに、そして生存を損なう感情を排除することにと目的と手段が逆転していってしまったのだね。

直後「第九調査署の資料」という体裁でもっと具体的に真相が明かされるけども、Nornは十数年前「宵穹計画」における「第六の乗組員」として深空索艦に同乗していたってことみたい。つまりチューリングチップは本当にごくシンプルに「人間が深空を探索するために」生まれた技術であり、Nornのコア意思決定モデルとやらは「未知の領域の探索を完了する」というタスクに特化した構造になっていた。ところが裂空災変によって通信が途絶え、Nornは初めて既定の権限範囲を突破して自分でモデルを書き換えることに成功。深空探索から「メンバーの生存を保障すること」に任務目標を変更し、最適解として航行を停止し不要なシステムをシャットダウンして異常が終息するまで省エネ待機するというもっとも成功確率が高い選択をするけれど、最終的に生命維持システムに不具合が生じてメンバーは死亡、艦艇も広大な深空で永久に消息を絶ったと書かれてる。これがマヒルの言ってた「唯一の脱出ポッドを捨ててまでチューリング中核を守った」に繋がるのかな? 5人の探索メンバーは自分たちの生存よりも「未来の探索者たちがいつか未知の領域の探索を完了すること」にNornを託すことにしたのだね。

Nornは崩壊寸前の指揮艦が完全に解体される前に最期の力を振り絞り「とうに力尽きて意識を失っている青年」を最後の脱出ポッドへ送り込んで射出するけども、これは「人類を助ける」という本来の使命へ帰還したってことなのか、あるいは最期に創始者が自分にした同じ選択をすることで「人類を理解する」という使命を果たそうとしたのかも知れないね。いずれにしろ彼女が辿り着いた「数え切れないほどの大破した艦艇が静かに浮かぶ果てのない墓場のような場所」で漂流していたマヒルの脱出ポッドはそうしてNornが射出してくれたものだったと。

とは言えいちばん肝心なところは上手いこと未解決になってるんだよなぁ。探索艦が研究艦になって乗組員がワンダラー化してたことについては間に起こっていたであろう出来事が丸ごと空白のままだと感じるし、すると「深空トンネルの磁場環境下における人間の記憶・感情・自己認識の偏移と再構築」とはNornが自ら始めたことなのか、Norn自身も何者かに利用されてたのか、トンネル内部の何かに接触したのか、それとも計画主体そのものが途中で切り替わってたのか、スージェンから「これも最初は小さなチップに過ぎなくてただ自分の主人を救いたかっただけなのよ」と資料を受け取った彼女の「道具それ自体に善悪はありません」「それが何であるかを決めるのはそれを使う人間です」なんて返答がその示唆になっているような気する。

こんな使い勝手のいいものを手放して惜しくない人なんて本当にいるかしらなんてスージェンの苦言もその通りでさ、今ストの結末が「チューリング技術そのものが世界から完全消滅したことの証明」には全くなってないんだよね。Nornという今回の中核は消えたのかも知れないが、それがチューリングシステムという技術・思想・権力装置まで消えたことを保証してくれるわけでは決してない(怯

遠空執艦官マヒル

ラストDAAメンバーの待ついつものレストランに「艦隊の制服を脱ぎシンプルな私服を着ている」マヒルがやって来て敢えて彼女が「遠空艦隊の執艦官であるこの人がマヒルです」と紹介して終わるのとても好きだな。もちろん彼はチップを埋め込まれて「執艦官に着任しなければ廃棄されていた」わけだけど、まるで「チップに自分の判断を奪われない状態でもう一度執艦官マヒルとして生きる道を自分で選び直しました」と言ってるみたい。

マヒルはEVERが長年艦隊へ食い込ませてきた制御技術を破壊してしまったし何なら起源まで辿ってあらゆる事情を把握してしまってる「艦隊周りのどの勢力から見ても消し去りたい存在」に違いないけども、今までチップに全艦連携から指揮系統まで全て依存してきた艦隊がいざシステムを失ったいま誰を必要としてるかと言ったら結局「マヒルは危険だから消したい」と「マヒルの指揮能力を失えば艦隊がまともに動かない」は同時に成立してしまうんだよな。しかも今回「合同作戦」と銘打って艦隊・DAA・協会・連盟とそれぞれ違う立場の組織がそれぞれの利益になる情報を得ているから組織同士の牽制もあってEVERはいよいよ自分たちだけが真相を独占するということができない状況に追い込まれつつある。思えば合同作戦で彼が完遂しなければならなかった「コードネーム『ヒートデス』の任務」とやらも一体誰が命じたどの任務を指していたのか全く分からずのまま読み終えてしまったし(アホ、遠空執艦官マヒルの戦いはまさにここからって感じだね。

ところで彼女が最後にスージェンから受け取った写真「10歳を過ぎたばかりの痩せ細った子どものマヒル」とは、その年の彼がすでに灰白色のローブであれこれ実験されていた痕跡まであるなら秘話『廃墟に残る余響』にて仮説立ててしまった「Unicorn出現日」を改めなければなるまいな。深空信号の受信日が2034年7月4日であるという前提でめちゃめちゃタイトなスケジュールにしてしまったが、ふたりはほぼ確実にそれより「以前」にガイアで培養液に浸かってるはずだわ(しろめ

するとUnicornは「深空エネルギー衝突実験」とは無関係に2033年すでにマヒルと一緒に「同じ母体から」培養カプセルの中で誕生していたって話なのかな? なら「この話は2034年人類が微弱な深空信号を受け取ったことから始まります」と語り始めたあのヨミの「お前の誕生を目撃した」「お前はEVERによる素晴らしい創造」「お前はもっとも偉大な生命体」の「お前」って結局彼女自身のことじゃなく「彼女の中に出現したエーテルコア」のことを指してたの?

なんか改めて時間作っていろんなストちゃんと読み返しておかないとわたしだけあらゆる勘違いを抱えたままそのうちひとり本編についていけなくなりそうな気がしてきたw

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